書きたいとこまで来たので連続投稿です
幼少期編も盛り上がって参りましたー
覚悟の準備をしておいて下さい!いいですね!
ではどうぞ
今日は橘と藤原が話があると呼び出してきた。話と言っても世間話のような軽いものだが。今までもそんな話をすることは多々あったが、あんな真剣な顔で呼び出されるのは初めてだ。
橘たちとの交流も3年弱になる。……天地がひっくり返らない限り無いと思うが、解雇通知じゃないだろうな? いや、無い無い……はず。無いよな?
「お邪魔しまーす」
そんな適当なことを考えながら農場近くの平屋に入る。既に橘と藤原は机の向かいに座り、私が座るのをジッと待っている。静寂と緊張で満ちた空間に耐えながら私も腰掛ける。
「で、話とは何でしょう?」
まずは話の内容を聞くと、意外な答えが返ってきた。
「レウス、レースに出ろ」
藤原が叩きつけるように言い放ったソレは、私に混乱を起こした。
「……随分と急な話だね」
「お前は聡いからな、本題から入った方がいいだろ?」
藤原が揶揄うように言う。確かに前置きがあればそこから本題を予測して自分に不都合があればサッサと話を切り上げて逃げれたが、いきなりの爆弾投下で縛り付けられた。
「どういう風の吹き回し?」
「近々キッズレースがある。それのエントリーを
橘が更に話に燃料を入れる。
「まてまてまてまて、
「ああ、だから
「強引な男は嫌われるよ?」
「今更お前が俺らを嫌うかよ」
嫌味にぐうの音も出ないほどの反撃を食らう。……万事休すか。
「一応用件は分かった。が、納得のいく理由があるんだろうね?」
「ンなもんお前がレースに出たがってるからに決まってんだろ」
藤原が当たり前のように言い切られてキョトンとする。お前は何を言ってるんだ?
「お前は何を言ってるんだ?」
口に出ちゃったかぁ。
「…………自覚無しか」
「???」
橘が何やら意味深なことを言うが心当たりが無い。
「ずっと見てきた俺らだから言わせてもらうぞ。レウス、お前はレースに出たがってる。これは紛れもない事実だ」
「ま、待ってよ。私はレースなんて」
「じゃあ聞くが、お前は何の為に身体を鍛えているんだ?」
橘が疑問をぶつけてくる。ここは素直に回答しておこう。
「鍛えて損は無いでしょ」
「それもあるかもな。じゃあスポーツ科学を勉強してるのは何故だ?」
確かに私はスポーツ科学は勉強したが、それは私が勉強した数ある学問の1つに過ぎない。
「それは色々勉強しててたまたま……」
「お前が勉強したのはレースに関するスポーツ科学、アスリートに必要な栄養学、怪我に対するスポーツ医学やウマ娘に関する論文だろ。レースする気満々だと思うんだが」
「たまたま……目に付いたから」
…………段々と核心に迫ってくる。私は……。
「お前はレースに興味無いと公言してても、レースに出る為準備してるんだよ」
「橘たちから見たらそう見えただけでしょ」
「ああ、俺たちからはそう見えた」
私を貫く二つの視線。私の蓋に、手が掛けられた……
「もう一度言うぞ、お前はレースに出たがってる」
「…………」
何も言えない。言葉が浮かばない。私の気は底に沈んでいく。
「俺らはこのレースがいい機会だと思ってる。出てみろよ、レウス」
藤原の優しさが私の蓋を剥がしにかかる。
「……本当に無理なら無理って言え、断りの連絡しとくから」
橘も勢いが削がれたのか、優しく慰めてくる。蓋は、もう…………
「…………私はレースに出たい、それは認めよう」
「認めるんだな」
正直な自白に橘が少し驚く。
「藤原は私はレースに出れば活躍出来るって言ってたな? それも認めよう」
「!!」
藤原も大きく目を開いて驚く。
「私は、レースに勝てる。あの世界が甘くないのは私がこの世で1番知ってる。でも、勝てると断言する」
長い間閉じてた蓋、閉じてたのは不必要と棄てたからなのか、それとも大事なナニカだったからなのか……。
「私は、夢を見てたんだ。長い、長い夢を。その旅路は緩やかなものではなかったが、私は大いに満たされていたんだ」
嗚呼、もう止まれない。
「けれど、気付いたんだ。今
私の言葉は止まらなかった。ポツリ、ポツリと波紋が広がるように、私の中身は露見していった。
「私にはレースに出ないという選択肢があった。私は何者にもなれた。それを、あんた達は!」
「レースに出ろ、レウス」
橘が突き放すように言う。どうやら話を聞いてなかったらしい。
「何故? 何故出ないといけない!」
「お前がレースに出ないと言う時、苦しそうな顔をするからだ」
「ハッ?」
「気付け。お前は今、泣いてるんだよ」
言われてから気付いた。頬を伝う水のような感覚。目を擦ると、涙が溢れてきた。
「……私は」
「気持ちに蓋をしたって、何の解決にもならん。それで出来上がるのは苦しいだけの本性さ」
「……私の蓋を剥がしといとよくもぬけぬけと」
「お前……何の為に生きている?」
突然の問に戸惑う。何の為? 決まってる、私は私の……
「私のた
「お前の何処が自分の為に生きていると言える?」
……私は自分を守っている」
「守っていない、逃げてるだけだ。逃げることが悪いとは言わん。だがな、後悔する逃げは駄目だ。」
「後悔? 自分の選択に後悔するような生き方はしてない」
「いい加減気付けこの馬鹿。お前はレースに出たがっていて、そこで発生する負の部分を怖がってるだけだ。本当にやりたいことなら、しっかりと向き合え!」
「向き合う?」
「ああ、社会ってやつは正しいことや綺麗なことで成り立っているんじゃない。暗い部分も必ず存在する。そこに首を突っ込めってことじゃ無いが、理解しろ。理不尽も不条理も向き合って共存しろ。お前は出来る」
「…………」
分かっていた、嗚呼分かっていたさ。自分のレースに対する感情も、他から向けられるものから逃げてたことも、何時かは向き合わなきゃいけないことも。でも怖いものは怖いんだ、私の不安定な精神ではとても耐えきれない。私は未だ縛られた卵なんだ。
「…………レースの日程は?」
「2週間後だ」
「……分かった。レースに出るよ」
二人が安心したという顔になる。心配して色々考えてくれるのはいいけど今回のは強引すぎたな。……それも私の弱さ故か。
あと二週間、
私は弱い
身体が、というより精神という意味で
私は、長い夢を見ていた。そろそろ起きる頃合いかもしれない。
アハー、ガンギマリの音~
軌道に乗ってくでー
ではまた!