皆さん寝正月してませんか?
私はしてます。
ではどうぞ
二人が入学してから約一月後、学園の空気は張り詰めていた。
「レウスはリギルの選考にするんだね」
「こんなのどう考えてもリギル一択でしょ」
そろそろ選抜レースのシーズン。選抜レースとは、担当トレーナーが居ないウマ娘たちがトレーナーにアピール出来る重要なレースのことである。選抜レースの他にも、レウスの言う選考に参加したり、トレーナーに直接接触する等、トレーナーに担当してもらう方法はあるが、選抜レースは担当の居ないトレーナーやチームのトレーナーが全員見に来るので多くのトレーナーに自分を見てもらう絶好の機会だ。ウマ娘がトレーナーへのアピールに必死なのは、トレーナーが付かないとレースに出れないウマ娘にとってトレーナーの存在は必須だからだ。レースの世界において、ウマ娘は重賞に勝つことで名誉と栄光が、トレーナーは担当ウマ娘が活躍すると名声とボーナスが、ウマ娘とトレーナーはそんな一蓮托生な利益関係を結ぶ。
「ルーチェもリギル?」
「レウスがリギルならリギルかなー」
レウスらの言うリギルとはこのトレセン学園のチームのことだ。重賞を勝っているウマ娘が多く所属しており、学内最高峰のチームと言われている。
「でもなんでリギルなの? 有名なチームならスピカやカノープス、シリウスなんかも負けず劣らずな気がするけど」
ルーチェはレウスに素朴な疑問をぶつける。確かにチームに所属するだけなら他にも有力なチームが多くある中、リギル一択とまで言い切る理由はどんなものか気になっていた。
「私のトレーナーの条件として、まず腕が一流、次に用意できる環境が上質、そして海外遠征の経験が有ること。そしたらあら不思議、リギルの東条トレーナーだけがヒットしましたー」
「なるほどねー、でもリギルの選考は倍率凄いよ」
「そこ気にする?」
「……あー、そうだね」
「ていうか、私だけリギル行くみたいな言い方してるけどルーチェもリギルなんでしょ?」
「私は首席だから、行きたいとこ行けるしレウスと同じとこでいいかなって」
「かぁー、楽でいいなー」
二人は話してるうちに目的地であるターフに着いていた。今は沢山のウマ娘がトレーニングしており、重賞に勝っている子もちろほら見える。レウスがターフに来たのは、同じ選考で当たる可能性のある子の分析、ルーチェはレウスの付き添いだ。
「レウスはトレーニングしなくていいの?」
「私のトレーニングは時間かからないから終わってから見てもいいんだけど、それだとトップパフォーマンスを推測できないと思って最初に見に来たんだ」
「レウスあのトレーニング内容でよく早く終わるよね」
「あなたも同じことしてるから思いっきりブーメランなんですけどそれ」
「でもリギルかぁ、楽しm「イダダダダダダダ!!」
後ろから痛みに叫ぶ男の声にルーチェが驚いて振り返ると、レウスに左手を掴まれて口から棒付きの飴を零しながら悶絶している男が居た。
「痛い! 痛いから!」
「…………」
「ちょ!強めないで! いたたたたた!」
「レウス? 何してるの!」
レウスの急な行動に戸惑いの声をあげるルーチェ。しかしレウスは冷静に返す。
「いやー、ルーチェに手を出す変態が居たもんだから」
「え?」
「まだ触ってないだろ!」
「
「とりあえずレウス、離してあげて」
「なんで?」
「お願い!」
ルーチェのお願いには弱いレウスは渋々男の手を離す。すると男は悪びれもなく。
「いやぁ、すまんな。良いトモだったもんで」
「レウスやっぱり捕まえちゃって」
「了解」
「ちょっと待って! 俺はトレーナーだ、怪しいものじゃない!」
「…………あなたのことは存じ上げてます。チームスピカの沖野トレーナー」
「お? 俺を知ってるのか?」
「トレセン内のトレーナーは全員把握済みです」
そう言って溜息をつきながらレウスは落ちた飴を拾って沖野に差し出す。
「ここで死ぬか豚箱の中で死ぬかどちらがいいですか?」
「待て、どちみち死ぬじゃねぇか!」
大声をあげる沖野の右手にレウスは飴を握らせるが、沖野はそんなこと気にせず自論を繰り広げる。
「俺はまだまだウマ娘たちの夢を叶えてやりてぇんだ。ここで死ぬ訳にはいかん」
「じゃあセクハラしちゃ駄目でしょ」
沖野が熱く語ろうとした時、ルーチェがぶった斬った。確かに他人の夢を叶えたいと嘆くにしても、社会人としてセクハラは確実にアウトだ。
「そ、そうなんだが……」
「何と素晴らしい! このレウス、感激致しました!」
ルーチェに斬られて言い淀む沖野に、レウスはわざとらしく感動してみせる。
「そんな素晴らしいお考えをお持ちの沖野トレーナーに是非とも贈りたい物があります。手を出して頂いても宜しいですか?」
「お、おう」
レウスの雰囲気に呑まれて、沖野は先程レウスに飴を握らされた右手ではなく左手を前に出す。
「一体何を……(カチャン)カチャン?」
呆気にとられる沖野の左手首には、手錠が嵌められていた。
「…………え?」
「ごめんルーチェ、ちょっとたずなさんのとこ行ってくるね」
「いってらっしゃいレウス」
「え? たずなさん? ……え?」
自分の置かれた状況がやっと理解出来た沖野は暴れようとするが、左手には手錠、右手は飴が引っ付いて上手く開けず、いつの間にか両手が塞がれていた。抵抗する沖野を他所に、レウスは手錠の反対を持ちながらウマ娘パワーで沖野を引き摺る。
「脚を触るだけで色々な情報が得られる能力は素直に評価しますが、
「すまん! 俺が悪かった! だからホントに! 許して! 許してぇ────!」
この後、沖野はたずなさんにいつもより説教された。レウスはその横で警察に連絡しようとしていたが、たずなさんが必死に頭を下げて通報はできなかった。レウスは去り際に
「しょうがないですねー、貸1ですよたずなさん」
ちゃっかりたずなさんに貸しを作っていた。
哀れ沖野トレーナーは爆発四散
なんであの人捕まってないんですかね?
ではまた!