フィジカルギフテッド in リコリコ   作:五月雨@ノン

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先生

 

カーテンの隙間から照りつける陽の光に俺の意識は浮上する。ガバりと毛布を退け、時計を見ると九時四十七分となんとも遅い目覚めであった

 

俺の腕を枕代わりに寝ている隣の裸の女は俺の体を両手両足で縛るかのように眠っていた。それが体を起こすことに何とも邪魔だったので俺は無理矢理その両手両足を解いた。すると女の目が薄く開いたと思うとまた俺の体へと抱き着いた

 

 

「邪魔だ」

 

「良いじゃない···それに今日はどうせやることなんて無いんでしょ?それに、やっと会えたあなたを感じていたいの」

 

そんなことを宣う目の前の女にめんどくせェな、と内心そう零しているとどうやら今日の俺の運は珍しく良いみたいでタイミングが良くテーブルに置いてある俺のスマートフォンが震えた

 

俺は女の陶磁器のような白い両手両足を無理矢理退け、震えているスマホを手に取り、画面に映っている名前を見てニヤリと口角を上げつつも応答という文字をタップした

 

 

「なんだよ()()()()さんよぉ」

 

『····仕事だ。今から位置情報を送る。そこへと速やかに移動し、この男を捕縛してほしい』

 

「それ以外は?」

 

『····生死は問わない』

 

「良いぜ。報酬は何時もの口座な」

 

『分かった。後――』

 

俺は通話終了という画面をタップし、長くなりそうだったので強制的に通話を終わらせる

 

そうして直ぐに通知音と共に日本でも有名なとある高層ビルの住所と共に、厳つい顔つきの男の写真が送られてくる

 

どうやらその男はヤクザの組長であるらしく、どうやらそのビルで怪しい取引をするようだ

 

まぁどうせ取り引きの内容は把握しているのだろうが、態々俺にそれを知らせる必要も無いし、俺もそんなことに微塵も興味が無い

 

 俺はハンガーに掛けてある黒いジャケットと昨日の夜に投げ捨てたまま放置されているシャツとズボンを手に取ろうとするが白い手がそれ拒む。

 俺は内心舌打ちを打ちながら、女の方を見ると悲しそうに目をうるわせ、俺の腕にスリスリと猫がマーキングでもするかのように体を擦り付けてくる

 

 

「おい」

 

「行かないでっ」

 

 懸命に俺を引き留めようと女がそうせがむが、生憎と簡単に大量の金を稼げる数少ない機会を捨ててまでも目の前の女を優先しようとは思わない。

 それどころか最近は無駄な連絡も多く、心底鬱陶しく感じていたのでこの女とはここまでにすることにした

 

俺は目の前の女を苦しくならない程度に、尚且つ力強く抱き締める

 

「俺だってお前といたいさ。だが、()()()()のことを考えるとそうもいかねぇだろ?」

 

そう耳で囁くと何を勘違いしたのか、蕩けるような、心底嬉しそうな笑みを零した後に俺の首筋へと顔を埋め、ハァと熱い恍惚の息を吐いた

 

「そう、あなたも私と同じだったのね····!」

 

「あぁ、だから俺は行かなくちゃいけねぇ」

 

俺は如何にも大事だというように優しく女の手を解き、額に唇を落とした

 

「それに時間ならまた今度作ってやるから、な?」

 

そう言ってやると女は夢心地の様子ながらも俺から手を離した

 

俺は直ぐ様にズボンとシャツ、ジャケットを身に付ける

 

女はそれを熱に浮かされた目でそれを見ている

 

軈て着替え終わり、俺はもう一度女の方へと振り返り、キスをする。何時もの深いものではなく、あくまでも浅く、優しく、甘く。すると女が目を見開いて俺の顔を見るので俺は目尻を少し下げ、申し訳なさそうな顔を作った

 

 

「····ごめんな、それと愛してる」

 

「ッ!私も愛してるわ!!」

 

俺は()()()()()()()()()()()()()()()をポケットに仕舞いつつ、目の前の女の頭を優しく撫でた

 

「じゃあな」

 

そんな一言と共に俺は女の家を出た

 

 

「さてと」

 

俺は手元にあるスマホを取り出し、あの女を着信拒否、ブロックした後にスマホを再度ポケットへと仕舞う

 

「じゃあ行くとするか」

 

そんな声と共に、男の姿はまるで元から無かったかのように()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「援軍、ですか?」

 

「そう!どちらかというと相手側からしたら私達が援軍って感じだね」

 

千束の言葉にたきなは成程と頷いた

 

「では、私達が助ける相手とは···」

 

「それだけど、もう直ぐ来る筈···来たッ」

 

千束は送られてきたメールを開くと、あるのは男の顔写真のみであった

 

 それを隣で見ていたたきなは誰でしょうか····と見覚えのない男の顔に首を傾げるが、千束は顔写真を見た瞬間にまるで凍ったかのように動きを止めた。

 それにたきなは千束と声を掛けようと顔を覗き込むとほぼ同時に千束は勢いよく顔を上げた

 

「まっずーい!!このままじゃ終わっちゃうよ!!」

 

「それはどういう――」

 

たきなが言葉を遮るように車にブレーキがかかる

 

どうやら目的地の高層ビルに到着したらしい

 

「たきな!早く行くよッ!」

 

「っ、そんなに急いでどうしたんですか!それに何処に敵がいるかも分からないのに走るなんて危険です!」

 

たきなは千束の後を追うように非常階段を駆け上がっていくがあることに気が付く、それは推定六十名以上いるとされるにも関わらずにも物音が全く聞こえないこと

 

 

「千束、これは一体·····」

 

「気付いたみたいだね。多分皆殺された」

 

「なッ、こんな短時間にですか!?」

 

「うん。あの人なら()()()()()()

 

「まさか、写真の――『や、やめろォ!!こっちに来るんじゃねぇー!!』!」

 

パンパン!という発砲音と男の恐怖で上擦った声がたきなの声を遮ると、二人は顔を見合わせて最上階へと急いで駆け上がる

 

その間にも複数の男の慌だたしい足音と、銃声は鳴り止まない

 

軈て二人が最上階の非常口へと着く頃には先程迄の騒がしさはまるで嘘のように静まり返っていた

 

それにたきなはゾクリと嫌な感覚が走る

 

 

「開けるよ」

 

「ッ!はい!」

 

千束がバン!と扉を開くと同時に二人は銃を構えて中へと突入しようとするが、二人の目に映ったのは壁中血で彩られた部屋と胸や脳髄から血を垂れ流す無数の死体だった

 

「ッ!」

 

その惨状にたきなは思わず嘔吐きそうになるがそれを堪えて千束と共に足を進める

 

すると奥から男の声が聞こえてくる

 

「ヒィィィ!」

 

千束とたきなは頷き合い、同時に角から身を出し、銃を構える。すると目に入ったのは地面に倒れ、ズルズルと後退りする厳つい顔付きの男と刀を握っているメールで送られてきた顔写真の男、その人であった

 

顔写真の男は目の前の男を殺そうとしているのではなく、ただゆっくりと近付いていくだけであった。だがしかし、たきなの目には後退っている男が小型の拳銃を裾から取り出したのを見た

 

「ッ!危ないッ!!」

 

「死ねぇぇぇ!!」

 

そんなたきなの忠告も虚しく、既に鉛玉は放たれた

 

(このままじゃッ!)

 

たきなは男へと手を伸ばすが当然、弾丸の方が早く、弾丸は男の眉間へと吸い込まれるように近付いていき―――

 

 

 

「遅せぇよ」

 

そんな呟きと共に、素手である男は弾丸を()()()

 

 

「え」

 

 たきなは思わず間抜けな声を洩らすがそれも当たり前のこと。あの至近距離の銃弾を目視することすら有り得ないことであるがそれは隣にいる千束という存在によって最早それは日常茶飯事であった。

 しかし、流石の千束でも体の強度は並の人間そのものである為に銃弾を手で掴もうとすればただでは済まない

 

だが、目の前の男は何の感慨もなくただ当たり前のように怪我をすることも無く銃弾を掴んでみせた

 

「返してやるよ」

 

男がそう言うと手がブレ、次の瞬間には厳つい男の銃が破壊され、男の右手を弾丸が貫いていた

 

「ァァアアアア!!」

 

「さてと、それじゃやるとするか」

 

そう言って男は手を伸ばして――――

 

 

 

 

 

「ストォーープッ!」

 

その腕を千束に腕を掴まれた

 

「あん?」

 

「何してんの!?もう相手に抵抗の意思は無いんだから殺さなくて良いでしょ!」

 

千束がそう言うと男ははぁ?と意味が分からないように呆れた声を出した

 

「別にコイツを殺す気なんてねぇわ。ただ、拘束しようとしただけだわ」

 

「えっ!?」

 

その証拠に男の手には縄が握られており、千束はあちゃあ〜と声を洩らす

 

「うん!ごめんね!!」

 

全く悪そうにせずに笑っている千束の姿に男は溜め息を吐いた

 

「まぁいい。お前らが来たんだ、コイツのことは本職のお前達に任せるわ」

 

ほらよと男が縄を投げ渡し、その場から離れようとする

 

「あ゙ー!待ってよ!!」

 

だが、千束が男の腕を掴んでその場に引き止める

 

「····何だよ」

 

「何で殺したの!別に殺さなくても大丈夫だったでしょ!!」

 

「あん?手加減すんのめんどくせぇんだよ。それなら殺した方がただ振り回すだけだから楽なんだよ」

 

そんな言葉に千束は頬を膨らませ、このぉー!!と男の胸をポカポカと殴りつける

 

「このおたんこなす!ヒモ!鬼畜!女誑し!」

 

「うるせぇ」

 

男が顔を顰めていると漸く気を取り戻したのか、たきながあの····と声を絞り出す

 

「貴方は一体何者なんですか····?」

 

そんなたきなの疑問に千束はあぁと合点がいったようにポンと手をついた

 

「たきなは会ったことないんだもんね」

 

「はい。どうやら千束は面識があるようですが、私にはさっぱり」

 

コホンと千束は態とらしく咳を着く

 

 

「この人の名前は久園甚爾(くえんとうじ)さん!私の命の恩人でもあり、私の体術の先生だよ!!」

 

 






多分続きません

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