個性:クラスターセル 作:鳥松
黒いモヤに覆われ目覚めると、周囲から熱気を感じた。
「ここは…火災ゾーンか…」
「おっさっそく一人来たぜ。可哀想だなぁこんなところで死ぬなんてよ。」
辺りを見回すと自分の周り数十人のヴィランに囲まれていた。
(ヴィラン…でもこれなら好都合。制圧して情報を得られるかもしれない。不思議とこいつらにはあの手だらけヴィランのような異質なものは感じない。これなら勝てるかも。)
一人のヴィランが飛び上がって個性と思われる肥大化した腕で殴りかかってきた。跳田はいつものように飛蝗の形を変化させ、壁を作り攻撃をガードした。だが、跳田は飛蝗の動きに違和感を感じた。
(!?なんか飛蝗の動きが鈍い…?なんで!?)
跳田の個性の飛蝗は形を変えた状態ならいざ知らず飛蝗の形態では高い温度に弱く動きが鈍くなるということを跳田は知らなかった。孤児院に入ってから雄英の入試までろくに個性を使って来なかった跳田にそんなことなど知るよしもない。
まだ戦闘経験の浅い跳田は突然の個性の不調に対応することができず、数が多いヴィランに対して徐々に防戦一方になっていく。
「守ってるだけかァ!嬢ちゃん!」
背後からヴィランが攻撃を仕掛ける。跳田の飛蝗の目には見えていたが飛蝗の動きが鈍く対応できない。
(まずい!)
被弾を覚悟した跳田だったが、その心配は杞憂に終わる。
バシイ!!
「へぶっ!」
どこからか伸びてきた尻尾が背後のヴィランを迎撃してくれた。
「跳田さん!大丈夫!?」
「尾白くん!?ありがとう!助かった!」
尾白君と背中を合わせ、ヴィランの対処について少し話す。
「私の飛蝗は温度が高いところが苦手みたいで動きが鈍くてあんまり戦えない!尾白君は私の後ろをお願い!」
「了解!」
そこから尾白と協力してヴィランを倒し続け、尾白君の協力もあってかなり早く全員を行動不能に出来た。
「ふぅー、終わった…」
「跳田さんがいてくれてよかったよ。思ったより数が多かったから跳田さんがいなかったらやばかったかも。」
「それはこっちのセリフだよ…自分の個性の弱点ぐらい理解しておけばよかった…」
「まあ仕方ないよ。それよりこれからどうするか考えないと。」
「取り敢えずここから出たいかな、また襲われたら対処できる気がしない。」
「そうだね。取り敢えずここから出ようか。」
そう言って二人は火災ゾーンを後にした。
火災ゾーンを出て、先程相澤先生が戦っていた広場を見るとまだ相澤先生が戦っていた。跳田は広場の近くに飛蝗を飛ばし、視覚を共有した。相澤先生は捕縛布と個性を使いヴィランを圧倒していたがその動きはさっき戦っていたところを見ると大分疲弊しているようだった。
「やっぱりすごいね…相澤先生。」
尾白君がそう言うが跳田は素直に返事できなかった。しばらく相澤先生がヴィランの相手をしていると手だらけのヴィランが相澤先生に向かって攻撃を仕掛ける。相澤先生は動きに合わせ肘鉄を喰らわせたと思うと、相澤先生がヴィランから離れた。相澤先生の様子を見ると肘が崩れていた。
(肘が崩れてる…?触れた物を崩れさせる個性…?)
跳田がそんなことを思ったとほぼ同時期。黒い大柄の脳ミソがはだけているヴィランが相澤先生の背後にまわったかと思うと、一瞬で相澤先生を組み伏せまるで小枝でも折るかのように腕をへし折った。
「え…相澤先生…」
相澤先生が組み伏せられ、あまり動かなくなったころ。手だらけのヴィランがふと近くの水辺の辺りに目を向けた。跳田も目を向けたそのとき、水辺に緑谷君たちがいた。
(まずい!なんであんなところに!)
ここから広場の水辺までは走っても絶対間に合わない。でもこのままではあの3人は手だらけのヴィランに触れられ、一瞬で崩れてしまうだろう。
跳田は咄嗟に自分の出せる最高速で飛蝗を飛ばすと同時に走りだす。だが、それでも間に合わず、ヴィランの手は梅雨ちゃんに触れられてしまう。そのとき跳田は明確に梅雨ちゃんの死をイメージしたがそのまま梅雨ちゃんは崩れることはなかった。
「ほんっと…カッコいいぜ…イレイザーヘッド…」
相澤先生が個性を消してくれたようで梅雨ちゃんが崩れることはなかった。だが、安心してる暇はない。相澤先生の個性がいつ切れるかわからない。跳田は手だらけのヴィランと梅雨ちゃんの間に棘を作り、ヴィランの腕目掛けて攻撃した。
「跳田さん!?」
「三人とも早く逃げて!」
攻撃したは避けられてしまったが、三人と距離をとらせることは出来た。跳田は三人の前に立ち塞がった。
「やるなぁ…さすがヒーローの卵。いい個性を持ってる…」
「三人とも早く出口のほうに行って。決して振り返らずに、全力で走って。」
「えっ?でも跳田さんは…」
「緑谷ぁ!早く行こうぜぇ!行けって言われてるんだからよォ!」
泣きながら峰田君が緑谷君に掴みかかって言う。セリフを聞いただけなら情けないことこの上ないが、今回ばかりは従うしかない。
「峰田君の言う通りだよ。緑谷君早く。梅雨ちゃんも。」
「うっうん。」 「ケロ…」
二人とも終始呆気とられていたが、最後には跳田に従い、走り出した。
「逃がすか。」
手だらけのヴィランが三人を襲おうとするがそれは金属の壁に阻まれた。
「させるわけないでしょ。そんなこと承知であんなこと言ったんだから。」
「へぇ…最初の攻撃のときに周囲に飛ばしてたのかそちっこいの。やるなぁ。さすが雄英だ。」
「意外とお喋りなんだ。ヴィランになるぐらいだから卑屈なんだと思ってた。」
「そんなの人それぞれさ!俺みたいにお喋りなやつもいれば話さないやつも、なんなら喋れないやつもいるよ。」
「そう。それなら認識を改めないと。」
「それは良かった!じゃあもっと語り合おう!」
「あんたみたいなやつと話すことなんてもうないよ。」
「それはひどいなぁ!こいつとも話してあげてくれよ!」
「脳無!」
「やれ、飛蝗!」
相澤先生を行動不能にした大柄のヴィランがこちらに攻撃しようと向かってくる。
(速い!)
ガアァン!!!
跳田は脳無と呼ばれた怪人の攻撃を飛蝗の目をフルに使い何とかガードした。
(おっっっも…!これ以上受けると割られるっ…!でもっ後ろががら空きっ…)
脳無の背後から棘を作りだし、脳無の背中に刺した。致命傷ではないはずだが、動けば出血多量で死ぬ、十分な傷。脳無は地面に倒れ動かなくなった。跳田はこれ以上動かないと判断したが、念のため足にも棘を刺し、さらに動けないようにした。
「まずは一人。次はあんただよ。」
「やるなあ!すごいなあ!そいつの攻撃を防ぐなんて!」
「でも、油断はいけない。」
そう言われ跳田が振り向いた瞬間、自分の背後から頭に向かって、黒い拳が飛んできた。跳田は念のため脳無を飛蝗で視認していたためなんとか、自分の頬に壁を張れた。だが時間がなく、薄く、小さいものしか作れなかった。
「ぶっ」
結果、脳無の攻撃を顔に受け、遠くにふっ飛んだ。跳田はやがて壁に激突し、動かなくなった。そこにいたヴィランは全員、もう息はないとそう思った。
「あ…う…」
息はあった。まだ死んではいない。だが、このままではすぐに消えゆく命だろう。
(やばい…死ぬ。このままじゃ送りだした三人も…相澤先生も…ほかの皆も全員…)
(なら……自分が死んで、他の人が死ぬなら…死ぬのは………)
私だけでいい。
(いつも…いつも聞こえるこの声に、私が抑え込まないすぐ暴れようとする飛蝗どもに…身を任せて…ヴィラン全員…殺してから…死んでやる…)
殺セ…殺セ…滅亡セヨ…
(ああ、存分に殺れ…あのデカブツと手だらけのイカれた野郎と黒モヤを…殺す気で…やれ…あいつら…が…二度と…動けなく…なる…く…ら…い…)
「おーおー!派手に吹っ飛んだなァ。早速一人。」
そのとき、煙の中からマリオネットのようにゆらりと人影が立ち上がる。
「まじかよ、どんだけしぶといんだよ…まあいいや。脳無、やれ。」
手だらけの男が大柄のヴィランにトドメをさすよう指示を出す。だが余裕の面持ちのヴィランに予想外のことが起きる。
ドヒュン!
煙の中から足にバネでも入っているかのような跳躍力ヴィランの元に一気に接近し、脳無の顔めがけて蹴りを喰らわせた。
だが、脳無の顔は少し仰け反るだけでまるで効いていない。脳無は跳田の足を掴み、そのまま吊し上げた。
「は、はっははっ、本当にしぶといなまだそんな動きができるなんて…」
ヴィランは突然のことだったため、心底動揺しているようだったが、すぐに我を取り戻し軽口を叩いた。
だが、跳田もこのままでは終わらない。瞬時に掴んでいる脳無の腕を切り落とせるように棘を作り出し、一斉に脳無の腕に突き刺して脳無の腕を切り落とした。
跳田は自由を取り戻し、そのままヴィランと距離を取る。
ヴィランは切り落とされた腕を再生させた。気づけば背中の傷も完全になくなっている。ヴィランたちは跳田のほうを見つめる。跳田の目は赤くなっているが虚ろなままで顔は俯いていた。
ヴィランが傷の再生を終えた。だが跳田はヴィランの方を一切目に入れず、俯いたままだった。
「やれ、脳無。今度は確実に殺せ。」
脳無が跳田に飛び掛かり、黒い拳で殴りかかってきた。だが、跳田は再びこれをガード。今度は背後からだけではなく、前や横などのヴィランの四方八方から棘を作り、攻撃した。その攻撃は先程のように急所をはずした攻撃ではなく、心臓や首などを狙い確実に殺す攻撃。
「おいおい!こいつじゃなかったら死んでるぜ!?動け脳無!早くあいつを殺せ!…脳無!?」
既に脳無に刺さっていた棘はなくなり、先程のように傷を再生すれば自由に動けるはずだったが、脳無は自分の思うように体が動かなかった。
「なんだ!?どうした脳無!?」
その時、脳無の体から飛蝗が皮膚や内臓を食い破って飛び出した。
先程跳田は棘を抜くのと同時に数十匹の飛蝗を脳無の体の中に残していた。体に残った飛蝗は体の中を食い荒らし、刺された急所を重点的に脳無の体を食い荒らしている。複数の位置を継続的に食い荒らしているため再生にも時間がかかる。再生に体力を消費し、脳無は動く体力も失っていく。
「これは…バッタ!?あいつのか!くそ!」
手だらけのヴィランが跳田の方に向かい、手を触れようとする。だが、跳田は棘を作り、これを迎撃しようとする。このままいけば確実にヴィランを殺してしまうだろう。
「死柄木弔!」
黒いモヤが手だらけのヴィランの前に出現し、そのモヤに入った手だらけのヴィランはそのまま消え、黒いモヤの近くにまたでてきた。
「黒霧!なんで邪魔した!」
「あのままでは確実に死んでいました。しかし、あの個性…どこかで…」
「あぁ!クソッ!平和の象徴を殺すための脳無がこんなガキ一人に…!」
ヴィランはイラつきを隠せないのか、自分の首もとをかきむしる。
「……。」
跳田は脳無に向かって跳躍し、脳無の目の前に飛蝗をばら撒く。その飛蝗の形を円錐を形に変え、そこに飛び込む形の飛び蹴りを放つ。
「脳無!」
脳無は、両腕で蹴りを受け止めるように構えた。が、作り出した円錐はドリルのように回転し、脳無の腕を削り取る。
跳田は蹴りを放っている間も飛蝗の操作を止めない。脳無の周りに棘を作り出し、脳無に刺す。脳無は腕を重点的に攻撃され、蹴りを受け止め切れない。
そして、ついに跳田の蹴りは脳無の腕を突破した。脳無の上半身は大きく削れ、血が吹き出した。脳無はそのまま膝をついて倒れ、動かなくなった。死んではいない。その証拠に既に体の再生が始まっている。だが、それは先程と比べるとかなり遅い。
跳田は脳無がまだ生きていると、判断すると、間髪入れずに剥き出しの脳を潰そうと棘を作る。だが、それが放たれることはなかった。
「ごふっ!」
突然跳田は血を吐き、膝から崩れ落ちる。棘は形を維持できず、飛蝗に戻る。そんな隙をヴィランは見逃さない。
(今なら、殺れる!)
死柄木は跳田に触れようと走る。跳田は未だ下を向いたまま。飛蝗も一匹も出していない。
死柄木が跳田に触れようとした瞬間、
バシイ!
「ごめん!跳田さん!遅くなった!」
尾白君が死柄木の頭に尻尾を使って攻撃した。死柄木の手は跳田に触れることはなかった。
「あぁ!次から次へとなんなんだよ!ムカつくなあ!」
「ごめん、跳田さん。俺はあの戦いについていけなくて…俺がもっと早く来ていればこんなことには…ごめん…。」
「お…………じ……ろ………く………ん………」
「大丈夫、あとは任せて。絶対死なせないから。」
「脳無ゥゥゥゥゥゥ!いつまで寝てんだァ!早く起きてガキ共を殺せェ!」
先程まで床に突っ伏していた脳無は立ち上がり、尾白君に向かって走った。その時
バァン!
出口が吹き飛ぶ。煙の中から一人の大柄のヒーローが現れた。
「もう大丈夫。私が来た。」
尾白君がめっちゃイケメンになっちゃった…。戦闘描写わかるかな…これ。結構エグい攻撃ばっかやらせちゃったなあ。タグ付け足したほうがいいかな…。
今回わかった跳田ちゃんの個性。
·飛蝗は高温度や火に弱い
·悪意センサー
火に弱いということはそういうことです。頑張れ、轟君。
解説コーナー
脳無の体の中を飛蝗が食い荒らす攻撃。
映画REALTIMEにて社長がエス戦で行った戦法。相手は人間ではなかったがこの小説では脳無に容赦なく使用。書いてて死なないのかな。とか思ってました。
円錐を形に変え、そこに飛び込む形の飛び蹴りを放つ。
みんな大好きメタルライジングインパクト。ドリルみたいに円錐が回転するのでこちらも人間に使うとやばいことになる。
脳無の再生力について
個性『再生』がどこまで作用するかわからないので脳無がすごいしぶといですが、ヒロアカの最終章を見ているとかなり重症でも大丈夫なよう。この小説では脳を全損させられない限り再生するようにしました。
まだ先のことですが、インターン先をどうしようか迷ってます。