個性:クラスターセル 作:鳥松
唐突に技解説。
塩崎戦で使用したインパクト。パンチする時と同じ原理だが、こちらは手のひらだけで行い、軽い衝撃を与える技となっている。当然、パンチより威力は落ちる。
跳田は準決勝に行くためステージに向かっていた。
(さあ、行こう。この作戦なら多分大丈夫なはず…)
次の試合について考えていると戦いの場となるステージに着いた。
『さあ、サクサク行くぞ!準決!完封マン跳田バーサス!瞬殺マン轟!!』
プレゼントマイクの放送と共に両者がステージへと並び立つ。跳田は冷静な顔で轟を見ていたが、当の本人の轟の目には少し迷いが見て取れた。
「轟君」
「…なんだ」
「私にも左の熱、使ってください。」
「…なんでだ」
「緑谷君の言葉を聞いて決心しました。私も一切の容赦なく本気で、轟君を叩き潰します。だからあなたも本気で容赦なく戦ってください。」
「それは……ダメだ……俺は…戦闘では絶対左は使わねぇ…」
「そうですか…ならこれまでと同じように右の氷結だけで戦うんですね。わかりました。でもこれだけは言っておきます。右だけではあなたはエンデヴァーの足元にも及ばない。」
「…テメェ…!」
『スタート!!!』
(跳田の言ってたことは気になるが、今は試合に…!)
轟は開始と同時に氷結で跳田を攻撃した。その時轟は跳田の顔が一瞬目に写った。その顔は失望したかのようなそんな顔だった。
「終わりですね…轟君。」
轟の氷結は跳田の体を全て覆い隠し、ステージの半分を氷結で覆った。
『瞬殺マン、轟!跳田を一瞬で凍り漬けにィ!いきなり勝負決まったか!?』
瞬間、轟の出した氷結から鋼の棘が無数に色んな箇所から飛び出す。
『おォ!?なんだ!?棘!?跳田の仕業かぁ!?まだまだ勝負は決まってないようだ!』
「寒い…けどもう左を使わないと勝ち目ないよ、轟君。」
跳田が暗い氷の中で呟くと手のひらから飛蝗を出し、先程棘で開けた穴に飛蝗を向かわせ命令する。
「行け、飛蝗。轟君を攻撃しろ、死なない程度に。」
『これは!?跳田のバッタが穴から飛び出して来た!?』
跳田から放たれた飛蝗はその鋼の肉体を使い轟に突進を繰り返し、轟に確実にダメージを与えていた。
(ぐっ…あの言葉はそういう意味か!氷結じゃあこのバッタを対処仕切れねえし、跳田自身を叩こうにも氷の中に籠られると氷結だと攻撃出来ない…!)
『A組、跳田!轟の氷結を完全に逆手に取って安全圏から一方的な攻撃だァ!容赦ねー!』
(考えろ…!どうすれば…どのみちこのままじゃ気絶するまでずっとこのまま…!とりあえず時間を…!)
轟は自分の周囲に氷結で囲んで飛蝗の攻撃を防ぐ。だが、
「無駄ですよ、轟君。」
「っ!?」
壁の外から轟のいる内側に棘が飛び出した。棘の先は尖っておらず丸まっており、轟に深刻なダメージを与えることはなかったが、それでも轟の動きは確実に止まる。その間にも棘は容赦なく内側にいる轟を攻撃し、無数の棘で轟を串刺しにした。
『あー!?轟の守りをものともしない跳田の攻撃!まじで容赦ないな!?大丈夫か轟!』
轟を覆っていた氷は跳田の攻撃で完全に砕け、中から轟が姿を見せた。
「ガハッ…」
轟はなんとか意識は保っており、倒れたそうになったがなんとか踏みとどまった。
「さすがにしぶといですね…そろそろ使わないと負けますよ。」
「まあ、容赦しませんが。」
「ドッペル。」
跳田が呟くと轟君の近くにいた飛蝗が轟君の正面に集まり、何かを形づくる。
『おお?跳田の飛蝗がまた何かを…これは…跳田…?まさかバッタで自分の分身を作ったのかァ!?』
「やれ、ぶっ飛ばせ。」
跳田が作った分身はかなりの高さまで跳躍し、轟に向けて飛び蹴りを繰り出す。
(くそ…このまま…だと…負ける…)
《あなたはエンデヴァーの足元にも及ばない》
(俺はあいつを…!)
その時脳裏によぎるのは父親、No.2ヒーローエンデヴァーの顔。
《君の!!力じゃないか!!》
(あいつを…このまま負けるくらいなら…俺も本気で…!)
《全力でかかってこい!!》
(全力で…!!)
轟の左半身から炎が飛び出した。
「うおおおおおおお!!」
轟は炎を上空にいる跳田の分身に向けて放出し、緑谷戦でも見せた爆風を起こした。
スタジアム全体に広がる爆風。緑谷戦のようなぶつかり合いがないぶん威力は抑え目だったが人一人を吹き飛ばすには十分なくらいだった。
「はっ…!はっ…!」
煙の中から現れた轟はフラフラで立っているのがやっとの状態だった。一方、跳田の方は跳田を守っていた氷はバラバラに砕けちっており、誰もが緑谷戦と同じように轟の勝ちだと思った。がその時、
「ありがとうございます、轟君。本気できてくれて。」
「でもここからが本番です。」
跳田の分身は破壊されたが本人は氷と作った壁のおかげで未だ健在だった。
『何ぃ!?轟の爆風を食らって未だ無傷!?どういうことだァ!?』
『轟の氷と自分の作った壁で防いだな…これらも全部予測して作戦を考えたなら轟の戦いを見てかなり勉強したと見える』
跳田は間髪入れず飛蝗を出し、轟を攻撃する。
「くそっ…!」
轟も負けじと炎で飛蝗を攻撃するが、それでは防ぎきれないほどの飛蝗の物量。先程までの戦闘で疲労困憊の轟には対処しきれなかった。轟に襲い掛かるのは飛蝗の大群。
「ぐっ…ぁ…!おおぉっ!」
轟の左半身から炎が吹き出し飛蝗を散らす。飛蝗は熱に弱く、炎に近付けない。
「さすがに炎には勝てないか……でも次で終わらせる。」
跳田はそう言うと3メートルほど跳躍し、轟に向けて飛び蹴りを放つ。
「ライジングインパクト」
轟も炎で跳田を攻撃しようとするが、先程の傷の痛みのせいか膝から崩れおちる。
「がっ…」
轟に跳田の飛び蹴りが直撃する。スプリングによって強化されたその蹴りは轟を容易くステージ場外へ吹き飛ばし、轟を壁に激突させた。
「ガハッ……!」
「轟君場外!跳田さん決勝戦進出!」
「えぐいな…」 「あれはさすがに…」
今までの試合の終わりと違い、ざわざわとした声が聞こえるだけで歓声はなかった。
「初めから炎を使ってたら勝負はわからなかったかな…おっと…さすがに…ドッペルはやり過ぎたかな…」
跳田の鼻から血が流れる。飛蝗を大量に変化させて分身を作るドッペル。体育祭の準備の過程で手に入れた新技。だが、分身を作るには跳田の出せる上限の飛蝗の半分を必要とする。制御するには多大な体力を使うため長くは持たず、一体以上は作れない、また複雑な動きも出来ない。不便。
「ありがとう轟君。」
跳田は少しふらつきながらステージの外へと歩いていった。意識のない轟は担架で運ばれていった。会場は騒然としたまま次の試合がはじまった。
『まァ…うん…次の試合行こっか…』
『ちゃんとやれよ。』
『じゃあ気を取り直して!次の試合行くぞォ!常闇バーサス爆豪!……………』
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跳田が控え室に戻ろうと歩いていると…
「おォ、いたいた。」
「…エンデヴァー。」
そこにはNO.2ヒーローエンデヴァーがいた。こうして目の前に立つとかなりの威圧感だ。
「先程の試合、見させてもらった。感謝しておこう、あいつもこれで子供じみた駄々を捨てて覇道を歩んでいくだろう。」
「…そうですね。確かに私は轟君に炎を使わせようとしました。でも決してあなたのためじゃない。」
「ほう…」
「…私はUSJで脳無と戦いました、そこで経験したんです。死を。リアルな死の予感。あの脳無はオールマイト並みのスピードとパワーを持っていた。私が生きているのはA組の皆のおかげです。」
「あの時私以外が戦っていれば確実に誰か死んでた。轟君だって…だからこのまま氷結だけでヒーローになれば確実にいつか限界がくる。だから多少無理矢理にでも左側を使わせたかった。」
「…結果オーライ、と言うやつかな君のおかげで焦凍は左を二度も使った。感謝するよ。」
「……それには及びません。」
「何…?」
「轟君はきっと私が何もしなくても左を使うようになってました。その感謝なら緑谷君に言ってください。」
そういい放ち跳田はエンデヴァーの前から立ち去る。エンデヴァーは顔しかめて立ち去る跳田の後ろ姿を眺めていた。
跳田ちゃんが一気にクールキャラみたいに…跳田先輩マジ容赦なさすぎてヤベェッス…。
跳田先輩の作戦について補足解説です。
今回、跳田ちゃんは轟君に左を使わせるためにこんなことを考えてました。
1.試合開始前に煽る。
2.氷結では勝てないと思わせる。
以上2つのことを考えていました。ちなみに轟君と跳田ちゃんの相性ですが、轟君が氷結だけなら轟君は自分で氷を壊せないので絶対勝てません。でも炎を使えば結構楽に勝てます。極端ですね。
最近のヒロアカの話見て思うのですが、轟君…無理や…氷結だけでNo.1は絶対無理や…
今回の跳田ちゃんですが、もちろん本気の戦いをしたい気持ちもありましたが、割合で言えばエンデヴァーに話した理由のほうが大きいです。