個性:クラスターセル 作:鳥松
常闇vs爆豪の試合が始まった頃、跳田は試合を観客席で見ることはせず、控え室で待機していた。スタジアムの歓声が控え室にまで聞こえてきており試合の熱狂ぶりがわかる。すると控え室のドアからノックが聞こえた。
「ちょっといいか、跳田。」
「轟君?どうぞ…?」
轟がドアを開け、跳田のいる控え室へと足を踏み入れる。轟の体には包帯やらガーゼなどが付いていた。跳田が体のことを心配する間もなく轟は話を始めた。
「さっきの試合のことだ。」
「もしかして試合前のことでしょうか…?それに関しては私も謝りたいと思っていたところでした。」
「それはいいんだ…事実だからな…。俺は親父の力を使わずにNo.1になって親父を否定しようとしてた。だからお前と緑谷の試合でも左側を使わないようにしてた。でも、お前と緑谷と戦った時、初めて自分を曲げた。」
「なんでかわかんねぇけどお前も緑谷も俺に左を、全力を出させようとしてた。だからわかんねぇから聞く。なんでだ、緑谷もお前もなんで。」
轟自身も色々考えていたのだろう。もしかしたら聞いてはいけないことだったかも知れないが、轟はどうしても知っておきたかった。緑谷はボロボロになってまで。跳田は自分に負担のかかる戦い方をして左を使わせようとした。この真意を轟は知っておきたかった。
「私は…もちろん、あなたと本気で戦いたかったのもありますが…一番は緑谷君のためです。」
跳田は落ち着いた表情でそれをいい放った。
「緑谷…?」
「私のことを話す前に緑谷君のことを話しましょうか。」
「緑谷君は轟君を救おうとしてやったと思います。ボロボロになっても、大きなお世話だったとしても、緑谷君は本気で轟君を救おうとしてました。勝敗を抜きにしてもあなたのことを放っておけなかったのでしょう。」
少し間をおいて跳田は続けた。
「轟君は負けたくない。一番になりたい。左を使おうとした時、そう考えたはずです。私も試合の時は勝つことを第一に考えてます。」
「でも緑谷君はあの時勝敗の他に轟君を父親の呪縛から解放してあげようとしてました。」
「だから緑谷君の言葉を轟君には無視してほしくなかった。あなたの氷結を逆手にとった戦法をしたのはそういう理由があったからです。」
「轟君。あなたが緑谷君の言葉を一蹴するのは自由です。でも、どうか忘れないでほしい。強引でも、ボロボロになってでもあなたを救おうとした人がいるってことを。」
「………わかった。ありがとな、跳田。」
「いえ、お礼なら緑谷君に言ってあげて下さい。」
「わかった。じゃあ…」
バァン!!!
突然、ドアが勢いよく開けられた。何事かと思い跳田はドアの方を見る。
「あ?」
ドアを蹴破った張本人は爆豪だった。ここが自分の控え室だと勘違いしているようで控え室に二人の人物がいて混乱しているようだ。
「あれ!?なんでてめェらがここに…控え室…あ、ここ2の方かクソが!」
「じゃあ、跳田、またな。」
「え?あ、はい」
轟は何事もなかったかのように控え室を出ようとして跳田に声をかけた。跳田は轟の反応に素で驚き、ツッコむことすら出来なかった。
「おい!ちょっと待て半分野郎!どこ行くんだてめェ!」
「緑谷んとこだ。お前も来るか?」
「誰があんなクソナードのところになんか行くか!どういう思考回路してんだてめェ!」
轟の見事なスルーを爆豪が見逃すはずもなく、案の定爆豪に引き留められてしまった。二人の会話はまるでコントのようで跳田の口からもつい笑みがこぼれた。
「ぷっ…くくっ…っ…」
「何笑ってんだバッタ女ァ!ぶっ殺すぞてめェ!」
「だって…w…ハハッ…w」
「そんなに面白かったか…?」
「誰のせいだと思ってんだ半分野郎!」
ひとしきり笑った後、轟は緑谷のもとへと向かい、控え室には爆豪と跳田だけが残った。
「…本気で来いよ、決勝戦。そいつを上から捩じ伏せてやる。」
「言われなくても本気でやりますよ。誰かさんのおかげで緊張も解れましたし。」
「うっせぇ!」
長かった体育祭もついにクライマックス。跳田がステージに入ると大きな歓声が聞こえる。決勝戦ということで観客も大いに盛り上がっているようだ。
『さあ!早速やるぜぇ!決勝戦!体育祭最後のバトルだぁ!盛り上がっていこう!』
体育祭の決勝戦、どちらかが降伏するか動けなくなるまで続く対決。その対決を直前にして二人は、
笑っていた。
一人は目の前の実力者に対し、一人は戦いの優越に浸って笑う。二人は向かい合い笑いながらその戦いの火蓋が切られる。
『スタート!!』
爆豪は手のひらから爆発を起こし、跳田に急接近する。爆豪が考えた跳田への対策、それは跳田が飛蝗を展開する隙を与えず超近距離戦へ持ち込むこと。
爆豪の個性と飛蝗の相性はメタではないが悪くはない。だが中、遠距離戦は完全に跳田に分がある。だが、攻防一体となった跳田の個性に爆豪は明確な弱点を見つけていた。
それは個性による攻撃や防御が自動ではなく跳田が操作しているということ。前の3試合でも跳田はかなり多くの飛蝗を操作しており、それに加え飛蝗の形を操作し、攻撃や防御をしている。何千と言える飛蝗を操作する体や脳への負担はかなり大きいと爆豪は判断した。証拠に轟戦の後に跳田はよろけ、鼻血を出していた。
ならば攻撃を防がれない距離で考える暇を与えずに戦う。それが爆豪が考えた対策。飯田戦で見せたパンチは威力はあったがスピードは見切れないほどではない。
「かはっ…」
近距離からの息つく間もない連撃、跳田でも攻撃を防ぎきれない。
『あぁーー!爆豪、絶え間ない攻撃で跳田に爆破を与えたぁ!さすがに防ぎきれなかったかぁ!?』
『……よく研究してるな。戦う度にどんどんセンスが光ってるよ、あいつは。』
(っ…棘を使って引き離してもまた纏わりついてくるっ…ならっ…)
跳田は爆豪に向け拳を繰り出す。しかし爆豪には見切られ、逆に腕を掴まれてしまう。
「おせぇ。」
BOOOM!!!
腕を掴んだまま爆豪は跳田の腕に爆発を与える。
「痛っ…たいな!」
跳田は爆豪を引き離そうとするどころか逆に爆豪の腕を掴む。
「なろ…っ!」
爆豪は手のひらから爆発を起こし跳田の顔に攻撃した。
『あぁーー!?顔にクリーンヒットォ!』
だが、煙の中から跳田の手が飛び出し、爆豪の首を掴んだ。
「っ!?」
煙の中から出た跳田の目は少し赤みがかっていた。
跳田は飛蝗を体から出すと棘を作って爆豪に連撃を与える。連撃を加えている間に一際大きな棘を作って爆豪を攻撃し、爆豪をステージの端へ吹き飛ばした。
「がっ…」
(どうなってんだ…!まともに喰らったはずだ…なんであんな…っ!?)
爆豪を無数の棘が襲い、爆豪はそれを紙一重で避けた。
「くっそがっ…!」
『跳田の猛攻で爆豪近付けないー!さっきとは立場逆転だぁ!』
(近付けねぇ…!全方位から的確にこっちを攻撃しやがる…やっぱ強ぇ…最大火力でぶっ飛ばすしか…!)
「楽しいですね、爆豪君。本気の戦いは。」
跳田はにやけながら爆豪に向けて話す。
「…!やっぱ…イカれてんな…てめェ…」
「でもそろそろ幕引きです。」
「あぁ…!?」
「ドッペル」
跳田は分身を作り、攻撃の命令を出す。分身は跳躍して爆豪に向けて飛び蹴りの姿勢を作った。
「舐めんな…っ!」
BOOOOM!!
麗日戦で見せた最大火力で爆豪は分身を攻撃し、分身はバラバラになってもとの飛蝗に戻った。爆豪の腕は反動で震えていた。
しかしそれだけでは終わらない。飛蝗は棘に変化し、爆豪の周囲に突き刺さって爆豪を閉じ込めた。
「んなもん…!がっ…!?」
動けない爆豪に対し跳田はさらに追い討ちをかけ、さらに棘を作って爆豪を攻撃する。
『跳田、動けない爆豪にさらなる追い討ち!やっぱり容赦ねー!!』
「ぬぅあああああ!!」
爆豪は自分の周りに大きな爆発を起こし、周りの棘を全て破壊した。そのまま跳田に爆発を起こして急接近した。
「やっぱり、すごいよ!爆豪君!」
「あああああ!!」
お互い右手を突き出し、跳田は殴り、爆豪は爆破した。
「はっ…」 「ガハッ!」
「もっと!!戦おう!」
跳田は爆発などものともせず、両手で爆豪を殴り続けた。
「心が躍るなあっ!」
爆豪を殴り飛ばす。このとき跳田は明確に、そしてはっきりと戦いの優越を感じていた。
さらなる追撃を加えようと跳躍で爆豪に接近し、爆豪を蹴り飛ばそうとするが…
「あ…?きゅ…う…に…眠…?」
跳田は急に糸が切れたように倒れた。
「爆豪君、行動不能!よって跳田さんの勝利!」
「以上で全ての競技が終了!今年度雄英体育祭1年、優勝は…A組、跳田桐子!!」
ちょっと久しぶりに書いたからダメかも…。まあ本番は神野だからね、未来の私が何とかしてくれるでしょう。こういう展開も全部伏線って言えばなんとかなるってそれ一番言われてるから!もともと主人公の心をボキボキに折りたいから作った小説だから今は好きにしてもらいます。
次回は表彰式とヒーローネーム決めまでです。ヒーローネーム、何にしようかなっ!