個性:クラスターセル   作:鳥松

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明けましておめでとうございます!


地獄の林間合宿編(1)皆でハイキング

 

先日の期末試験の演習試験で赤点者は出たものの、相澤先生の合理的虚偽により、全員で林間合宿に行けることが決定した。

というわけでA組の皆と林間合宿のためショッピングモールに買い物に出掛けていた、しかし、そこで遭遇したのは敵連合のリーダー的立ち位置である死柄木弔だった。

 

 

「……とまあ、こんなことがあって、ヴィランの動きを警戒し、例年使わせて頂いている合宿先を急遽キャンセル。行き先は当日まで明かさない運びとなった」

 

 

「「「えーーー!!」」」

 

 

「もう親に言っちゃってるよ…」

 

 

「故にですわね…話が誰にどう伝わっているか学校が把握出来ませんもの」

 

 

「てことは配られたしおりの日程は変更ってことですか…」

 

 

 

突如として変更された合宿日程、まあ直前の出来事を考えれば当然であるが楽しみにしていた生徒たちからすれば少しショックである。

 

 

こうして前期は最後の最後まで濃密な出来事を残しながら終わりを迎え、夏休みへと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして来たる日、林間合宿当日。

 

 

「え?A組に補習者いるの?つまり赤点取った人がいるってこと?ええ!?おかしくない!?おかしくない!?A組はB組よりずっと優秀なハズなのにぃ!?あれれれれぇ!?」

 

 

 

合宿場へと向かうバスの前にはA組とB組の生徒計40人が集合していた。そこで、B組の物間は大声でA組を煽る。すかさずB組の姉御的存在である拳藤が物間の首に手刀を入れ、謝りながら連行していった。体育祭で観客席にいなかったりした跳田は物間と遭遇するタイミングがなく、彼の存在を知らないままだった。

 

 

「誰かあの人に何かしたんですか?すごい目の敵にされてますけど…」

 

 

「あー…あんまり気にしなくていいんじゃねぇかな」

 

 

「A組のバスはこっちだ!席順に並びたまえ!」

 

 

委員長である飯田の指令が聞こえたので跳田もそそくさとバスへと乗り込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一時間後に一回止まる」

 

 

林間合宿へと出発したバスは目的地へと進んでいき、現在通常通り運行している状態だった。しかし、現役高校生が大人数で乗り込んでいるバスなどうるさくないはずがなく、相澤が顔をしかめるほど騒がしい空間と化していた。

一方そのころ跳田はと言うと…

 

 

「い、一時間後……耐えられるかな…うっぷ…」

 

 

「吐かないでよ、バスが地獄と化すから」

 

 

「そうはいっても…うっぷ…怪しいかも…しれません…」

 

 

跳田は絶賛車酔いでダウンしており、騒ぐ余裕など一切なかった。元々普通の車でも車酔いはしてはいたがここまでひどくはなかった。現在、耳郞に看病(?)されている跳田の顔は真っ青であり、普段との違いを表していた。

 

 

 

そして一時間後………

 

 

 

「うええええぇ~…」

 

 

バスが止まった場所の片隅で跳田は胃の中の物を全て身体の外に排出していた。左には個性で酔うことがしょっちゅうある麗日が様子を見ており、右には耳郞が背中をさすっている。

 

 

「全部吐いちゃいな、そのほうが楽になるぞ」

 

 

「手のひらと手首に酔いを抑えるツボがあってね、こことここの…」

 

 

「あっありがとうございます…うっ…おえええぇ~…」

 

 

「よしよし、落ち着くまで待ってやるからゆっくりな」

 

 

その後3分くらいで酔いから落ち着いた跳田は無事、他のA組生徒が集まっている所へと復帰した。

 

 

「皆様、お待たせいたしました…」

 

 

「気にするな跳田、それじゃあそろそろ…」

 

 

「よーし、そろそろいいかイレイザー!」

 

 

「お待たせしました。お願いします」

 

 

 

相澤が頭を下げて挨拶すると、猫っぽいコスチュームを着ている女性たちはニヤリと笑う。

 

 

 

『煌めく眼でロックオン!キュートにキャットにスティンガー!ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!』

 

 

 

 ビシッとポーズと口上を決めたプッシーキャッツの二人、マンダレイとピクシーボブに対して、ポカンと呆けるA組の面々。いや、緑谷だけは興奮したように彼女等の事を口早に説明してくれた。彼女等は4人一組で連名事務所を構えるプロヒーロー集団『ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ』。山岳救助等に長け、キャリアは今年で12年。ヒーローランキングは32位というベテランヒーローたちだ。

 

 

 

「今回お世話になるプロヒーロー、プッシーキャッツの皆さんだ」

 

 

「よろしくねー!」

 

 

「という訳でここら一帯は私たちの所有地なんだけどね、あんたらの宿泊施設はあの山の麓ね」

 

 

「「「遠っ!」」」

 

 

マンダレイが指したのは跳田たちがいるところから遥か遠くの場所であった。

 

 

「じゃあなんでこんな中途半端なとこに…」

 

 

「いやいや…」

 

 

「バス…戻ろうか…な?早く」

 

 

生徒たちがざわつき始める。これから始まることを多くの生徒は察し始めたようだ。

 

 

 

「今は午前9時30分。そうね、早ければ12時前後かしらん」

 

 

 

 

 マンダレイのその言葉で予感は確信に変わった。生徒たちは顔を青くしてバスへと駆け出す。

 

 

 

「戻ろう!」

 

 

 

「バスに戻れ!早く!」

 

 

 

「12時30分までに辿り着けなかったキティはお昼抜きね」

 

 

 

「悪いね諸君。合宿はもう始まっている」

 

 

 

 突如として足下が蠢いた。生徒たちを包み込むかのように土が隆起すると、雪崩れのように崖下へと押し流していく。跳田も跳躍で逃げようとするが個性が発動出来ずそのまま崖下へ落ちていった。

 

 

土砂に流され崖下へ落ちるとマンダレイから声がかけられる。

 

 

「所有地につき個性の使用は自由だよ!今から三時間!自分の足で施設までおいでませ!」

 

 

 

マンダレイはここを魔獣の森と呼んでいたが理由はすぐにわかった。草木をかき分けて、まさしく〝魔獣〟と呼ぶにふさわしい巨大なモンスターが現れたからだ。

 

甲司くんの個性で操ることができなかったため、魔獣が動物でないことは間違いなかった。つまり、先程のように土砂を操作していたピクシーボブの個性だろう。

 

 

「まあとりあえず進みましょうか。ここで止まっていても始まりません」

 

 

「ですわね…」

 

 

「まあ、ハイキングだと思えば軽いですよ!このままの感じでいけば楽勝ですよ!」

 

 

「そんな簡単にいくかな…?」

 

 

 一時間後………

 

 

「右から3、左から2上から1です。上と左は私がやりますので皆は右の3体を」

 

 

「オッケイ!」

 

 

(疲れてきたけどまだまだ大丈夫!)

 

 

 二時間後………

 

「はぁ…はぁ…」

 

 

「跳田さん大丈夫…?休憩しようか?」

 

 

「だ、大丈夫です…まだまだ余裕ですよ!」

 

 

「ほ、本当に大丈夫…?」

 

 

 三時間後……

 

(あー…やばい…くらくらしてきた…このペースだとまずいかも…いや、皆のペースを崩す訳にはいかないし…まだまだ)

 

 

 四時間後……

 

 

(眠くなってきた…頭だるいし…個性つかい過ぎた…あとどのぐらいだろ…半分はいったかな…)

 

 

 七時間後…

 

 

「あ~…」

 

 

「寝るな跳田、もう少しだ、頑張れ」

 

 

「あぇ~…」

 

 

「ちょっ、桐子鼻血が…」

 

 

「ありがとうございましゅ……」

 

 

出発前、楽勝だと豪語していた跳田だったがそれは一瞬で変わった。次々とやってくる魔獣を相手に大量の飛蝗を出し、長時間操作をしたため歩けないほど消耗し、現在障子におんぶされ運ばれていた。

 

 

 

「やーっと来たにゃん。とりあえずお昼抜くまでもなかったねぇ」

 

 

 

「何が〝三時間〟ですか……」

 

 

「悪いね。アレ、私たちならって意味」

 

 

 

 瀬呂の力ない抗議にマンダレイさんはあっけらかんと答える。砂藤が「実力差自慢のためかよ……」と軽い悪態をついていた。

 

「ねこねこねこ…でももっとかかると思ってた。私の土魔獣が思ってたより簡単に攻略されちゃった」

 

 

「特にそこでおねむの跳田ちゃん!やれることが多いのはいいね!今のうちにツバつけとこー!」

 

 

「やめてください汚い」

 

 

「マンダレイ、あの人あんなでしたっけ」

 

 

「彼女いま焦ってるの、適齢期的なアレで」

 

 

「あ、あの! 適齢期と言えば……」

 

 

「と言えばて!!!」

 

 

「へぶぅ」

 

 

 

 緑谷のかなりひどめの話題の切り替え方に、ピクシーボブさんの鋭い猫パンチツッコミが繰り出された。

 

 まぁともかく、緑谷は顔面を肉球に埋もれさせたまま「ずっと気になってたんですが」とマンダレイの隣にいる男の子を指差した。

 

 

 

「その子は、誰かのお子さんですか?」

 

 

「ああ違う、この子は私の従甥だよ……ほら洸汰、挨拶しな! 一週間一緒に過ごすんだから」

 

 

「響香ちゃん…従甥ってなんですか…」

 

 

 

「いとこの子供って意味。ほら、立って」

 

 

「う~~…」

 

 

「おのれ、従甥!何故緑谷君の陰嚢を!」

 

 

「響香ちゃん…陰嚢ってなんですか…」

 

 

「そんなこと私に聞くな」

 

 

「ヒーローになりたいなんて連中とつるむ気なんてねぇよ」

 

 

「つるむ!?いくつだ君!」

 

 

「おまえら、茶番はそろそろいい。早くバスから荷物降ろせ」

 

 

 

相澤が私たちや崩れ落ちた緑谷を見ながら言った。ともあれ、相澤によると荷物を部屋に運んだら食事、その後入浴、そして就寝。本格的な合宿のスタートは明日からとのことだ。

 

跳田はおぼつかない足でふらふらとバスへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は変わり食事中。

 

 

「なに寝ながら食ってんだ、バッタ女ァ!食うならちゃんと食えや!」

 

 

「ハッ…す、すみません…」

 

 

「あと机に肘をつくんじゃねぇ!」

 

 

「は、はいぃ…」

 

 

「爆豪くん、マナーに厳しいんやな…意外やわ」

 

 

「意外ってなんだコラ!こんなもん普通だろが!」

 

 

「か、かっちゃん…跳田さんも疲れてるんだからその辺に…」

 

 

「うっせぇぞデク!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またまたかわり風呂。

 

 

「気持ちいいねぇ」

 

 

「温泉があるなんてサイコーだわ」

 

 

「あー!跳田さんが湯船に沈んでるー!?」

 

 

A組の女子全員で施設にある温泉に入って湯船に浸かって1日の疲れを癒しているころ。跳田は電池が切れたように突然お湯の中に沈んでいった。

 

 

「とりあえず引き上げないと!よいしょ…っと」

 

 

魚のように陸地に引き上げられた跳田はまるで幼い子供のように安らかな顔だった。念のため呼吸や脈を確認するとただ眠っているだけだった。

 

 

「大丈夫?」

 

 

「Zzzz…」

 

 

「これは…ダメだ。限界が来たみたい」

 

 

「跳田さん一番頑張ってましたからね…体育祭の時より広範囲に、そして長時間個性を使ってましたからお疲れなんでしょうね…」

 

 

「本当そうだよねー、おかげで結構スムーズに進めたから跳田には感謝しないと」

 

 

芦戸が湯船に浸かりながら言う。そして、しばらく様子を見ていた耳郞が口を開く。

 

 

「ごめんウチら先上がるね。こいつ寝かしてくるから」

 

 

「一人で大丈夫?手伝うよ?」

 

 

「大丈夫大丈夫。今から起こすから」

 

 

「どうやってやるの?普通にやっても起きそうにないけど」

 

 

「そりゃあもちろん…」

 

 

ドックン!!

 

 

「んぎぃ!!?!?」

 

 

「こうやって」

 

 

耳郞は個性のイヤホンジャックを跳田の耳に突き刺し、自らの心音を跳田の耳に直接放つ。跳田は突然のことに驚いたのか身体を跳ねさせ、飛び起きた。

 

 

「えぇ……」

 

 

しかし依然目は虚ろであり、眠そうだ。

 

 

「ほら立って」

 

 

「ん~…今…なんか……爆音が……?」

 

 

「そんな音してないから大丈夫。ちゃんと歩いて桐子」

 

 

「わ……かり…ました…?」

 

跳田は耳郞に半ば引き摺られるように肩を組まれて浴場から出ていった。

 

 

「なんだか二人とも姉妹みたいね」

 

 

「急に距離が近くなった感じするよねー、テストが終わった後くらいから急に」

 

 

「にしては起こし方が雑だったけど…」

 

 

「口田さんのことも下の名前で呼んでましたから友情を育んだんでしょうね」

 

 

「青春だねぇ…」

 

 

 

·就寝

 

一足先に風呂を後にし、部屋に戻った跳田は耳郞の介護の元、歯磨きや着替えなどをなんとか済ませ、もう寝るだけということとなった。

 

 

「ねむいでしゅ…」

 

 

「はいはい、あと少しだから。布団で寝て」

 

 

「う~…」

 

 

二人はゆっくりと布団へと向かっていく。跳田のほうは今すぐにも眠ってしまいそうだ。

 

 

「ほら着いたよ。ここならもう寝ていいからな」

 

 

「う~ん…」

 

 

跳田が布団に倒れるようにして寝転がると起きたまましばらく天井を眺めていた。耳郞はすぐ寝てしまうと思っていたので何故かわからず跳田を見つめたまま止まっていた。

 

 

 

 

 

「響香ちゃん…私ね、こんなに眠くなることなんて初めてなんです」

 

 

「まあ…そりゃそうだろうな」

 

 

「違うんです…いつもは…なんか…声が聞こえるんです」

 

 

「声?寝る時だけ聞こえるの?」

 

 

「いえ…ずっとです…いつも、殺せとか…壊せとかそんな声が聞こえるんです…」

 

 

「へぇー…それは物騒だね」

 

 

「だからいつもは寝つきが悪い筈なんですけど…こんなに眠たくなるの初めてだから…少し…嬉しいんです…声から…解放…され……た…よう…………な……」

 

 

 

「はいはい、そんな珍しいことなら早く寝な。もうわかったから」

 

 

「う…は、い」

 

 

耳郞は跳田の頭を軽く撫でながら言う。そうすると跳田は自然と瞼を閉じて眠りについていく。眠る時の顔はやはり幼い子供のようで安らかであった。

 

 

 

「にしても…声……か」

 

 

(ただ寝惚けてただけの嘘かもしれないけど……もし、本当だったら?四六時中そんな言葉聞いてたら気が狂いそうだけど……)

 

 

 

(前から少し特殊だと思ってたけど……こいつの個性って

一体……?)

 

 

 





今回の補足

·乗り物酔い
特に理由は無いがとって付けた設定。バスといったらこのイメージしかない。つらいよね、わかる。


·嘔吐
誓って言うが性癖ではない


·プッシーキャッツの登場タイミング
跳田が吐いてたせいで原作より少し遅れている。吐くのが終わるのを待ってる二人を想像したら少し笑った。


·ハイキング
そんな軽い感じなわけない。跳田はかなり余裕ぶっこいていたがわからせれた。広範囲に飛蝗を広げて迎撃や索敵を行っていたせいで歩けないほど消耗した。


·障子君におんぶで運ばれる跳田
一回でいいからおんぶされてみたい。安心感すごそう。


·鼻血
誓って言うが性癖ではない


·マナーに厳しいかっちゃん
上鳴君とかに食事中によく注意してるらしい。育ちいいからね。


·入浴中に寝る
疲れてると寝そうな時あるよね。


·耳郞さんと跳田の距離
「急に距離近くね?」と思った人が多いと思います。描写はしませんが夏休みに色々あったってことで。ね?


·口走る跳田
曇らせは伝播するのだよ、ワトソン君。でもこれだけだと曇らせにはなんないな…どうしよ。



·雑な起こし方
鼓膜が破れないように調整はしてくれたよ!やさしいね!


今回はこのくらいで。次は肝試しの直前くらいはいけるかもしれない。
というわけでまた次回!感想や評価などよろしくお願いします!
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