個性:クラスターセル 作:鳥松
脳無に頭を殴られ、吹き飛ばされる跳田、立ち上がろうとするが身体が動かない。
「……?……??」
「あぁ…脳が揺れてるのか案外簡単に終わったな…………でも意識があると暴れられるからな…仕方ねぇな」
荼毘はそう言うと跳田の火傷している背中に足を乗せる。
「う"あ"っ…!」
「しっかりと気絶させなきゃ………なっ!」
荼毘は足から蒼炎を出し跳田の背中を焼く。気絶させると言っていたがこれでは死ぬ可能性の方が高い。
「う"っう"う"っあ"っあ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!」
「そんなに叫ぶなよ、誰か来ちまったらどうするんだ」
痛みに叫ぶ跳田など気にもとめず背中を焼きつづける。
しかし、跳田もそのままでは終わらない。
跳田は既に放っていた飛蝗を周囲に漂わせ、棘を作って荼毘に向け攻撃する。
「う"っぐっ…あああああっ!」
「ん?ああ…さすがに」
グサッ!
「無理か」
荼毘に刺さった棘は心臓や頭など急所に刺さっており、確実に死んでいるだろうと思えた。荼毘はそのまま倒れて跳田から退く。
「あ"っ…ゲホッ…あ…わたし…また…ごめん…なさい……でも…早く…響香ちゃんを………!?」
自らがもうしないと誓った殺人をやってしまい、激しく動揺する跳田。でも、それでも、友人を救おうと行動する跳田の目に衝撃の光景が目に入る。
先ほど自らが殺したはずのヴィランが泥のように溶けだし、原型をなくしてしまったのだ。
「え……?炎が個性じゃあ……?」
「友人の心配が先にたったか?跳田桐子」
「え……?」
先ほど殺したはず男はいつの間にか跳田の真横に立って手をかざし、跳田の全身を包むように蒼炎を出す。
「カハッ……」
跳田は火傷の痛みとその衝撃で小さな息を吐いてそのまま倒れ、気絶する。
「分身を先に行かせて正解だったなトゥワイス」
「あー!?お前ダメだ!荼毘!向こうのやつもやられた!弱!ザコかよ!」
「もうか…そうか、弱ぇな俺」
「ハァン!?バカ言え!結論を急ぐな、お前は強いさ!この場合はプロがさすがに強かったと考えるべきだ!」
荼毘と共に出てきたヴィランは全身タイツを着た、言葉があやふやな男だった。
「もう一回俺を増やせトゥワイス。プロの足止めは必要だ」
「ザコが何度やっても同じだっての!任せろ!」
ヴィランのトゥワイスが個性を使用し、荼毘のコピーを作り出し、プロヒーローがいる施設へと向かわせる。
「あと、トゥワイス。こいつを持ってろ」
「ハァ!?なんで俺が!?ってこいつ冷たっ!?」
炎を受けつづけた跳田の身体は本物の火のように熱く、トゥワイスは驚きの声をあげる。
「脳無、ここらを見回ってガキを見つけ次第殺せ」
「ネホヒャンッ」
荼毘の言葉に呼応し、脳無は歩きだす。
「てかこいつ死んでんのかよ!大丈夫か!?」
「こいつは多少手荒でも大丈夫だって話だろ。今のうちに回収ポイントに行くぞ」
「わかったぜ!誰が行くか!」
◆
時は変わり襲撃の前日。とある暗がりのbarにて。テレビの映像と話す男が一人。
「あの女のガキを連れてこいってどういうことだ先生」
「そのままの意味さ弔。彼女は君の目的を達成する足掛かりとなる。」
「………この前もあいつの話してたよな……。なあ、先生。教えてくれよ……あいつは先生にとってなんなんだよ」
「そうだね……折角だから教えよう。彼女はね、偶然作成に成功した………」
「完成形の脳無だよ」
◆
『開闢行動隊、第一目標を達成した』
「よし、連絡は済んだ。あとはもう一つを待つだけだ」
「楽勝だったな!遅えぇよ!取り敢えずこいつここに置いとくからな!」
回収ポイントに移動した二人は無線で他のメンバーへ連絡し、他の目標を待つ。その傍らに抱えていた跳田を置きメンバーを待つ。
『開闢行動隊!目標回収達成だ!短い間だったがこれで幕引き!予定どおりこの通信後5分以内に回収地点へ向かえ!」
無線から仲間の通信が届く、どうやら全ての目標を達成したようだ。
「おい聞いたか荼毘!テンション上がるぜ!Mr.コンプレスが早くも目標達成だってよ!遅えっつうんだよなあ!?眠くなってきちゃったよ!」
「そう言うなよくやってくれてる。あとはここに戻ってくるのを待つだけだ。予定じゃここは炎とガスの壁で見つかりにくいハズだったんだがな…ガスが晴れちまってら、予定どおりには行かねぇもんだな」
「そりゃそうさ!予定どおりだぜ!」
そこで荼毘が近くの茂みを見ると何かに気がつく。近づこうとするがトゥワイスが話し掛けたため荼毘も気にするのをやめた。
「おい荼毘!どうでもいいことだがよ!脳無ってやつは呼ばなくていいのか!?お前の声にのみ反応するとか言ってたろ!?とても大事なことだろ!!」
「ああ、そうだったな、忘れてた。死柄木からもらった俺仕様の怪物、一人くらいは殺してるかな」
◆
「くそっ!畜生!!何なんだよ!!」
森の中を走り抜けながら先ほども跳田を襲った脳無が二人の生徒を追いかける。A組の八百万とB組の泡瀬だ。八百万は頭から血を流しており、歩けないのか泡瀬に抱えられている。そんな二人に脳無の腕のチェーンソーが近づく。
「何なんだよぉーーー!!!」
二人にチェーンソーが当たりそうなその時、脳無は突然手を止め、二人にそっぽを向いて逆方向へ歩き出す。
「今度は何だ……何で帰る……?」
(……役目を……果たした……ということ……!?じゃあ爆豪さんと跳田さんは……!?判断……!最悪を……!推し量りなさい百!そこから今出来る最善を!)
「泡瀬さん…個性でこれを……奴に!」
八百万は個性で作り出したボタンのような物を泡瀬に渡す。
「何これ…?ボタン?」
「いいから早く!行ってしまう!」
(何かもうわかんねぇけど……!!)
泡瀬は個性で渡されたものを脳無の背中に『溶接』する。
「よし、着けたぞ!いいな!?怖えダメだもう!」
「ええ……」
「逃げるぞ!」
逃げようとした二人だったが八百万があるものを発見する。
「……!、待ってください…!泡瀬さん…!」
「ああ!?なんだよ、八百万!もう逃げようぜ!」
「あれは…跳田さんの…!」
「なんだあれ…?箱?」
二人が見たのは人一人が入れそうな銀色で鉄製の箱。それは訓練や普段の授業で見た八百万には見覚えがあった。
それはヒーロー基礎学の授業のことである。
『これは新技ですよ、八百万さん!鳥籠って言いまして…ヴィランの捕縛や人の保護が出来るんですよ!』
『ですがこの籠のような形状では人の保護にはあまり向いていないのでは…?ヴィランの攻撃が入ってしまいますし……』
『あ…確かに………では、いっそのこと箱にしましょう!
鳥籠(箱)ってことで!』
『そういうことでいいんでしょうか……?』
八百万は過去のことを思い出し、この箱の意味を察する。
(まさかこの中には人が…!?跳田さんとペアだったのはたしか耳郞さん…!ということはこの中には…!)
「うおおお!?なんだこれ八百万!?バッタになったぞ!?」
「やはり……これは跳田さんの……!中身は………耳郞さん!!」
箱が飛蝗になってバラけ、中から意識のない耳郞が姿を見せる。意識がないだけで呼吸などはしっかりとあり、命に別状はなかった。バラけた飛蝗は同じ方向へ一斉に飛びたった。
「なんだよこれ…なんでこんなところに…!」
「早く運びましょう!」
「ああ、もう!わかったよ!」
◆
八百万の出来事から数分前………
『起きろ!早く!これ以上は不味いぞ!……くそ!もう体力が……!』
頭の中で誰かが話す誰だろうか?以前もあったような感覚になぜか浸ってしまう。
(あぁ…クロ…?わたし……?ああそうだった…起きなきゃいけないんだっけ…?でも動かないや……そういえば一度だけ動けなかった時も動けたときがあったけ……?)
『まさか……!ダメだ、それに頼るな!落ち着け!』
「あ"……うあ……」
「んん!?おい荼毘!こいつ意識が戻ってるぞ!」
「あぁ…ほっとけ、どうせ動けねぇ」
「いや…でもこいつ……」
「コ……ロセ……メ…ツ……ボウ…セヨ…」
意識が朦朧としている状態で何かをブツブツと話す跳田を見て、トゥワイスが狼狽えていると、突然跳田の身体から飛蝗の大群が飛び出す。
「うおおお!?おい、荼毘!何が動けねぇだ!寝てんじゃねぇか!」
「チッ、なんだ急に……!」
「あれ?まだこれだけですか?」
「黙ってろイカレ野郎、今それどころじゃ…」
跳田が動く緊急事態が発生したのも束の間上空から来訪者が舞い降りる。Mr.コンプレスを下敷きにして現れたのは雄英生徒の三人。轟、緑谷、障子だった。
「あれは…!跳田か!?」
「知ってるぜ、このガキ共!誰だ!」
そうこうしている間にも荼毘たちに跳田の飛蝗が迫る。だが、荼毘は実に冷静に話す。
「離れてろお前ら。Mr、避けろ」
「!了解!」
荼毘は両手を跳田と緑谷たちに向けて蒼炎を放つ。跳田の飛蝗は消えてなくなり、緑谷たちにも炎があたる。
「うあ"!」
「Mr、あの女を頼んだ」
「ええ!?俺かよ!」
コンプレスは文句を言いながらも跳田へと向かっていく。跳田も飛蝗で迎撃するがコンプレスはそれらをスルリとかわし続け、跳田の下へとたどり着く。
「不味いぞ!あいつ正気じゃねぇ!逃げろ跳田!」
跳田も回避のため後ろへ飛ぶが……
「ネホヒャンッ」
「あれは脳無か!?不味いぞ、跳田!」
突然出現した脳無に脚を掴まれ地面に叩きつけられる。脳無が着地した後も何度も地面に叩きつけられ、遂には跳田は気絶した。
「あ……ガ……カハッ……」
「跳田さん!」
「もういい脳無。早くしまえそいつをコンプレス」
「はいはい、よっ、と」
コンプレスが手で跳田に触れると跳田は緑の小さなビーズのような物に変化し、囚われる。
「くそっ!!そいつを放せ!」
「それは出来ないなぁ…。あぁそれと六本腕の君が奪ったそれは…ただの」
「ぬっ!?」
「氷結攻撃の際、ダミーを作っておいた。そんなに欲しかったなら持っていくといい。悪い癖だよ、マジックの基本でね、モノを見せびらかす時は見せたくないのがある時だぜ?」
コンプレスは口の中に入れていた、二人のビーズを三人に見せる。障子がもっていたのはただの氷でありダミーだったのだ。
「くっそ!」
「合図から5分経過しました。行きますよ」
「そんじゃー、お後がよろしいようで…」
開闢行動隊が突如出現した黒霧のワープに入り、撤退しようとしたその時、レーザーがコンプレスの顔を掠め、口の中のビーズを外に吐き出してしまう。
雄英生徒の三人はその隙を見逃さず、ビーズを奪い取ろうと走りだす。しかし、緑谷はケガのせいで動けない。
しかし、障子と轟は止まらず、障子は二つのうち一つを取ることに成功したが、轟は荼毘に横から取られてしまう。
「哀しいなぁ…轟、焦凍…」
「確認だ、解除しろ」
「ったく、なんだよ今のレーザー。俺のショウが台無しだ」
コンプレスが指を鳴らすと荼毘の持っていたビーズが爆豪へと変化する。
「問題、なし」
緑谷も遅れて駆け出すが既に遅かった。
「かっちゃん!!」
「来んな、デク…!」
ワープゲートは閉じられ、爆豪や荼毘は姿を消した。
これは雄英高校ヒーロー科1年がヴィランに完全敗北したことを意味した。
今回の襲撃で死者こそ出なかったものの負傷者は多数。そして、何より行方不明者二名。
この夜の出来事、そしてこれから起こる出来事はヒーロー社会に大きな影響を及ぼすのだった。
今回の話は、時系列とか考えだしたらきりがないと思ったのでちょっと適当かもしれません。
補足
·荼毘の行動について
まず荼毘の本体は森を焼くため原作通りの場所にいました。そして分身は脳無と共にガスの届かない場所から跳田を見ていました。
しかし、案の定跳田はガスから逃れ、森に移動しました。ですがそこがたまたま荼毘の待機場所の近くであったため、都合よく戦闘に入れました。分身が戦闘を行えば炎が上がり場所が見えるため、本体もすぐに加勢に行ける訳です。
ヴィラン連合の中で跳田と相性のいい人が荼毘しか居なかったため跳田を捕らえるのは荼毘の役目でした。
·鳥籠
元々箱なんて考えてなかったけど「これ炎とか筒抜けじゃん!」と思い、箱の形にも出来るということに。八百万さんたちが来たときに解除されたのは偶々跳田の暴走のタイミングと重なったからです。
·跳田の暴走
USJの時と同じ感じ。でも怪我のせいであれほどの力はないため、コンプレスにも容易に避けられています。
·地面に何度も叩きつけられる
アベ○ジャーズのハ○クがロ○にやったやつ。痛そう。
今回はこんな物ですかね。次回は跳田の個性や過去についての答え合わせです。梅干しさんが懇切丁寧に解説してくれます。ようやく跳田ちゃんを曇らせることが出来ますね!