個性:クラスターセル   作:鳥松

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ついに…!


跳田桐子:オリジン

 

薄暗く狭い部屋で跳田は目覚める。ここがどこなのかは勿論分からず、ただこの部屋で椅子に座らせれていることしかわからない。

 

 

「ん…?え…ここは…痛っ!~っ!背中がっ……!」

 

 

 

「ぐっ…動けないっ…!椅子に縛られてるのか…!」

 

 

「と、取り敢えずこれを……えっ、あ?あ"あ"あ"っ

あ"あ"あ"あ"あ"っ!!?なにっ……これっ…!?頭がッ割れるっ!!?」

 

 

個性を使おうとした瞬間、なぜか頭に直接針が刺さったような痛みが跳田の頭を襲う。しばらくすると痛みがひいては落ち着いたが、正体不明の痛みに恐怖せざるを得ない。

 

 

「なんで……こんな……?」

 

 

「あぁすまないね、今君の個性は使用できない。これもドクターのチップのおかげだがね」

 

 

「誰っ!?」

 

 

「こんばんは、跳田桐子君」

 

 

「っ誰がか知らないけどこれをはずして」

 

 

「それは出来ない、だって君、暴れるだろ?」

 

 

「……何で、っつ…!私をこんなところ……っ!に…?」

 

 

 

喋る度に背中や全身の火傷が痛む。だが黙っていては始まらない。跳田はこの男から今の状況について情報を聞き出そうと無理にでも話を続ける。

 

 

 

「それは今から教えてあげようか。私は君の全てを知っている。今から話すよ、君の原点(オリジン)を交えて」

 

 

「私の…原点(オリジン)…?」

 

 

「どこから話そうか……そうだ、君のその罪深い個性について話そう!」

 

 

 

男は楽しそうにウキウキと話す。こちらのことなど一切考えず言葉を発する目の前の男を跳田は心底嫌悪し、同時に憎んだ。

 

 

 

「結論から言うとね、君の個性は一つの個性ではない」

 

 

 

「僕のほんの出来心と好奇心の実験から生まれた偶然の産物なんだよ」

 

 

 

「……意味が分からない。早くこれを外せヴィラン」

 

 

 

怒りが先に立ち、言葉遣いが普段より悪くなり、強い言葉を使ってしまう。

 

 

 

「焦るなよ、ちゃんと君でも分かるように説明するから」

 

 

 

「君の個性は確か…戸籍上は『クラスターセル』だったかな?」

 

 

「だからなんだ…!」

 

 

「自分で使っていておかしいと思わなかったのかい?明らかに他人の個性とは違う逸脱した個性だと」

 

 

「そんなこと、思ったことなんて一度もない…!」

 

 

「ああ、いけない話を戻そう」

 

 

 

跳田の返答など簡単に無視し、唐突に話を戻す。一々癪に障る男だと跳田は心の中で思った。

 

 

「僕は日々を退屈に過ごす中でふと興味に思ったことがあった。常人に複数の個性を持つことに耐えうる人間はどれだけいるのだろうかと。そして複数の個性を持つことが出来たらどうなるのかをね」

 

 

 

「色んな人間で試したが…どれも退屈な最後だったよ…。だが!唯一面白い人間を発見できた!」

 

 

 

「それが君だよ、跳田桐子君!」

 

 

この男の口振りから察するに多くの人間をこの男の言う実験のようなもので犠牲にしたのだろうが、この男の声からは罪の意識や罪悪感などは一切感じなかった。

 

 

 

「君は幼い子供の身でありながら複数の個性を持つことに成功した!そして、その結末もかなり面白かった!」

 

 

 

「君は元々飛蝗の大群を身体から出す個性だったが、君に『金属化』という個性を与えたおかげで、君の個性は混ざり、そして進化した!」

 

 

 

「え……?どういう……?意味が……?」

 

 

(個性を与える?混ざる?進化?言葉の意味すら理解できない。何を言っているんだ…?)

 

 

 

話を全く理解出来ていない跳田を完全無視し、マスクの男は話を続ける。しかし、金属化というのは少し耳に残った。跳田の出す飛蝗はなぜか金属と化しており、光沢を放っていた。

 

 

 

「個性の進化を見届けた僕は更なる向上を図ろうとし、二つの個性を持っている君に更に『学習(ラーニング)』という個性を与えてみた」

 

 

 

「すると『学習(ラーニング)』は君の感情や行動を学習し、新たな人格を作りだした。素晴らしい変化を見届けたがこの人格のせいでもう君に個性を与えることは出来なくなったんだ。

全く人生は計画通りに行かないものだね」

 

 

 

「もう一つの…人格……?」

 

 

 

「ああ、これも知らないのか、全く幼い少女によくやったものだな」

 

 

 

跳田の言葉に初めて男は反応し話を止めた。

 

 

 

 

「まあいいか………。その後僕は名案を思い付いたんだ。君に与えた『学習(ラーニング)』が君の感情や行動に左右されるなら……」

 

 

 

 

「はち切れんばかりの悪意を君が抱いてそれをラーニングしたらどうなるのかを」

 

 

「まさか……お前……!」

 

 

ここまで話を聞いて跳田はある答えにたどり着く。

 

 

 

「気づいたかな?君の両親が亡くなったヴィラン襲撃事件」

 

 

 

「あれ、指示したのは僕だよ」

 

 

 

男の口から放たれた予想通りで最も信じたくない言葉が跳田の心に深々と突き刺さる。そこから沸き上がる怒りと憎しみ。

 

 

そして、悪意。

 

 

「お…まえ…が……お前がっ!」

 

 

 

跳田は男を殺す勢いで個性を使おうとするが、それは頭の耐え難い痛みに阻まれ、個性を使えなかった。

 

 

 

「あぐっ、ああっ!あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!」

 

 

 

「個性は使えないと言っただろうに…馬鹿だねぇ」

 

 

 

個性を使おうとした瞬間、先ほどと同じような痛みが走る。頭が割れそうな痛みで思わず叫んでしまう。

 

 

 

「はあっ……はあっ……!」

 

 

 

「まだバテるなよ、まだ話は終わってない」

 

 

 

オールフォーワンは息を整える跳田を無視して話を続ける。

 

 

 

「予想通りあの時君は、周囲の悲鳴やヴィランへの怒りで自身の悪意を募らせ、そしてそのまま怒りのまま町ごと個性で破壊した。ヴィランや建物、町の人間共々ね」

 

 

 

 

「っ………!」

 

 

 

 

 

 

今までずっと一人で考えないようにしてきた。忌まわしい日。初めて自分が大罪を犯した日。

思い出したくもなくて、ただただ過去から目を背け、忘れて、何事もないようにしてた。

 

 

私はやってない、仕方なかった、やらなきゃ死んでた。

私は悪くない、とひたすら逃げてきた。

 

自分を哀れんで肯定してし続けて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて、

 

たどり着いたのは魔王の前。悪意と己の愉悦のために動く凶悪な魔王の御前。

 

 

 

「はっ…はっ……」

 

 

 

呼吸が浅く小さく過呼吸のような状態になる。

 

 

 

「ヴィランを怒り、憎む。そしてヴィランへ復讐しようとした。それが君の原点(オリジン)だ。だから君はヒーローを目指すんだろ?合法的に自身の憂さ晴らしが出来る職業だから」

 

 

 

「ちが……ぅ……!ちがう…!わたしは…先生に……恩返しが……」

 

 

 

「まだ認められないのかい?」

 

 

 

「………では何故君は戦っている時笑っている?」

 

 

 

「……?…?…わたし……わらってなんか……ない…」

 

 

「いいや笑っていた。あの日も、USJでも、体育祭でも、保須でも、合宿でも。楽しいんだろ?人を痛みつけるのが、命のやり取りが!」

 

 

 

「分かるよ、僕もその気持ちがよく分かるよ。人の苦しむ姿っていうのはなんであんなに面白いんだろうか?やはり君は僕と似ている」

 

 

 

「…………う」

 

 

 

「さて、これまで話してきたが、君の存在についてひとつの正解を与えよう」

 

 

 

「………さ…い」

 

 

 

男がそう話すと部屋の照明が一斉につく。そして現れるのは四角い容器に入れられた数十体はいるであろう脳無。

 

 

 

「君はここにいる脳無と同じ。僕が作り、複数の個性を持っている怪人。そして、複数の個性を与えることで混ざって進化していく脳無の完成形」

 

 

 

「それが君だよ、跳田桐子君!」

 

 

男は声を先ほどより大きく張って真実を伝えた。

 

 

 

「うるさいうるさいうるさいうるさい、ちがうちがうちがうちがうちがうっ!!」

 

 

 

跳田は子供の癇癪のように叫び、拒絶する。男が言った言葉を必死に否定し、自らを肯定しようと、自分は悪くないと醜く思い続けるために。

 

 

 

「わたしは…わたしはぁっ…!脳無なんかじゃない!ヴィランなんかじゃない!わたしは!私は悪くないっ!全部…全部全部全部全部全部ぅっ!お前が……お前がっ…全部悪いんだぁっ!」

 

 

「あぁ…そうかそうか……認められないんだね、肯定したいんだね。自分を。醜いねぇ、実に醜い」

 

 

 

「でもさ、戦ってるとき笑ってるのも、復讐したいと願ったのも、あの時町ごとヴィランを破壊したのも……」

 

 

 

「全て君の意志だろう?」

 

 

 

「君の飛蝗はただ君の願いを叶えただけ。悪いのは君」

 

 

 

「全部君のせいなんだよ」

 

 

 

邪悪な魔王から言い放たれる自分がもっとも言ってほしくなかった言葉。心から否定したかった言葉。

 

 

でも、でも。あんなことを言われたら…否定なんて……………出来るわけない。そんなの、そんなの……。

 

 

 

目の前の魔王に怒りしか湧かない。憎しみしか湧かない。殴りたい。潰したい。

 

 

 

殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい。

 

 

 

 

心の中で無限に湧いて出てくる悪意に跳田は抵抗出来なかった。ただただ感情に任かせ、全てを破壊してでも目の前の魔王を殺そうと動く。

 

 

 

「あ……ああ…ああああ……あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!!!」

 

 

 

 

椅子の拘束を、頭が割れそうな痛みがはしる中、個性を使用し無理矢理引きちぎる。そして目の前の魔王に、殴りかかろうとする。

 

 

 

「感情任せのつまらない攻撃。今の君はつまらないね。やはり、本来の君でなくては面白くない」

 

 

 

男はそれを容易く受け止め、つまらないと一蹴した。

 

 

 

鋲突(びょうとつ)

 

 

 

「がっ………!?」

 

 

 

男は触手のようなものを五本の指先から出し、跳田の身体の各部に突き刺す。跳田は引っ張ったりしてそれを抜こうとするが抜くことができない。

 

 

 

「本来の君を引き摺り出す」

 

 

 

『個性強制発動、クラスターセル』!

 

 

 

心臓が一際大きく、一回鼓動した気がした。

瞬間、頭から、心臓から、心から、ザワザワしたドス黒いものが溢れ出る気がする。

 

 

 

「あっ……!あっ…がっ…!ああっ」

 

 

 

「さあ、久しぶりだね。本来の跳田桐子君」

 

 

 

身体から全てが溢れ出す。怒りが憎しみが悪意が。飛蝗が溢れ出る。

 

 

 

「あ"あ"っあ"あ"あ"あ"あ"あ"あう"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!」

 

 

 

 

 

 

 




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