個性:クラスターセル   作:鳥松

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お久しぶりです。


蝗害

 

跳田が目覚める一時間前…

 

 

 

 

 

 

「経過はどうかなドクター」

 

 

 

 

 

「順調じゃよ。状態も安定しておるし怪我も背中の火傷以外ほぼ治りかけておるからな。それにしても実に良質な実験体じゃなぁ…このままにしておくのが非常に勿体ない」

 

 

 

 

 

暗がりで話す二人の男たち。一人は機械質なマスクをした素顔が見えないスーツ姿の男。ドクターと呼ばれたもう一人はゴーグルを掛けた小柄な老年の男。ドクターの脇には跳田が手術台のようなものに寝かされていた。背中の火傷を除けばただ安らかに眠っている少女にしか見えない。

 

 

 

 

 

「ふふ、まあ運が良ければまた身体を弄れるさ。それで例の件はどうなったかな」

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、無事付けれたよ。全く先生もひどいのぉ、こんな幼気な少女の頭の中に異物を入れるとは。吐き気と倦怠感はしばらく続くだろうなあ…慣れるまでどれだけ掛かるか…」

 

 

 

 

 

「必要なことさ、ドクター。これも全て弔のためなのだから」

 

 

 

 

 

「まあ、儂も先生の言うことにとやかく口出しはせんが…。取り敢えず注文通りに先生の個性に合わせて作用するように調整した。個性の使用から停止、そして彼女を意のままに操ることも可能にしたぞ。…全く先生は相変わらず無茶な注文をする…」

 

 

 

 

 

「君の能力を信頼しているのさ、ドクター。それにドクターはしっかり完成させてくれたじゃないか」

 

 

 

 

 

「ほっほっほっ、全く褒めても何も出んぞ」

 

 

 

 

 

「……………さて、そろそろ彼女も目覚める時間だろう。ネタばらしの時間だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人は暗がりの中軽快に話し続けた。直後に現れた黒いワープゲートへとマスクの男は抱えた跳田共に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

跳田暴走の数分前……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では諸君、作戦通りに。では任せたぞ新人、デカイのを頼む」

 

 

 

 

 

 

 

「任せてくださいジーニストさん!それではいきますよ、皆さまァ!」

 

 

 

 

 

 

 

場所は脳無格納庫前、複数のプロヒーローが集まり、脳無格納庫を制圧をしようとしている最中であった。その中でも特段異彩を放つのはこの脳無格納庫より大きい体躯をもつプロヒーローマウントレディ。その足にどこからか持ってきた軽トラをつけ、その建物へ思い切り踵落としを行い、その外壁を破壊した。

 

 

 

 

 

その攻撃を境にヒーローたちが続々と中へと入っていく。そして迅速なスピードで四角い容器に入っていた脳無を拘束し、制圧していく。

 

 

 

 

 

「脳無格納庫制圧完りょ……!?」

 

 

 

 

 

 

 

しかし、No.4ヒーローベストジーニストはこの建物の奥に無数の何かがいるような気配を感じた。何か、とんでもない異様な気配をこの奥から感じる。

 

 

 

 

 

そして突然奥から響く叫び声。その声は年端のいかぬ少女のような叫び声。事前の情報からすれば今回の襲撃で拉致されたのは男である爆豪ともう一人、女である跳田だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ジーニストさん、今のは!」

 

 

 

 

 

「わかっている!油断するな!恐らくこの奥にもう一人の救助目標がいる!早く救助へ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(何、が…起こった……!?)

 

 

 

 

 

地面に倒れるジーニストの周りには先程そばにいたはずのヒーローたちはおらず、ボロボロになった周りの建物の瓦礫があるだけで何もない。少し辺りを見回すとそこには先程実際にそこにいたとは思えない光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

建物でいっぱいだったはずの周りは更地になっており、地面には瓦礫と先程までそばにいたはずのプロヒーローが転がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「素晴らしい!素晴らしいよ、跳田君!個性を一瞬使っただけでこの破壊力!やはり君は最高の脳無だ!」

 

 

 

 

 

「ぁ…ぅ…」

 

 

 

 

 

浮いているマスクを被った男の足元にはボロボロの跳田が倒れており、男の攻撃で地面へ叩きつけられたようだった。

 

 

 

 

 

「ふむ…流石No.4ヒーローベストジーニスト。まさかあの攻撃に合わせ、ヒーローたちの衣服を操り、全員が八つ裂きになるのを防いだ。判断力、技術…並の神経じゃない」

 

 

 

 

 

「……こいつ……」

 

 

 

 

 

 

 

掃討作戦の会議中に話が出た敵連合のプレーン。話に寄れば自分の安全が保証されない限りは表には出ないはずだったが……

 

 

 

 

 

 

 

(話が違う…………からなんだ!!一流は!そんなものを失敗の理由に)

 

 

 

 

 

 

 

ベストジーニストが決死の力で個性を使用し、その男へ攻撃をしようとした刹那、男の指先から発せられた衝撃波はベストジーニストの腹部に直撃した。ベストジーニストの腹部からは血が吹き出し、そのまま意識をなくし動かなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

「君のはいらないな。弔とは性に合わない個性だ」

 

 

 

 

 

 

 

ベストジーニストが意識を手放した直後、怪我が跳田の身体から姿を消したと思うと、地面に転がっている跳田がビクりと身体を跳ねさせて微睡みから覚醒する。

 

 

 

 

 

 

 

「あ…ああっあ"あ"あ"あ"あっ!」

 

 

 

 

 

 

 

跳田は叫び声をあげながら立ち上がると身体の至るところから飛蝗を出す。飛蝗はおもむろに周りを破壊しだし、周りの建物全てをその圧倒的な物量で飲み込んでいく。

 

そしてものの数分で辺りは更地と化していった。

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ……君の怒りを、悪意を僕に見せてくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

「あああっっやめろっ!!違う!こんなことめいれいしてないっ!!違う違う違うっ!」

 

 

 

 

 

 

 

跳田が叫ぶと先程まで辺りを破壊していた飛蝗がマスクの男に向けられ、飛蝗は目の前の男を蹂躙しようと動く。

 

だがその無数の飛蝗は男から発せられた衝撃波により掻き消される。

 

 

 

 

 

 

 

「こえがぁ…こえがぁっ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相手からの衝撃波、遠距離戦は不利と判断。近接戦へと移行。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

跳田の頭の中に響くいつものノイズのある声ではなく、いつもより機械質な音声が頭の中に流れる。その声はまるで人工知能のような声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「からだがっ…!かってに…うご……いて……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の意志とは反対に逆に動く。まるで壊れた機械人形のようにぎこちなく動いてしまう。

 

跳田は空中に浮いている男の元へ拳を振りかぶりながら跳躍する。

 

 

 

 

 

 

 

「いいねぇ、その調子だ…。君と打ち合うには……そうだな……『筋骨バネ化』『瞬発力』×4」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の拳がぶつかり合う。跳田はスプリングによる打撃強化。男は複数の個性で強化し、拳を打ち合う。しかし、男と跳田では個性の質と量が違う。力の大きさは当然、男の方が大きくなる。同時にぶつかった二人の拳は跳田の拳だけが離れ、跳田だけが地面に叩き付けられる。

 

 

 

 

 

 

 

「あ"っ…ぐあ"あっ!うで、うでがぁっ!いぃっいたいぃっ!あ"あ"あ"あ"っ!」

 

 

 

 

 

 

 

地面に叩き付けられた跳田の腕はぐちゃぐちゃにひしゃげており、再び動くことなどもう二度とないと思えるくらいに傷が深かった。跳田はその激しい痛みに駄々をこねる幼子のようにのたうちまわり絶叫した。

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ……もう少し強い力だと思ったが…肉体強度が高いわけではなかったか。しかしあれではすこし心許ないな。もう一人も出てこれないようだし…折角だ、今ここで足して見るか…」

 

 

 

 

 

 

 

男は跳田の元へ近付くと痛みに悶える跳田の頭を鷲掴みにし、深く握り込む。

 

 

 

 

 

 

 

「あ…ぐぁ…は…な…………せ…!」

 

 

 

 

 

 

 

「身体が脆くてはこの先不安だ。この先必ず必要になる最適な個性をあげよう」

 

 

 

 

 

 

 

「あ……!?」

 

 

 

 

 

 

 

男は跳田の頭を掴んだ腕から本来の個性を使用し、個性の譲渡を無理矢理行う。自分の身体にはなかったはずの異物が自分の中へ入り込んでくる感覚に跳田は嫌悪感を示さざるを得ない。

 

 

 

 

 

 

 

(なにっ……これっ……わたしの、なかにぃっ…なんか…入って、くるぅっ…!)

 

 

 

 

 

 

 

「あ"っあがっ…んぎぃ"っ」

 

 

 

 

 

 

 

「よし、これで完了」

 

 

 

 

 

 

 

男はそう言うと跳田の頭から手を離す。彼のやりたかったことは既に済んだようだ。そしてそのまま倒れて踠いていた跳田のぐちゃぐちゃの腕に変化が現れる。

 

 

 

 

 

「ぇ……?あれ……いたく、ない……?治って…る…?なんで…?」

 

 

 

 

 

 

 

跳田の腕は突然肉が隆起し、筋肉、そして皮膚と、新たに腕が再生されていく。それはまるでUSJで見た脳無と同じだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ち…ちがう…!わ、わたしは…脳無なんかじゃ……うぐぅぅっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

欠損部分の再生を確認。再び近接戦闘へ移行。再び欠損の恐れあり。対策を実行、本体への装甲を開始。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー変身。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたまがぁっわれるっ!痛い痛い痛い痛い!あ"あ"あ"ああ"あ"あ"っう"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」

 

 

 

 

 

 

 

体内の異物が蠕動を始め、肉に食い込み、骨を軋らせる。痛みなどという表現すら生温い。身体の内側から別の生き物に侵蝕され、略奪されていく。生きながらに貪り喰われる激痛が恐怖とおぞましさによって倍増される。

 

 

 

 

 

常人なら死に至る身体のダメージだったが、跳田が死んで苦しみから解放されることを『超再生』は許してくれない。

 

 

 

 

 

 

 

飛蝗は跳田の周りに飛来し、跳田の身体を蝕むように纏わりつき、形を鎧のように変化させる。全身が鈍い白銀に輝く金属質な見た目となり、頭部や肩などが鋭利な形状に変化した。目の部分は蛍光カラーの装甲に覆われ、跳田が飛蝗と視覚共有を行うときと同じように色が変化していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

跳田の変化を近くで見ていた男はその光景を見て言葉を漏らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「飛蝗とは本来大軍を成して作物を荒らし、最後は共食いまでする獰猛な生物…それが君の真の姿か」

 

 

 

 

 

 

 

跳田の破壊が、真の姿が、衆目へと晒される。その地獄のような光景を前にし、変化は突然起こる。

 

 

 

 

 

 

 

バシャッ。

 

 

 

 

 

 

 

「ヴォエ"ッ!!くッせぇ!!んっじゃこりゃあ!」

 

 

 

 

 

泥のような液体から突如現れたのは合宿で跳田と同じく誘拐された爆豪勝己だった。そして爆豪は目の前の光景に息を呑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「……ッだ…これっ……!?まさかバッタ女が…!?」

 

 

 

 

 

 

 

「すまないね、爆豪君」

 

 

 

 

 

 

 

「あ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バシャッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虚空から次々と泥が現れる。そこから出現したのはヴィラン連合のメンバーだった。

 

 

 

 

 

 

 

「また失敗したね、弔」

 

 

 

 

 

「でも決してめげてはいけないよ弔。またやり直せばいい。こうして仲間も取り返した。この子もね君が大切なコマだと判断したからだ。いくらでもやり直せ、そのために僕がいるんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

「そこにいる跳田桐子君も。全ては君のためにある」

 

 

 

 

 

 

 

マスクの男が死柄木に対し、手を差しのべる。

 

そんな二人に対し、変身した跳田は殺意を剥き出しにし、男に飛び掛かる。しかし、そのような攻撃をみすみす喰らうほどこの男は甘くない。跳田を衝撃波で遥か遠く吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

「そのように暴走した時点で君は終わりだ。っと、僕の方もそろそろのようだ」

 

 

 

 

 

 

 

上空から大男が近付く。希望を体現したような男が。

 

 

 

二人は両腕で激突し、ぶつかり合う。

 

 

 

 

 

 

 

「全てを返してもらうぞ!オールフォーワン!」

 

 

 

 

 

 

 

「また僕を殺すか、オールマイト」

 

 

 

 

 




いやー、お久しぶりですね!なんで投稿が遅れたかと言いますとですね、音ゲーしてました。すみません!これから別で忙しくなるのでまた遅くなるかもしれませんが、気長に待っていてください。

今回の補足



·チップ
ゼロワンで不破さんとかが入れられてたやつ。


·脳無格納庫制圧
原作ではオールフォーワンがヒーローを吹き飛ばしていたがこの小説は跳田がやったことになった。


·被害状況
跳田の飛蝗によって周りの建物が丸ごと消失した。


·頭の中の声
クロではない。作者の想像ではcv.速水奨。


·個性付与
オールフォーワンから超再生を与えられることにより、肉体強度を無理矢理カバーされる。「わたしの中に何か入ってくる」って言ってたけど個性を与えられた人とこんな感じだと思う。えっち。


·変身
ようやくです。見た目はメタルクラスタホッパーです。次の登場はいつになるかな…。因みに書く前は変身させる予定はなかった。

·爆豪君
周り見て「ウソだろ…」ってなってる。


·君のせい
前回の話ですが「どうみても全部お前のせいだろ!いい加減にしろ!」と思ったと思います。しかし、跳田が今まで最も恐れていたことは「全部お前のせいだ!」と言われることだったので跳田の心は既にボロボロになっていたというわけです。というわけで罪の意識でいっぱいいっぱいの跳田は簡単にオールフォーワンの言葉を信じてしまったというわけです。


今回はこのくらいで。一体これからどうなってしまうんだ…
まあ、跳田もこれで曇りに曇ったし、きっとこれから希望的な展開になるんだろうなぁ…()

前回の話から感想や評価など本当にありがとうございます。全てに目を通しておりますので、これからもよろしくお願いします。
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