個性:クラスターセル 作:鳥松
「せんせ…?」
「桐子ちゃん…!」
起き上がった跳田を見た先生はすぐに跳田の元へ駆け寄り抱きしめる。
「ごめんなさい……ごめんなさい…!私たちのせいで…!」
先生は跳田に向けてひたすら謝罪した。すすり泣きながら必死に懺悔した。
しかし、跳田にはそれが素直に受け取れず心の中で感情が渦巻いてゆく。
「なんで…謝るの?」
「え……?」
「なんで自分の責任だって簡単に言えるの…?あれをやったの…私だよ…?」
跳田はか細い声でボソボソと話す。そして自分を責めるように跳田は続ける。
「みんな勘違いしてるんだ…あれはヴィランが操っていたせいなんかじゃない……!全部私の意思だった…!わたしがヴィランが憎くて殺したいと思ったから……!」
「ううん、違うのあなたは……」
「離して!」
跳田はそう叫んで先生を突き飛ばす。跳田がこんなに先生を拒絶したのは孤児院に来てまもない幼少期以来のことだった。
「なんで……?なんでわたしにそんな普通にできるの…?今この瞬間だってまた暴走するかもしれないのに…!なんで…なんでなんでなんで!!」
「なんでそんなにやさしいの…?」
跳田が抱え込んでいた悲痛の叫びであり本音。今まで頭に響く声のことも、自身の過去のことも、自身の原点でさえ、誰にも人に明かさなかった跳田が初めて他人に本音を涙ながらにぶちまけた瞬間だった。
この悲痛な叫びを聞いた先生はその言葉を心で受け止めた。跳田の苦悩も痛みもこの叫びに全て含まれていた。そしてその上で先生は跳田を見捨てようとせず再び駆け寄り抱きしめた。
「わっはなして……!!わたしにもう関わらないで!!」
「ねぇ桐子ちゃん。桐子ちゃんはなんでヒーローになりたかったの?」
「そんなこと聞いて何になるの!?同情でもしてくれる!?それともなにまだわたしはヒーローになれるって言いたいの!?」
「いいから答えて」
先生は諭すように、それでいて跳田が聞いたこともないような低い声で言った。そのような先生を見たことがなかった跳田は狼狽しながら答えた。
「っ、ヴィランが憎くかったの!だからヒーローになりたかった!!わたしはそういう人間なの!」
癇癪を起こした子供のように跳田は喚き散らす。自分をこれでもかと卑下する跳田だったが幼い頃から跳田を見てきた先生の認識は違った。
「んー、嘘」
「うそじゃない!」
「本当に?私は違うと思うよ?あなたのインターンの時のニュースを見たけどヴィランが憎い人が小さい女の子を優先して人命救助するかな?」
「そっ、それとこれとは!」
話が違う。そう言おうとした矢先、先生が続ける。
「それに前も言ってけどあなたは誰よりやさしいもの」
「わたしはやさしくない……」
「それに病院にあなたのお見舞いに行ったときあなたのお友達に会ったの。確か耳郞さんって言ってたかしら」
その聞き覚えのある名前が出た瞬間、跳田の心臓がどきりと跳ねる。
「その子泣いてたよ?自分が気を失ったせいで桐子ちゃんが拐われたんだって。でもその子には目立った怪我はなかった。あなたは重症だったのに」
「あなたがヴィランから守ってあげたんでしょ?」
先生の言葉を聞きながら跳田は心の中で自分を縛っているものが少しだけ軽くなったように感じた。
「次の日は他のクラスの子全員来てたわよ?みんな桐子ちゃんが重症で寝ているのを見てとても悔しそうだった」
跳田の目から自然と涙が流れる。あんなことをしでかした私にやさしく接してくれているクラスメイトに対し、感謝と同時に疑問が湧く。
「なんで……?」
すかさず先生が疑問に答える。
「それってさ桐子ちゃんがそれだけ慕われる人になれてるってことじゃないかな」
そんな自覚など跳田本人にはない。しかし初見の印象こそおどおどしていたり、怖い印象こそあれど共に生活していればそのイメージは払拭されていった。
体育祭では優勝し、インターンでは凶悪なヴィランを捕まえたことで戦闘では強く頼れるイメージがつき、合宿では戦闘では無類の強さを持つ跳田が乗り物酔いを起こしたり、疲労から寝惚けてクラスメイトに叱られたり、肝試しでは最初は調子づいたことを言っていたのに絶叫したりと弱点がこれでもかとわかり、親しみやすさが生まれた。
いつの間にか跳田はクラスの中心人物となり、クラスメイトから一目置かれる存在へとなっていたのだ。もちろん跳田はこの状態を狙っていたわけではない。跳田の人柄や性格がクラスメイト認められ、慕われる存在になったのだ。
「でもっ……わたし……もう無理だよ…耐えられない………全部なくして消えてしまいたい……」
「でもそれでぐっすり眠れるの?」
「!」
自ら命を断とうとした時、心の中にはモヤモヤが募っていた。自分が死んでも何も変わらない。自分が犯した罪は死んでも消えることはない。自分が死んでもそれは償いにはならない。
最早逃げ道はなく、歩みを止めることすら自分には許されていない。償うにはもう進むしか道は残されていない。
なら、私はーーー、
「私は救いたい………!!この個性で…!償うために、責任を果たすために」
「私は命を奪ってしまった人の倍の数の人を救う!」
その顔は決意に満ちた顔だった。その顔だけで先生に成長したことを伝えることが出来る程に。
(ああ、いい顔になった………)
「うん……応援してる…!頑張ってね…!」
「うん、私頑張るよ先生!」
先生は涙ぐみながら跳田が乗り越える姿を見届けた。その決意に満ちた跳田の顔は再び夢に向かって跳んでゆけると確信させる表情だった。
相変わらず短いね。でもこれで跳田は立ち直れました。次回からは今度こそ家庭訪問編です。
·耳郞さん
「跳田があんなことになったのは私のせいだ」という感じで罪悪感をめっちゃ感じてます。なんと声をかけていいか分からず電話することもできていない状態。
という訳で次回はもう少し長く出来ると思うのでお待ちくださいませ。それでは!