個性:クラスターセル   作:鳥松

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前回で跳田が立ち直ったんですけど、皆さん的にはもっとやっちゃった方が良かったんですかね…。自分的には傷付いた人間が立ち直って頑張る方が好きなんですけどね…。
ですがご安心ください。仮免試験でも曇らせるし、なんなら先の方で今よりひどいことするんで大丈夫です。


お引っ越し

 

 

「行ってきます、先生、みんな」

 

 

あれから3日が経ち、跳田は制服に着替え、最低限の荷物を持って雄英高校へと向かおうとしていた。玄関には子供たちや先生がおり、跳田を見送っていた。

 

 

「お姉ちゃんいってらっしゃーい!」

 

 

子供たちの元気な声が跳田を見送る。中には泣いている子供もいた。そして先生も跳田に言葉を送る。

 

 

「………あんまり怪我しないでね。風邪とかひかないでね」

 

 

「……うん」

 

 

「電話したらちゃんと出るんだよ?」

 

 

「うん……!」

 

 

「……じゃあいってらっしゃい。頑張ってきてね、応援してるから」

 

 

 

「うん…いってきます!」

 

 

 

跳田は少し涙ながらに元気に先生に返す。それはもう心配させないように言い聞かせるように言った言葉。子供が親元を離れ、巣立ちをする子供が言った言葉だった。

跳田は扉を開け、学校へと向かってゆく。

 

 

 

「先生泣いてる?」

 

 

 

「き、気のせいじゃないかしら…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雄英に着くと、そこにはいつもと変わらぬ景色が広がっていた。こんなにまじまじと校舎を見たのは入試以来だろうか。びっくりするくらい大きな校舎はいつもと変わらぬ様子で佇んでいた。

そしてしばらく歩いていると、

 

 

「あ」

 

 

「あっ!」

 

 

 

葉隠とばったり鉢合わせてしまった。そして跳田を見つけるや否や葉隠は跳田に向かって走り出す。

 

 

 

「と、とと、とと桐子ちゃああああん!!」

 

 

 

「わっちょっ葉隠さっ!?」

 

 

葉隠は突然駆け寄り跳田を抱き締める。突然のことだったので跳田は反応出来ずなす術なく葉隠に抱き締められる。

 

 

 

「ととっ桐子ちゃああああ!」

 

 

 

「あっちょっと…!お、落ち着いてください…」

 

 

 

跳田は辛うじて声を出して葉隠を宥める。

 

 

 

「ちょっと葉隠、急にそんなしたら危ないでしょ。桐子も大丈夫?」

 

 

 

「き、響香ちゃん……!!」

 

 

 

「なんだその化け物にでも会ったような反応は」

 

 

 

葉隠により中々カオスになっていたその場を収めてくれたのは件の耳郞だった。そして耳郞に遭遇した跳田は顔青くして名前を呼んだ。そして他の女子のみんな、それから男子たちも続々と近寄ってくる。

 

そして跳田はクラスメイトたちの顔を順に見て口を開いた。

 

 

 

「すいません、皆さん。ご心配とご迷惑をおかけしました……」

 

 

 

 そして、私はみんなから目を逸らして、顔を伏せて、そう零す。

みんなが一瞬、息を呑んだのがわかった。それは哀れみかそれとも跳田の心境の変化を読み取ったのだろうか。

 

 

俯いていた跳田の肩に誰かが手を置いた。顔を上げると、八百万が跳田の隣にしゃがんでいた。

 

 

 

「……跳田さんが謝ることなんて、何もありませんわ。今、こうして、私たちのところに戻って来てくださっただけで十分ですわ」

 

 

「そう、そうだよ、桐子ちゃん。心配するのだって、友だちで、仲間なんだから、当たり前のことだって」

 

 

「うん、麗日の言う通り……ま、ウチと葉隠もしばらく意識不明で心配かけたから気持ちはわかるけどさ、今だけはほら、爆豪のこと見習った方がいいって。アイツ、全然申し訳ないとか思ってないからね」

 

 

「るっせぇ聞こえてんぞ耳コラァ! 俺の心配しやがる奴なんざ片っ端からぶっ殺すに決まってんだろうがァ!!」

 

 

 

「ほらね」

 

 

 

自身も拐われたと言うのに爆豪は通常運転だった。それに他の生徒たちも今まで通り跳田と接している。それは跳田にとって一番嬉しいことだった。跳田は今回の一件でクラスメイトが疎遠になったりすることが一番の懸念だったがどうやら杞憂で済んだようで跳田は安心した。

 

 

 

雄英の校舎から人影が歩いてくるのが見えた。そこには、うっすら生えた髭も含めてまさしくいつも通りにヒーロースーツ姿の相澤先生がいた。

 

 

 

「――飯田、全員いるか?」

 

 

「はい! 1年A組21名、全員揃っております!」

 

 

 

 飯田くんの返事を聞いた相澤先生は一つ頷くと、念押しのように集合の号令をかけて今一度口を開いた。

 

 

 

「とりあえず1年A組。無事にまた集まれて何よりだ」

 

 

 

 相澤の言葉に生徒たちの多くが安堵の表情でウンウンと頷く。誰が死んでもおかしくない状況だったし、誰が居なくなってもおかしくない状況だった。そんな中、全員が再び集まれたというのは奇跡に近いだろう。

 

 

 

「皆、許可降りたんだな!」

 

 

 

「私は苦戦したけど…なんとか親を説得したよ!」

 

 

 

「フツーそうだよね…」

 

 

 

 瀬呂が声をかけると、葉隠と耳郎の2人が家庭訪問の際の苦労を語った。葉隠と耳郎は催眠ガスで入院していたのだ。全寮制導入への説得は特に苦労しただろう…と跳田は思ったが、耳郎家だけはすんなり許可が出たらしい。

実際跳田も拍子抜けなくらいすんなりことが進んだので案外そういうものなのかもしれない。

 

 

「さて、これから寮について軽く説明するが、その前に一つ話がある。大事な話だ、いいか。轟、切島、緑谷、八百万、飯田。この5人は、あの晩あの場所に2人の救出に赴いた」

 

 

 

相澤の話を聞いてクラス全員が5人の方を見る。全員が驚いた顔をしており、跳田も知らなかったのでとても驚いて目を見開いた。

 

 

 

「…その様子だと行く素振りは皆も把握していたワケだ。全てを棚上げした上で言わせてもらうが、オールマイトの引退や連合の逃亡が無ければ俺は、葉隠、耳郎。そして跳田と爆豪以外の15人全員を除籍処分にしている」

 

 

 

 皆がグッと息を呑み、誰も口を挟めなかった。普段の表情、普段のトーンだというのに相澤の声には悲壮感が強く込められていたからだ。まるで本当にクラスの誰かが死んでしまったかのような…そんな声だった。

 

 

 

 

 

「まぁ、そういう訳で現場へ行った5人はもちろん、把握しながら止められなかった10人も理由はどうあれ俺たちの信頼を裏切ったことには変わりない。正規の手続きを踏み、正規の活躍をして信頼を取り戻してくれるとありがたい。我々教師たちも君たちや保護者の方々からの信頼を取り戻すべく励む所存だ……以上。さっ、中へ入るぞ。元気に行こう」

 

 

 

(((いや待って無理です…行けないです…)))

 

 

 

 

 元気に行こう、なんて相澤先生にしては珍しい言い草だが、生徒たちはそれどころではないようで背中を丸めているばかり。そうこうしているうちに相澤先生は寮の方に歩き出してしまって、しかしやはり他の生徒たちは動き出そうとしなかった。

 

 

 

「――おい、来い」

 

「えっやだ何?」

 

 

 

 突然、後ろの方にいた爆豪が上鳴の襟首を掴み、近くにあった茂みの陰に姿を消した。

全員の頭の上にはてなが浮かんだのとほぼ同時に、茂みの向こうから空気を割くような音とまばゆい閃光が。

そして茂みから出てきたのは電気放電のキャパを超えてアホになった上鳴だった。

皆は何が何やら分からず怪訝な表情をしていたが上鳴を見た耳郞は噴き出して笑っていた。

 

 

「切島」

 

 

 

 さらに爆豪は切島に近付いていったかと思うと、ポケットに突っ込んでいたらしい何かを差し出していた。よく見ればそれは、数枚の一万円札、高校生が持ち歩いているとは思えない金額だった。。

 

 

 

「え、怖っ、何カツアゲ!?」

 

 

「違ぇ俺が下ろした金だ! いつまでもシミったれてられっと、こっちも気分悪ィんだ」

 

 

 

 爆豪は万札を切島に無理やり押し付けると、「いつもみてーにバカ晒せや」と吐き捨てて寮の方へと歩いて行ってしまった。爆豪なりの気遣いなのだろうが本人にそれを言うと十中八九キレられるので誰も言わなかった。

 

 

上鳴の姿から笑いが起こり、空気が少し和んだところで生徒たちは寮へと入っていった。

 

 

「1棟1クラス。向かって右が女子寮、左が男子寮と分かれている。ただし、一階は共同スペースだ。食堂や風呂、洗濯はここで行え」

 

 

 

 玄関を空けて入室すると、シンプルながらもオシャレな内装に目を奪われた。そして、ソファーにテーブル、大型テレビなどが既に設置されており、奥に見える台所も流行のオープンキッチンのようだ。因みに中庭もあるので敷地面積でいってもとても広い。

 

 

 

「ご、豪邸やないかい…………」

 

 

 

たった数日の日程で建設された寮だというのにこの豪邸具合は流石雄英というべきか。生徒ら大感激の新築になっており、麗日に至っては豪華さのあまり失神寸前である。

 

 

 

「聞き間違いかな…?風呂と洗濯が共同スペース?夢か?」

 

 

 

「男女別だ。お前そろそろいい加減にしとけよ」

 

 

 

「はい…………」

 

 

 

跳田も部屋を見回していると、相澤の説明は個人の部屋の説明へと移る。エレベーターもあるが、この人数では乗り切れないので隣の階段で移動である。

 

 

 

「各自の部屋は二階からだ。1フロアに男女各4部屋の5階建て。1人1部屋で、エアコン、トイレ、冷蔵庫にクローゼット付きの贅沢空間だ」

 

 

 

 部屋の中に入ると、そこは普通に生活するには十分な広さがある個室だった。ある程度の改装も認められているので自分好みの部屋が作れるだろう。多くの生徒がワクワクした表情で部屋内を見渡していた。

 

 

 

 

「ベランダもある。凄い!」

 

 

 

「豪邸やないかい………」

 

 

 

毎日を過ごす部屋なのだから、トイレやベランダなど隅々まで生徒たちはチェックする。しかしその傍ら麗日は再び失神しそうになっていた。

 

 

 

「部屋割りはコチラで決めておいた通りだ。勝手に部屋場所変えたりするなよ。どうしても必要な時は俺に言え」

 

 

 

「分かりました」

 

 

 

 女子は、二階に耳郎と跳田、葉隠。三階に麗日と芦戸、四階に八百万と蛙吹という部屋割りだった。

 

 

 

「各自、事前に送ってもらった荷物が部屋に入っているから、とりあえず今日は部屋でも作ってろ。明日また今後の動きを説明する。以上、解散」

 

 

 

そう言うと相澤は寮を後にした。生徒たちも解散し、それぞれの部屋へ入ってゆく。跳田も部屋へ向かおうとするが耳郞の視線に気付き足を止めた。

 

 

 

「…………………」

 

 

 

(な…なんか見られてる……?)

 

 

 

耳郞はしばらく跳田の首の辺りをじっと見ていると思うと跳田に近付いていった。

 

 

 

「今日の夜、ウチの部屋に来て」

 

 

「えっ、あ、はい…」

 

 

 

耳郞に耳元で囁かれ、跳田は萎縮気味に返事をした。その後耳郞は何事もなかったように立ち去っていったが、跳田は内心ドキドキでその場で立ちすくんでしまった。

 

 

 

「どしたの跳田」

 

 

 

「へあっ!?ああっ、いえ!なんでもないです!」

 

 

 

芦戸に突然話し掛けられ、ビックリした跳田は思わず敬語で答えてしまった。芦戸は不審に思ったものの、それ以上言及はしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………こわい」

 

 

 

部屋を完成させた跳田が自分の部屋の真ん中で小さく呟いた。跳田がこんなことを言う理由は先日の電話での耳郞の雰囲気とそれに伴い今夜部屋に呼ばれたことだった。

 

 

 

(お話をしようとか言ってたけどあの時の響香ちゃんなんか怖かったんだよなぁ………。いやもう何を話すかなんてわかってるけど…正直あまり話したくないなぁ…)

 

 

耳郞が話したい内容はつまり跳田が病み期であった時の話だろう。普通の人間にも病み期なるものは存在するが、せいぜい引きこもったり、ひどい時は手首を切ってしまうくらいだろう。

しかし跳田はそんなレベルではない。手首どころか首をバッサリいってしまっているのである。そんな話を耳郞に話すとどうなるだろう。ただでさえ病院で眠る跳田に泣きながら謝っていたというのに自殺しようとしていたなど言ってしまったら耳郞の心に深刻なダメージが入るのは明白だろう。

 

 

(なんとかごまかすか…まあ部屋に引きこもってたって言えば信じてくれる……はず。嘘つくのは忍びないけど響香ちゃんまで私のことで苦しむことなんてないから…)

 

 

 

こうして跳田は耳郞に対し、嘘をついて乗り切ることを決心した。跳田も申し訳なく思ったが耳郞まで知る必要はない事実だと思うことにした。

 

 

 

(私の罪は私だけの物、誰かを巻き込むなんてしちゃいけない。響香ちゃんが知る必要なんてない。私が一人で償わなきゃいけないんだから)

 

 

 

そんなことを考えていると窓の外はすっかり暗くなっておりそろそろ定刻になる頃合いだった。窓の外を見た跳田は自分の部屋を出て隣にある耳郞の部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「響香ちゃん?入っていいですか…?」

 

 

 

「ああ、入って」

 

 

 

跳田はドアをノックをした。するとすぐに耳郞の部屋から返事が聞こえた。跳田がドアを開けて部屋に入ると跳田の思わぬ光景が広がっていた。

 

 

 

「わ、すごい…!楽器がいっぱい…!」

 

 

 

耳郞の部屋にはドラムやギターなどの多種多様な楽器が部屋の中に所狭しと敷き詰められており、跳田は感嘆の声を漏らした。

 

 

 

「あー、あんまり気にすんな。取り敢えず、座って」

 

 

 

「あ、うん…わかった」

 

 

 

耳郞の口から発せられた声は先日の電話の声のように低く、跳田は思わず屈服したように指示に従ってしまう。

跳田が座ると耳郞も跳田の前に座り、跳田の顔の辺りをじっと見つめる。跳田はその様子にすっかり萎縮しており、顔には一筋の汗が流れる。

そして耳郞も同じように床に座る。

 

 

(え、なんか近いような…?)

 

 

耳郞が座った場所は跳田が座った場所の真横だった。跳田はてっきり自分の正面に座ると思っていたため疑問に思ったが口には出さなかった。

 

 

 

「それで、アンタに聞きたいことあんだけどさ」

 

 

 

「な、何でしょうか…?」

 

 

 

耳郞は少しの沈黙の後口を開いた。

 

 

 

「今日気付いたんだけどあんたの首にある傷、何?」

 

 

「き、傷…?そんなある…?」

 

 

「あるよ、ほら鏡」

 

 

 

傷と言われても何のことか分からない跳田に耳郞が手鏡を差し出し、手渡す。跳田が鏡を見て首を確認するが傷など何処にも見当たらない。

 

 

「うーん…傷なんてどこにも……」

 

 

「あるって。ほら、ここに………」

 

 

「ひぁっ!?」

 

 

「!」

 

 

耳郞が跳田の首の傷の部分を人差し指で優しく触ると跳田から聞いたこともないような声が聞こえてきた。それを聞いた耳郞は最初こそ驚いていたがすぐに口元がニヤリと笑い、首もとを触る手を緩めなかった。

 

 

「………ふーん」

 

 

「あっちょっ……!まっ……あぅっ…!」

 

 

 

「へぇ~…アンタ首弱いんだ」

 

 

跳田の首には確かに小さなそれでいて薄い傷があった。傷とはいえほとんど目立っておらず、実際跳田も言われるまで気付いていなかった。これに耳郞が気付いた理由は跳田のことをよく見ているからだろうか。

 

 

「ひっ…わかった…!わかったからっ…それっ、やめっ……」

 

 

 

「あ、そう」

 

 

跳田が傷を認識したことが分かると耳郞は指を止めた。しかし指は依然跳田の首にあり、跳田は命を握られているようなものだった。

 

 

「じゃあ嘘偽りなく、正直に答えて?これは何で出来た傷なの?」

 

 

耳郞の言葉を聞いた跳田の心臓がドキリと跳ねる。首の傷と聞いて思い出すのは、跳田が自殺をしようとした時のことだろう。あの時跳田は包丁で首を切りつけた。

初めは自殺しようとしたことをなんとかごまかそうとしていたが既に証拠が出てしまったせいで跳田は誤魔化す作戦は潰えてしまった。

 

 

 

「ぅ……その……何というか……料理してたら間違えて…………ひゃあっ!!」

 

 

「料理で間違えてこんなところに傷が残るとは思えないけど?」

 

 

 

そんなバレバレの嘘は通用する筈がなく、再び首にある指を動かされる。

 

 

「ひっ…う…!わっわかりました!言います言いますからぁ……!」

 

 

 

「包丁で…やりました……自分で……」

 

 

「………そっか」

 

 

 

耳郞は跳田の回答に少し驚きはしたものの、ある程度予想していたようで驚愕しているわけではなかった。そして跳田の首から手を離すと再び口を開く。

 

 

「………やっぱり、神野の事で?」

 

 

「うん……辛くって…」

 

 

跳田の言葉を聞いた耳郞は少し考えた後小さく息を吐いた。

 

 

「……そっか。ごめんな、電話とかしてやんなくて」

 

 

 

耳郞はそう言うと座ったまま頭を下げて跳田に謝った。耳郞は跳田の首の傷に気付いていた時から跳田に電話も何もしてやれなかったことを深く後悔していた。

 

 

 

「な、なんで響香ちゃんが謝るの!?」

 

 

 

「私がアンタのことをもっと気に掛けてればアンタが自殺することなんてなかったかもしれない」

 

 

「い、いやいや!だからって響香ちゃんが謝る必要なんてないから!ほんとに!それに私なんか死んでも誰も悲しまないよ!むしろ喜ばれるかもしれないなー……なんて~……ハハ……」

 

 

跳田はこの時耳郞の謝罪から少し、空気が重いと感じ自分にとって一番効くような自虐をした。只でさえ神野で300人程の犠牲者を出したのだ、跳田に恨みを持つ人間などごまんといるだろう。そういう意味を込めた自虐。最早跳田にとって自分の命など最も優先順位が低いものとなってしまった。

それが耳郞の琴線に触れたようで跳田の頬を両手で包み込むようにして跳田の顔を耳郞の方へ向けた。

 

 

「それ、もう二度と言わないで」

 

 

「…え……?」

 

 

「アンタが死んで誰も悲しまないとか絶対あり得ないから。もっと自分を大切にして。少なくとも私はアンタが死んだら悲しむからね」

 

 

「え…あの……えと……ご、ごめんなさい…?」

 

 

急にすごい剣幕で言われたので跳田はタジタジになって答える。耳郞の言葉には溢れんばかりの怒気が含まれており、怒っているというのが容易に伝わってきた。

 

 

「というか言いたいこと一杯あるんだけど、死のうとする前になんで電話とかで相談してくれなかったの?そりゃ電話しなかったウチも悪いけどさ、やる前でも何時でも良いから私に相談してくれればよかったじゃん!何でマジで辛いときに他人に相談出来ないんだよ、てかそういえばアンタは一人で抱え込むタイプだったね!仮にもウチはアンタのこと親友くらいに思ってんだからさ、もっと頼ってくれてもいいんじゃないの!?」

 

 

 

「あの………その……なんか色々ごめんなさい…?」

 

 

 

先程よりもすごい剣幕で、早口で言われたため当の本人である跳田もいまいち耳郞が言ったことが伝わっていない。

 

 

「本当に伝わってる!?」

 

 

 

「つ、伝わってます、大丈夫です!」

 

 

 

「長々と言ったけどさ、まあ要するに辛いときは私とかに相談しろよってこと。アンタが背負ってるものは大きいと思うけどさ、たまには全部下ろしても良いんだからな。それにどうしても無理だったらウチも一緒に背負ってやるからさ」

 

 

 

「…………良いの?」

 

 

 

「当たり前でしょ。一人で駄目なら二人で、二人で駄目なら三人で、だよ」

 

 

 

「ウチでも誰でもいいから頼ってね。桐子のためなら何でもやってやるから」

 

 

 

「な、何でも?」

 

 

「何でも」

 

 

「じゃあ肩揉んでー、とか」

 

 

「いいよ」

 

 

「じゃ、じゃあ…今日は一緒に寝てほしい……とか」

 

 

「どっちの部屋で寝たい?アンタの部屋?それともここ?」

 

 

「いっいや冗談だから冗談!勝手に話進めないで~っ!」

 

 

「良いの?ウチは全然大丈夫だけど」

 

 

「私が大丈夫じゃないんです!」

 

 

「ならいいけど…」

 

 

「でも…ありがとう響香ちゃん。その言葉だけでもちょっと楽になった気がするよ」

 

 

「うん、これから二人で頑張ろうな」

 

 

「うん。二人で!」

 

 

 

二人はとてもにこやかに話す。実は跳田は今日来るのに不安があったのだがそんなこともなかったようだ。

跳田はこれから自分の罪を償っていく。心強い仲間もいる。このままの調子なら跳田は自分で決めた償いを達成するだろう。

 

 

 

 

―-―このまま()()など起こらなければ。

 

 

 

 

 




やっと投稿出来ました…最近なんか思ったように書けなくて投稿が遅れています。つらい!
というか今回の話なんか百合っぽくなってるような…。おかしい…初めはこんな感じではなかったのに…!
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