個性:クラスターセル   作:鳥松

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必殺技をつくろう(1)

 

翌日、A組の生徒たちは夏休みの真っ最中ではあるが教室に制服で集合していた。教壇にいる相澤が生徒たちに向け今後のことについて話す。

 

 

 

「昨日話した通り、まずは仮免の取得が当面の目標だ」

 

 

「はい!」

 

 

「ヒーロー免許っていうのは人命に直接係わる重要な資格だ当然取得のための試験はとても厳しい。仮免といえどその合格率は例年5割を切る」

 

 

「仮免でそんなにキツイのかよ…」

 

 

 

例年多数の参加者がいる仮免試験は合格率は50%とかなり厳しくヒーロー飽和社会とは言われているが試験の厳しさは変わっていないようで本来ならば2年生の段階で取得する筈の資格を1年生で取得することの難しさを物語っていた。

 

 

 

「そこで今日から君らには一人最低でも二つ………」

 

 

相澤の話の途中、突然勢いよくドアが開けられ、エクトプラズム、セメントス、ミッドナイトの三人が教室の中へ入ってきた。

 

 

 

「必殺技を作ってもらう!!」

 

 

 

「学校っぽくてそれでいて、ヒーローっぽいのキタアアァァァ!!」

 

 

 

教室全体から歓声が上がる。必殺技というヒーローを志すなら一度は考えたことがあるであろうことを現実で考えて見るとなるとやはり心が躍る。

そして跳田もワクワクを隠せない。

 

 

(必殺技……!私も子供の頃とかによく考えてたなぁ…!)

 

 

 

「必殺!コレスナワチ必勝ノ型、技ノコトナリ!」

 

 

 

「その身に染み付かせた技、型は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押しつけるか!」

 

 

「技は己を象徴する!今日日必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ!」

 

 

「詳しい話は実演を交え、合理的に行いたい。コスチュームに着替え、体育館γに集合だ」

 

 

相澤にそう言われて生徒たちはコスチュームを手に取り、着替えた上で体育館へと向かう。

 

 

 

「トレーニングの台所ランド、略してTDL!!」

 

 

((((TDLは不味そうだ!!))))

 

 

(え、ト○キョーディ○ニーラ○ド?)

 

 

入学の初めに行ったウソの災害事故ルームとは違い、楽しげな雰囲気など微塵もないその雰囲気は生徒たちにヤバい感じを感じさせる。いや、そもそもTDLは色んな意味でヤバい。なぜUSJだのTDLだの人気テーマパークを意識したような名前をつけるのかわからないが危ないのでやめた方がいいと思う。

 

 

それよりこのTDLの床はコンクリートでできており、セメントスが自由に形を変えれるのである。それで一人一人に合わせた地形を作り出せる。台所とはそういう意味である。

 

 

さて、必殺技を作る理由だがヒーローには救助や捜索、戦闘など様々な場面で活躍の機会がある。その中でも戦闘力はヴィラン連合しかり、これから特に重要視される。

 

 

というわけで救助だろうが戦闘だろうが「これさえやればなんとかなる!」という技をつくろうという話である。安定択をつくるわけなので必ずしも攻撃技である必要はない。

 

 

 

「つまりこれから残り十日余りの夏休みは個性を伸ばしつつ必殺技を編み出すーー」

 

 

 

「圧縮訓練となる!!」

 

 

「尚、個性の伸びや技の性質に合わせコスチュームの改良も行っていくようにプルスウルトラの精神で乗り越えろ。準備はいいか?」

 

 

「ワクワクしてきたぁ!!」

 

 

セメントスが地形を作り、エクトプラズムが技を教え、ミッドナイトが技を評価する。そのようなシステムでこの圧縮訓練は行われた。当然跳田もそれに参加するわけだが跳田はある問題を抱えている。

 

 

「その…私あの時個性が暴走してからちょっと個性使うのが怖くて……」

 

 

「だから今までの中距離メインから近接格闘メインに切り替えようと思ってて……」

 

 

「フム…タシカニ、君ノ個性ハ幅広イ戦闘二対応出来ル個性ダ。ナラバ戦闘スタイルノ変更モ簡単ダロウ……」

 

 

「ダガ君ノ個性ハ戦闘以外ニモ大キナ活躍ガ出来ル。個性ノ使用モ満足ニ行エルヨウニ訓練シテイコウ」

 

 

「っはい!」

 

 

 

跳田は神野のあとから個性の使用を意図的に避けてきた。それはひとえに暴走の恐怖から。また暴走するのではないかとという恐怖がいつもつきまとう。

 

 

悩んだ跳田は以前のように飛蝗を大量に出して戦かうスタイルではなく体育祭から鍛練を重ねていた近接メインへと移行することを考えた。複眼の視覚共有やスプリングでの強化を合わせればそれなりの戦闘を出来るだろう。

 

 

しかし近接戦闘というのは奥深く、それなりに鍛練を重ねてきたとは言え、まだまだ素人。反射と打撃強化だけでは近接格闘を極めてきた、例えばそこにいるエクトプラズムや保須で戦った紅などにの強者たちには素人同然。実際保須では遠距離と視覚のアドバンテージがあったのにも関わらず重症を負ってしまった。

 

 

 

「デアレバ早速ヤッテイコウカ」

 

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

 

 

ということで近接格闘のプロであるエクトプラズムに教えを乞う。実際に他人からちゃんとした戦闘について教えてもらうのは初めてなので実りのある鍛練となるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フム…攻撃ヲ捌クコトハ出来テイルガ動キがマダマダ甘イナ。実戦投入スルニハマダ厳シイナ」

 

 

 

「うぐっ…まだまだ……」

 

 

 

「今日ハコノアタリデヤメ二シヨウ。残リの時間ハ個性ノ訓練ヲシヨウ」

 

 

 

「ッはい……!」

 

 

 

初めての訓練は結果的にエクトプラズムにボコボコにされる結果に終わった。エクトプラズムの動きに対応して防御は出来る。だが防御に精一杯で攻撃も出来ない、何なら防御しきれず攻撃を喰らってしまうことが多々見られた。

そもそも個性による防御を主体としてきた跳田にとっていきなり個性なしの戦闘は厳しいものがある。

 

 

 

 

「じゃあやってみろ」

 

 

「は、はい!」

 

 

 

そして近接格闘の訓練は終わり、跳田は相澤監修の元、個性の出力訓練を行うところだ。あの日から個性を一度も使用していない跳田にとってはリハビリのようなものである。

 

 

(ゆっくり……落ち着いて……)

 

 

深呼吸をして、気を落ち着かせながら個性を使用しようとする。するとやはり跳田の頭にあの日の記憶が甦る。その影響で個性の操作が鈍った。

 

 

「うわっ、わっ!?」

 

 

跳田は手から飛蝗を少し出して、盾を作ろうとしただけだったが想定より多く大量に飛蝗が飛び出てしまった。同時に跳田は神野のトラウマを思い出し、パニック状態に陥る。

 

 

「う、あっ…あっあああ……!」

 

 

 

跳田の異常を察知した相澤は個性で跳田を視て、跳田の個性を抹消する。すると、跳田の飛蝗は跳田の身体へと戻っていく。暫くすると飛蝗は完全に姿を消した。

 

 

 

「……ぅ………ッア………ハアッ……ハアッ……!!」

 

 

 

「………駄目か…」

 

 

 

「…ぅぁ……すみませ……」

 

 

 

「謝ることはない、大丈夫だ。少しずつでいい。失敗しても大丈夫だ、俺が消す」

 

 

 

「……っはい……!」

 

 

 

流石雄英で教鞭をとっているだけはある。それだけの信頼性が今の彼の言葉にはあった。先程まで涙目で憔悴していた跳田も相澤の言葉を聞いて目に光が戻った。

 

 

 

「さて跳田。もう一度やれるか?今日は終わりにしてもいいぞ」

 

 

 

「………いえ、やれます、やらせてください」

 

 

 

「………よし、じゃあもう一度やってみろ。失敗しても大丈夫だ、俺が消す。恐れずやれ」

 

 

 

「はい!」

 

 

 

(こんなとこで止まってられるか。強くならなきゃ、強く、強く、誰にも負けないように)

 

 

跳田には覚悟があった。自らが決めた償いを成し遂げるには強くなる必要があった。

エクトプラズムに近接格闘の鍛練をしてもらったが、別に個性を使うのを諦めたのではない。自らの弱点を克服するためエクトプラズムにそれを頼んだのだ。

跳田にとって個性のコントロールをすることなど仮免に向けての前提でしかない。ならば鍛練をやめることなど跳田にはあり得ない。

 

 

 

そうして10回程個性のコントロールの練習をして失敗を繰り返すとすぐに変化は訪れた。

 

 

 

(いけるいけるやれるやれる。私はやれる。ここでやれなきゃ罪から逃げると同じだ。もう決めたんだ、向き合うんだ。自分の罪と)

 

 

 

跳田は心の中で自らを鼓舞する。相澤もその様子をじっと見る。跳田の目の中には覚悟が灯っていた。そして決意を固め満を持して個性を発動した。

すると飛蝗は跳田の当初の目的通り小さな盾を作り出すように一点に集まり、徐々に盾を形つくる。

 

 

「や…やった……!出来た……!!」

 

 

「………ナイスだ跳田、良くやった。………頑張ったな」

 

 

 

「………!ありがとう、ございます…!」

 

 

 

このとき跳田は相澤に対し、少し驚いた。相澤が素直に褒めてくれたからだ。跳田が持つ彼の印象は厳しい人間、という印象だった。だから跳田は相澤の言動に驚いた。

 

 

 

(……俺が何かするまでもなく、跳田は自分で一歩成長した……すごい奴だよ、お前は)

 

 

 

「………先生」

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

「私のヒーロー名、『ライジングホッパー』から変えてもいいですか?」

 

 

 

「別に変えるのは構わんが……」

 

 

 

突然の提案に相澤は「どうした急に?」と付け足したかったが言う暇もなく跳田は喋りだす。

 

 

 

「……『進化し続ける』というのはまだ私には早かった……全て失った今は『ゼロ』から『1』にならないといけない……だから、『ゼロワン』……『ゼロワン』にします」

 

 

 

ゼロワン、跳田は自分のヒーロー名をそう名付け直した。なぜだかわからないが跳田はこのヒーロー名に強く惹かれた。

 

 

『ゼロ』から『1』へ跳ぶ。

 

 

そんな願いをこめて。

 

 

 

「お前が決めたことなら俺から文句は言わん。……だがお前なら『ゼロ』から『1』になることは簡単だ。だがそれで満足するな。お前ならもっと先へいける筈だ」

 

 

 

「頑張れよ」

 

 

 

 

「っはい!」

 

 

 

個性の発動は出来た。次はこれを戦闘中にスムーズに出来るよう訓練をする。一歩ずつ一歩ずつ進んでいく。これが跳田が歩く道、跳田のやるべきことだ。

 

 

「やってるねぇ皆!」

 

 

 

「オールマイト……!?」

 

 

TDLの入り口にいたのは先日現役を引退したオールマイトだった。神野の一件での怪我で右腕にはギプスをしておりトゥルーフォームであるしぼんだ骸骨のような姿だった。

 

 

 

「私が……呼ばれてないけど今日は特に用事もなかったので来た!」

 

 

「いや療養してくださいよ」

 

 

 

「オイオイつれないな必殺技の授業だろ!?そんなの見たいに決まってるんだよ」

 

 

 

(アイサツがわりに変身したわ……)

 

 

トゥルーフォームだったオールマイトは挨拶代わりにマッスルフォームへと変身し、TDLの中に入っていく。会見での痛々しい姿はどこへやら現在はイキイキしている。

 

 

そして個性の訓練に没頭している跳田を見ながら相澤と小声で話す。

 

 

 

「それで……跳田少女の様子は……?」

 

 

 

「想像以上に順調ですよ。個性のコントロールも徐々にですが以前のように出来てきています」

 

 

 

「そうか、それは良かった!……よし、私もアドバイスしてまわるぞ!」

 

 

 

「ヘイ跳田少女!」

 

 

 

「オールマイト!?なんでここに!?」

 

 

 

オールマイトは跳田の所に行って話かける。跳田はオールマイトが来たことは知らなかったので驚いた。というかオールマイトは療養していると思ったので余計に驚いた。

 

 

 

「どうだい?進捗は」

 

 

 

「個性のコントロールはまずまずって感じですけど……実は戦闘スタイルを近接メインに切り替えようと思ってるんですけど、あんまり上手くいかなくて……」

 

 

 

「じゃあひとつアドバイス。近接戦闘のコツは相手をよく見ることだよ」

 

 

 

「よく……見る………」

 

 

 

「相手の身体を良く見て、予測するんだ」

 

 

 

「見て…予測…!ありがとうございます!オールマイト!」

 

 

 

オールマイトの言葉を聞いて跳田は何かに気付いたようだ。見て予測。オールマイトのアドバイスから課題の突破口を導きだす、心なしか跳田の顔も少し晴れてきた。

 

 

 






·戦闘スタイルの変更
個性をあまり使用しないように自分の肉体で戦う近接メインへ移行。イメージとしては暴走克服後のメタルクラスタホッパー。アタッシュカリバーも積極的に使っていきます。


·ヒーロー名の変更
正直ヒーロー名をライジングホッパーにしたの後悔していたのでゼロワンへ変更しました。やっぱこれだね。



·メンタル
ちょっと強くなった。


·オールマイトのアドバイス
見て予測はナイトアイに影響されている。サイドキックだったし、少なからずオールマイトも影響されてるかなー、という感じ。


·相澤先生
ちょっと丸くなった。というより今までより優しくなった。
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