ようこそペルソナ的人間模様が繰り広げられる教室へ   作:行天

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感謝:誤字脱字報告ありがとうございます。お陰様で作品がより一層洗練されております。





壊れかけの少女

 自室から外に出て、自販機のところへと行った。

 さて、何を買おうか。

 

▶【盆ジュース】

 【モンタ】

 【剛健美茶】

 【極甘酒】

 

 ガコンッ

 ゴクゴクゴク

 

 美味い。

 疲れた頭にジュースの甘みが染み渡るようだ。

 心なしか頭がすっきりとした感じがする。

 そう思い、顔を空に向ける。

 うん?

 あれは、監視カメラか? こんなところにもあるのか。

 まあ、防犯の意味を考えれば当然か。

 そんなことを考えつつ、風が気持ちいいので、少し夜風にあたろうと付近を散歩することにした。

 

 

 しばらく、散歩をしていると、

 

 

「あーーーーーーウザい!」ガンガンガン

 

 なにやら物騒な声が聞こえ、何かを叩くような音が聞こえる。

 気になり、そちらの方へと静かに歩み寄る。

 

「マジでウザい、ムカつく。死ねばいいのにーー」ガンガン

 

 声の主を見ると、櫛田さんだった。

 普段の様子とは違い、呪詛のような暴言を吐き、寮から少し離れたところにある公園にもつながっている池の鉄格子を思いっきり蹴りつけている。

 ……なにあれ、こわい。

 

「堀北ウザい。ほんっとウザいっ! 自分が可愛いと思ってお高く止まりやがって。雨宮のお陰で、クラスに溶け込めたコミュ障のくせに、いい気になりやがって」ガンガン

 

 どうやら鈴音に対して、よく思っていないらしい。クラス一の人気者の美少女とは思えない様子だ。

 

「綾小路もふざけたこといいやがって! 誰があんな盛りのついた猿どもとデートするかっつうの!」ガンガン

 

 ……どうやら清隆と健たちに対しても、よく思っていないらしい。

 しかし、止めてあげてほしい。

 鉄格子のライフはもうゼロだ。

 

「雨宮も雨宮だ! ちょっと女子にモテるからって、調子にノリやがって! チヤホヤされていい気になってんじゃねえよあのスケコマシ野郎! 最初に声かけてやったのはこの私だろうが、それをデレデレとよりにもよって堀北を口説きやがって! まず最初に私を口説くのが筋ってもんでしょっ!」ガンガンガンガン

 

 あれ、俺の暴言だけ長くないか。

 …………

 ……

 うん。俺は何も見なかった。そうしよう。

 そう思い、そっとその場を去ろうとする。

 そのとき、

 

 Wake up, get up, get out there~♪

 

 俺のスマホから着信が入った。

 すぐに、着信を切るが、

 

「……誰?」

 

 グリンと首を回して、櫛田さんがこちらを見てきた。

 ヤバい! どうする!?

 

 【「にゃ~」と鳴き真似をする】

 【「ばっかもーん!そいつがルパンだ!」と言って、取り込み中を装う】

▶【三十六計逃げるに如かず、もうすでに駆け出している】

 

 俺はすでに駆け出していた。

 我ながらナイスな判断だ。

 

「待て――!」

 

 すぐに櫛田さんが追いかけてくる気配を感じる。

 だが、逃げ足にかけては自信がある。

 俺は風だ。

 そう、囚われを破らんとする反逆の翼をもって、大空に飛びたつ祝福の風!

 はっはっはっ捕まえられるものなら捕まえて――、

 

「逃さないっ!」

 

 速い!

 すごく速い!

 バカな!

 速すぎる!

 すでにすぐ後ろに強大な気配を感じる。

 このままでは捕まってしまう。

 どうする!?

 

 

 

 【ペルソナァアア!!】

▶【そうだ!あそこなら!】

 

 

 

 俺はそう思い、一つの閃きに従い、目的地まで駆けていった。

 

 

 

「はーっ。はーっ。捕まえた♪」

「捕まった」

 

 俺は先程立ち寄った自販機の前まで来て、櫛田さんに捕まってしまった。

 

「ねえ、雨宮くん。…………聞いたの?」

 

 俺の名前を呼ぶときまでは、可愛い声と仕草をしていたが、「聞いたの?」がこの世の全ての闇を溜め込んだような声になっていた。

 俺は諦めて、会話をすることにした。

 

「ああ。聞いた」

 

 そう伝えると、櫛田さんは近づいてきて、ドンっと自販機に俺を押し付ける。

 そして、一瞬だけ、悲しそうな目をした後、こちらを殺さんばかりに睨みつけてくる。

 

「さっき聞いたこと……誰かに話したら容赦しないから」

 

 まるで、氷のような冷たい言葉でそう言ってくる。

 

「話したらどうするんだ?」

「今ここで、あんたにレイプされそうになったって言いふらしてやる」

「冤罪じゃないか」

「大丈夫、これで冤罪じゃないから」

 

 そう言って、櫛田さんは俺の右手首を掴んで、手をそのまま自分の胸へと持っていく。

 柔らかな感触が、手から伝わってくる。

 

「あんたの指紋、これでべっとりついたから。証拠もある。私は本気だから。わかった?」

 

 そう言われて俺は……。

 

 【分かったから、手を離せ】

▶【せっかくだ。ひと揉みしておこう】

 

 

 モミッ「あっ」

 

 モミッモミッ「や、やめっ」

 

 モミモミ「やめろ! このっ――変態!」

 

 そう叫び、櫛田さんは俺を突き飛ばし、同時に左頬目掛けて「バチンッ」と強烈なビンタを浴びせた。

 痛い、だが費用対効果としてはしょうがないだろう。

 ビンタをした櫛田さんは、顔を上気させて言う。

 

「はっ! これで正真正銘レイプ犯ね! 良い? 少しでも怪しい動きを今後したら、今日のこと学校中に広めてやるから、学校にだって被害を訴えてやる!」

 

 櫛田さんは、ムキになるようにそう吐き出す。

 その様子を見て、俺は人指し指を立てる。

 

「……なに、その指?」

「上を見てみろ」

「上? 何のこと、よ……」

 

 どうやらすぐ気づいたようだ。

 ここには、防犯用の監視カメラがつけられている。

 そのカメラの存在を見て、櫛田さんは驚愕の表情を浮かべる。

 

「あんた! これがわかってて、ここに……!」

 

 怒り心頭と言った様子で、櫛田さんは睨みつけてくる。

 俺は自販機から体を起こすとしっかりと目の前の彼女を見る。

 

「だ、だからなによっ! あんたが胸を触った証拠が確実になるってだけでしょ!」

「ちがう。正確には、『逃げてきた男子生徒を追いかけてきた女生徒が、自販機に男子生徒を叩きつけた後に、自らの胸を触らせて、すぐにビンタをしてきた』証拠だ」

「な、な、そんな……」

 

 櫛田さんの体からみるみるうちに力が抜けていくのが見て取れる。

 これでいくら櫛田さんが指紋を証拠に出しても、どちらの主張が正しいかは明白だろう。

 まあ、見方を変えれば、痴情のもつれにも見えなくもないから、そっちの線では使えそうだが、ここは黙っておいた方が良いだろう。

 そんなことを考えていると、櫛田さんは急にうなだれていた頭を空に向かって反りあげる。

 

「あは、あははっ! こんな、あっさり……、終わった! 私の、終わっちゃった…………終わり! おわり! ゼンブ、オワリ!」

 

 目の前の櫛田さんは、まるで、壊れた機械のように、うつろで悲しげで、今にも泣き出しそうな表情で、誰に言うわけでもなく、悲嘆に暮れている。

 

「もう、疲れた……、つかれた。私は、何のために……、これが我慢してきた結果なの…………もういや、……もう、終わらせて」

 

 呆然自失とはまさに目の前の彼女のようなことを言うのだろう。

 まるで触れれば崩れてしまうようなそんな彼女を見て、

 

 俺は……、

 

 【櫛田さんをそっと抱きしめる】

▶【櫛田さんが壊れないように強く抱きしめる】

 

 目の前の今にも泣き出しそうな少女が、剥がれ、崩れ落ちないように強く抱きしめた。

 

「はなせ!」

「いや、離さない」

「やめろ!」

「やめない」

 

 櫛田さんは抵抗するように俺の体を何度も叩き、俺の足を何度も踏みつける。

 

「なんで、なにすんのよ! 意味わかんない!」

「こんな泣き出しそうなやつ。……ほっとけるわけないだろ」

「うるさい! うるさい!」

「大丈夫だ。俺はお前の味方だ」

「嘘だ! 嘘だ! 嘘だ! あんたもどうせあいつらと一緒だ!」

「ちがう。俺はお前の味方だ」

「嘘だ嘘だ……そんなわけない。こんな私をみて、そんな風に思うはずない!」

「大丈夫。大丈夫だ。櫛田さん」

「なんで、なんで離してくれないの……、嘘だ、こんなの、嘘だ……」

 

 しっかりと、腕の中で抱きしめた彼女に「大丈夫、大丈夫だ」と何度も伝える。

 伝えるたびに、「嘘だ、ウソだ……」と何度もつぶやき、すすり泣く声が聞こえるが、時間をかけ、何度も同じやり取りをしていると、次第にその声は弱くなり、そして、聞こえなくなった。

 

 

 

 しばらくして、ゆっくりと話しかける。

 

「……何をそんなに怖がっているんだ。ちゃんと話してくれ」

「やだ……話したくない」

「だめだ。話せ」

「やだ、やだ」

「ちゃんと聞くから、大丈夫。俺は裏切らない」

「…………」

 

 そう伝えると、しばらく、沈黙した後に、少しずつ櫛田さんは話し始めた。

 

 

 

 幼少期から褒められること、認められることが好きだった。

 頑張っていい結果を取って褒められることが好きだった。

 でも自分の才能の限界を知った。

 そして、自分でも抑えきれない『承認欲求』。

 だから、誰にも真似できないことをしようと思った。

 誰よりも優しく、誰よりも親身になり、誰に対しても分け隔てなく関係を築くそんな人気者になるために。

 そして彼女は手に入れた。

 全身を駆け巡るような耽美で甘く満たされていく『欲』。

 しかし、自分の心を削っていく。

 得る『欲』と同じほどの強大な『傷』をつけていく。

 そして、心を保つために、ストレスのはけ口として選んだのが、ブログ。

 超大なストレスを吐き出すかのように、クラスメイトの悪意を書き綴った。

 だが、最後に、運悪く、いや、必然かのようにクラスメイトにそのブログが見つかり、責め立てられる。

 そして、最後に振りかざしたのは、『真実』。

 残酷で、非情で、悲しい『真実』。

 後に残ったものは、二度と戻らないほど叩かれ、投げ捨てられ、ぐちゃぐちゃに壊れた中学校生活の『思い出』。

 そして、それを冷酷に見下ろす自分。

 それが、全て。

 

 

 

 

 話をして、櫛田さんは再び黙り込む。

 そんな彼女に俺は……、

 

 【一番になることはそんなに大事なことか】

 【がんばったなと褒める】

▶【バカだなとつぶやく】

 

「櫛田さんは、バカだな」

 

 俺がそうつぶやくと、櫛田さんは再び、力を籠めて、暴れながら言う。

 

「やっぱり! ウソつき! 死んじゃえ! あんたなんて!」

「落ち着け。ちゃんと聞け」

「やだ! もうやだぁ!」

 

 震える彼女の頭にしっかりと手を当てて撫でる。

 

「本当にバカだな。誰かに褒められたいと思うのは、誰でも思うことだろ。自分がおかしいみたいに言ってたが、俺だって褒められたいし、認められたい、信じてもらいたい、助けてもらいたい、話を聞いてほしい、間違ったときは叱って欲しい、頑張ってと励ましてほしい、心細いときは一緒にいてほしい、ひどいことを言われたらやり返したい、ムカつくやつはぶん殴りたい、誰かに愛してもらいたい、欲求をあげたらキリがない。……当然じゃないか。それは誰もが当たり前に感じることだ」

 

 目の前の女の子は、不安定になりながらも、ただ誰かに褒めてほしくて、認めてほしくて、誰よりも努力してきたただのがんばり屋さんじゃないか。

 だから、伝えたい言葉を紡ぐ。

 

「大丈夫。櫛田さんはおかしいやつじゃない。ちゃんと『人間』だ。『壊れてなんかない』。だから、俺は目の前にいる、ちょっとおバカで、不器用な『櫛田桔梗っていう一人の人間』の味方だ」

 

 そう伝え、「大丈夫。大丈夫だ」と言葉を添えて、丁寧に頭を撫でた。

 すると、小さく嗚咽が聞こえてきた。

 

「えぅ……、えぐっ……、……うわあああああああああああああん!!」

 

 そして、ようやく彼女はちゃんと声を出して泣いてくれた。

 剥がれない瘡蓋(かさぶた)を洗い流すように、ちゃんと泣いてくれた。

 もう、夜も遅いので、櫛田さんには悪いが、少し肩に顔を押し当てさせてもらい、彼女の声が響き過ぎないように、泣き止むまでそうした。

 

 

 

 

 

 しばらくして、櫛田さんが泣き止んだので、ある提案をした。

 

「櫛田さん。俺と共犯者になろう」

 

 そう伝えると、泣きつかれて、赤く腫れぼったい目を上目遣いにしながら、こちらを見てくる。

 

「……どういうこと?」

 

 ついさっきまでのどす黒い声色から一転して、か細く可愛らしい声に、思わずクスリと笑いそうになるのをこらえて、言葉を続けた。

 

「櫛田さんが皆から褒められ、認められるように手伝う。代わりに、イライラしたときは、俺に話すこと」

「……それって雨宮くんにメリット無いよ?」

「いや、俺もその時に、普段言えないような愚痴を聞いてもらう。それでいい」

 

 そう伝えると、櫛田さんは、じーっとこちらを見てくる。

 そして、確認するように聞いてくる。

 

「本当に、誰にも言わない?」

「言わない」

 

「録音したりしない?」

「しないしない」

 

「録画もだめだよ?」

「もう逆に俺が愚痴ってるときに録画してもいいよ」

 

「私、あなたのこと、ひどく言うかもよ?」

「じゃあ、それにムカついたら言い返すからいいよ」

 

「あなたが好きになった人のこと、こっぴどく罵るかもよ?」

「そういう嫌なところも許せるような相手を見つけるから大丈夫」

 

 少し、考えるようにして、そして、最後の確認とばかりに聞いてくる。

 

「……裏切っちゃ、やだよ?」

 

 俺は、櫛田さんを安心させるためでも、慰めるためでもなく、ただ事実として伝える。

 

「言っただろ。共犯者になってくれって。どちらかが裏切れば、共犯者なんだ。どうせ二人して共倒れだ。だから、俺は裏切らない。櫛田さんも裏切るなよ?」

 

 そう伝えると、櫛田さんは「あはっ」と言い、まるで天使のように明るい笑顔を浮かべた。

 

 

 

************************

      我は汝…汝は我…

   汝、ここに新たなる契りを得たり

        契は即ち、

   囚われを破らんとする反逆の翼なり

 我、「悪魔」のペルソナの生誕に祝福の風を得たり

   自由へと至る、さらなる力とならん…

 

   ペルソナの力を育てる人間関係

    「悪魔」コープが解禁した!

************************

 

 

 

 

 

 

 その後、寮へと帰り、別れようとした際に、「言い足りない」と櫛田さんがいきなり言ってきた。

 

「どうした、急に?」

「さっき、雨宮くんが盗み見したから、まだストレス発散できてない」

「……どうしろと」

「付き合って」

「……どこに?」

「ちがう。愚痴に」

 

 頬を膨らませながら、そう言ってくる。

 正直、色々と殴られたり、踏まれたりで疲れているが、それは自業自得な面もある。

 まあ、まだ不安なのかもしれない。

 

「わかった。誰にも聞かれない場所か……、また、外に行くしか」

「部屋」

「え?」

「雨宮くんの部屋でいい」

 

 ……、んん?

 

「それは、まずいんじゃないか?」

「裏切るの?」

 

 間髪いれずにそう言ってくる。

 そう言われたら、断れない。

 

「……わかりました」

「うん。決まりね」

 

 

 そして、俺の自室で、愚痴大会が始まる。

 やれ、池や山内が胸を見てきてキモいとか、軽井沢さんが洋介と付き合ってることをネタにマウント取ろうとしてきてウザい等々、とても人には言えない愚痴をこぼすので、「露骨にエロい目で見るのは確かにウザいな」とか「リア充は爆発してほしいな」などの相槌を打つ。

 どれも俺の心の内で思った本当の言葉で答えるようにした。

 ただ、胸のくだりでは、「雨宮くんも勝手に人の胸を揉んできたりして、最低の痴漢野郎だね」とニッコリしながら、言ってくるので、「じゃあ、そっちは付き合ってもいない男に胸を触らせる痴女だな」と言い返したら少し口論になり、「堀北に雨宮くんに胸触られたって言っちゃおうかな」と言われ、「お願いです。脇腹に穴が開くので勘弁してください」と結局負けたりした。

 

 そんなことをしていると、だんだん先程の疲れもあったのか櫛田さんが眠そうになってきたので、自分の部屋に帰るように伝えると、「やだ。帰らない。まだ言いたりない……」と我儘を言うので、力づくで追い出そうとすると全力で抵抗してきて、すぐに眠ってしまった。

 さすがに寝ている女子を廊下に放り出すことはできないので、仕方なくベッドで寝かせて、自分は床に横になり、タオルケットを被ることにした。

 

 ……おやすみ。

 

 

♪♪♪

《蓮の度胸が磨かれた!》

 

♪♪♪

《蓮の優しさが磨かれた!》

 

 

 

 

 

 

~櫛田桔梗side~

 

 朝、目が覚めると制服のまま、見慣れない部屋の見慣れないベッドに寝ていることに私は気づいた。

 そうだ。昨日は。

 そう思い、部屋の中を見ると、一人の男子が床に横になって寝ていた。

 その寝顔を見ていると、胸の鼓動が速くなり、落ち着かなくなる。

 絶対に見られてはいけない姿を見られ、

 絶対に知られてはいけないことを自分の口からしゃべらされて、

 私の暗い部分を、壊れかけた部分を丸裸にされて、

 そして、その上で真正面から私という存在を受け入れてくれた。

 壊れてないよと、きっと自分でも自覚していなかった一番欲しい言葉を与えてくれた。

 なんなんだこいつは。

 思い出せば、よくもまあ、あんな恥ずかしい台詞を面と向かって言えるものだ。

 そう考えていると、恥ずかしさと嬉しさと色々な感情がぐちゃぐちゃに混ざり合ってきた。

 

「不思議な人」

 

 何をどんな経験すれば、こんな人間ができあがるのだろう。

 親の教育? 良い友達に恵まれた?

 いや、そんなことではないだろう。

 一度でもこっぴどく心や感情といったものをへし折られた経験がなければ、何度も人から不条理に晒され、理不尽なことをされていなければ、私の過去を受け入れられるはずがない。

 その上で、本心から誰かとのつながりを求め、立ち向かっていくのだから。

 正直、私が誰にも真似されないで、一番を取れると思った『これ』も、すでに、たった一ヶ月足らずで彼に奪われようとしている。

 

 でも、奪われてほしい。『奪って』ほしい。

 そう思ってしまう。

 

 私より優れた人はいくらでもいる。

 それに嫉妬した。

 でもなぜか、この人には嫉妬や嫌悪という感情があまり持てない。

 羨ましい。

 これは嫉妬ではなく、羨望。

 大嫌い。

 これは嫌悪ではなく、すでに芽生え始めた感情の裏返し。

 ずるい。ずるい。

 なんだか、色々考えていくうちにイライラしてきた。

 ちょっと意地悪してやろう。

 そう思い、私はベッドから立ち上がり、彼の側まで近づく。

 すると、

 

「鈴音。脇腹はもうやめてくれ……」モニャモニャ

 

 私の中で、一気に激情が燃えあがる。

 今、名前で呼んだ?

 いつもは、苗字にさん付けで呼んでいるはずだ。

 ということは、すでに隠れてそう呼んでいるのかも知れない。

 許さない。

 そんなことは許されない。

 渡さない。

 この人だけは、絶対に渡さない!

 

「櫛田さん。大丈夫。俺は味方だ……」モニャモニャ

 

 ……ずるい。

 本当にずるい。

 寝言まで、ずるい。

 さっきまでの激情が治まっていく感覚がする。

 

 ……いや、やっぱり許せない。

 夢の中に私以外の女が出ているということに。

 この人は私のだ。

 ここまで私を好き勝手したんだ。

 責任をとってもらわないと。

 この人に褒められたい。

 この人に認められたい。

 この人に甘えたい。

 雨宮蓮を。

 私の『蓮』を逃さない。

 蓮は私の共犯者。

 共犯者とは運命共同体。

 

「桔梗。……あなたの櫛田桔梗だよ。共犯者さん」

 

 私は蓮に近づき刻み込むように囁いた。

 とりあえず、今のところはこれで良しとしよう。

 そう思い、私は身だしなみを整えるために自分の部屋に帰ることにした。

 

 

RANK UP!

《『悪魔』のコープのランクが2に上がった!》

 

RANK UP!

《『悪魔』のコープのランクが3に上がった!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん。ひより、まだ、その本は……」モニャモニャ

 

 私はまず最初に彼の周りに(たか)る雌豚共を洗い出すことを固く決心した。

 

 




 平素より、お気に入り登録、感想・評価、誤字脱字報告等々誠にありがとうございます。

 ここまでお読みいただいた方も気に入っていただければ、お気に入り登録、感想・評価等、何卒よろしくお願いいたします。


 はい。ということで、櫛田さん回でした。
 いかがだったでしょうか。
 賛否両論あるかと思いますが、まずは私の解説(言い訳)を聞いてくださいな。

 まず、私が考える櫛田さんとは、過剰な承認欲求を自覚し、乾きを知らないその欲求を満たすためにストレスでハゲそうになりながらも止められないでいるという異常性と依存性を持ち、一般的な感性とは程遠い状態……と思っている少女ではないかと考えました。
 私的にはむしろ、そんなになりながらも継続できるってすごくね?と思ってしまうのですが、まあそんなことは置いておいて、
 つまり、そうした普通の人とは違う異常性を自覚しているので、自分を『人間以外の何か』、もしくは『壊れた人間』とでも思っているんじゃないかと考察しました。
 でも実際は、めっちゃ努力家の女の子(……まあ他人を不幸にしてますが、誰しも多かれ少なかれそういうことをしているだろうし)と考え、自己否定している自分を受け入れてくれる存在を探しているのではと深読みし、この話となりました。

 そういうこともあり、「人間的じゃない」の意味を込めて、アルカナは「悪魔」にしました。悪魔が人間に憧れて成長するとかちょっとポエム。
 櫛田さんの独白のような演出は、コミュランク3達成(もしくは成立)時の特殊演出で、他のコミュでも予定しております。

 さて、それにしても一気に好きになりすぎじゃね?と思う方もいるかと思いますが、コミュランクというのは、『その人らしい人間的成長』の過程だと思っています。
 なので、現在の状態は、自分の存在を認めてくれる人が現れて、なんとしても逃さないようにしている依存対象が変化した依存状態です。
 これから櫛田さんなりの人間的な成長ができるように期待しましょう。

 つまり、何が言いたいかと言うと、
 「重々ドデカ感情をぶつけて、櫛田さんをデレデレにしたかっただけ!」

 はい。ということで言い訳終了。
 怪文書並に書いてしまった気がします。
 

 はい、ということで、
 もしも選択肢のコーナー(妄想です)

 【盆ジュース】
 【モンタ】
 【剛健美茶】
 【極甘酒】

 ここは当初の目的の甘い飲み物を選ぶことが大事です。
 ただ、甘酒はスッキリしない甘さなので、盆ジュースかモンタでないと監視カメラの存在に気づきませんので、後々の選択に影響を及ぼします。


▶【「にゃ~」と鳴き真似をする】
▶【「ばっかもーん!そいつがルパンだ!」と言って、取り込み中を装う】
 【三十六計逃げるに如かず、もうすでに駆け出している】

 どちらを選んでも見つかります。ただ、反応が変わりますので、気になる人はセーブ&ロードが必要になります。そして、コープ開放はできますが、綾小路的な関係性になります。


 【ペルソナァアア!!】
 【そうだ!あそこなら!】

 ペルソナを叫ぶと寮の自室まで逃げ切ることができます。
 しかし、当然そんな叫び声を上げる人物は一人しかいませんので、バレます。
 そして、その後、着信が何十回とメールの着信がすごい速度で連続してくるので、恐怖で寝不足になります。
 翌日、登校すると、櫛田さんは露骨に近づいて来ませんが、急に着信が掛かり、例のBGMが流れ、「あ、雨宮くんごめんね。間違えて電話かけちゃった♪」と白々しいほどわざとらしい行動に出ます。主人公は一日お腹が痛くなります。
 そして、放課後人気のない場所に呼び出され……、あとはおわかりでしょう?


【分かったから、手を離せ】
【せっかくだ。ひと揉みしておこう】

 自販機の前でなら、基本的にどちらを選んでも問題ありません。
 しかし、揉むとイベント後の愚痴大会で特殊エピソードが追加されます。
 あと柔らかいです。


【櫛田さんをそっと抱きしめる】
【櫛田さんが壊れないように強く抱きしめる】

 そっと抱きしめると引き剥がされます。絶対に引き剥がされてはならないときだってあるのです。


【一番になることはそんなに大事なことか】
【がんばったなと褒める】
【バカだなとつぶやく】
 
「一番になること……」を選ぶと、ああ、こいつわかってくれないんだなと絶望されます。これ以上発展せず、数日後、夜あなたが一人で歩いていると後ろから……BADENDです。
「がんばったな」を選ぶと、そんな安い言葉はいらねえんだよと思われ、絶対退学させてやるモードに入ります。その後の展開次第では、今回のような状態まで持っていくこともできますが、特別試験時の妨害がすごいので、色々なものの難易度が上がります。



ふう(達成感)。今日の後書きは疲れた。
異常です(櫛田さんへの偏愛具合が)



ちなみに、作中で主人公に電話をかけてきたのは、綾小路です。
彼はのちにこう語ります。

「漠然と今、蓮に電話かけたほうが良いと思ったんだ」
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