ようこそペルソナ的人間模様が繰り広げられる教室へ   作:行天

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 感謝:いつも誤字脱字報告ありがとうございます! 自分の間違いの多さと善意で校正いただいている方々にただただ、感謝と申し訳無さで頭があがりません。

 今日は祝日なのと、読むのにだいぶ時間がかかりそうなので、早めに投稿です。

※【読む前のご注意と超推奨】
 今回の話は、大量の画像を添付しています。
 そのため、通常の設定ですと、1回1回画像画面に飛ばされるので、ページ右上にある「閲覧設定」⇒「挿絵表示 有り」を選択し、再度ページ更新をかけていただくと非常に読みやすいです。
 読者の皆様のお手を煩わせること大変申し訳ございません。
 
 また、PC画面を基準に画像加工をしていますので、デバイスが違う方は読みにくかったらすみません。
 あくまで今回の話を最大限お楽しみいただくための推奨ですので、強制ではありません。
 何卒よろしくお願いいたします。

 また、各中の用語説明の注釈を多くいれており、読みづらいかも知れませんが、注釈つきのものは、「※」のところにポインタを運んだり、タップすると見れるはずです。
 以上、ご一読前の説明でした。

 それでは、読みづらいところもあるかと思いますが、筆者こだわりの1話読んでいただけますと幸いです。




聡慧なりし少女―インデペンデンス・デイ&リメイク―

 

「さあ、勝負(ゲーム)を始めましょう」

 

 とても楽しげに坂柳がそう宣言すると、ハッと気づいたようにそれまで顔をうつむいていた真澄がこちらを見てくる。

 

「ちょっと、勝負ってチェスなの!? ダメよ!」

 

 真澄は必死そうにそう言ってくる。

 何か問題があるのだろうか。

 

「どうしてだ?」

「こいつ、すごくチェス強いんだから!」

「? なぜ知ってる?」

「そ、それは……」

 

 歯切れ悪く真澄はそう口にする。

 それを見て、坂柳が答えるように言った。

 

「真澄さんとは『お友達』になってから、何度もチェスをしましたので。まあ、彼女負けず嫌いですので、付き合うのは中々骨が折れました」

 

 そうか。

 坂柳が経緯はどうあれ、面倒を見てくれたようだ。

 

「真澄と遊んでくれていたようだな。ありがとう」

「いえいえ、私も楽しかったですので」

「……ちょっとあんたたち、私を手のかかる子どものように言わないでくれる?」

 

 こちらのやり取りを見て、真澄は不機嫌そうに言ってくる。

 

「とにかく、坂柳はチェスが強すぎるからフェアじゃないの!」

「あらあら。困りましたね。確かに真澄さんが言う通り、チェスというゲームは私が得意とするものです。雨宮くんとできると思い楽しくなってきたところですが、ゲームを変更されますか?」

 

 少しがっかりした様子で、坂柳はそう聞いてくる。

 俺は……、

 

 

▶【いや、続行だ】

 【なら、将棋にしよう】

 【ここは平等にリバーシにしよう】

 

 

「いや、続行だ」

「ちょ、ちょっと雨宮! 私の話聞いてないの!?」

「……雨宮くん。いいのですか? 負けたときの言い訳にはさせませんよ?」

「ああ、坂柳。そっちこそ、得意なチェスで負けても泣いたりするなよ?」

 

 そう坂柳に挑発的に答えると、坂柳は目をピクピク動かし、額に青筋を浮かべた。

 

「…………、いいでしょう。少しだけ本気を出してあげます。精々愉快にもがいてくださいね」

「返り討ちにしてやるさ」

 

 そうして、真澄の万引き(未遂)写真を賭けたチェスゲームが始まった。

 

 

 

 

 

 ゲームを始める前にお互いにルールの確認を行った。

 

 ※ルール※

 先攻 白 坂柳

 後攻 黒 雨宮

 持ち時間はなし、長考あり。ただし、ゲーム開始午後2時から4時までで、決着がつかない場合は、その際に手番を持っていた方の負け。

 ステイルメイト*1は無し。その状態になった場合、盤上の駒が少ないほうが負けの特殊ルール。

 

 以上の内容を確認した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「それでは私からですね。まずはポーン♙をE4に」

「ポーン♟をF6にmove*2だ」

 

 坂柳は俺の初手に眉をピクッと反応させる。

 

「…………では、ポーン♙をF4に」

「じゃあ、ポーンをここに」

 

 俺は自分の黒のポーン♟をC6に移動させる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 それを見て、坂柳はあからさまにため息をつく。

 

「雨宮くん。残念です。あなた素人ですね」

「さあ、どうかな」

「なら、ポーン♙をC4に」

「キング♚をF7だ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 コツンと駒を置いた瞬間に、心底がっかりしたように坂柳はため息をつく。

 

「今のではっきりしました。先程までのあなたの言動がハッタリであったことを。このようなオープニング理論*3も無視した駒の動かし方。それにキングを動かして、キャスリング*4の権利までこんな最序盤で放棄するなど、素人以外に考えられません。がっかりです」

 

 落胆したような声には少し苛立ちのような色も見えるように坂柳はそう言った。

 

「………………」

「その様子だと、キャスリングの意味もわかっていなさそうですね」

「いや、お前の手番を待っているのだが」

 

 あくまでも落ち着いて俺はそう伝える。

 しかし、坂柳は癇に障ったのか、氷を思わせる冷たい、まるで蔑むかのような目をしてこちらを見る。

 

「……いいでしょう。すぐに終わらせてあげましょう。ナイト♘をC3に」

「キング♚をE6だ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ポーン♙をD4へ」

「キング♚をD6」

「ポーン♙をF5」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「キング♚をC7」

 

 これで、俺が動かしたキング♚は、計4回大きく円を描くように動いた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 これを見て、坂柳は苛立ちを隠そうともしない様子で言う。

 

「まるでボングクラウドアタック*5ですね。あなたは知らないかもしれませんが、真剣勝負の相手に対して、とても侮辱的な行為なのですよ。つまり、あなたはそれを私にしたわけです。覚悟はできていますよね?」

「御託は後で聞こう。お前の手番だ」

「決めました。あなたが私の『お友達』になったあかつきには、徹底的に虐め抜いて差し上げます。ビショップ♗F4チェック*6です」

「ポーン♟D6でブロック」

「その強がりがいつまで持つか試してあげましょう。ポーン♙C5」

 

 その後、ポーン♟E6、ポーン♙E6 ♟take*7、ビショップ♝E6 ♙takeと続けていく。

 しばらく手を進めて行くと、坂柳の手は広く駒を動かせ、見る見るうちにこちらの駒を取っていくのに対し、俺の手は序盤の影響もあり、苦しくなるが、確実に攻撃態勢に入った坂柳の駒をカウンターで奪い取っていく。

 しかし、1手1手と続くうちに次第に俺は長考するようになり、ようやくおいた1手に対して、即駒を動かし、坂柳は少しずつ、着実に、なぶり殺すように、そして、獰猛なまでに攻撃の手を緩めずに進めていく。

 

 

 

 

 その後、一度盤面を眺めてみると、駒数は互角だが、坂柳の方はナイト♘を2つとも展開し始めているのに対し、俺は駒を動かせない状態にされており、苦しい展開となっていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ふふ。良いですね。あなたは素人ながらもやはり良い思考力をお持ちですね。少し考える時間が必要なようですが、最善の手をしっかりと打てていますよ。ナイト♘A4」

 

 まるで、チェスの教導を受けているかのように、あくまで自分が教える側だと云わんばかりに坂柳はそう話しかけてくる。

 それもそうなのは無理もない。

 先程から、こちらは思考がまとまらず、額からは油汗が垂れてきているような状態だ。

 そんな俺を心配するように真澄が「雨宮…………」と心配そうに呟くのが聞こえてくる。

 だめだ。しっかりしろ。

 今は盤面から気を逸らすな。

 俺は自分自身に言い聞かせる。

 

 坂柳のナイト♘が次の手でこちらのキング♚とルーク♜を狙ってくる。だが、クイーン♛で守れば、その後、完全に巻き返しができなくなる。

 俺はここで初めて相手のキング♔にチェックをかける道を選んだ。

 

「……ビショップ♝B4 チェック」

「キング♔F2です」

 

 坂柳はこの展開を読み切っていたのか、即座に駒を動かす。

 ……勝てない。

 不意にそんな言葉が頭をよぎった。

 ……勝てない。

 やめろ。

 違うだろ。

 まだ、追い詰められたわけじゃない。

 頭によぎる不吉な言葉を振り払いながら、さらに一手を進めていった。

 

 

 

 時刻はすでに午後3時15分。

 俺は窮地に立たされていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 盤面を見ると、駒数こそ俺の方が多いが、俺のキング♚は左右の退路を坂柳のルーク♖に挟まれ、縦のラインもビショップ♗の影響で1マス動けるだけでの状態になっていた。

 

「はっー、はっー、はっー」

 

 極度の緊張感と集中のしすぎで、俺の呼吸はまるでハイパーベンチレイション*8のように、息が荒くなる。

 

「大丈夫ですか? 随分と苦しそうですが、まだ時間はありますので、どうぞゆっくり考えてくださいね」

 

 そんな俺の様子を見て、坂柳は微塵も心配してなさそうに気遣ってくる。

 しかし、いくら時間をかけても目は霞み、息は苦しいままだ。

 ……勝てない。

 ……勝てない。

 ……勝てない。

 何度も頭にその言葉が浮かび上がり、

 ……諦めよう。

 ……もう無理だ。

 ……もう十分じゃないか。

 そんな甘い言葉が浮かび上がる。

 そして、その言葉に比例するかのように、心拍はさらに脈を打つ。

 苦しい……。

 

 ベッドが軋む音がして、そちらを見ると、真澄が眉を下げながら近寄ってくる。

 

「ごめん雨宮。私のせいだ。……もういいよ。あんたの分まで私が頑張るから。ごめんね。本当にごめん」

 

 そう言って、俺の肩口を掴みながら静かに涙を流す。

 

 

 

 

 

 何をやっているんだ。

 俺は、何をやっているんだ。

 

 何故弱気になった。

 何故諦めようとした。

 

 俺の不甲斐なさで、

 大事な友達が、

 真澄が泣いているぞ。

 俺のために真澄が泣いているぞ。

 

 顔を上げろ。

 背を正せ。

 

 どれだけ苦しかろうが、

 どれだけつらかろうが、

 諦めるな。

 

 弱気にさせる心を欺け、

 

 目の前で勝ち誇る少女の皮を被った獣を欺け、

 

 心を燃やせ!

 

 血潮を滾(たぎ)らせろ!

 

 

 俺は両手でパンッと自分の頬を叩き、背を正す。

 

「……ありがとう。真澄。大丈夫だ」

「あめ、み、や?」

「俺に任せろ。俺は『諦めない』」

 

 そう伝え、俺は目の前の坂柳に向き直り、心を燃やし、静かに口にした。

 

「…………ペルソナ」

 

 そう口にした瞬間、周囲の空気は一新される。

 室内は静寂そのもの、しかし、圧倒的な力の奔流が、場を支配する。

 

 そして、俺は静かな激情を抱き、坂柳と改めて相、対した。

 彼女は先程までの余裕な表情とは一変して、驚きに満ちたような表情のまま、一回だけ固唾を飲み込んだ。

 

「まるで、先程とは別人ですね……」

「ああ、目が覚めた」

「ですが、果たしてこの局面であなたに何ができますか?」

 

 そう言われたが、答えず、俺は盤面を見ながら、心の中で名前を呼ぶ!

 

 

 【こい、ハイピクシー!】

 【こい、サキュバス!】

▶【こい、フラロウス!】

 

 

(こい! フラロウス!)

 

 そう告げると、大きな存在を感じた。

 そして、過去、未来の盤面が幾重にも重なり、もっとも効果的な一手を導き出す。

 様々な盤面を再生し、消去し、構築し、破壊し、検討し、却下し、熟慮し、速断し、翻意し、決断し、そして、最も求めた『反逆の一手』に辿り着いた。

 

 

 

 

 ……俺は、かけていた眼鏡を外し、机の上に置く。

 

「視えた」

 

 そして、一言そう告げた。

 

「……ふふ。『視えた』ですか、この局面での逆転の一手でもですか?」

「ああ、そうだ。俺はもうお前には負けない」

「いいでしょう。なら是非、それを見せてください」

「いいだろう」

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 俺は叩きつけるように、ルーク♜をG6、坂柳のナイト♘の横につけた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 その瞬間、坂柳は小馬鹿にしたような笑みを作る。

 

「やはりハッタリでしたか。私が考えもつかない悪手をここで打ってくるとは……。 今のあなたの最善手は、ポーン♟をG2に進めて私のルーク♖に牽制することでしたよ。ナイト♘をG4へ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 そう意気揚々と彼女は言い、駒を動かした瞬間、

 

「『逃げたな?』坂柳」

「はい? 何をおっしゃっているのですか?」

「…………」

「だんまりですか。まあ、次の一手はよく考えて打ってください」

 

 そう言って、坂柳も盤面を見る。

 しばらくそれを見つめ、そして、次の瞬間、彼女の目が見開かれる。

 

「……え? いえ、…………――っ!! まさか、まさか、まさか! そんな、私が――」

「気づいたようだな」

 

 そう言うと、坂柳はこちらを信じられないといった表情で見てくる。

 だから続けてこう言ってやる。

 

「今のお前の一手は『最善手』ではない。『ナイト♘は逃さない』。今のはお前の『悪手』だ」

「私が『悪手』を打つ……、そん、な…………うそです」

 

 坂柳は酷くショックを受けた表情になる。

 

「嘘じゃない。お前が考えつかないような悪手を敢えて打ち、そして、お前はその傲慢さからよく考えずに駒を進めた、間違いなくお前の『悪手』だ」

 

 そう伝えると、キッと坂柳は目つきを鋭くして、こちらを睨みつけてくる。

 

「認めましょう。確かに今のは私のミスです。しかし、まだ勝負は終わっていませんよ」

「いや、もう終わりだ。俺はもう『負けない』」

「――っ!~~~~っ!!」

 

 俺がそう宣言すると、坂柳は顔を真っ赤に染め上げる。

 

「ポーン♟をG2に。……さあ、続けよう坂柳」

「あなただけには、絶対に負けません!」

 

 そうして、1手、1手と進めていく。

 だが、先程とは変わり、今度は坂柳が少し考え出すようになり、そして、ようやく打った1手に対して、俺は即返しの1手を打つ。

 

 

 

 時間とともに、局面が変化し、俺は最後の1手を打った。

 チェックでも、チェックメイトでもないが、もうこれ以上、坂柳にできることはない。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「どうする? 続けるか?」

「………………いえっ、…………私の負けです、ね」

 

 投了(サレンダー)。

 時刻は15:57。ギリギリの戦いだった。

 お互いに、長く苦しい時間を戦い抜き、俺は目の前の『小さな強者』に対して、恭敬(きょうけい)を尽くすため、「ありがとうございました」と静かに頭を下げた。

 だが、坂柳は悔しそうに手を握りしめて頭を垂れた。

 

「うそ! 雨宮が勝ったのよね!」

「そうだぞ」

「すごい! すごい! やったああ!」

 

 盛大に喜び、真澄が俺の首に抱きついてくる。

 ギュゥゥゥと力強く抱きしめられ、苦しかったが、彼女の喜びの大きさを表すようで、こちらにも伝わってくるかのようだった。

 そして、ひと仕切り抱きついた後に、ハッと気づいたように真澄は坂柳に言った。

 

「坂柳。あんたの負けなんだから、ちゃんと写真は削除してよね」

 

 そう言われると、坂柳は静かにスマホを操作して、写真の画面を見せながら、削除した。

 

「これで削除しました……」

「ちゃんとPCのもよ」

「わかっています! ……私から提案した勝負です。約束は守ります……」

 

 真澄が満足げにするのとは対照に、坂柳は力弱く、先程とは打って変わり、見たままの儚げな様子となっていた。

 

「ふん。これであんたにこき使われなくて済むと思うと清々するわ」

「――っ。…………お二人の邪魔をしてはいけませんね。……お暇させていただきます。コーヒーご馳走様でした」

 

 真澄にそう言われて、悲しそうな寂しそうな表情を浮かべ、彼女はゆっくりと立ち上がろうとする。

 そんな彼女に俺は……、

 

 

 【早く出て行けと伝える】

▶【"黒のキング"の駒を手渡す】

 

 

 俺は目の前にあった"黒のキング"の駒を手に取り、そして、彼女が立ち上がるのを手伝い向き合う。

 

「坂柳さん(・・)。これをお前に預けておく」

 

 そう言って、彼女にその駒を手渡した。

 いきなりの行動に坂柳さんは、手渡された駒を一瞥し、驚いたような表情を浮かべたと思いきやすぐに悔しげにこちらを睨みつけてくる。

 

「これは、どういう意味でしょうか。敗者は惨めに駒でも愛でていろということでしょうか?」

 

 彼女はこちらを射殺さんとばかりに見てくる。

 しかし、俺は、この子はどうしてこういう受け取り方をするのかと思い軽く笑ってしまった。

 

「何がおかしいのですか!?」

「ちがう。そうじゃない。坂柳さん」

 

 俺はちゃんと今思ったことを伝えようと、しっかりと彼女に向き合う。

 

「……俺と『友達』になってくれないか?」

「…………え?」

 

 そう言われて、今度は呆然とするようにこちらを見てくる。

 そして、訳が分からないといった様子で言葉を口にする。

 

「な、なにを言っているのですか? 私はあなたとの勝負に負けたんですよ。それとも私にあなたの『駒』になれと……」

「ちがう。さっきまで口にしていた『お友達』ではなくて、ちゃんとそのままの意味の『友達』にならないかと聞いているんだ」

 

 坂柳さんはそう伝えられ、余計に分からないといった様子になる。

 

「私は、真澄さんを、あなたの大事な人を脅し、害そうとしたんですよ」

「そうだな。でも、それはもう終わったことだ」

「……何を期待されているかはわかりませんが、私はあなたが考えているような人間ではありません」

「そうなのか? それは知らなかったな」

「むっ。……なので! あなたが期待する関係にはなるつもりはありません!」

 

 坂柳さんはムキになった様子でこちらにそう言ってくる。

 

「俺にはそうは思えないがな」

「何を根拠に!」

「お前が何度も口にした『お友達』って言葉。本当は友達と呼べる関係が欲しかったんじゃないのか」

「バカバカしいですね。荒唐無稽な話です」

「そうか? お前も真澄と同じで『退屈』していたんじゃないのか?」

 

 そう伝えると、坂柳さんは一瞬ピクッと反応する。

 

「いえ、私はこの学校は刺激にあふれていますので、退屈なんかしませんよ」

「嘘だな。お前は『賢く、強い』人だ。だが、それと同時に『弱い』。自分と他人とを比べ、勝手に失望し、自分で退屈を紛らわすための刺激を作ったんじゃないのか」

「――っ。あなたに私の何が分かるというのです」

「分からないさ。だから、お前のことをもっと知りたいから、友達になりたいんだ。その駒は『また、遊ぼう』の約束の証だ。……チェスは、一人じゃできないからな」

 

 しっかりと坂柳さんを見て、俺はそう伝えた。

 

「……本当に訳がわかりません。雨宮くん。あなたは、」

 

 とそこまで言って、坂柳さんの足から力が抜けた。

 俺はすぐに彼女を支える。

 

「大丈夫です。離してください。一人で立てます」

「だめだ。疲れが出たんだろう。部屋まで送っていくぞ」

「結構です! 離してください」

 

 そう言って、俺の腕の中で彼女が力弱く抵抗するので、仕方なく俺は彼女を抱きかかえる。

 

「よっと」

「~~~~ッ! な、何をするのですか!?」

「暴れるな。落ちるぞ」

「降ろしてください!」

「だめだ」

「もう! もう!」

「イテッ。顔を叩くな。ほら、行くぞ。真澄、悪いがちょっと待っててくれ」

 

 そう言って、半ば強引に部屋を出る準備をする。

 真澄は「え、あ、ちょ、ちょっと!」と言ったが、さっさとしないと腕が疲れて落としてしまうかもしれないので、すぐに坂柳さんの帽子と杖を抱きかかえている彼女に持たせ、玄関の靴は抱きかかえている手に持ち、部屋を出た。

 

 部屋を出てからもしばらく、坂柳さんは抵抗していたが、次第にその抵抗も弱くなっていった。

 そして、口を閉ざしていた彼女から部屋番号を聞き出し、連れて行った。

 途中、女子寮で何人かの生徒に見られ、ギョッとした様子で見られたが、気にせず目的地まで直行した。

 坂柳さんはなぜかその間、顔を俺の胸の方にうずめるので、体調が悪化したのかと心配になった。

 

 坂柳さんの部屋に着き、そのまま中に入り、ベッドの方まで運んだ。

 そして、彼女を座らせたことで、ミッションコンプリートだ。

 ふぅっと達成感に浸っていたが、顔を先程から下げている彼女を見ると、両手に持った杖が小刻みに揺れている。

 どうしたんだと思い、顔を覗き込むと彼女の顔は真っ赤になっていた。

 

「大丈夫か? 顔が赤いぞ。熱が出たのか?」

「~~~~~~っっ!!!」

「いっ、いて、こら、何する。つ、杖はダメだろ!」

 

 心配して声をかけると、彼女はがばぁと顔を上げて、頬を膨らましたまま、杖で叩いてきた。

 ……理不尽な。

 と思いながら、彼女の攻撃を避けていたら、彼女が顔を赤くしたまま睨みつけてきた。

 

「こ、ここ、こんな辱めを受けたのは、はじっ、初めてです! 絶対に許しません! あなたは私の『敵』です。ええ、ええ、もう決めました!」

「……俺は『友達』になりたいのだが」

「認めません。ぜぇったいに認めません!」

 

 そうやって素直に感情を吐露する坂柳さんが、可愛く思えた。

 

「そうやってちゃんと気持ちを言葉にしている方が、可愛いぞ」

「っ!…………ふふ。ふふふふふ……覚悟してくださいね? もう、あなたが泣こうと許しを請おうと、許してあげませんから」

「はは、そうか。できればお手柔らかに」

「その態度が、いつまでも持つか見ものです……ふふふ」

 

 なんだか思っていたのとは違った方向にはなったが、顔を赤くしながら、わざとらしく口に出して笑う坂柳さんを見て、俺はなんとなく仲良くなれた気がした。

 

 

 

*************************

      我は汝…汝は我…

   汝、ここに新たなる契りを得たり

        契は即ち、

   囚われを破らんとする反逆の翼なり

 我、「法王」のペルソナの生誕に祝福の風を得たり

   自由へと至る、さらなる力とならん…

 

   ペルソナの力を育てる人間関係

    「法王」コープが解禁した!

*************************

 

 

 

 

 

 その後、自室に戻ると、今日一番不満げな顔で仁王立ちしている真澄がいた。

 どうしたのだろうか?

 

「……ねえ。あんたは私のために坂柳と勝負してくれたのよね」

 

 急にそんなことを聞いてくるので、「そうだ」と答えると、

 

「じゃあ、なんで私を脅したやつとイチャついてるわけ?」

「なんのことだ?」

「お、お姫様だっことかしてたでしょ!?」

「人命救助だ。他意はない」

 

 俺がきっぱりそう答えると真澄はプルプルと震える。

 

「……あ、あんたの、あんたのそういうとこ、ほんっとムカつく!」

 

 と懐かしの地団駄を踏んだ。

 

「まあ、何に怒っているかは分からないが、坂柳さんと仲良くしろよ」

「はぁ!? それこそ意味がわかんないんだけど! あいつがしたこともう忘れたの?」

「そうだな。確かにあのときは俺も怒りが湧いたが、今になったら、あれは彼女なりの『友達作り』だったんだろう」

「なにその折れ曲がったような友達作り。それで仲良くなれるわけないでしょ」

「そうか? 二人とも退屈を紛らわすって意味では気が合いそうに思うが」

「冗談でしょ。私は坂柳みたいに陰湿じゃない」

「でも、5月の間は、なんだかんだ言って、一緒に遊んでたんだろ?」

「良いように使われてただけよ!」

「本当に?」

「本当に!」

「楽しくなかった?」

「…………そ、それは……」

 

 そうやって真澄は言いよどむ。

 楽しかったんじゃないか。

 

「真澄。これでお互いまた1からスタートなんだから。これからまた友達になればいいだろ? 今度は本当の意味で」

 

 そう伝えると、特に何かを言うわけでもなく、嬉しそうな怒っているような複雑な表情を浮かべて、ポカポカと叩いてくる。

 しばらく、大人しく叩かれていると、不意にこちらに抱きつき、特に何を言うわけでもなく、顔をうずめてきたので、自然と頭を撫でて、しばらく二人でそうしていた。

 

 

RANK UP!

《「月」のコープのランクが2に上がった!》

 

RANK UP!

《「月」のコープのランクが3に上がった!》

 

NEW ABILITY!

《『月』のコープから『窃盗術』のアビリティを手に入れた!》

テキスト『特定条件下において、物理的なものでも、精神的なものでも、“盗む”ことへの成功率を特大アップさせる。「やつはとんでもないものを盗んでいきました……、あなたの心です」』

 

 

 

♪♪♪

《蓮の知識が磨かれた!》

 

♪♪♪

《蓮の優しさが磨かれた!》

 

 

 

*1:
チェスの引き分けのこと。長期戦になるとよく起こる

*2:
駒を動かすの意味

*3:
ゲーム開始時の動きのこと。将棋で言うところの定石

*4:
1手でキングとルークを同時に動かして安全な陣形をつくることができる。ただし、どちらの駒も動いていないこと等が条件

*5:
キャスリング権を放棄してキングで上がるというジョークオープニングと呼ばれるほどありえない序盤の動きのこと

*6:
将棋で言うところの王手

*7:
相手の駒を取るの意味

*8:
過換気症候群。過呼吸のこと




 平素より、お気に入り登録、感想・評価、誤字脱字報告、ここ好き!等々誠にありがとうございます。

 ここまでお読みいただいた方も気に入っていただければ、お気に入り登録、感想・評価、ここ好き!等、何卒よろしくお願いいたします。



 はい。ということで、坂柳&神室さん回でした。
 今回も、賛否両論あると思いますので、解説(言い訳3回目)しますね。


 まず、私が考える坂柳さんは、「庇護欲の掻き立てられる猛獣」ですね。最初は猛獣が狩人かとも思ったんですが、狩人→ハンター→モンハンという思考が根付いているので、坂柳さんが、ビールジョッキもってハンター飯を目の前に宴を開いちゃうシーンを想像してしまうので、猛獣と考えることにしました(完全に個人的な都合)。

 基本的に彼女の関心は綾小路だけに向いていて、彼に対してだけは、人肌のなんちゃらを説いちゃうぐらい、甘々なんですよね。
 「天然の天才」と「人造の天才」にこだわる様子とかもありますし、正直、一之瀬さんを攻撃したときは、「ちょっ、おま、やりすぎや!可哀想やんけ」と思いましたw
 まあ、綾小路くんへの援護射撃ともあの話は考えられますが。
 そんな感じで、一度狙った獲物には容赦ないところが猛獣だと思っています。作中でも獣扱いしてました。
 でも、よう実SSの坂柳さんのチョロカワ甘々展開も好きだからもっとやれと思っているので、嫌いではありませんので悪しからず(というか基本嫌いなキャラいない)。


 次に、チェスの方ですね。
 お気づきの方はいらっしゃるとは思いますが、黒のキングを渡すシーンは完全にオマージュです。
 アニメでP5は復習しているので、あ、このシーン絶対チェス回で使お!とこの結末を迎えるためだけにかなり内容を凝りました。
 台詞の言い回しなどもこだわっているので、比較できる方は見てもらえると嬉しいです。

 チェスに関しては、全然詳しくないので、まず書き始める前に勉強をしました(1時間)。
 その後、いい感じに相手を煽って、油断させてミスを誘って、最後に勝つような都合の良い棋譜が無いかなと探しました(3時間)。
 そして、マジであった!と見つけて展開を解説動画と一緒に勉強しました(2時間)。
 そこから、フリーソフトを探して、棋譜の画像作りをしました(2時間)。
 その後、物語を前編から書き始めて、あ、これ長くなるからいい感じに2回に分けなきゃ!ここはこうでああしてと色々考えながら書きました(10時間ぐらい?)
 その途中で、ペルソナ何にしようかなと思い、探しに探す(2時間)
 書き終わって、棋譜も画像にするならカットインも画像作りたいなと思いフリー素材探して、ペイントソフトダウンロードして、昔買うだけで眠っていたペンタブを掘り起こして作成しました(2時間)
 最後に、一度自分で読んでみて、あ、この言い回しくどいな、こっちの方がカッコいいと修正して(2時間)

 とまあ、約24時間ぐらいかけて書いたので、思い出深い回となりました。
 ちなみに棋譜は、ナイジェル・シュートさんとボビー・フィッシャーさん?の対戦のものです。
 棋譜を全手順みたい方は、紲星あかりが解説している動画があるはずなので探してみてくださいね。
 流石にURLを貼ると規約違反になると思うので。
 あ、あと「りゅうおうのおしごと!」のオマージュもしれっと入ってます。


 次は真澄さんですね。
 コープランク3になりましたが、特殊演出書けなくて申し訳ない。
 今回は、マジでもう超特大の達成感と、疲労があり、書けませんでした。
 原作読み返して、真澄さんの考察深めてから、次の特殊演出のときにまた書きますので、何卒ご容赦を。
 そのため、代わりに、感想欄で、アビリティのお話をしてくださった方がいて、「もう書けない…………、あ、アビリティ取れたことにして、特殊演出代わりにしよう!」と思い至ったわけです。
 元々原作準拠でやりすぎるとどこかで詰まると思っていたので、ゲームでは三島くんの本気応援ですが、真澄さん=万引きエピソードが強い印象なので、「窃盗術」にしました!
 ただ、悪い意味は持たせたくないなと思い、銭形警部にフォローしていただきましたw


 そして、最後に、ペルソナですね。
 なぜ、「フラロウス」なのかですね。
 これも感想欄で、ペルソナ全書読むとペルソナの元ネタとか分かるよとアドバイスくださった方がいたので、ゲームの起動はアプデやらゲームのダウンロードやらに時間がかかるので、ユーチューブでサクサク視聴しました。

 その中で、条件として、
 ①解放済みのコープである。
 ②コープランクが低くても作成できそう(システム忘れてるので、実際には作れないかもしれませんが汗)
 ③こうした読み合いとかのときに、道標や答えとかくれそうなペルソナいないかな
と探した結果、フラロウスくん(悪魔)でした。
 本当は神室のために戦っているので、月のコープから選びたかったんですが、ちょっと無理がありました。

 ではなぜフラロウスなのか。
 ペルソナ全書には、「過去や未来を透視する力を持つ」「召喚の魔法陣の外では嘘をつくので注意が必要」等が書いてありました。
 そして、元ネタが、フラウロスと呼ばれるソロモン72柱の魔神ですが、wikiには未来に加えて、現在も含まれ、また、三角形の魔法陣からでたら嘘をつくと書いてあるんですね。

 そこで、私は考えました。
 「過去・未来を透視する力ええやん! でも嘘つかれちゃう……。三角形の魔法陣なんて……、ん? あれ? 蓮、神室、坂柳、これってある意味、三項関係、三角関係じゃん! 儀式的な代替方法として、この3人を裏設定で魔法陣の代替触媒にして、ちゃんと見透したことにしよ! 俺ちゃん天才!(疲労による自画自賛暴走)」
 と愚考いたしました。



 これで言い訳終了です。
 ふぃー疲れたぁあああ!
 いかがでしょうか。私の坂柳さんと神室さんとペルソナシリーズとよう実への愛は伝わったでしょうか。
 この二次創作かけば書くほど、私が重々ドデカ感情を育てすぎている気がします笑


 さあ、長くなりましたが、でもここまで来たらちゃんと、もしも選択肢のコーナーもやるぞ!
 (文字数足りるかな、本文より長い後書きとか言われそうw)


 では、もしも選択肢のコーナー(過激な妄想ですw)

 【いや、続行だ】
 【なら、将棋にしよう】
 【ここは平等にリバーシにしよう】

 ここは、チェス以外を選ぶことが可能です。
 しかし、坂柳さんはとてもチェスがやりたそうです。
 むしろ、他の遊びでは本気を出してくれません。
 まあ、それでも勝ちは譲らないでしょう。
 ただ、将棋を選ぶと、主人公が忘れてしまった、かつて在りし日の思い出の幻想を見て、将棋の必殺技オンパレードが出るかもしれません。
 坂柳さんには呆れられますが。


 【こい、ハイピクシー!】
 【こい、サキュバス!】
 【こい、フラロウス!】


 後書きを読む前の方は上の2つのどちらかを選ぶかもしれませんね。
 ハイピクシーでは、統率力や魔力が高いですが、頭脳戦では勝てないでしょう。
 サキュバスは月コープなので正解かと思うでしょうし、これ選べばエロエロ展開になるだろ!どうして選ばないんだ!
 と思った方もいるかもしれませんね。でもペルソナ全書を読み返しましょう。……正体は醜い老婆ですよ?なろう小説で出てくる都合の良いサキュバスではないのです。
 枯れ専の方は選べば良いでしょう。
 坂柳さんには勝てませんけどね。


 【早く出て行けと伝える】
 【"黒のキング"の駒を手渡す】

 下の選択肢以外に選ぶものがあると?
 そして、上を選んだあなた。
 心は傷まないのですか?
 なぜ、ここで選択肢があるのか。
 それは、ヒロインにひどいことをするプレイヤーなのかを分別するためのトラップです。
 選択しても、「本当にこれでいいのか?」という問いが出現し、3回「はい」としつこく回答すると、ゲーム機本体が爆発します。
 もう二度とこのゲームで遊ぶことはできませんし、他のゲームも遊べません。
 取り返しのつかない選択というはこういうものを言うのです。


 異常(後書きの文字数が。3000字超え)※選択肢の解説は妄想ですw


 
 後書き書くのにまた、1時間以上かかってるw
 書き溜めこれで本当にゼロなので、今日はこれから書いてきます!
 では!
 

使わせていただいた素材
©pixiv  コハタヤスマサ様のP5カットインのフリー素材
©創柔堂 チェスボードペインター(フリー素材)

カットイン画像を今後も使っていこうと思うのですが、皆さんのご意見を教えてください。ご協力よろしくお願いいたします。

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  • もう少し大きい画像だと良かった
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