今日も休みだったので、早めに投稿。
取り敢えず、これが幕間最後で、次回からは原作第2巻の範囲がようやく始まります。
休日2日目。
今日は昨日の坂柳さんとの勝負の疲れもあり、少し起きるのが遅くなってしまった。
スマホを確認すると、チャットの通知が入っていた。
桔梗だ。
『おはよう蓮くん!』
『寝てる?』
『大丈夫?』
『…………』
『…………』
『未読だけど、本当は見てるんでしょ?』
『…………今から部屋、行くね』
なんだろう。
ただの文字なのに、文面から圧を感じる。
すぐに、『今起きたところだ。どうした?』と返信し、スマホを置くと、ピンポーンと来客を告げるインターフォンが鳴った。
玄関に行き、ドアを開けると、
「来ちゃった♪」
笑顔の桔梗であった。
休日ということもあり、今日は私服を着ている。
初夏を思わせるように、明るめの緑のキャミワンピースを着ていて、彼女のスタイルを程よく隠しつつ、可愛さを引き立てている。
そんな桔梗はこちらの頭の方をじぃ~と見ると、すぐに愛想の良い表情に戻る。
「本当に寝起きだったんだね」
「ああ。それにしても今日はどうしたんだ?」
「うん。その、……ちょっと、『溜まっちゃった』から」
ストレスがという言葉が抜けているので、あまりお外では言ってほしくない言い回しになっているが、どうやら、溜め込んだものを発散しに来たのだろう。
「わかった。とりあえず、中に入るか?」
「うん。お邪魔しま~す♪」
桔梗はそう答え、意気揚々と部屋に入っていた。
扉を閉めようとした際に、隣の部屋のドアが少し開いているのが見えた。
そのドアの隙間からこちらの様子を窺うような清隆が見えた。
そして、清隆はドアを開いた。
「おはよう清隆」
「ああ、蓮。おはよう」
「どうしたんだ?」
「いや、出かけようとしたら、櫛田が30分ぐらい前からお前の部屋の前で微動だにしてなかったから、気になってな」
「…………30分?」
「まあ、なんだ、あまり羽目を外しすぎないようにな」
そういって、清隆は外出する予定だったのか、私服を着てエレベーターの方へ歩いて行く。
「ご、誤解だ」
そう、話しかけると清隆はこちらを見ることなく、軽く右手を振ってみせ、行ってしまった。
その様子を見て、なんとなく、明日学校でどんな顔をして会えばよいのかと思った。
そんなやり取りをしていると「れんく~ん?」と部屋の中から呼ぶ声が聞こえたので、気持ちを切り替えて、来客をもてなすことにした。
お茶を入れた後に、桔梗はここ数日に溜まった鬱憤を晴らすように、交友関係の愚痴を漏らし始めた。
内容は取り留めのないものから、ちょっと踏み込んだ個人の秘密だったりと、彼女の交友関係の広さを感じさせるほどの内容で、俺は率直な感想をそれに対して伝えた。
20分ほど話したところで、桔梗は満足したように足を伸ばす。
その様子を見て、意外と短く終わったなと思った。
「ん? もういいのか?」
「うん。今日は別の目的があったからね」
そう言って、彼女は床に手をつき、ずりずりとこちらに寄ってくる。
そして、俺の腕につかまるように抱きついてきて、こう言った。
「デートしよ?」
いきなりのお誘いに少し驚きつつも理由を聞いていみる。
「デート? 急にどうした?」
「……だって、蓮くんこの前のテストで満点取れたでしょ?」
「ああ。それはそうだが」
「覚えてないの? 私が満点取った人とデートするって言ったこと」
ああ、そういえば、そんなことを言っていたな。
「しかし、桔梗。お前、『誰がデートなんかするかっつうの』みたいなこと言ってなかったか?」
「あっ。あのとき、それも聞いてたんだね」
あのときというのは、桔梗の容赦ない公園の柵への暴力と共にストレスを発散していたのを偶然見かけてしまったときのことだ。
「あれは、池や山内みたいなお猿さんたちとは嫌ってこと。蓮くんなら大歓迎だよ♪」
「そ、そうか……」
「それで、デートするの? しないの?」
俺は……、
▶【デートする】
【デートしない】
【部屋で○○○したい】
「しようか。デート」
「ほんと! やったぁ」
こうして、桔梗とデートすることになった。
取り敢えず身だしなみを整えるために脱衣所に行こうとすると桔梗が付いてこようとしたので、リビングで待っているように伝えると、少し頬を膨らませて不満げにしながらも言う通りにしてくれた。
そうして、身支度を終え、二人で部屋を後にした。
寮の前まできて、桔梗が「どこ行こっか?」と聞いてきた。
さて、どうするか…………。
【図書館に行き、デートスポットを探す】
【ゲームセンター『GiGOLO高育高支店』に行き、プリクラを撮る】
【スーパー『大正屋高育高支店』に行き、今晩の夕食の買い出しをする】
▶【ショッピングモールに行き、ウィンドウショッピングを楽しむ】
【カラオケに行き、美声を披露する】
【映画館『TOYOシネマズ高育高支店』に行き、恋愛映画を見る】
【メイド喫茶『アリスのエプロン高育高支店』に行き、萌え萌えキュンしてもらう】
【診療所『武見内科医院高育高分院』に行き、桔梗の頭を見てもらう】
【公園に行き、ボートに乗る】
もうすぐポイントが振り込まれる予定だが、現状使いすぎるのは良くないだろう。
「ショッピングモールに行かないか?」
「いいよ。何か買いたいものがあるの?」
「いや、特に無いが、なんとなく桔梗と二人でぶらぶらと歩きたいなと思って」
そう伝えると、桔梗は嬉しそうにこちらを見てきて、「私もそうしたいかも……」と言いながら腕を組んできた。
「……誰かに見られたら誤解されるぞ?」
「え~じゃあ、少しだけだから。ダメ?」
そう言って、上目遣いで桔梗は見てくる。
仕方なく、「少しだけだぞ」と伝えて了承すると、機嫌良さそうに笑い、そのまま二人でショッピングモールに歩いていった。
ショッピングモールに着いた。
来る途中に、桔梗にこのショッピングモールはケヤキモールという名がついていることを教えられた。
ケヤキモールは今日も休日だからか、学生たちで賑わっている。
早速、二人してウィンドウショッピングを始めた。
ブティックに行けば、二人でこの服が良い、あっちの方が良いとこれからの季節に合わせた服の話しで盛り上がり、
雑貨屋『ハイセンス高育高支店』に行けば、これがオシャレ、これがカッコいい、これは面白いと商品を冷やかし、
CDショップ『バベルレコード高育高支店』に行けば、最近の流行しているらしいアーティストの話題で盛り上がり、
本屋『太平堂書店高育高支店』に行けば、それぞれ興味のある本を見に一度別れ、ポイントが溜まったら買おうかなと思うような本をいくつか見繕い、合流したときに、桔梗が何やら熱心に立ち読みしているので、何を読んでいるのだろうと見たら、『監禁の心理学』という何やら物騒なタイトルの本を読んでいた。
「興味あるのか?」と聞いたら、とても良い笑顔で「秘密♪」と言われた。
……もう、初夏になるのに、今日はやけに肌寒く感じるな。
そんなことをしながら、二人で色々な店を回り、少し休憩しようかと思っていると、
「あれ? 櫛田さんと雨宮くんじゃん」
「本当だ。やあ、二人とも。こんにちは」
声をかけられ、振り向くと洋介と軽井沢が腕を組んでこちらにやってきた。
「こんにちは」
「平田くん、軽井沢さん。こんにちは! 二人もデート?」
桔梗がそう聞くと、軽井沢があっけらかんと答える。
「そんなとこ。それより『も』ってことはそっちも?」
「そうだよ。ね、蓮くん?」
「あ、ああ。そうだ」
「へぇー。最近、怪しいな~と思ってはいたけど、二人とも付き合ってたんだ」
「すごくお似合いの二人だね」
軽井沢はからかうようにそう言い、洋介は純粋にカップルを祝福したといった様子である。
しかし、付き合ってはいないがな。と思っていると隣の桔梗はあからさまに照れるようにしてもじもじしている。
「え~お似合いだなんて。私たちそう見えるのかな?」
「まあ、付き合ってはいないがな」
ピシッ
俺がそう言うと、一瞬で場が凍りついたような錯覚を覚えた。
痛い。
そして、すぐに隣の桔梗が頬を膨らませて、腕を結構な力でつねってきた。
「……桔梗。痛いんだが」
「…………つーん。しらない!」
事実を言っただけだが、どうやら桔梗はお気に召さないらしい。
「あはは。仲が良いことは間違いないみたいだね」
「というか櫛田さんって、雨宮くんが絡むと性格変わるよね」
「そ、そうかな? そんなことないよ!」
「いや、変わってるからね? まあ、私的には、いつもの櫛田さんも嫌じゃないけど、今の方が自然体っていうの? 話しかけやすいかな~」
「……そ、そう?」
「あ! 変な意味じゃないから!」
「う、うん。もちろん! 大丈夫だよ軽井沢さん」
慌てて取り繕う軽井沢に、桔梗も桔梗で何やら微妙なニュアンスで答える。
その二人を見て、洋介がこちらに話しを振ってくる。
「でも、二人の仲がそこまで進展していたなんて驚いたよ」
「そうか? 桔梗は誰とでも仲が良いだろ」
「いや、蓮くん。普通、仲がいいだけでデートはしないよ?」
「そうか。みんなしているものだと思っていた」
俺がそう洋介に答えると、軽井沢は「苦労するわね」と桔梗に言い、「そうなの」と桔梗が答えているのが耳に入る。
そして、軽井沢が助け舟でも出しますかみたいな様子でこちらを見てくる。
「でもさ~雨宮くん。普通、デートってお互い気になる人同士でするものだと思うけど、雨宮くんは違うの?」
「確かにそう言われると、気になる相手だな」
色々な意味で。
そう思い答えると、桔梗は顔を赤くしてもじもじし始め、軽井沢はそれ見たことかといった表情をする。
「じゃあ、雨宮くんにとって、付き合うってどういうことを言うの?」
付き合う。
交際するか。
そうだな。俺にとって交際するっていうのは……、
【魂を通わすことだ】
▶【キスをすることだ】
【膝枕をすることだ】
「そうだな……。キス……することかな」
「うわっ! 意外とガチな答えがきた」
真面目に答えたのに普通に驚かれた。
俺だってその辺の線引きはできるぞ。
しかし、そうすると目の前の二人はもうしたのだろうか。
気になって聞いてみることにした。
「洋介と軽井沢はもうキスしたのか」
「――~~~! きゅ、急ににゃ、何聞いてんのよ!」
「いや、二人は恋人だからもうしているのかなって」
「す、するわけないでしょ!?」
「恋人同士なのに?」
「~~~~~!!!」
俺がそう聞くと、軽井沢は顔を赤くして、口をパクパクし始めた。
鯉かな?
そんなことを思っていると、洋介が口を開く。
「蓮くん。僕たちはまだ付き合い始めて1か月も経ってないからね。それに今は学校がどういう評価をするか分からないから、そうしたことは控えてるんだよ」
なるほど。不純異性交遊と学校に評価されれば、プライベートポイントか酷ければクラスポイントに影響があるかもしれないしな。
「なるほど。つまり二人はプラトニックな関係と言うことか」
「プラトニックって、今どきそんな言い方する普通?」
俺がそう言うと、顔を赤くしている軽井沢がツッコむように言ってきた。
そして、すぐに踵を返しながら、洋介の腕を掴み引っ張っていく。
「もう行こ平田くん。二人の邪魔しちゃ悪いし」
「あ、うん分かったよ。それじゃあ二人ともまた明日学校で」
そう言って、二人はデートに戻っていった。
二人を行くのを見送り、「私達も行こっか?」と桔梗が言ったので、こちらもデートの続きをすることにした。
その後、日が赤くなり始めたところで、俺達は寮を目指して帰っていた。
不意に、隣を歩く桔梗がこちらを見ながら言ってくる。
「今日ね。軽井沢さんが言ったこと覚えてる?」
…………、
【俺達が付き合ってるかと聞いてきたことか?】
▶【今日の桔梗の方が話しかけやすいって言ったことか?】
「今日の桔梗の方が話しかけやすいって言ったことか?」
「……うん。それ。……どうしてかな。いつもの私の方が、誰とも仲良くできるし、何でも相談にのるし、接しやすいはずなのに、軽井沢さんはどうして、そう思ったのかなって」
「…………そうだな。現実的……いや、人間味があったからじゃないか?」
「どういうこと?」
俺は自分が素直に思ったことを口にする。
「いつもの桔梗は、誰にでも優しくて親身で、誰とも諍いにならない。それは人として素晴らしいことかもしれないけど、同時に自分にはできないことをできる人に思ってしまう。テレビに出てる芸能人のような、有名なミュージシャンのような、そうした自分の近くにはいないように思えるんじゃないか」
「…………」
「だから、自分の気持ちに正直で、笑ったり怒ったりする今日の桔梗を軽井沢は身近に感じたんじゃないか」
「……そういうもの、なのかな?」
少し不安げに桔梗は聞いてくる。
「ああ、最近クラスでも少しだけ地を出しているけど、友達が減ったか?」
「……ううん。むしろ、今まであまり話しかけてこない子も話しかけてくれるようになったかも」
「そうか。よかったな」
俺がそう言うと、嬉しいようなそれでいて複雑そうな顔で桔梗は言葉を続ける。
「でも、きっとみんな本当の私を知ったら、嫌いになるよね」
本当の桔梗。
それってなんだろうと思う。
「いや、普段の猫を被っている桔梗も、嫌なことを言われて苛ついている桔梗もどっちも本当の桔梗だろ? 誰だって自分の全てをさらけ出しているわけじゃない。少なからず体裁を気にして遠慮するし、影で愚痴をこぼすこともするだろ。そんなのお前が一番良くわかっているだろ?」
「そっか。……そうだよね」
「ああ。だから、これから少しずつで良いから。そういった面も見せていってもいいんじゃないか?」
「……怖いよ」
「ああ。だから、困ったことがあれば俺を頼れ。失敗したときは二人で考えよう。桔梗の中の欲が満たされないときは俺が手伝おう。言っただろ? 俺達は共犯者だって」
そこまで伝えると、桔梗はこちらを見て、そして、目に熱い感情を込めているように見える。
「うん! 頼りにするね。私の共犯者さん!」
「ああ。それでいい」
きっと、今の桔梗の笑顔は、素直な気持ちからできていると俺は、そう思った。
そして、そんなやり取りをしていると寮の前に着いた。
「蓮くん。今日はありがとう! 私ね、自分の全部を知ってくれている人とこうして出かけたことなかったから、その、ね、本当に楽しかったの」
「ああ。俺も楽しかったよ桔梗」
「うん! なんか影で発散するより、今日の方が全然良かった。だからね……、また、溜まったら、今日みたいにデートしてくれる?」
猫かぶり半分、本音半分といった上目遣いで、桔梗はそう聞いてくる。
そして、俺が「もちろんだ」と答えると、彼女は本当に嬉しそうに微笑んだ。
とても魅力的な笑顔だ。
そう、確かに思った。
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テキスト『デート中の異性の好感度にプラス補正。また、異性限定で選択肢を間違った時に一度だけ選び直せる。「もし、もう一度人生をやり直すとしても、同じ間違いをするでしょうね。ただ、もっと早いうちに」』
♪
《蓮の魅力が磨かれた!》
寮に入り、自室に戻る際に、誰かが部屋のドアに背を預けているのが見えた。
鈴音だ。
彼女は、白いドット柄のシャツに紫色のスカートを身に着けており、少し大人びた印象を受けた。
手にはビニール袋と革製のカバーをしてある尖ったものを持っている。
「鈴音。どうかしたのか?」
そう聞くと、彼女はこちらに気づき、背を預けるのを止めて対面してくる。
「蓮くん。やはり外に出かけていたのね。返信ぐらい返してほしいのだけれど」
そう言われて、自分のスマホを確認すると、何件か通知が着ていた。
開いてみると、
『今日、夕方頃でいいのだけれど、空いてるかしら?』
『中間テストのときのお礼に、夕食をごちそうするわ』
『寝てるの?』
『……返信してちょうだい』
『✆不在着信』
『……今から、あなたの部屋に行くから』
どこかで見たような文面で、同じく圧を感じた。
「悪かった。ちょっと友達と出かけていたんだ」
そう言い、素直に謝ると、鈴音は「それなら仕方ないわね」と言い、すぐに疑問を浮かべるような表情をした。
「ところで、蓮くん。誰と遊びに行っていたのかしら」
【桔梗とデートしてきたと直球で言う】
▶【桔梗と遊びに行ってきたと事実を言う】
【清隆と遊んできたと嘘をつく】
「桔梗とケヤキモールに遊びに行ってきた」
そう答えると、鈴音は目を皿にして、こちらを見てくる。
「どうした?」
「……別に。それよりもこれから夕食をごちそうしたいのだけれど、まさか私とは一緒に過ごせないとは言わないわよね?」
そう言って、彼女は手に持った食材とカバーのかけられた包丁(先端がこちらを向いている)を見せてくる。
どうやら手料理を作ってくれるようだ。
さて、俺は……、
▶【鈴音の手料理が食べてみたい!と大げさにはしゃぐ】
【悪い。もう桔梗と食べてきたんだと嘘をつく】
「もちろんだ。鈴音が作ってくれるのか! 楽しみだ!」
俺がそう答えると鈴音は照れるようにもじもじし始める。
「そ、そう。そんなに喜んでくれるとは思わなかったわ」
「なんでだ? 鈴音のような子の手料理が食べられるのは、嬉しいことだと思うけど?」
「そ、そういう恥ずかしい台詞は、禁止よ!」
そう言って、照れ隠しなのかカバーの付いた包丁でツンツン突っついてくる。
危ないから止めてほしい。
「まあ、取り敢えず入ってくれ」
「ええ、お邪魔するわ」
そうして、ドアを開け、鈴音を先に招き入れ、さあドアを閉めようかというときに、廊下に清隆が立っているのが見えた。
決して悪いことをしているわけではないが、何故か言い訳をしないといけない気持ちになり、「ご、誤解だ」と伝えると、清隆は、
「蓮。……刺されるなよ?」
そう言って、清隆は足早に自室に入っていってしまった。
明日、学校でどんな顔をして会えばよいのかと考えていると、「蓮くん?」と部屋の中から呼ぶ声がしたので、諦めて入ることにした。
入室後、手慣れた手付きでエプロンを身に着ける鈴音を見て「よく似合ってるな」と素直な感想を伝えると「バカ」と軽く返された。
包丁なんかの料理器具は部屋にあったのだが、それを伝えると「使い慣れたものがいいのよ。それにあなたの部屋に入ったことないから」と何故か少し照れ気味に言ってきた。
見ているのも暇なので、少し手伝おうとエプロンを身に着け、鈴音の隣に立った。
「蓮くん。今日はお礼をしに来たのだから、ゆっくりしていていいのよ?」
「いや、手持ち無沙汰なのも落ち着かないし、鈴音と一緒に料理したいしな」
「そ、そう。そういうことなら別にいいのだけど」
そうして、一緒に料理をすることになった。
何を作るのかを聞くと、今日のメニューはホワイトシチューとのことだ。
「それじゃあ。人参を切ってもらえるかしら」
「わかった」
さて、どんな風に切ろうか。
【普通に一口サイズに切る】
【少し大きめに切る】
▶【こだわって、花やハートの形に切る】
折角だし、少しいつもよりこだわって飾り切りをしよう。
そう思い、俺は包丁を手に取り、素早く型取りをしていく。
そして、ねじり梅、桜の花びら、ハートの形に切っていく。
作業をしていると隣の鈴音が驚いたように見てきている。
「蓮くん。何をしているの?」
「……可愛いだろ」
そう答えると鈴音はあからさまにため息をつき、「自信なくすわね」とつぶやく。
「どうした急に?」
「だって、自分より上手な人に手料理を振る舞うなんて、なんだか嫌じゃない」
「そうか? 俺は嬉しいぞ」
「もう、あなたってすぐにそう言う」
呆れたように鈴音は言ってくる。
そんなに難しいことではないけどな。
練習すれば誰でもできると思う。
そう思い、ふと、じゃあ教えるかと考えた。
「鈴音。こっちにこい」
「な、何よ急に」
そう言って近づいてきた鈴音を後ろから抱え込むようにして、両手をつかむ。
すぐに「ちょ、ちょっと蓮くん」と言ってきたので、「教えるよ」と端的に伝えて、彼女に包丁を持たせて切り方を教え始めた。
「まずは、ねじり梅の切り方だけど、こうやって、包丁を斜めから差し込んで」
「れ、蓮くん」
「ほら、危ないからちゃんと集中しろ」
「…………はい」
そうして、鈴音に飾り切りのやり方を教えた。
教えている最中、集中しているのか、顔を下に向けて、黙々と作業していて、時折、「いいわね、これ」とか「癖になるわね」とつぶやく様子があり、集中していると独り言を言うタイプかと思った。
一通り仕込みが終わり、煮込み始めたので、二人で一息つくためにコーヒーを入れた。
「あ、このコーヒーおいしいわね」
「豆からちゃんと挽いているからな」
「あなたって、こういうものにこだわりがあるのね」
「意外か?」
「ええ。でも悪くないわ」
そんな他愛も無いことを話しながら、シチューができるのを二人して待った。
しばらくして、シチューができたので、一緒に食べることにした。
「「いただきます」」
そう言って、一口入れる。
「ど、どうかしら?」
鈴音が少し食い気味に聞いてきた。
俺は……、
▶【うまい!】
【可もなく不可もなくだな】
【まずい!】
「うまい!」
市販のルーを使っているのに、味に深みを感じる。
俺がそう答えると、鈴音は安心したようにほっと息をつく。
「上手くできたようで、よかったわ」
「今まで食べたどのシチューよりも美味い!」
「バカね。言い過ぎよ」
そう言いながらも、鈴音は上機嫌な様子で一緒に食べるのであった。
その後、料理の隠し味の話をしたり、クラスのことを話したりしながら、夕食を共にしているうちに、夜も更けてきた。
一緒に洗い物をしているときに、「なんだか家族みたいだな」と思ったことを伝えると、
「か、家族。……そ、それって兄妹みたいなってことかしら」
「いや、どちらかというと夫婦?」
「夫婦!? な、なに言ってるのよ!」
そう言って、洗っていた自分の包丁をブンブン振り回してきたので、「ステイ! 鈴音ステイ!」と言って落ち着かせようとして、「犬じゃないわよ!」と余計に怒らせてしまった。
もう、包丁を持っているときに話しかけないように俺は心の中でそう決めた。
そして、鈴音は洗い物が終わると、片付けをして、「蓮くん。また、明日学校で」と言って、自分の部屋に帰っていった。
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テキスト『料理を作った際の味が良くなる。また、その際に上がるパラメーターに上昇補正がつく。「いい料理人になるコツは、自分の料理の全てを捧げたいと思えるような、そんな女に出会うことだぜ」』
♪♪♪
《蓮の器用さが磨かれた!》
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平素より、お気に入り登録、感想・評価、誤字脱字報告、ここ好き!等々誠にありがとうございます。
ここまでお読みいただいた方も気に入っていただければ、お気に入り登録、感想・評価、ここ好き!等、何卒よろしくお願いいたします。
はい。ということで、砂糖吐きそう……。
自分で書いておいてなんですが、イチャイチャしてんじゃねえぞ!と思い、途中で書くのを放棄しようとしましたが、「そうだ。無心になればいいんだ」と気付き、なんとか書き上げることができましたw
私の脳裏で「ただしイケメンに限る」という呪詛のようなものが頭につきまといながら、死にそうになりながらなんとか書き上げることができました。
はい。ということで、櫛田さん、堀北さん回でした。
今回は修羅場にはなりませんでしたが、それぞれが主人公にアピールしているのを表現したくて、書かせていただきました。
それだけです。
…………
……
いや、ほんとにそれだけなんですよ。
決して、櫛田さんを人間らしくするためにだとか、堀北さんを主人公に対して在りし日の兄と重ねている部分から脱却させるために書いたわけではないんです汗
まあ、取り敢えず、小ネタとしては、アビリティのデート術の方のテキストの台詞は、タルラー・バンクヘッドさんという昔のハリウッド女優さんの名言からいただきました。超ロックな方(当時人種差別が強かったアメリカで史上初めてホワイトハウスに黒人を連れて入った等)で、101匹ワンちゃんのクルエラのモデルになった一人です。
個人的にぴったりな格言だなと思って使わせていただきました。
また、料理術の方のテキストの台詞は、食戟のソーマの主人公の父親の台詞ですね。丁度いい台詞を考えた時に、パッと思いついたんでこれにしました。
とまあ、今日はこのぐらいですかね。
第2巻の内容については、すでに妄想はできているのですが、文章におこすのに時間がかかりそうなので、早くて3,4日、長くて1週間ぐらいお時間をいただくと思いますので、毎日更新は散々言ってきましたが、本当に今日で最後になると思います。
何卒ご理解の程、よろしくお願いいたします。
それでは、もしも選択肢のコーナー(過大妄想です)
【デートする】
【デートしない】
【部屋で○○○したい】
デートしないは、本当にデートしなくなります。ただ、「なんで?どうして?裏切るの?」と湿度が高くなった櫛田さんを見ることができます。
部屋で○○○の方は、このゲームは全年齢対象のゲームです。今、あなたが考えたことは起こりません。いいですか。絶対に起こりませんよ?というラヴェンツァに似た天の声が聞こえてきます。……監視されているッ!
【図書館に行き、デートスポットを探す】
【ゲームセンター『GiGOLO高育高支店』に行き、プリクラを撮る】
【スーパー『大正屋高育高支店』に行き、今晩の夕食の買い出しをする】
【ショッピングモールに行き、ウィンドウショッピングを楽しむ】
【カラオケに行き、美声を披露する】
【映画館『TOYOシネマズ高育高支店』に行き、恋愛映画を見る】
【メイド喫茶『アリスのエプロン高育高支店』に行き、萌え萌えキュンしてもらう】
【診療所『武見内科医院高育高分院』に行き、桔梗の頭を見てもらう】
【公園に行き、ボートに乗る】
はい。また地獄のような選択肢を生み出してしまいました。1つずつ行きます(覚悟を決めた目)。
・図書館は、新しいデートスポットを解禁することができますが、ひよりさんに遭遇してしまいます。後はわかりますね? にしてもこの子いつも図書館にいるな。
・ゲームセンターに行くと、ちょうどプリクラを取った直後、筐体から出てくるところを真澄さんに見られます。後はわかりますね? にしてもこの子もいつもゲーセンにいるな。
・スーパーに行くと、堀北さんに遭遇します。堀北さんのお料理イベントが消え、櫛田さんとのデートを終え、自室に戻ろうとした際に、扉の前で、包丁(カバー無し)を持った堀北さんが…………
・カラオケに行くと、松下さんと遭遇します。彼女は一人カラオケが好きなようです。冷やかされます。その後の選択肢では一緒にカラオケを楽しめますが、櫛田さんがどのような行動をとるかは……、お分かりですね?
・映画館に行くと、綾小路と遭遇します。そこだけの台詞が聞けるだけで、特に問題はありませんが、初デートで映画館は地雷です。
・メイド喫茶に行くと、メイドさんにデレデレしている主人公を見て、櫛田さんのストレスがたまります。そのまま、家に帰りお説教タイムの開始です。そして、玄関のベルがなり、堀北さんが登場。さあ、修羅場の始まりです!
・診療所に行くを選ぶと、櫛田さんに嫌われます。すっごく嫌われます。そして、後はどうなるかわかりますね?
・公園に行くと、長谷部さんに二人でボートにのっていたことを見られます。現状問題はありませんが、のちのちのコープが上がりにくくなります。
……ふう。もうゴールしてもいいよね?
ダメ?
……はい、続けます。
【魂を通わすことだ】
【キスをすることだ】
【膝枕をすることだ】
魂を選ぶと普通にドン引きされます。いくらなんでも付き合うぐらいで重すぎです。
膝枕を選ぶと、変わり者認定が強くなります。しかし、その後の選択肢次第で、櫛田さんに膝枕をしてもらえます。しかし、ルート固定に入りますので、他のコープが上げづらくなります。
【俺達が付き合ってるかと聞いてきたことか?】
【今日の桔梗の方が話しかけやすいって言ったことか?】
どちらを選んでも結末は同じですが、下を選んだ方が、直球で考えていることを理解してくれたボーナスが入り、好感度が上がります。
【桔梗とデートしてきたと直球で言う】
【桔梗と遊びに行ってきたと事実を言う】
【清隆と遊んできたと嘘をつく】
デートしてきたと選ぶと、主人公に向ける包丁は、カバーが外れた状態になります。それだけなので、後々の展開には影響はありません。ただその時すごく怖いだけです。
清隆とを選ぶと、その後すぐに綾小路くんが現れるので、「嘘ついたのね」と堀北さんがショックを受けます。誰も幸せにならない選択肢なので止めてあげてください。
【鈴音の手料理が食べてみたい!と大げさにはしゃぐ】
【悪い。もう桔梗と食べてきたんだと嘘をつく】
もう食べてきたと嘘をつくと、堀北さんががっかりしながら帰っていきます。
嘘は基本バレることはありませんが、自室に帰ったあなたは後悔の気持ちにさいなまれることになるでしょう。
【普通に一口サイズに切る】
【少し大きめに切る】
【こだわって、花やハートの形に切る】
これはどれを選んでも美味しいシチューができますが、一番下だけ、特殊なイチャイチャシーンが見られます。
シチューの鍋に砂糖を袋ごと入れる幻覚を制作スタッフは見たそうです。
【うまい!】
【可もなく不可もなくだな】(選択不可)
【まずい!】(選択不可)
ゲーム機爆破集団訴訟事件の判決により、ゲーム機ハード本体が爆発する選択肢はすべて、選択不可になるアップデートを行いました。
しかし、原告側の賠償請求については、有志からの日本全国及び海外からの約1000万近くの無罪署名が提出されたことと裁判長がゲームのファンだったため、必要なしという判決になりました。
当然、裁判の公平性の観点から控訴されましたが、裁判所側はこれを棄却しました。
異状です(この妄想の日本が)。