昨日休みだったので、書き溜めした分を投稿です。
また、次の投稿は3,4日いただくと思います。
さて、昨日頑張った蓮くんにはご褒美をあげないとね……。
「ん? ここは?」
目が覚めると知らない天井があった。
そのまま首だけを動かすと、白いカーテンに囲まれていることが分かる。
ここはどこだろうと思っていると、カーテンが開かれる。
「あ、起きた? 大丈夫~?」
少し間の抜けたその声の主は、星之宮先生だった。
なぜ?と思い、首をかしげると、星之宮先生は側に腰掛け、人指し指と中指を立てる。
「はい。雨宮くん、この指何本に見えるかな~?」
「……二本です」
「うん。意識ははっきりしているみたいね。もう、びっくりしたよ~」
そう言って、星之宮先生から話しを聞くと、小宮たちとの一件後、歩いている途中で朦朧とし始めたらしい。
そして、慌てた健が色々考えて、保健室に連れてきたそうだ。
その後は、星之宮先生が治療をしてくれたようで、先生が様子を見るからと言って、健はかなり渋ったようだが、帰されたそうだ。
時間を聞くと、すでに22時だそうだ。
一通り話を聞いて、俺は体を起こそうとしながら、感謝を伝える。
「先生遅くまで看ていただいて、ありがとうございました。帰ります」
しかし、星之宮先生は、両手で俺の肩を抑えてベッドに寝かせてくる。
「だめよ~。けが人は大人しくしてなさ~い」
「……ですが、ご迷惑では?」
「ふふ。良い子ね。ますます佐枝ちゃんにはもったいなく感じちゃうな」
そう言って、星之宮先生は俺の顎先を指でなぞってくる。
妙に艶めかしい仕草をしてくるな。
そんなことを思っていると、星之宮先生は、体を離し、背伸びしながら言う。
「それに、帰ってもビール開けて、寝るだけだしね~。たまには、年下のイケメンと一夜を過ごすのも悪くないかな~って」
「……星之宮先生、あなた先生ですよね?」
「ん~聞こえませ~ん。教師にも自由にする権利がありま~す」
「……いえ、自由云々ではなく、モラルの問題……」
「はいはい。けが人は大人しくしてましょうね~」
そう言って、星之宮先生は俺に布団をかぶせてくる。
そして、いたずらを思いついたかのように、笑い言ってくる。
「一緒に添い寝してあげようか?」
そして、そんな提案をしてくる。
それに対して、俺は…………、
【是非お願いします!】
▶【魅力的な提案だけど断る】
「……魅力的な提案ですが、そんな体力も気力もないので、ご遠慮します」
「へぇ~、『魅力的』なんだ~」
「? 星之宮先生は可愛くて、それでいて美人なのだから、それはそうでしょう?」
俺が思ったことをそのまま伝えると、星之宮先生は、目をつむり、「ん゛んん~」と何かを我慢するような仕草を見せ、そして、
「も~! 可愛いこと言っちゃって! も~~!」
そう言って抱きついて来た。
まあまあの勢いで抱きつかれ、衝撃と柔らかい圧迫感で怪我したところが痛む。
「先生。痛っ、痛いんで」
「あ、ごめんごめん~。でも、雨宮くんがイケないんだからね~」
そんな理不尽な。
星之宮先生は体を起こすと、少し頬を上気させてニッコリと微笑む。
「ねえねえ。雨宮くん本当にBクラスの子にならない?」
星之宮先生は、急にそんなことを言ってくる。
そして、当然の疑問があるので、聞いてみる。
「クラス替えは、確かなかったはずでは?」
「そうよ~。でも、2000万プライベートポイントで好きなクラスに行けるのよ? 佐枝ちゃん教えてないの?」
「……そう、だったんですか。初耳です。公表していい情報なんですか?」
「うん。毎年、何人かは聞いてくるからね~。それに実際クラス移動のポイントを考えれば、無理って分かるしね」
ん? 確かに2000万プライベートポイントなんて額は、考えてみれば、普通には貯まらないだろう。
ということは、星之宮先生はからかっているのだろう。
「先生。からかわないでください。そんな額、貯められませんよ」
そう伝えると、星之宮先生はニコ~と笑い、「それはどうかな~」と少し思わせぶりに言ってくる。
「どういうことですか?」
「ふふ。それは、雨宮くんがBクラスに来てくれるって本気で考えてくれたら、教えて、あ・げ・る♪」
そう言って、指を自分の口元で立て、流し目でこちらを見てくる。
やはり、からかわれたようだ。
なんだか、少し疲れたなと思ったのが顔に出たのか、星之宮先生は、立ち上がりながら言う。
「まあ、とにかく今日は先生がいるから、ゆっくり休みなさ~い。明日は念のため、一日休んで、病院で診てもらうこと。いいわね」
「いや、学校をサボるとクラスポイントが」
「それは大丈~夫。先生がちゃんと申請出しておいてあげるから、いくらこの学校だって、怪我や体調が悪くて休んだ生徒を理由にクラスポイントは減らさないわよ~。あ、あと病院で診てもらったら、ちゃんと診断書を貰ってきてね♪」
そう言い残し、星之宮先生はカーテンの外に出ていく。
そして、おそらく机の上のライトをつけた後に、部屋の電気を消してくれる。
俺は星之宮先生の配慮に感謝しながら、目を閉じて、今日の疲れを取ることにした。
**************************
我は汝…汝は我…
汝、ここに新たなる契りを得たり
契は即ち、
囚われを破らんとする反逆の翼なり
我、「塔」のペルソナの生誕に祝福の風を得たり
自由へと至る、さらなる力とならん…
ペルソナの力を育てる人間関係
「塔」コープが解禁した!
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翌朝、目を覚ますと妙な圧迫感があり、そちらに気をやると、なぜか星之宮先生が隣でスースーと寝息を立てていた。
本当に添い寝されたのか。
起こすのも忍びないので、そっとベッドを抜け出し、俺はそのまま学校の施設内にある総合病院に向かった。
朝早い時間ということもあり、まだ受付は開始していなかったが、受付で準備をしていた事務の人がギョッとした顔をした後、気を利かせてくれて、医師の先生が来るまで安静にしているようにと、ベッドを一つ貸してくれた。
その後、一番で診察を受けることができ、怪我の原因を求められた際に、なんて答えようかと考えていると、先生から守秘義務があるので、安心して話しなさいと諭され、正直に事情を説明した。
その説明を聞き、検査をすることになり、尿検査、レントゲンやMRIなどの検査を受けた。
診察の結果は、複数打撲と軽度の筋挫傷、口腔内出血となり、全治2、3週間となった。
星之宮先生の処置が良かったのか、腫れはそこまでひどく無いらしいが、治療を受ける前に、鏡で見せてもらったら、結構青あざが目立つなと思った。
看護師さんからもう少し自分の体を大事にしなさいとお叱りを受けたが、素直にシュンとしながら謝ると、なぜか顔を赤くした看護師さんが意気揚々と言った様子で治療してくれて、気合が入り過ぎて、顔も体も包帯だらけで、ミイラ男のようになっている。おまけに骨は折れていないのにギブス付きだ。
「君、少しやりすぎでは……」「イケメンは全世界の宝です」「あ、はい」と先生と看護師さんが何かを言っているのが、治療室の奥から聞こえたが、よくは聞こえなかった。
その後、診断書に加え、痛み止めと軟膏、冷湿布を処方してもらい、病院を後にした。
スマホの電源を入れて、時刻を確認すると、すでに正午を過ぎている。
そして、スマホにやたらたくさん通知が入っていた。
どうやら、みんな心配して連絡を入れてくれたようだ。
良い友達に恵まれたなと思いつつ、返信しようとチャットアプリを開くと、『エラー番号0931 メッセージが受信できません』と表示された。
どういうことだろうかと思い、色々操作して見るが、いつもより反応が悪く、原因もよくわからない。
昨日の件で、故障でもしたのだろうか。
歩きながら操作していると少しだるさを感じたので、無理をせず、自室に帰り休むことにした。
明日、登校したときにでもちゃんと話そうと思い、俺は疲れた体を労るように眠りについた。
ピンポーン
自室のチャイムが鳴る音がして、俺は目を覚ました。
窓から夕日が差し込んでいるので、どうやら夕方のようだ。
ピンポーン
もう一度鳴ったので、少しだるいが体を起こし、インターフォンの液晶から誰が来たかを確認する。
画面に映ったのは、クラスの皆だった。
すぐに出ることにした。
「み゛んな゛どう゛した?」
『――っ蓮くん! 大丈夫かい? 事情は須藤くんから聞いたよ。みんな心配だからお見舞いに来たんだ』ワイワイガヤガヤ
寝起きのせいか変な声がでて、クラスの皆が心配そうな声が多く聞こえたが、洋介が代表して答えてくれた。
俺は「わ゛かった」と答えて、玄関に向かう。
皆が心配して来てくれたことが嬉しく、そんな気持ちでるんるんと玄関のドアを開けた。
…………自分が今、どんな姿をしているかも考えずに。
玄関のドアを開けた瞬間、世界が凍りついたようにシーンとなった。
あれ? 皆どうしたんだ?
そう思い、首をかしげた瞬間に、世界が爆発した。
きっかけは、佐藤の悲痛な叫び声だった。
「い、いやあああああああ! 雨宮くんが! 雨宮くんが! いやああああ!」「ああああああ! 顔が! 顔が!」「クラスの宝が! 日本の宝が! 世界の宝のイケメンフェイスがああああ!」「ひ、ひどい! こんなのひどすぎるよ!」「きゅ~~~~~~~」「ああ、みーちゃんが倒れた! だ、誰か!」「普通こんなになるまでする!? ありえないんだけど!」「ホントッ! 絶対許せない!」「れんれん……大丈夫?」「これは、ひどすぎる……」「マジで痛そうだな……、Cクラスの奴らぁ!」「あいつらぶっ潰そうぜ!」「うおおおおお蓮! こんなに大怪我だったなんて! すまねえ。すまねえ!」「須藤! おめえは悪くねえよ! 悪いのはCクラスのやつらだ!」「蓮くん! バカッ! またこんな無茶をして! 心配する方の身にもなって!!」「……殺す殺す殺す殺す小宮、近藤、石崎、名前は覚えた殺す殺す殺す殺――」
佐藤は悲痛そうな表情で叫び、王さんは倒れ、小野寺さんが介抱し、軽井沢は怒りを露わにし、松下はそれに同意し、波瑠加は心配そうにこちらを見てくる。
洋介は顔を青ざめ、健は大泣きし、池と山内はCクラスを糾弾する。
鈴音は泣きそうな顔でこちらに詰め寄り、桔梗は呪詛を垂れ流しにしている。
というか、桔梗! ストップ! ストップ! ああ、もうどうしたものか。
そう考えていると、清隆が一言、「おい、皆静かにしろ。蓮の傷に障るぞ」と声を上げると同時に、ピタッと止まった。
その後、喧騒が止まったのはいいが、今度はやれ安静にしていろ、やれ救急車を呼べと再び騒ぎになりそうだったので、その場で「皆、俺は大丈夫だ。見ろ」と言って、片手逆立ちをすると、「バッカ! やめろ!」、「お願い! やめて!」と健と鈴音に怒られ、洋介がこれ以上みんなでいたら、俺が無理すると言って、解散させてくれた。
俺は一人ひとりに心配させてすまないと声をかけ、帰ってもらった。
ようやく一息つけるなと思い、自室に戻って、コーヒーを入れていると、ガチャと扉が開く音がして、パタパタと近づいてくる音がする。
音の正体は、桔梗だった。
「蓮くん――っ」
「桔梗? 帰ったんじゃ」
と言い切る前に、桔梗は静かに歩み寄り、優しく抱きついてくる。
「心配、したんだからね……」
「…………そうか……ごめん、心配かけたな」
「Cクラスのやつら、ぶっ殺す……」
「……そういう共犯者にはなりたくないから、やめてくれ」
「わかった。……でも許さない」
「はいはい。今はそれでいい」
「………~~~」
俺は桔梗を鎮めるために、顔を上げずに桔梗の頭を撫でる。
桔梗はされるがまま、じっとしている。
少し間、頭を撫で、「コーヒー淹れてるが、飲むか?」と聞くと、「もう、無理しちゃ駄目だよ。私が淹れるからじっとしてて」と少し頬を膨らませて言うので、任せることにした。
そして、二人でゆっくりコーヒーを飲んでいると、また、ガチャと扉が開く音がして、パタパタと歩いてくる音がする。
音の正体は、鈴音だった。
鈴音はこちらを見ると、一瞬で凍ったような表情になる。
「…………なんで櫛田さんがここにいるのかしら?」
「……それはこっちの台詞かな堀北さん?」
バチバチバチ
何やら最近見たような見ていないような光景が始まった。
俺は、はぁとため息をつくと、二人はスンと静かになる。
ん? どうしたんだ?
「今日は止めておきましょう櫛田さん」
「うん。そうだね」
そう言って、鈴音は近づいてきて腰をかけた。
「蓮くん。あまり無茶をしないで。本当に心配したのだから」
「ああ。ごめん鈴音。心配をかけた」
「本当よ……まったく、あなたって人は。……その腕じゃ夕食も作れないでしょ。材料買って来たわ。今日からは私が作るから、安静にしなさい」
「いや、それは」
「な・に? 文句があるの?」
「……ありがとうございます」
「ふふ。別にいいのよ」
鈴音は心配そうな様子から、機嫌の良さそうな様子に変わる。
どうやら食事の心配をしてくれたようで、正直に言えばかなり助かる。
「ふ~ん。堀北さんって料理できたんだね?」
「ええ。これでも得意な方よ」
「そ、そうなんだ。……あ! 私も手伝うね!
「いいえ。気持ちだけいただくわ。一人でやった方が効率がいいもの。それに、
「ふ~ん」
「何かしら?」
バチバチバチバチ
あれ? 状況が戻って「「はぁ。やめましょう(やめよ)」」……ない!
一瞬、ヒヤッとしたが、どうやら二人とも平静を取り戻してくれたらしい。
「じゃあ、料理の方はお願いね堀北さん」
「ええ。櫛田さんあなたは?」
「蓮くんお風呂入れないだろうし、その準備でもしておくね」
「わかったわ。お願い」
「うん」
そう言い合って、テキパキと二人は動き出す。
俺も何か手伝おうかと立ち上が「「蓮くんは大人しくしてて」」ることもできずに、「……はい」と返事をして、コーヒーに再び口をつけだした。
ピンポーン
しばらく二人が家事をしてくれているのを眺めていると、チャイムが鳴る音がした。
出ようかと今度こそ立ち上がろうとすると、桔梗が「私が出るから、座ってて」と言って、玄関の方へ行ってしまった。
至れり尽くせりとはまさにこのことだろう。
そんなことを思いつつ、今度は誰が来たのかと思った矢先、
「Cクラス!? 帰って!!」
と桔梗の物々しい叫び声が聞こえてきた。
鈴音と俺はなんだなんだと見に行くと、そこには、額に汗をにじませ、大きく肩で息をするひよりがいた。
「あ、蓮く」とひよりがこちらを見て、そして、目を見開き、次第にその目からはボロボロと大粒の涙がこぼれ落ち、「あ、ああ、あああぁぁ……」と膝を付き、泣き崩れてしまった。
「ちょ、ちょっと! 何泣いてるの! 泣きたいのは蓮くんの方だよ!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
桔梗が責めるようにそう言うと、ひよりは繰り返すように泣きながら謝り始めた。
これはいけない。
すぐに二人に近づき、膝をついているひよりを立たせようとした。
「蓮くん!?」
「桔梗。大丈夫だ。この子は俺の友達なんだ」
「――っでも!」
「頼む。信頼できる良い子なんだ」
「…………わかった」
そう言って、桔梗は不貞腐れるような顔をして、部屋までの道を開けてくれた。
「鈴音も。そういうことだ。……危ないから包丁は置いてくれ」
「…………わかったわ」
鈴音もそう言って、不満げだが、キッチンに戻ってくれた。
あの包丁をどうするつもりだったかは、考えないようにしよう。
俺は、まだ泣きじゃくるひよりを立たせて、部屋に案内した。
居間に座りながら、「ごめんなさいごめんなさい」と言い、泣きじゃくり抱きついてくるひよりの頭を撫でながら落ち着かせた。
その間、目の前に座った鈴音と桔梗の二人が目を皿にして、不満げにしていたが、苦笑いを返しつつ、抑えてもらった。
そんなことをしていると、少し落ち着いたのかひよりが顔を上げて、体を離した。
目は赤く腫れてしまっていたので、少し申し訳無さを感じつつ、ひよりの言葉を待った。
「……蓮くん。本当にごめんなさい」
「別にひよりは何も悪くないだろう」
「そんなことありません。あのとき! 私がもっとちゃんと止めていれば!」
「言っただろ。なんと言われようと行くって。だから、これは自業自得だ」
「違います違います。蓮くんは何一つ悪くありません!」
「はは、優しいなひよりは」
「も、もう! ちゃんと聞いてください!」
そう言って、頬をハムスターのように膨らませてひよりが抗議してくる。
そんなやり取りをしていると、
「…………櫛田さん。壁なら殴ってもいいかしら?」
「いいんじゃないかな堀北さん。珍しく私も同じ気持ちだよ」
何やら物騒なことを言い出す二人がいた。
俺はわざと咳払いをして、ひよりに聞くことにした。
「それで、ひよりがここに来たということは、Cクラスで何か動きがあったのか?」
「…………はい」
「そうか。あ、別に言わなくてもいいからな」
俺がそう伝えると、鈴音と桔梗が驚いたような顔で「「蓮くん!?」」と言ってくる。
いや、ひよりにCクラスを裏切らせるわけにもいかないしな。
など考えていると、
「いえ、お話します。今回のことについては、許せません」
「いや、だが」
「いいんです。蓮くんを、私の大事な友達にここまでのことをしたのです。絶対に許しません」
「う、うーん」
「お二人も聞きたいですよね?」
ひよりが鈴音と桔梗の方を向いてそう聞くと、二人も首を縦に振り頷く。
「…………わかった。二人とも、これだけは約束してくれ。ひよりは別に内通者というわけではない。ただ、本当に友達なんだ。だから、彼女の不利益になるようなことにはなってほしくない。だから、ここで聞いたことは絶対に口外しないと約束してくれ」
「わかったわ」
「わかったよ」
俺がそう伝えると、二人とも真剣な表情をして、即答した。
そして、その様子を見て、ひよりが話し出す。
ひよりの話によると、昨日会った小宮、近藤、石崎の三人は、朝は登校して来ないで、昼過ぎぐらいに三人して登校してきたらしい。
そして、三人は明らかに大怪我でも負ったような様相で登校してきたとのこと。
Cクラスの生徒が、何があったかを三人に聞くと、昨日Dクラスの須藤と雨宮、つまり俺に呼び出されて、難癖をつけられて暴力を振るわれたと豪語したらしい。
それを聞いたひよりは、持ち前の頭脳で何があったのかを察し、放課後に三人を問いただしたとのこと。
危ないことをするなと思いつつ、続きを聞くと、そのときは感情を必死に抑えて、どのような経緯でそうなったかを聞いたそうだ。
しかし、三人とも取り繕うようにチグハグな証言だったらしく、嘘をついていると見抜き、後は冷静を装いつつも、クラスを後にして、俺に連絡を試みたそうだ。
だが、一向に待てど暮らせど返信が返ってこなく、最悪の展開を考えてしまい、いても立ってもいられなく、走ってきたとのこと。
そこまで、ひよりが話すと、部屋の空気に殺気が漂っていた。
発生源は2つ。
鈴音と桔梗からだ。
「ねえ櫛田さん。……私、今まで殺人を犯す人の気持ちなんて微塵も理解できなかったのだけど、今ははっきりと分かるわ……」
「うん堀北さん。私も同じ気持ちだよ……。今、どんな報いを受けさせるか色々考えてるけど、でも全部却下。こんなのじゃ全然たりない……」
「私も、もうあの三人とは今後一切、口も聞きたくないです!」
目の前でとても物騒なことを言っている。
一人はとても可愛いが。
とにかく、怒ってくれるのは嬉しいが、問題の解決にはならないだろう。
「落ち着け三人とも。おそらくあちらの作戦通りの展開なだけだろう」
「蓮くん。落ち着いていられるわけないでしょ」
「そうだよ! 全部あいつらがいけないのに、蓮くんのせいにされてるんだよ!?」
「私も冷静になんてもうなれません!」
そう言って、三者三様に怒りを露わにする。
それに対して、俺は……、
【鈴音の頭を撫でて落ち着かせる】
【桔梗の頭を撫でて落ち着かせる】
【ひよりの頭を撫でて落ち着かせる】
▶【誰かこの場をなんとかしてくれないかなと思う】
誰かこの場をなんとかしてくれないだろうかと他力本願なことを考えていると、
ピンポーン
と再びチャイムが鳴った。
俺は三人に止められる前に、足早に立ち上がり、玄関へ向かった。
玄関を開けると、そこには、
「あ、蓮! あんた怪我したって聞い……………………誰がやったのよ。言って」
殺気を高め始めた真澄がいた。
その後、真澄が大声で何があったかを問い始めると、なんだなんだと部屋の奥から三人が出てきて、それを見た真澄が、今度は一体全体どういうことだとこの状況を問い詰め始め、それを聞いた鈴音と桔梗がお前こそ誰だと云わんばかりに立ち向かい、ひよりがそれを見て只ならぬ雰囲気に当てられたのかススっと俺の後ろに抱きつくように隠れ、それを見た三人がこちらに詰め寄り、勢い余って倒れそうになったので、ひよりを庇いつつ、四人分の重さと一緒に床に倒れ、後頭部の痛みと全身の痛みに悶絶し始めると、鈴音は青ざめ、桔梗はあわあわと慌て、ひよりは泣き出し、真澄は「氷!」と言って、冷蔵庫の角に小指をぶつける二次被害を出すといった珍事が起きた。
そんなこんなで、もう夕食にしようと伝えると、気を取り直すかのように四者四様に動き始めた。
「いただきます」
「「「「いただきます」」」」
さすがに、一人部屋に5人もいると狭さを感じる。
ローテーブルには、鈴音が作ってくれたマカロニ入りのトマトスープが、形も大きさも違う器にそれぞれ入って、並べられている。
さすがに食器が足りなかった。
そんなことを思いつつも、片手では食べにくいなと思い、骨が折れているわけでもないので、ギブスを外そうとすると、全員に勢いよく止められ、大丈夫だと説明しても納得してもらえず、大人しく片手で食べることにした。
なぜか顔に巻かれた包帯は流石に外したが、治療の痕が残った顔を見た4人が痛々しくこちらを見てくるのに耐えきれず、料理を口に運んだ。
トマトの酸味少し口に染みたが、マカロニの柔らかさ、キャベツの柔らかくなった歯ごたえがたまらない絶品だった。
「ど、どうかしら?」
「ああ。美味しいな。昨日から何も食べてなかったから、今日最初の一口がこのスープで良かったと思えるぐらい最高な気分だ」
「も、もう! いつも大げさなんだから!」
そう言って、鈴音はわかりやすく照れている。
そして、二口目を入れようとすると、上手くすくえず、少しもどかしく思っていると、
「はい蓮くん。あーんですよ」
にこやかな表情でひよりが食べさせようとしてくる。
それを見てか、桔梗も真似して、
「蓮くーん。はい、あ~んして?」
と言って、スプーンをこちらに向けてくる。
「ちょっと、あなたたち! 何を勝手に!?」
鈴音が声を上げてそう言うと、ひよりは不思議そうに「蓮くんが、食べにくそうだったので」と首をかしげ、桔梗は「だって私、蓮くんの隣に座ってるしお世話してあげないと」と悪びれる様子もなくそう言うので、鈴音も「ふふふ、じゃあ、私のも食べられるわよね? 私が作ったのだから」と謎の理論で、スプーンをこちらに向けてくる。
どうしたものかと考えていると、
「いい加減にしなよ。さっきのこともう忘れたの?」
と真澄が一喝してくれたお陰で、三人とも大人しくスプーンを引っ込めてくれた。
真澄、お前が神、いや女神か!
と思い、感謝の眼差しを送ると、真澄は少し顔を赤らめて「こっち見ないで、さっさと食べなよ」と言ってきた。
そして、穏やかに食事ができた。
食後、ひよりと真澄が食器を洗ってくれている。
とても助かるなと思いつつ、しかし、この4人はいつまで居るのだろうと失礼なことを考えていると、桔梗と鈴音が協力して、湯を張った洗面器とタオルを持ってきた。
「蓮くん。体拭くから脱いで」
桔梗が当たり前かのようにそんなことを言うので、遠慮しようとしたが、二人して頑として譲らなかった。
仕方なく、上だけ脱ぎ、前は自分でやり、背中は厚意に甘えることにした。
背中を拭いて貰っている時に、別々の場所から感触があったので、鈴音と桔梗がそれぞれやってくれているらしい。
二人とも可愛いし、美人なので、クラスの男子たちにこの光景を見られたら、何を言われるか考えるだけでも恐ろしいなと思いつつ、二人の気が済むまでやってもらった。
服を着て向き直ると、なぜか背中を拭いていた二人とキッチンからこちらを見ている二人も皆、顔を赤くしているように見える。
照れているのだろうか。
いや、男の背中を見て、恥ずかしがるようなものでも無いか、そもそも水泳とかの授業でも見られているだろうし。
その後は、鈴音も本を読むのが好きということで、ひよりと仲良くなっている様子で、桔梗も真澄の裏表ない言葉のやり取りを気に入ったのか、少し地を出しながら歓談している。
そんな風景を見ていると、和むなと思った。
って、いつまで居るんだこの4人は。
部屋の時計を見るとすでに22時を回っている。
確か20時以降は立ち入ってはいけない決まりだったようなと思い、急ぎ彼女らに伝える。
しかし、正確に言うと、男子が女子のエリアに20時以降は立ち入ってはいけない決まりだそうで、別に女子は具体的な罰則は明記されていないらしい。
なら、大丈夫か。
…………いや、駄目だろ。
いい加減帰るように伝えると寝ている間に容態が変わっては大変だから、ここに泊まると皆して言い始める。
俺は心を鬼にして、こう言った。
【だめだ帰れ】
▶【もう好きにしろ】
「もう好きにしろ」
…………あれ?
いや、そうではないだろう。
何を口にしているんだ。
ほら、こんなこと言ったから、皆泊まる気満々ではないか。
俺は今度こそ心を鬼にして、こう言った。
【やっぱりだめだ。帰れ】
▶【俺はもう寝るからな】
「俺はもう寝るからな」
そう言って、俺はベッドに潜り込んだ。
………………
…………
……
いやいやいや、駄目だろ駄目だろ。
どうしてこうなった。
どうして、この言葉がでた?
そんなことを考えていると、四人とも思い思いに動いて、寝るスペースを作り始めたり、寝支度を始めたりしている。
いやいやいや
いやいや
いや………………、スピー
俺は、色々な疲れが出たのか、すぐにそのまま眠ってしまった。
朝、鳥のさえずりで目を覚ますと、自分の部屋の天井が見えた。
そして、視線を横に向けると、しっかりと床に布団を敷いて、パジャマ姿で寝ている美少女4人がいた。
…………
………
……
はぁ!?
え?
どうして、布団が? どこからもってきた?
というかパジャマって、いつ? どこで着替えた?
いくらなんでも無防備すぎる!
そんな子に育てた覚えはないぞ!
いや、俺は育ててない!
は?
なぜ? Why?
俺は目覚めたばかりの頭をフルに回転させるが、全く何が起きたか分からない。
しばらく目の前の非現実的な光景にフリーズしていると、鈴音がまず起きてきて、何もなかったかのように「おはよう」と微笑みながら言うので、「あ、ああ、おはよう」と伝える。
そして、彼女はそのままこの光景を気にもしないで、脱衣所に向かう。
その音からか、また一人、一人と起き出し、交代交代で脱衣所で着替えてくる。
その結果、一番最初に起きたのに、俺は一番最後に着替えをした。
そして、登校の準備をするということで、4人で一緒に自室に帰っていった。
玄関まで見送りして、そのまま呆然としていると、隣の部屋のドアが少しだけ開いている様子が視界に入った。
まさか……、このパターンは……。
そして、扉が開き、清隆が顔を出す。
「……聞いてくれ。本当に、やましいことは、全くしてないっ――」
言葉に力を込めて、絞り出す様に俺がそう言うと、清隆はいつもの様子で、ただこう言った。
「蓮。…………お前は、いつも俺の想像を軽く飛び越えていくな」
そして、そのまま清隆は扉を閉めた。
清隆ああああああぁあぁああ!!
♪♪♪
《蓮の魅力が磨かれた!》
♪♪
《蓮のSP上限が上がった!》
♪
《蓮のHP上限が上がった!》
平素より、お気に入り登録、感想・評価、誤字脱字報告、ここ好き!等々誠にありがとうございます。
ここまでお読みいただいた方も気に入っていただければ、お気に入り登録、感想・評価、ここ好き!等、何卒よろしくお願いいたします。
はい。ということで、色んな意味でご褒美回でした。
ハーレム候補のメンバーが顔を合わせてしまったねニッコリ
前回、ちょっと主人公がボコボコにされて過ぎてしまい、頑張ったな……いい思いさせてやるからなと思って書いてたら、想像以上に展開が急展開してしまい、キーボードを打つ指が途中から止まらなくなってしまいました。
おそらく、読んでいて、展開早すぎね?と思った方もいるとは思いますが、何卒ご容赦を汗
さて、星之宮先生がコープ入りしてしまいましたね。
最初は塔のコープは、高円寺くんを想定していたのですが、「……あれ、別に心の闇とか葛藤とか無さそう」と現段階では思い、「他のキャラ入れるかー…………、塔のような崩壊的な意味合いを持ちそうなキャラクター……、崩壊、破壊、クラッシャー、サークルクラッシャー、……あ、知恵先生にしよう!」という60%ぐらいはそんな理由で決めました。
早く茶柱先生と絡ませたい。
あと、ヒロインズに関しては、次々にハーレム候補が現れて、山あり谷ありの感情の起伏を連続して描写したら、面白いかなという実験的な意味合いも込めて表現してみました。
いかがだったでしょうか?
堀北さんはちょっと危なくなってきましたね(包丁のところとか)。でも完全に胃袋をつかもうと行動し始めましたね。
櫛田さんは相変わらずですね。まあ、そこが最高に可愛いんだが。
あれだけ、ひよりさんを泣かせるなんてできるわけ無いだろと4話あたりで豪語していた結果がこれですよ。きっと、ひより党党員に私は明日消されるダラダラ
神室さんは、いい意味で姉御的なキャラ付けができました。彼女の描写や性格傾向にかなり悩んだのですが、基本的に暴走しやすいメンバーの防波堤の役割ができるのではないかと考えました。
普段そうやって、みんなをまとめつつ、二人っきりになったら、ベタベタに甘える子とか最高じゃね? そう思わん?
はい、すいません。暴走しました。
さて、今回は主人公にとって、ご褒美になったのかどうかはわからない展開にはなりましたが、この状況で喜ばない男がいたら、それはもう男ではない(迫真)。
そして、いよいよ綾小路くんの取り扱いがオチ要因になりつつあるので、どうにかしたい今日此の頃w
さて、今日はこのへんで、続きを書くのに戻りまーす。
はい、ではもしも選択肢のコーナー(妄想です)
【是非お願いします!】
【魅力的な提案だけど断る】
お願いしますの選択肢を選ぶと、華麗にかわされます。星之宮先生が今まで何人の男を魅了してきたと思うのですか? 多少の駆け引きをしないとね。
【鈴音の頭を撫でて落ち着かせる】
【桔梗の頭を撫でて落ち着かせる】
【ひよりの頭を撫でて落ち着かせる】
【誰かこの場をなんとかしてくれないかなと思う】
一件誰かを選ぶと大変なことになると思われますが、実はそうでもないのです。
確かに最初に選ばれた相手は好感度爆増しますが、結局私も私もとなって、下がることはありません。
そして、第4の選択肢こそある意味一番の爆弾。
しかし、同時攻略には、危険を分かっていても踏まないといけない選択肢があるのです。
【だめだ帰れ】
【もう好きにしろ】
KA・E・REを選択すると、しょんぼりしながら皆帰ります。
好感度等の増減はありませんのでご安心を。
しかし、時には場の空気に流されて間違ってもいいじゃない!
下の選択肢はそんな感じです。
【やっぱりだめだ。帰れ】
【俺はもう寝るからな】
以前獲得したデート術により、選択肢をもう一度選べるようになりましたが、因果律が働いたのか、筆者と読者の願望を聖杯が叶えたのかわかりませんが、制作陣の意図とは違う力が働いて、選択肢が一時的に選べなくなってしまい、ある意味一択になってしまいました。
仕方ないよね♪
異常です(修羅場描写に入った時の筆者のタイピング速度の速さが)