ようこそペルソナ的人間模様が繰り広げられる教室へ   作:行天

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 感謝:Thank you for calibrating my typographical errors.(私の誤字脱字を校正してくれてありがとうございます。)

 
 前回のあらすじ

 Cクラスを論破し、勝利目前となった蓮たち、
 しかし、予想だにしない石崎の訴えの取り下げ宣言、
 果たして、どのような結末になるのか……、





譲れないもの~憎悪、そして結末~

~~~????~~~

○事件当日、放課後

 

 ケヤキモールにある隠れ家のようなバーのさらにその奥の一室に、優雅にグラスでドリンクを飲んでいるのは、長髪を携え、誰をも射殺さんとばかりの目つき、着崩した制服の男。

 そして、その側に控え、日本人では考えられないような大柄な体躯に備え付けられた筋肉隆々の留学生がいた。

 この部屋には学校のように監視カメラはなく、密会するにはふさわしい一室であった。

 そして、その二人の前に、正座をする三名の生徒。

 小宮、近藤、そして石崎であった。

 

「なあ、石崎。もう一度言ってみろ」

「りゅ、龍園さん! 俺たちはあなたの指示で!」

「アルベルト」

「……OK、Boss」

 

 龍園と呼ばれた男は、アルベルトと留学生の名前をそう呼ぶと、アルベルトはそのまま石崎に近づき、その巨大な拳を顔面に入れた。

 

「がっ!」

「おい、俺の指示は、須藤に殴られてこいって言ったよな? それがどう間違えれば、お前らが、しかも雨宮ってやつをぼこすことになったんだよ? ああ?」

「そ、それは、あいつが、挑発してきたんで」

「それでまんまと、相手の都合の良い展開にしてきたってことかよ。……アルベルト」

「…………」

 

 そう言って、アルベルトはさらに石崎を殴る。

 両隣の小宮と近藤は、ビクビクと怯えながら、身を縮こませる。

 

「はぁ……、ったく、ここまで使えねえとは思わなかったぜ」

「りゅ、龍園さん! お、俺たちどうしたら!」

 

 小宮がこらえきれずにそう言うと、龍園は興味なさげに答える。

 

「知らねえよ。こんな簡単な指示も守らねえヤツラはよぉ」

「そ、そんな!」

「お、俺たち、このままじゃ」

「良くて、停学、じゃなきゃ、退学だろうな」

 

 龍園はあっけらかんとそう伝えると、小宮たちは顔面蒼白になり、焦りだす。

 

「そ、そんな!」

「俺たちどうしたらいいんだよ!」

「……黙れ」

 

 龍園がそう言うと、アルベルトは小宮と近藤にも蹴りを入れて黙らせる。

 龍園は立ち上がり、苦しそうに悶えている三人のところに、近づく。

 そして、石崎の髪を掴み、顔を上げさせる。

 

「お前らが残されてる道は一つだ。Dクラスより先に学校に訴えろ」

「う、訴える?」

「そうだ。Dクラスのやつらと喧嘩したことにして、あいつらに罪をなすりつけろ」

「そ、それで、俺たちは助かるんですか!?」

 

 龍園は首を横に振る。

 

「それだけじゃ足りねえ……、Dクラスがどこまでやるかわからねえからな。だから、弱みを見つける必要がある」

 

 そして、少し考え、龍園は告げる。

 

「……まずは、Cクラスの連中を味方につけるぞ。お前ら明日は遅れて登校してこい。登校したら、すぐに学校に訴えを出せ。何も知らねえやつらなら、お前らは同情してもらえ被害者になれる」

「は、はい!」

「その後は、雨宮ってやつの弱みを見つけろ。須藤は素行の悪さを付けばいいが、雨宮ってやつはよくわからねえからな」

「うっす!」

 

 そこまで、言った後、龍園は立ち上がり、石崎たちを見下ろす。

 

「……じゃあ、あとは今回の落とし前をつけてやるよ」

「え、そ、それはどういう……」

「てめえらが負傷してないと、信ぴょう性がねえだろうが。大人しく俺の命令に背いた罰を受けろ……」

「ひ、ひぃい」

 

 その後、密室で行われた精算は、誰にも知られることはなかった。

 

○事件翌日、Cクラス

 小宮たちが、午後からクラスに現れたのを龍園は俯瞰的に見ていた。

 龍園の読み通り、Cクラスのクラスメイトたちは、小宮たちに同情的な様子を見せていた。

 しかし、その中で椎名だけがその様子を見せていないことを龍園は目ざとく察知した。

 椎名ひより、龍園から見て、こちらの支配に屈してはいないが、反抗する様子も見られないといった印象の女生徒だった。

 龍園は、普段からあまりしゃべらないやつだが、頭はキレそうだと彼女を評価していた。

 

 放課後、椎名が小宮たち三人の方へ向かうのを素知らぬ顔をしながら、窺っていた。

 椎名は冷静に事件解決のために状況を聞きたいと言って、小宮たちに質問を投げかけている。

 小宮たちの証言はひどいものだったが、椎名はそのことを突き詰めるようなことはせずに、黙々と質問を続け、肯定している。

 一見熱心に事件解決のために情報収集しているように見えるが、彼女が一度も同情する言葉を発していないことに龍園は気づく。

 そして、彼女がクラスを出ていったところで、「おい、伊吹」と一人の女生徒に声をかける。

 声をかけられた伊吹と呼ばれた女生徒は「なによ……」と素っ気ない様子で答える。

 

「椎名の後をつけろ」

「は? 嫌だし」

「2000ポイントやる」

「……3000」

「いいぜ。ただし、見つかるようなヘマをするなよ」

「っち、わかったわよ」

 

 そう指示を出すと、伊吹は自分の鞄を担ぎ、クラスを出ていく。

 

 

 その後、伊吹から来た連絡を見て、龍園は口角を上げる。

 そして、作戦を考える。

 しかし、それだけでは、相手の出方次第で状況が変わる諸刃の作戦だ。

 だが、失敗に終わったとしても、使えない駒が三人減るだけだ。

 最悪、そうなった場合は、命令を無視し、勝手に暴走したと公言し、命令に従わないやつの末路を見せつけ、統治を強めればいい。

 

 そもそも今回の作戦は、学校側の出方の確認、Dクラスの力量の把握が主な目的だ。

 多少のペナルティは最初から覚悟の上だと龍園はそう考える。

 

 

 そして次の日、作戦の内容を伝えるため、小宮たちを呼び出し、説明を龍園はした。

 加えて、クラスポイントに影響を及ぼさない結果になるならば、成功報酬として、一人10万ポイントをくれてやると審議を途中で降りないようにやる気を出させる。

 どちらに転んで、石崎たちがゲロっても、自分のアリバイはすでに用意してある。

 

 さて、準備は整った。

 今回の審議がどのような結果になるかを、龍園はただ面白そうに笑みを浮かべた。

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

「俺たちは、現時点を持って、今回の件の訴えを取り下げます!」

 

 石崎がそう宣言すると、静寂が響き渡り、そして、次の瞬間強烈な怒りの波動が周囲から沸き上がる。

 

「何を、言ってるのかしら……」

「ふざけんじゃねえ! 不利になったからってそんなこと許されるはずねえだろうが!」

 

 鈴音と健が怒りを露わにする。

 同時に、審議の進行をしていた橘先輩も苛立つように発言をする。

 

「石崎くん。あなたはこの状況で訴えを取り下げたとして、それを生徒会が認めると思っているのですか?」

「……民事訴訟法261条で、訴えの取り下げが認められているはずです」

「ここは法廷ではありませんよ」

「……確かに、ここは法廷ではありませんが、国が認めている法律を国立のこの学校が無視するのですか」

「それは……」

 

 橘先輩が石崎の言葉に言いよどむ。

 しかし、そこに生徒会長が彼女を庇うように立ちふさがる。

 

「石崎、しかし、その法律では、口頭弁論後は相手方の同意を得なければ、その効力を生じないはずだ。それはどうするつもりだ」

 

 生徒会長がそう言うと、鈴音と健が「当然同意しないわ」「認めるわけねえだろ!」と言う。

 だが、石崎はもはや生力を感じない、虚ろな目だが、口元はニヤけながら、俺の方を見る。

 

「……なあ、雨宮、お前はどうなんだよぉ」

「……当然、同意するつもりはないな」

 

 そう伝えると、「ヘヘ……」と石崎はもはや力のない口元を歪ませながら、言葉を続ける。

 

 

 

「なあ、『しいな』、こう言えばお前なら、もうわかるよなぁ」

 

 

 

 その瞬間、俺の体一面の産毛までもが逆立った気がした。

 石崎の言葉、

 『しいな』、

 『椎名』、

 『椎名ひより』

 ひよりのことか。

 つまり、

 こう言いたいわけか、

 ここで、訴えの取り下げを認めなければ、

 彼女に何かをすると、

 彼女を害すると、

 そう、……言いたいわけか。

 

 

 胸のうちから黒い暗い感情が湧き出てくる。

 

『怒れ』

 

 この色の感情は、なんだ。

 

『怒れ』

 

 燃え上がるような感情だが、まるで黒炎のように漆黒に燃え広がる。

 

『怒りを受け入れろ』

 

 その黒炎は俺の身を焼き焦がし始める。

 

『怒れ、怒れ、怒り狂え』

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「……アラミタマ

 

 俺がそうつぶやくと、身を焼き焦がす黒炎が体から解き放たれたかのように、溢れ出す。その憎悪のオーラとして。

 

「ひぇ……」

 

 石崎をはじめ、この場にいる誰もが放たれる憎悪に、驚愕する。

 関係ない。

 俺は目の前の長机に飛び乗り、さらに憎悪を撒き散らしながら、前へと飛び降りる。

 関係ない。

 一歩一歩と憎悪を込めて、石崎に歩み寄る。

 

「ひぃ、く、くるな!」

 

 関係ない。

 眼前の男を許すな。

 そして、長机を挟み石崎に対峙する。

 俺は長机を片手(・・)で掴み、持ち上げ、そして、横に投げやる。

 ガシャンという音を立てて、長机が床に転がる。

 そして、さらに歩みを進めるために、一歩、

 

「く、くるなああああああ!!!」

 

 瞬間、石崎は勢いよく仰け反り、足元から天井まで伸びる窓ガラスに勢いよくぶつかった。

 

 ビシッ、ビシビシビシッ!!

 

 ありえない光景であった。

 安全配慮がされているはずの強化ガラスが、石崎がぶつかったことにより、ひび割れはじめ、そして、……割れた。

 

 背後に支えるものがなくなり、石崎はそのまま後ろに倒れ落ちそうになる。

 

ああああああああ!!

 

 大声をあげて、今まさに落ちそうになっている石崎のネクタイを俺は掴んだ。

 そして、石崎は首元にあるネクタイ一つで、バランスが保たれている体勢になった。

 

た、たすけ! たずげで!

 

 恐怖のためか、石崎は必死にネクタイをつかむ俺の腕をつかむ。

 しかし、俺はその掴まれた腕をまっすぐに伸ばす。

 

あ゛あ゛あ゛ああああ! 死にだぐないぃ! やめでぐれぇ!

 

 あと一歩、

 あと一歩俺が足を進めれば、

 この目の前の男を、

 俺は――、

 

 

 【足を進める】

▶【ネクタイを引っ張る】

 

 

 一瞬、頭の中に、鈴音が、桔梗が、ひよりが、それだけじゃなく、今日まで俺を支えてくれた人が泣いている顔が見えた。

 俺は抑えきれないほどの怒りを感じながらも、全力でネクタイを引っ張った。

 そして、石崎は生徒会室の床に転がるように倒れた。

 

 生徒会室は、4階にあるだけあって、割れた窓から強めの生温い風が吹き込んでくる。

 風の音だけが、生徒会室に響き渡る。

 

 冷静になれ、

 怒りを押し込めろ、

 誰かが泣くような選択肢をとるな、

 先程の発言は、石崎が考えられるようなことじゃない、

 それに今回のことも、おかしな点が多い、

 おそらく仕組まれたことだ、

 確かに石崎たちは、事件を起こした、

 だが、裏で手を引いているやつがいるはずだ、

 入れ知恵をしたやつがいたはずだ、

 なら、憎悪を向ける相手を間違えるな、

 

 俺は深く呼吸をすると、石崎に向き直り、尻もちをついている石崎のネクタイを再度掴み取る。

 

「誓え石崎! ひよりに手を出すな!」

「ち、誓います! 誓います!」

「誓え! 二度と健にも手を出すな!」

「誓います! 誓いますから!」

「お前らもだ、小宮! 近藤!」

「「ひぃぃ、ち、誓います!」

 

 そこまで問い詰め、俺は石崎のネクタイから手を離した。

 小宮、近藤はその場に膝から崩れ落ちた。

 そして、石崎はその足の間から水たまりを自ら作った……。

 

 

 

 

 

 その後、一番最初に行動を起こしたのは生徒会長であった。

 

「橘。俺は下に負傷した者がいないか確認してくる。あとは任せたぞ」

「は、はい!」

「星之宮先生、同行をお願いします。ただちにガラスの周辺を立ち入り禁止にします」

「わ、わかったわ」

 

 そう言って、生徒会長と星之宮先生が慌ただしく駆け出すと、一之瀬が「会長、私たちも手伝います」と言い、一之瀬と神崎も後に続いた。

 生徒会室に残された者たちは、どうしたらよいかわからず、ただ立ち尽くしている様子だった。

 

「橘先輩」

「は、はい!」

「もし、先程の審議で決議をとった場合、Cクラスの処罰はどうなりますか?」

 

 俺が橘先輩にそう聞くと、橘先輩は考えるようにして答えを出す。

 

「……今回の件、石崎くんたちが、一方的に雨宮くんに対して暴行を加えたのは明らかです。そして、虚偽の訴えに口頭弁論の際も虚偽を重ねました。これは非常に悪質と考えます」

 

 そして、また一息おいて、

 

「決議を行った場合、生徒会としては、石崎くんたちは退学処分、そして、Cクラスは今回の事件を引き起こした一名につきクラスポイントを50ポイント、合計して150ポイントをDクラスに委譲するのが、妥当だと判断します」

 

 そう告げられて、Cクラスの面々は、もはや反論する気力も見られない。

 石崎たちを養護する気は毛頭ない。

 だが、この結末で良いのだろうか。

 本当に、罰を受けるべきなのは、石崎たちだけなんだろうか。

 そこまで考え、一つの結論を俺は出す。

 俺は……、

 

 

 【罪には罰を、犯罪者には制裁を】

▶【罪を憎んで、人を憎まず】

 

 

 

「橘先輩、1つ提案があります」

「……なんでしょう雨宮くん」

 

 俺は目をつぶり、一息入れてから答える。

 

「今回の件、Cクラス側がこちらが提示する条件を飲めば、訴えの取り下げに同意しようと思います」

「蓮くん!?」

「蓮!?」

 

 鈴音と健が驚いたように声を上げる。

 俺は二人に向き直り、自分の言葉で伝える。

 

「すまない二人とも。でも、信じてくれないか。決して皆の頑張りを無駄にはしない」

 

 俺がそう伝えると、少しの沈黙の後、二人は揃って口を開く。

 

「……わかったわ。あなたを信じる」

「……おう! おめえの好きにしろ蓮!」

「ありがとう、二人とも」

 

 そして、俺は改めて橘先輩に向き直る。

 

「詳細はこれから協議してから文面に起こしますが、Dクラスの要求は……」

 

 俺がその後申し出た要求は以下の通りだ。

 

 1つ、Cクラスの生徒がDクラスの生徒に対して二度と危害を加えないこと。

 2つ、Cクラスの生徒は同じクラスに所属する椎名ひよりに対して危害を加えないこと。

 3つ、1と2が守られる限り、CクラスからDクラスに委譲されるクラスポイントは30ポイントまで減額し、反訴は行なわないこと。

 4つ、3が破られた場合、Dクラスは本訴で委譲される予定の150クラスポイントを乗算して請求でき、加えて本件に対して反訴することができる。反訴した際の結果、算出される賠償費は本件とは別に加算されること。

 

 以上の内容を提示した。

 最初は、鈴音も健も他の面々も少し驚いた様子だったが、俺が「目先のポイントより、二度とこんなことが起きないように未来の皆の安全に投資したい」と伝えたところ、快く同意してくれた。

 その後、生徒会室にいたCクラスを除く全員で確認を行い、鈴音の鋭い視点と桔梗の感性、橘先輩からの助言もあり、以下の文面にまとめられた。

 

 

 

 1、Cクラスの生徒及びCクラスの生徒の関与の疑いがある生徒*1は、Dクラスの生徒に対して危害(傷害、恐喝、脅迫、詐欺、強制わいせつ等刑法に該当する行為)*2を加えないこと。

 2、Cクラスの生徒及びCクラスの生徒の関与の疑いがある生徒は、同クラスの椎名ひよりに対して危害(1と同様)を加えないこと。

 3、先述した1と2が守られる限り、CクラスからDクラスに委譲されるクラスポイントは30ポイントまで減額し、反訴は行わないこと。

 4、3が破られた場合、Dクラスは本訴で委譲される予定の150クラスポイントを乗算して請求でき、加えて、本件に関与するCクラスの生徒の在籍の有無に関わらず*3、反訴することができる。反訴した際の結果、算出される賠償費は本件とは別に加算されること。

 5、本件の決議中に起きた生徒会室の割れた窓ガラスの弁償は小宮、近藤、石崎の3名のプライベートポイントから行うこと。*4

 6、以上の内容が定められた経緯も含め、Cクラスの生徒及びDクラスの生徒には周知させること。*5

 

 

 以上にまとめられた。

 そして、条文を記入した用紙に俺と健は署名し、Dクラスとしての署名を茶柱先生にお願いした。

 

「橘先輩。この条件をCクラス側が合意するのであれば、DクラスはCクラス側の取り下げに同意します」

「わかりました。では、Cクラスの生徒はまだ正気ではなさそうなので……、坂上先生、代表して合意の署名をお願いします」

「わ、わかり、ました……」

 

 坂上先生は、腰を抜かしていたのか、ヨロヨロと立ち上がりながらもこちらにやってきて、合意の署名に記入をした。

 

「はい。では生徒会として、これを持って本件の終結を宣言します」

 

 橘先輩がそう言うと、この場にいるDクラスの皆から歓声が上がる。

 たった一週間のことではあったが、とても長い戦いであったように感じる。

 だが、目の前に広がる歓喜に震える皆を見ていると、その苦労も浮かばれるようだ。

 そんなことを思っていると、橘先輩は少し微笑んだ後に、すぐに真剣な表情に戻り、茶柱先生と項垂れる坂上先生に話をする。

 

「先生方、生徒会としては本件に関しては、両者の合意をもって、本件を終結させましたが、学校としての処分はいかがなさいますか?」

 

 橘先輩の言葉に、Dクラスの面々は驚き口を閉ざし、呆然としていたCクラスの面々も正気に戻る。

 そして、そう問われた茶柱先生は強気な様子で答える。

 

「協議の必要はあるが、先程の映像の通り、こちらの生徒は一方的に暴行を受けたことには間違いない。クラスポイントの委譲の条件についてはすでに合意済みだから問題ないが、Cクラスの生徒の処分については、本校の生徒にあるまじき行為だと考られることから退学が妥当だろう。……坂上先生はいかがですか?」

「………………もはや、弁護の余地はないでしょう」

 

 坂上先生が力なくそう答えると、小宮と近藤が悲嘆に暮れたように叫びだす。

 

「先生! そんな……」

「い、いやだ! 俺はまだ、退学したくねえっす!」

 

 しかし、茶柱先生と橘先輩は厳しく伝える。

 

「小宮、近藤、それに石崎も。お前たちが仕出かしたことはそれだけ罪に問われるものだ」

「生徒会としても、あなたたちの暴挙を許すわけにはいきません」

 

 そう伝えられ、小宮は「そ、そんな!…………」と力なく肩を落とす。

 俺は、そんな二人の様子を見て……、

 

 

 【俺もその処分に異論はありません】

▶【…………待ってもらえませんか】

 

 

「…………待ってもらえませんか、先生、橘先輩」

 

 俺がそう伝えると、茶柱先生と橘先輩がこちらを向く。

 

「確かに、小宮たちがやったことは許されるものではないと思います」

 

 俺は静かに話を聞いてくれる二人に向けて続ける。

 

「……ですが、すでに十分な罰は受けています」

 

 そう言って俺は、合意された書面に目をやり、そして、未だ自ら作った湿った床の上で、茫然自失の状態で膝をつく石崎に目をやる。

 

「これ以上の罰は、俺は望みません」

 

 俺は真剣な表情で二人に伝えた。

 その言葉を聞いてか、橘先輩の表情は少し緩んだが、茶柱先生は未だ鋭い目つきで俺に問う。

 

「雨宮……、今回の件で処分を甘くすれば、学校管理体制が疑われることになる。それを承知で言っているんだろうな」

 

 その言葉に俺は穏やかに、丁寧に、そして、言い返すように伝える。

 

「では、俺が警察機関に被害届を出しても問題ないということですね?」

「……どういう意味だ」

「俺が被害届を出せば、この件は刑事事件になります。そうなれば、当然、全国ニュースにでもなるでしょう。全国でも試験的な教育体制を敷いている学校側の責任追及は免れないでしょう」

「…………被害者が学校を脅すか……、だがそうなれば、お前もただではすまないかもしれないぞ」

 

 そう、厳しく伝えてくる茶柱先生に、俺は曲げずに答えた。

 

「誰しも一度は過ちを犯すでしょう。もちろん一度だからといって許されるはずのない過ちもあります。……ですが、今回の件は、未然に防げる可能性はありました。……茶柱先生、あなたが俺に言ったように、学校側は生徒素性について情報をもっていたはずです。そうした生徒を受け入れたのなら、教育に努めるのが学校の責務でしょう。だから、改めて言います」

 

 俺は、茶柱先生のその後ろに控える高度育成高等学校という組織に向けて、拳を握り真っ直ぐと突き出す。

 

「罰するなんてそんな安い言葉で片付けず」

 

 処罰を下すだけなら、簡単なことだ、

 

教え育て上げ、更生させてやるぐらい言ってみせろ!

 

 だから『教育』と言うんだろ、

 

俺たちがこの学校に在籍していることに誇りを持てるぐらいの度量を見せてみろ!

 

 俺は、俺たちは、そんな学校だと憧れをもってこの学校に入学したのだから!

 

 俺がそう言うと、逡巡することなく、茶柱先生は口元をニヤけさせ、「ふっ」と面白そうなものを見るかのように小さく笑う。

 そして、

 

「いいだろう雨宮、今回はお前の啖呵に免じて、厳罰には処さないでおこう。だが、罰が全くないのは認められない。……ここまで大仰に言ったんだ、お前は何が適切な罰だと考えるんだ。言ってみろ」

 

 茶柱先生の言葉に、俺はそう振られるとは流石に考えてなかったので、思いついたことを口にする。

 

「……まあ、学校の罰の定番と言えば、廊下に立たせるとか、トイレ掃除とか……か?」

「いいだろう。ならば、今回の件の罰則については、小宮、近藤、石崎の三名には、一ヶ月間全校舎内のトイレ掃除とする。……いかがですか坂上先生?」

「………………雨宮くんの温情に感謝いたします」

 

 茶柱先生がそう言い、坂上先生がそう答えると、今度は小宮、近藤が深い安堵のため息を出す。

 そして、二人は俺に近づき、「あ、あ、ありが、とう……、本当に」、「ごめん、本当に……俺たちが悪かった、ごめん」と泣きそうになりながら言ってくる。

 だから、そんな二人に、俺は、

 

「小宮、近藤、もう一度言うぞ。……二度と、するなよ」

 

 そう笑顔で返してやると、いよいよ二人は泣き崩れ、その声が生徒会室に響き渡った。

 だが、決して怒りも、悲嘆も、恨みもない、そんな晴れやかな雰囲気になった。

 そして、俺はゆっくりと未だ呆然としている石崎に近づき耳元で小さく伝える。

 

「さっきは悪かったな。……お前らに指示したやつに伝えてくれ、『今度は正々堂々正面からこい』とな」

 

 俺がそうつぶやくと、石崎は驚いたようにこちらを向いて、必死に首を縦に振るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、生徒会長と一之瀬たちが確認を終え、生徒会室に戻ってきた。

 橘先輩より簡単な経緯の説明があり、問題なしと判断され、まだ今後の処罰について説明のあるCクラスの面々を残し、俺たちは生徒会室を後にした。

 Dクラスの皆とBクラスの二人と生徒会室を出て、しばらく歩くといよいよ我慢できなくなったのか、健が背後から腕を回してきた。

 

「くぅううう! やったな蓮!」

「お、おい! 健! 苦しいって」

「わりい、わりい。でもよ! これが黙ってられるかっての!」

 

 健は歓喜に震えるように天を見上げる。

 その様子に他の皆も喜びを露わにし始めた。

 

「まあ、須藤くんの喜びようも分からなくはないわ」

「そうだね! 私たちの完全勝利だもの」

「うんうん。私も協力した身としては、なんだか自分のことみたいに嬉しいよ」

「は、はい! で、でも、最後の雨宮くんに、その、びっくりしました」

 

 佐倉さんがそう言うと、皆がこっちを見てくる。

 そして、健が真っ先に口を開く。

 

「だな! あの時はCクラスのやつらにムカついてよ、罰食らったときはざまあみろって思った。……でもよ、蓮は許した。おめえ、どんだけ器がでけえんだよ!」

「ええ、……一番の被害者はあなたなのに、ただ罰するのではなく、慈悲を与えるなんて、……あなたの人間性の高さに比べて、私は自分を恥じてしまいそうよ」

「うんうん。さすが蓮くんだよね。私としては、石崎くんのサイテーな言葉に、怒った蓮くんも素敵だったと思うけど!」

「い、いや櫛田さん。あのときの雨宮は、その、……絶対に敵に回したくないと俺は思ったぞ」

「にゃはは。確かに、あのときの雨くんは怖かったねー。……でも、なんとなくだけど、あれも誰かのためだったんでしょ? あの条件に入ってた椎名ひよりちゃんって子かな?」

「雨宮くんはす、すごいと思います!」

 

 皆が思い思いに様々な賛美?の言葉をかけてくれるが、何ともむず痒い。

 

「でもやっぱり、あれだよな! 茶柱先生に向かってよ、こう、拳を向けてよぉ」

「ええ、須藤くんの言う通り、あの言葉は胸に響いたわ」

「そうだね。格好良かったなぁあのときの蓮くん!」

「はい! 憧れます!」

 

 ん? 茶柱先生のとき……、っ!? あ、あれは!?

 

「え、なになに? 私たちがいないときに何があったの?」

「皆がそこまで言う言葉、気になるな……」

「そうだよね。ねえ、教えて教えて」

「おう! いいぜ!」

 

 ちょっ、健!?

 一之瀬の言葉に健がそう答えると、簡単に茶柱先生が小宮たちに告げた処分のくだりを話し、それに逆らった俺の話をし始め、そして、……健は自分の拳を真っ直ぐ突き出す。

 

「罰するなんて安い言葉で片付けず!」

 

 や、やめ、やめ、

 

「教え育て上げ!」

 

 す、鈴音!?

 

「更生させてやるぐらい言ってみせろ!」

 

 き、桔梗まで!?

 

「お、俺たちが……この学校に在籍していることに」

 

 佐倉さん!? や、やめっ――!

 そして、全員が拳を真っ直ぐ突き出して、叫ぶ!

 

「「「「誇りを持てるぐらいの度量を見せてみろ!!!!」」」」

 

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああぁぁぁぁ!!

 

 殺せ! もう、いっそ、殺してくれええええ!!

 四人がドヤ顔でそう揃えて叫んだ瞬間、俺は両膝をついて、両手で頭を抱えた。

 その様子を見て、一之瀬は「にゃああ! かっこいいね!」と同調し、神崎は「ふっ、意外と熱血漢なんだな」と感想を述べる。

 …………

 ……もう、自室に引きこもりたいっ。

 

 その後、めちゃくちゃ恥ずかしさで悶絶している俺を見て、「蓮!?」、「どうしたの? あ、照れてるの?」、「え!? 蓮くんのレア顔!? 見たい!」、「カメラカメラ……あ、修理中でした……」、「佐倉さん、スマホのカメラ使ったら?」、「一之瀬、やめてやれ、……くく」と皆してからかってくるものだから、超へそを曲げながら俺はDクラスに戻った。

 

 しかし、Dクラスで心配して待っていてくれた皆に完全勝利の話を伝えると、一気に歓喜の大合唱となり、曲がったへそは、真っ直ぐ伸びた。

 俺は手助けしてくれた一人ひとりに感謝の言葉を伝え、そして労いの言葉をかけてもらった。

 救われた気分というのは、こういうことを言うのかもしれないなと俺は静かに噛み締めるように、そう、確かに思った。

 

 

RANK UP!

《『戦車』のコープのランクが3に上がった!》

 

♪♪♪♪♪

《蓮の度胸がインフレした!!》

 

RANK UP!

《蓮の度胸のランクが3に上がった!「男らしいEX」から「筋金入りEX」に成長した!》

 

♪♪♪♪♪

《蓮の優しさがインフレした!!》

 

RANK UP!

《蓮の優しさのランクが3に上がった!「聞き上手EX」から「人情家EX」に成長した!》

 

 

 

 

 

 

 余談

 

「ところで外村くん。どうして、あのタイミングで動画を送ってくれたんだ?」

「それは!『ピンチになりそうなギリギリのタイミングで、救いの一手がくる……、まさに大逆転の超かっこいい展開だろ?』っと、綾小路氏がご助言してくれたのでござる! いやあ、拙者、超いい仕事した!」

「清隆が?」

 

 そう言って、清隆の方を見ると、清隆もこちらを見ていたらしく目が合った。

 そして、清隆は握りこぶしの右手を胸の高さまでもってきて、グッドサインを作った。

 彼にしては珍しい、ドヤ顔で。

 

 

 慣れていないのか少しピクピク引きつっていたのが、内心笑ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

*1
鈴音が追加した

*2
桔梗が追加した

*3
橘先輩が追加した

*4
場の雰囲気に流されちゃっかり蓮が追加した

*5
健が希望した




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 はい、ということで、ようやく審議を終えることができました!

 正直、今回の暴力事件のパートはかなり書くのが大変でした。
 この暴力事件の始めから、皆様の熱い感想と考察をたくさんいただき、生半可なものを書いたらと小心者なのでビビっていました笑

 まあ、それでも色々と思う方もいると思いますが、初心に返って申し上げます。

 これが、俺が読みたいと思ったペルソナ5とよう実のクロスオーバーSSだ!

 とね。

 書ききれたので、もうそれで個人的に大満足!
 今の私は無敵です!

 ただ、一点申し上げますと、石崎くんたちを切るという選択肢を考えてしまった龍園くんが、原作より少し小物になってしまったことですね。
 やはり、どのように暴力的で、卑怯、ずる賢いような作戦をとっても、手下を守る? 安易に切らない? のが龍園くんの魅力であり、カリスマだと思いました。
 だから、ちょっと小物感が出てしまったので、次回では挽回したいと思います!
 ただ、少なくとも小宮くん、近藤くんは蓮に恩義を感じていると思いますので、龍園くんが統治しづらくなるのではないかなと思いました。
 
 うん。早く強化してあげないと!(使命感)

 閑話休題

 あと、この結末は誰も予想できなかったでしょうと勝手に考えているのは、「ひよりを守る」という選択肢を出したことですね。
 予想できた人がいたら、私と上手い酒が飲めそうですねニッコリ。
 実は、ひよりちゃんが龍園には気をつけてねと蓮に助言する回のときから、構想は決めていて、絶対に手を出せない環境づくりを行うのは決定事項でした。

 私のひより愛を舐めてもらっては困る。

 ただ、石崎くんがひよりちゃんを脅しの材料に使うのは後から設定で、せっかくなので、蓮くんには一瞬暗黒面(ダークサイド)に堕ちてもらいましたw
 まあ、絆の力でちゃんと戻れたので良かった良かった。
 
 でも、Cクラスにも結果は周知されるので、ひよりちゃんが孤立しそう……。
 その辺はしっかり本編でフォローしたいと思います。

 あとは、結構、主人公に恥ずか死をさせてしまいました。
 カッコいいと私が思う台詞を考えるたびに、私自身も黒歴史を刻んでいる気がして、筆者のそんな感情を代弁させていただいております。
 お許しください。

 さて、第2巻の内容も次回で最後です。
 もちろん、……わかりますよね?

 ただ、いつもよりさらに時間をいただくかもしれません。
 ちょいと疲労が溜まっていましてね。
 何卒ご容赦ください。


 それでは、いつもの、もしも選択肢のコーナー


 【足を進める】
 【ネクタイを引っ張る】

 足を進めると、当然のごとく石崎くんが、グチャ崎くんになってしまいます。
 そして、当然最悪の雰囲気になり、蓮も学校も大変なことになります。
 BAD ENDです。
 ただ、全年齢版なので、血の描写はありません。
 ご安心下さい。
 

▶【罪には罰を、犯罪者には制裁を】
 【罪を憎んで、人を憎まず】

 上の選択肢を選ぶと、小宮・近藤・石崎が退学になります。
 クラスポイントも150ポイントもらえます。
 しかし、Cクラス側から完全に八つ当たりですが、恨まれます。
 そして、その現況となった蓮と仲良くしているひよりさんが……、

 ああ、やっぱりだめだ。そんなつらい状況妄想もするのも嫌だ。
 この選択肢を選ぶと爆発します!
 半径50M規模の爆発が起きます。
 だから選択できないようにアップデートしました。今


 【俺もその処分に異論はありません】
 【…………待ってもらえませんか】

 上の選択肢は選ぶことができません。今から。
 え? だって、一個前の選択肢とほぼ同じ結果になりますもん。
 なしなし。
 爆発するから選べません。
 


 異常です(筆者の我儘がw)

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