我輩は楽譜である 名は... 作:noanothermoom
「野郎ども!!帆を張れ!!錨を上げろ!!出航だ!!」
「「「ウォオオオオオ!!!!」」」
我輩は楽譜である。
名前はエイシスム。
何時もならばそれだけの名乗りであるが、此度は新たに一つ名乗るべきものが増えた。
船の上、揺れる
我輩は彼女の使い魔となったのだ。
我輩は国王と赤髪達との対話の中で
そうしてこの少女が我輩につけたのがエイシスムである。
それだけであればよかったのだが、
なんにせよ我輩が
今は
そんな我輩とウタとの間に繋がりが生まれたことで赤髪達と国王は酷く悩んだようだが、結局は我輩を信じ、船に乗せることにした。
そうと決まると赤髪達はすぐに船を出し、名残を惜しむ国王たちと別れた。
国王など「昨日もろくに寝ていないのだから、もう一日ぐらいゆっくりしていけばいい」と言っていたが、赤髪は「これ以上
恐らくは国王は親切心だけでなく
かくして我輩達は海の上の住人となったのであるが、我輩海に出るのは初めてである──というよりも我輩昨夜生まれたばかりである為、何をするにしても初めてだらけであるのだが──故、どうにも勝手が分からない。
しかしそんな我輩をあちこちと連れ回し色々と説明する少女が一人。
「ねえねえ、エイシスム。こっちこっち!!」
我輩は常に地面より浮かんでいる故に足元の良し悪しという物に頓着しないのだが、波に洗われ濡れている上に上下に揺れている船という物が決して良い足場ではないという事ぐらいは分かる。
しかし幼子と言えど海賊を名乗るだけはあるという事か、不安定なはずの足場を物ともせず歩き回る。
そんな我輩の主へと周りも何も言わないのだから、きっとこれがこの船の日常なのだろうと思っていると空を睨んでいた赤髪がポツリと「嵐が来るな...」と呟いた。
「お前ら!帆を畳め、嵐が来る!!」
「「「「アイアイサー!!」」」」
嵐と言うが空には雲一つない晴天である。
嵐どころか雨すら降らなそうな空を見上げていると我輩の主は「エイシスム、こっちだよ」と我輩の
邪魔にならないように船内に入るつもりのようだ。
所詮我輩は楽譜。
歌は音楽家に、海の事は海賊に任せるべきだろう。
船内へと続く階段を下りる主の後をついて行きながら先ほど見た
本当に嵐など来るのだろうか。
...などと疑っていられたのも僅かな間。
我輩達が船内へと入って十分と経たないうちに雷鳴がとどろき、波は
そんな中我輩と主は船室の一つで過ごしていた。
「あはは!大丈夫?エイシスム。凄い音したね」
遠慮などせずに笑う主へと不満を込めて音を出す。
しかし主は我輩の抗議など気にも留めた様子もなくまた笑う。
何がそんなにおかしいのかと言えば先程までの我輩の醜態である。
我輩は常に宙に浮いている。故にどれだけ船が揺れようとも関係がないと高をくくっていたのであるが、嵐によって引き起こされた高波によって船が持ち上げられた拍子に
我輩はこれでもかつては
痛いか痛くないかで言えばまるで痛くないのだが、戦いの最中の傷と日常での傷はまた別の話である。
結果我輩は頭を押さえて蹲る羽目になり、そんな我輩を主は笑っているという事である。
総括すれば我輩がまだ海という物を舐めていたというのが悪いのであるが...今は肉体よりも心が痛い。
そんな感じで始まった我輩の初めての航海であったが困難ばかりではなかった。
特に嵐が過ぎ去った後の夜空の美しさと言ったら。
赤髪は「
我輩は楽譜であるが故にその美しさを言い表す言葉を持たぬが、宝石箱とは全く言い得て妙であると思った。
そしてそんな空の下で奏でられる音楽の響きと言ったら。
我輩は楽譜に生まれついたことを心の底から喜んだ。
◆◆◆◆
そうして昼間は主に付き従い船のあちこちを見て回り、日が落ちれば主と共に赤髪たちの前で音楽を披露する。
そんな穏やかな日々を過ごしたある日。
我輩は赤髪達の叫び声で目を覚ました。
「敵襲だ!!」
今まで寝ていた主が目をこすりながらベットから降りようとすると同時に、部屋へと近づく足音が響いた。
よもやこの短時間で赤髪達が敵に船内への侵入を許したとは思えないが、それでも念のため扉と主の間に立ち塞がる。
そうして扉を警戒する我輩の前に現れたのは赤髪だ。
「ウタ!俺達と敵対する海賊の海賊船が現れた。お前はここで大人しくしているんだぞ」
「シャンクス!」
主の心配そうな叫びを受けた赤髪は笑い「大丈夫だ、俺達は強いからな。エイシスム、ウタを頼んだぞ」と言って扉を閉める。
扉の向こう側では赤髪達が武器を持って戦闘態勢を取っている音がする。
これから戦いが始まるのだろう。
外の様子を探ることに集中していた我輩へと後ろから衝撃が襲った。
「ねえ...エイシスム。シャンクス達は大丈夫だよね...」
何時もの明るさを何処に落としたのか。
そこには外の様子に怯える少女がいた。
我輩の主は年の割に聡明である。
故に分かってはいるのだ。
自分が戦場に立てば赤髪達の邪魔にしかならないことが。
だが、同時に未だ9歳にしかならない幼子でもある。
そんな子どもが自分の家族が命のやり取りをしている状況で冷静になれるはずがない。
その時甲高い音と共に水柱の立つ音が聞こえた。
それと同時にこちらの船からも大砲を打つ音が響く。
戦いが始まったのだ。
我輩を抱きしめる主の腕に力が入る。
赤髪達は強い、だが万が一を考えてしまうのだろう。
「大丈夫、大丈夫」と自分に言い聞かせるように呟く。
我輩は赤髪に主を頼まれた。
それはこの部屋から出ないように、守っていてくれという事だろう。
だが我輩はウタの使い魔である。
故に赤髪の願いなど聞く必要はないのである。
『主よ、赤髪達が心配か』
我輩のマントに顔をうずめる主へと
我輩の急な行動に主は呆気にとられたが、内容を理解するとすぐに「あたし、シャンクス達を助けたい。ただ守られているだけはヤダ」と言い切る。
その瞳には確かなる意志が宿っていた。
きっとこの瞳があるからこそ
我輩は主を促し部屋の外へと出る、通路には誰も居なかった。
赤髪達は全員
好都合である。
そのまま甲板まで進む。
甲板の上では互いに大砲を打ち合っていた。
時にはあわや船に直撃、といった弾もあったのだが、そう言ったものは全て赤髪達によって海に叩き落とされていた。
我輩が知る限り人間はそんなことが出来る存在ではないはずだが...まあ、我輩が封じられている間に進化したのだろう。
「ねえ、エイシスム。私はどうしたらいい?」
主が我輩へと尋ねる。
よく見ればその体は僅かに震えていた。
赤髪達に愛されて育った主にとって初めての戦闘であるのだろう。
目の前で繰り広げられる本物の戦いに怯えるのも無理はない。
しかしその瞳に宿る意志は変わらず強い光を放っている。
我輩は今おおよそ30センチほどの大きさである。
しかしながら我輩の元となった
我輩がそこまで大きくならないのは船の上で生活する上で大きくなると邪魔であるというのもあるが、
詰まる所、元々の燃料の総量が違いすぎるというのもある。
それ故主が我輩へと更なるエネルギーの供給を行えば我輩は更に大きくなれるのである。
「え、え~っと?どういうこと?」
...と、いう事を
そもそも国王ですら我輩の意志を完全には読み取れなかったのだから、もっと簡単なものにするべきであった。
『
「分かった。あたし歌う!!」
シンプルに今必要なことを伝えると主は笑い大きく息を吸い、そして我輩の名を叫ぶ。
その
とりあえず赤髪達は主を安全な場所に、と考えたのだろう。
赤髪達は主の元へと走る。
とりあえず主の安全はこれで確保できた。
我輩は我輩の仕事に取り掛かる事にしよう。
我輩の体に力が漲る。
体の内側から破裂しそうなくらいの力を感じる
その鼓動に逆らわず力を解放する。
そうして我輩の体はあっという間に30メートルほどに成長する。
『フハハハハ!刮目せよこれが我輩の真の姿!
ウタの使い魔、エイシスムの雄姿也』
「「「「な...何ィ!?」」」」
「でっけぇ~」と呟いたのは誰だったか。
なんにせよ予想通り肉体の拡張に成功した我輩が大きくなった肉体の調子を確かめていると、我輩に向かって大砲の弾が飛んでくる。
見れば相手の海賊たちが正気を取り戻したようで、次々と大砲が煙を吐いていた。
『小賢しいわ!!』
だがそんなものが我輩に通づる訳もない。
流石に二つの世界からの同時攻撃を行わなければダメージを与えられない
『その鬱陶しい音を止めよ!!』
だが相手も諦めないのか、それともとにかく我輩を攻撃し続けるしか出来ないのか。
更なる砲弾が
喧しい大砲の音も聞き飽きた故に
大砲の弾は我輩の
「ば、化け物...」「逃げろ!!」
『ふん?そちらが始めた
我輩が許すと思うたか!!』
大砲が防がれたならば接近戦で、と考える気合いの入った者は居らぬようで悲鳴を上げながら敵船は逃げ出していく。
だが主の眠りを妨げた貴様らを見逃す理由など何処にもない。
降りぬいた方の
哀れよな。
赤髪達にケンカを吹っかけるだけの威勢の良さは持ち合わせていたようだが、相手の強さを推し量るだけの頭の良さは持ち合わせていなかったらしい。
我輩が掴んだことで全く進まなくなった船の上で騒ぐだけの海賊たちを睥睨する。
どうしてくれようか。
持ち上げた後海に叩きつけてくれようか。
そんなことを考えていると耳元で声がした。
「よくやったエイシスム。後は俺達に任せろ」
『ぬ?』
赤髪の声。
それと同時に我輩の
口々に「エイシスムばかりにいい恰好はさせねえ!」「一番乗りは貰ったあ!」などと叫びながらピアノの音を響かせながら
我輩との戦い...とも呼べぬ一方的な蹂躙によって心折れていた敵に抗う術などなく。
それほどかからず赤髪達は敵船を占拠。
この戦いは赤髪海賊団たちの大勝で終わったのであった。
「それで...何か申し開きはあるか?」
『選択したのは主である為、我輩だけに責を求めるのは酷いと思ッ痛あ!!』
全部終わった後通常サイズに戻った我輩を待っていたのは鬼のような顔をした赤髪と、
納得がいかぬ。
どうも皆さま
私です
この小説がランキングに乗りましたよ
ずっと楽譜が何か喋っているだけの小説ですのに
これも皆様のおかげですありがとうございます
本当はもっと話を進めてルフィを出したいんです
ウタとルフィをイチャイチャさせたいんですよ
...それを書けるかどうかは別として
なのに話が進まない
何故ぇ
それではありがとうございました