スマートフォンのアラームが、意識を叩き起す。
「ん、ぅ……?」
ベッドの中で、ショウコは音源たるスマートフォンはどこかと手を伸ばす。
スマートフォンを手に取り、アラームを停止させる。
「ショウコさん、おはようございます」
一足先に起きていたカンナは、ようやく起きたショウコに声をかける。
「…………ぉはよう」
ぬぶぉぉぉぉぉ……と明らかに寝不足状態から叩き起こされましたと言いたげに、ショウコは腕で目を擦る。
「昨夜は、あまり眠れなかったようですね?」
「うん……」
半分目を閉じながら頷くショウコに、カンナは苦笑する。
「ですけど、もうすぐハヤテ教官のラジオ体操が始まりますし、頑張って起きましょう」
「うん……」
ショウコ自身、眠れなかった理由は分かっていた。
アスノへの恋心に、そのアスノとカンナの親しげなやり取りに、「告白すればいい」というソウジの言葉。
それらが綯い交ぜになり、心がぐちゃぐちゃになる。
結局自分はどうしたいのか。
アスノと恋人として付き合いたいのか、アスノとカンナの仲を応援したいのか、ソウジの言う通りアスノに告白すればいいのか、それすらも分からない。
のろのろと顔を洗い、動きやすい格好に着替えた頃には、コンコンと女子部屋にノックがされたので、カンナが応じる。
「はーい、ハヤテ教官ですね?おはようございます」
「二人ともおはよう!さぁ今日もいい天気だ、ラジオ体操の時間だぞ!」
「うるさ……」
……何の悩みも無さそうなハヤテのハイテンションに、ショウコは少しだけ羨ましく思った。
昨日と同じ、体育の授業もかくやの熱血のラジオ体操(ショウコと、何故か同じく眠そうなソウジは、ハヤテに「声が小さいぞぉ!!」と発破をかけられた)を終えて、シャワーと朝食を終えて。
今日は合宿最終日で、昼過ぎにはこの屋敷を後にして地元へ帰る手筈になっている。
昨日の夕立はすっかり晴れ、絶好の塗装日和。
そこに、ハヤテは提案を持ちかけてきた。
「今日は君達に、バトルの個人指導をしようと思う!」
「はい教官、バトルの個人指導って何ですか?」
最初にアスノが挙手する。
「君達はこれから塗装をするだろう?塗装の乾燥を待つ間に、俺と一対一のバトルをしよう、という話さ」
なるほど、とジュゲム以外の四人は頷く。
そのジュゲムは、個人指導というタイマンバトルを昨日に何度もしているので、今日は四人の塗装を手伝うとのこと。
「塗装を終えた人から順番でいいからね。俺は逃げずにしっかりと待っているぞ!」
さぁ誰からでもどこからでもかかってこい、とハヤテは腕組みをキメてみせる。
「まぁ、とりあえず塗装しようじゃねぇか。ツキシマ、今日もガンプラを貸してくれるんだよな?」
ソウジは、個人指導に使うガンプラもカンナのものでいいかと訊ね、カンナも「もちろんです」と頷く。
アスノとカンナはエアブラシで綿密に塗装し、ショウコも眠そうな目を擦りながらも、繊細に筆塗りをしている中、最初にソウジが塗装を終えた。
「はい教官、俺が最初っす」
「先鋒はキタオオジ君だね。よーしっ、張り切って行くぞォ!!」
目の中がメラメラと燃えているかのようなハヤテの気合の入れように、ソウジは若干引きながらもバトルブースへ向かう。
カンナのショーケースは既に解錠されている。
さてどれを使おうかとソウジは視線を左右させ、
「こいつだな」
そうして手に取ったのは、『ケンプファー』。
『ポケットの中の戦争』に登場する、ジオンの強襲型MSだ。
「教官は何使うんです?」
「それはお楽しみだ。さぁ、始めよう!」
早速筐体を起動させ、オフラインのフリーバトルを選択する。
ランダムフィールドセレクトは、『ホンコンシティ』
『Z』が初出であり、サイコガンダムが初登場した回の再現だ。
「キタオオジ・ソウジ、ケンプファー、行っとくか!」
ニューホンコンの夜の町並みを、群青の闘士が降り立つ。
ポンプアクション式のショットガン二丁、リック・ドムIIのジャイアントバズ二丁、シュツルムファウスト二丁に、ジオン系には珍しい頭部のバルカンに加え、ビームサーベルも備えた重装備でありながら、推進力だけで低空を"滑空"する、驚異的な機動性を有するMS。
「教官は、何を使ってくるんだ?」
ケンプファーはモノアイを左右させて、索敵を急ぐ。
すると、
『どこを見ている!俺はここだッ!!』
突如、上空からオープン回線のハヤテの声を拾う。
「上かっ」
ソウジはその方向を見上げると、
そこには、高層ビルの屋上に腕組みしながら直立する、『ガンダムアスタロト』がいた。
「アスタロトだと?」
『その通り!君の愛機のベース機を使って、戦ってみせよう!』
グクォィンッ、とガンダムフレーム特有のツインアイを光らせるガンダムアスタロト。
「上等ォッ!」
ソウジはウェポンセレクターを回し、左のジャイアントバズを左マニピュレーターに持たせ、それを上空へ発射して牽制する。
ガンダムアスタロトはビルの上から飛び立ってジャイアントバズの砲弾を躱し、同時にリアスカートに納めていたライフルを取り出すと、飛び降りながらケンプファーへ向けて連射する。
ソウジは操縦桿を捻り回し、ケンプファーを蛇行させながらバックホバーさせて銃弾を躱しつつ、反撃にショットガンを撃ち返す。
放たれる散弾を前に、ガンダムアスタロトは左腕のサブナックルを盾にし、前面装甲や頭部と言った部位を守りつつ、それ以外はナノラミネートアーマーの防御力で受ける。
ガンダムアスタロトが着地しようとする、その寸前をソウジは狙っていた。
「そこォ!」
ケンプファーはジャイアントバズのトリガーを引き、ちょうど着地して一瞬とはいえ動きが止まるタイミングに合わせてロケット弾頭が襲いかかるが、
ガンダムアスタロトはほんの僅かにスラスターを噴かし、左腕を支点にするようにして砲弾をやり過ごして見せる。
「ちっ、今のを躱すかよ!」
『着地の隙を狙うのは常套手段だけどね、当然その可能性は常に想定するものだ!』
着陸完了したガンダムアスタロトは、再びライフルを連射しながらケンプファーへ迫る。
「近付いて来るんならな!」
ソウジも操縦桿を前に押し出し、ケンプファーをガンダムアスタロト目掛けて突撃させる。
ライフルとショットガンの銃弾が交錯し、銃弾同士がキンキンとぶつかり落とされ合う。
そこへ、ソウジはウェポンセレクターを回し、左のジャイアントバズを背部ラックに納め、続いて左大腿部からビームサーベルを抜き放って接近戦へ持ち込む。
ガンダムアスタロトも同じく、左のブーストアーマーからナイフを抜き放ち、ケンプファーのビームサーベルと打ち合う。
鍔迫り合わずに弾き返し合い、ケンプファーは即座にその間合いでショットガンを撃つものの、ガンダムアスタロトはその場から左向きへ側転をするように散弾を躱し、素早くライフルをうちかえす。
「クソッ、避けんのが上手ぇ!」
ソウジは悪態をつきながらもケンプファーを加速させて、ライフルの銃撃から逃れるが、何発かが装甲を掠める。
『さぁどうしたキタオオジ君!ケンプファーは強襲型、攻めに転じなければ性能を発揮出来ないぞ!?』
逃げるケンプファーを追い掛けるガンダムアスタロト。
「うっせぇ分かってらぁ!」
スケートのカーブのようにケンプファーを旋回させ、ガンダムアスタロトを正面に捉える。
一度ビームサーベルを左大腿部に戻し、もう一丁のショットガンを取り出して二丁拳銃のような形で構えて突進する。
「オラオラオラァ!」
左右から連続で散弾を発射するケンプファー。
対するガンダムアスタロトは、やはり左側転で躱し、側転と同時に跳躍し、瞬時にライフルとナイフを納めると、デモリッションナイフを折り畳んだ状態で抜いて、それで機体を隠すようにして散弾を防ぐ。
『ショットガンは広範囲を攻撃出来るが、距離が遠ければ威力は低くなる!数を撃てばいいというものじゃぁない!』
「ならこいつでどうよ!」
右、左、とショットガンを撃ちまくるケンプファーだが、不意に右のショットガンを捨て、右脚のシュツルムファウストを手に取って発射する。
けれどガンダムアスタロトは、その場で折り畳んだデモリッションを地面に打ち付け、同時に刃を展開、ポールダンスのように機体を跳ねさせる。
追尾機能を持たないシュツルムファウストの弾頭は空振りし、その先のビルに炸裂する。
「なっ、なんつー避け方しやがる……!?」
デモリッションナイフの開閉機構を回避に利用してみせるハヤテの技量に、ソウジは度肝を抜かれる。
『来ないならこっちから行くぞォ!』
着地と同時に地面を蹴り、デモリッションで薙ぎ払おうと迫るガンダムアスタロト。
「クソッタレ!」
ケンプファーは撃ち終えたシュツルムファウストを捨てて、右ラックのジャイアントバズを抜いて発射するが、ガンダムアスタロトはゆらりと機体を左下へ傾けるようにして弾頭をやり過ごす。
一度距離を取らなければ、とソウジはケンプファーをバックホバーさせるが、そのすぐ後ろは袋小路になっていた。
「げっ、行き止まりかよ!?」
『地形の把握を怠ったようだね?仕留めさせてもらう!』
必殺の一撃を叩き込むべくさらに加速してくるガンダムアスタロト。
「(やべぇっ、どうする!?)」
迎え撃つためにジャイアントバズを発射するものの、先程と同じような挙動で躱されてしまい――そこでソウジは気付いた。
「(こっちが撃っても全部右側に……そうかっ!?)」
『もらったぞぉぉぉぉぉぉッ!!』
ガンダムアスタロトはデモリッションナイフを振り下ろし、
「イチかバチかァ!!」
ケンプファーは咄嗟に左のショットガンを『デモリッションナイフへ向けて』撃った。
すると、ほぼゼロ距離の散弾がデモリッションナイフへ撃ち込まれ、弾き返す。
『おぉっ!?』
弾かれて仰け反ったガンダムアスタロトは、機体が『左側へ傾いてしまい』、大きくバランスを崩す。
反撃のチャンスは、ここしかない。
「喰らいやがれ!」
ソウジはすぐに右のジャイアントバズを発射、ガンダムアスタロトのボディへ炸裂する。
「こいつも持ってけ!」
左のショットガンを捨てて、もう一丁のシュツルムファウストも発射、これも直撃させる。
『ふっ……お見事!』
爆煙が晴れると、前面装甲が吹き飛ばされたガンダムアスタロトはガクリと膝を折り、力尽きた。
ガンダムアスタロト、撃墜。
バトルが終了し、ソウジは深く息を吐き出した。
「ふぅーっ、なんとか勝てたか」
その向かいでは、ハヤテが「素晴らしい!」と拍手している。
「よくぞ、俺の立ち回りを見抜いてくれた!」
「そりゃ、あんだけ同じ方向にばっか避けてたら、気付きますって」
ハヤテのガンダムアスタロトが左側にばかり回避運動を取っていた理由。
それは、ガンダムアスタロトの装備の重量が『左側に傾いている』こと。
ハヤテはその傾いた重量バランスを逆利用し、装備の重さを"支点"にしていた。
追い詰められたところでようやくそれを見抜いたソウジは、デモリッションナイフを弾き返してバランスを崩させたのだ。
絶妙な重心移動でバランスを保っていたところを崩されてしまえば、立て直しにも時間がかかる。
そこを一気に畳み掛けたのだ。
「でも、あんな立ち回り方もあるのかって、勉強になった気がします。あざっした」
「合格だ!俺とのバトルで何か一つでも勉強になったこと!それだけで十分!」
うむうむと頷くハヤテ。
「さぁ、次の人に交代だ。キタオオジ君は、あとは自由時間でいいよ」
「うっす、失礼します」
ソウジはケンプファーをショーケースに返してから、製作ブースへ戻る。
入れ替わるように次にハヤテの個人指導を受けるのは、
「よろしくお願いします、ハヤテ教官!」
直立不動の状態でビシッと腰を45度に曲げてみせるのは、カンナだ。
「次はツキシマさんだね。さぁ、君の実力を俺に見せてくれ!」
「はい!不肖ツキシマ・カンナ、全力で行きますっ!」
次なるランダムフィールドセレクトは、『ギガフロート』
原典作品は『SEED ASTRAY』に当たり、ジャンク屋ギルドが保有する大型人工島で、建設途中のそこへ、ロンド・ギナ・サハクの『"未完成の"アストレイゴールドフレーム天』がロウ・ギュールに襲いかかり、偶発的に戦闘になる場面の再現だ。
「ツキシマ・カンナ、『スターバーニングガンダム』、参ります!」
そして、カンナが今回選んだガンプラは、スターバーニングガンダム。
『ガンダムビルドファイターズ GMの逆襲』に登場する、イオリ・セイがレイジ専用機として製作し、ガンプラマフィアとの戦いで一時的に使用し、後にビルドバーニングガンダムとして再改造されるガンプラだ。
リニアカタパルトに打ち出され、スターバーニングガンダムがギガフロートの人口の大地に降り立つ。
「教官は一体何のガンプラを……」
カンナがそう呟いた時、前方よりアラートが発され、
「ロックされて!?」
ロックオンされた、つまりは長距離射撃がされる可能性が高い。
カンナは即座に操縦桿を捻って、スターバーニングガンダムに回避運動を取らせ、そのすぐ横をビームの矢が通り過ぎた。
「ビームの弓矢……と、言うことは」
攻撃された方向を見やれば、そこには悠然と『ライジングガンダム』がビームボウを構えていた。
「やはり、ライジング!」
『御名答だ、ツキシマさん!さぁ、自分とは違うライジングガンダムを相手に、どう戦うかな!?』
ソウジの時と同じく『自分のベース機と同じ機体を使ってくる』ハヤテ。
尤もカンナの場合は、改造前までは無改造のライジングガンダムを使っていたので、ソウジとのケースは異なるが。
スターバーニングガンダムとライジングガンダム。
その両者の姿は、どことなく似ている。
「……行きます!」
カンナは操縦桿を押し出して、スターバーニングガンダムを前進させる。
ライジングガンダムの脅威は、ビームボウを用いた貫通攻撃と、MF特有の近接攻撃能力の高さ。
ビームボウを使わせず、なおかつヒートナギナタの間合いにも踏み込まない、中距離――ビームライフルの間合いを維持する。
スターバーニングガンダムが放つビームライフルに、ライジングガンダムはMFらしい軽快な動きで飛び跳ねてビームを躱し、反撃に素早くビームガンと頭部バルカンを連射する。
ビームライフルとビームガンの火線が混じり合い、両者は付かず離れずの間合いで射撃戦を継続する。
膠着状態。
『中距離の間合いを維持して持久戦に持ち込みたい、と言う君の思惑は分かるとも。だがしかし、相手が突然膠着状態を破ってきたらどうするかな?』
そして!と、不意にハヤテはライジングガンダムをバック転させて、スターバーニングガンダムから大きく距離を取る。
『GPVSは、やろうと思えば、オリジナルの必殺技を編み出すことだって出来る!』
ライジングガンダムはビームボウの弓を展開。
しかし、矢をつがえるその右マニピュレーターは、発光する液体金属――ライジングフィンガーを纏う。
それを見たカンナは、良くない意味で閃いた。
シャイニングガンダムのシャイニングソードにシャイニングフィンガーのエネルギーを注ぎ込む必殺技が、シャイニングフィンガー・ソードならば……
「ま、まさか……ライジングフィンガーで、ライジングアローを!?」
『俺のこの手が光って唸る!お前を倒せと輝き叫ぶ!喰らえ!愛情と情熱と熱血のォ!』
ライジングフィンガーが引き絞るビームの矢は、稲妻のごとく激しく迸り――
『ライジングフィンガー・アロォォォォォーーーーーッッッッッ!!!!!』
ズドゴァァァァァンッ!!と、まさに自然の雷(いかずち)そのものを発射したかのような巨大なビームの矢がスターバーニングガンダムへ襲い掛かる。
「こっ、これはまず……!?」
瞬間、ライジングフィンガー・アローが、ギガフロートをえぐり飛ばした。
その轟雷が通過した地点に、スターバーニングガンダムはいない。
けれど、撃墜されたわけではない。
『なるほど、咄嗟に海に潜ったようだね』
ハヤテは、敵対反応が海中に点在していることを読み取る。
ここ、ギガフロートというフィールドは、広大な人工島のフィールドであり、人工島としての足場を中心に大きく水中に囲われている。
ライジングフィンガー・アローが発射される寸前、カンナは即座にフルスロットルでスターバーニングガンダムを飛び退かせ、そのまま逃げるように水中へ飛び込んだのだ。
おかげで即死はしなかったものの、ギガフロートの1/3が吹き飛んでしまい、ただでさえ不安定な足場がさらに不安定になってしまった。
「はっ、はーっ、はーっ……し、心臓に悪い攻撃でした……」
カンナは安堵に胸を撫で下ろす。
だが、安堵の時はいつまでも続かない、後を追うようにライジングガンダムも水中に潜って来た。
『さぁツキシマさん!バトルはまだ終わっていないぞ!ここからは水中戦だ!』
ライジングガンダムはビームガンを捨てて迫りくる。
「(スターバーニングの武装はビーム中心……機体選択を誤りましたか……)」
スターバーニングガンダムは、ゴッドガンダムやシャイニングガンダムの意匠が強いガンプラだが、あくまでも『ベース機の存在しないオリジナル機』であるため、原作のMFのように水中でもビーム兵器を使うようなことは出来ない。
頭部のバルカンこそ実弾射撃だが、水圧で落ちた射程では牽制にもならない。
「(オリジナルの必殺技……)」
であれば。
「ならば、真っ向勝負です!」
カンナはウェポンセレクターを回し、『SP』のアイコンを選択する。
「RGシステム、解放!」
すると、スターバーニングガンダムの各部のクリアパーツが、炎に似た朱い輝きを放つ。
圧縮されたプラフスキー粒子を全面に解放する、高出力状態。
『RGシステムか!ならばっ、真っ向勝負には真っ向からお応えしよう!』
なおも加速するライジングガンダムは、再び右手にライジングフィンガーを纏わせ、スターバーニングガンダム目掛けて突撃する。
けれど、スターバーニングガンダムはまだ動かない。
『その首いただいていくぞ!ラァイジングゥッ、フィィィンガァァァァァーーーーーッ!!』
水流を斬り裂きながら突き出されるライジングガンダムの輝く右掌。
「これが私の真っ向勝負です!」
すると、スターバーニングガンダムは大きく構えを取り、両腕にプラフスキー粒子を集束させ――
「『ストーンクラッシュ・スカイサプライズナックル』!!」
眩いまでの朱と蒼の輝きを纏う光球が、『驚』の漢字と共に放たれる。
つまりは、流派東方不敗ヶ最終奥義『石破天驚拳』の英読みである。
ライジングフィンガーと、ストーンクラッシュ・スカイサプライズナックルが正面から激突し、凄まじいばかりの閃光が海中を照らし出す。
『うおぉぉぉぉぉっ!?』
閃光の後。
ライジングガンダムは、突き出した右腕から全身にかけて亀裂が走り――砕け散った。
ライジングガンダム、撃墜。
「はふぅ、勝てました」
リザルト画面を見流しながら、カンナはほっと一息ついた。
「やるじゃないかツキシマさん!その場で即興の必殺技を繰り出すとは、俺も文字通り"驚"かされたよ!」
ハヤテはパンパンと手を鳴らして、カンナを称賛する。
「いえ、教官が「GPVSではオリジナルの必殺技を編み出すことが出来る」と教えてくれたからです。ライジングガンダムという機体の型に嵌っていた私にとって、「目から鱗」とはこのことです!」
「合格だ!原作のガンダムファイター達も、苦境を打破するためにその場で必殺技を編み出してみせているからね!創意と工夫、そして熱い魂があれば!大抵の逆境は跳ね返せるものだ!」
「た、大抵、なのですね……?」
「うん。全部が全部ではないね。どうしても無理なこともある」
そこは仕方ない、と真顔で頷くハヤテ。確かにその通りではあるのだが。
「まぁともかく!キタオオジ君に続いて、ツキシマさんも合格だ!それじゃぁ、あとは自由時間で構わないからね」
「はい!お疲れ様でした!」
スターバーニングガンダムをショーケースに戻して、カンナは製作ブースに戻って行く。
続いてカンナと入れ替わるようにやって来たのは。
「よろしくお願いします、ハヤテ教官」
アスノは緊張しながら頭を深々と下げる。
「次はイチハラ君だね。さぁ、好きなガンプラを選んでくれ!」
ハヤテがフリーバトルの設定を変更している間に、アスノはショーケースに並ぶガンプラの前に立つ。
「昨日も見せてもらったけど、やっぱりどれも完成度高いなぁ……」
目移りしつつも、彼が選んだのは、『フリーダムガンダム』だった。
ランダムフィールドセレクトは『暗礁宙域(P.D.)』
原典作品は『鉄血のオルフェンズ』からで、鉄華団とタービンズが、宇宙海賊ブルワーズとの戦闘になった宙域で、そこら中にデブリが漂っており、加えて放棄されたエイハブリアクターも転がっていることから、地点によっては引力も発生する、難易度の高いフィールドだ。
「イチハラ・アスノ、フリーダムガンダム、行きます!」
リニアカタパルトに打ち出され、フリーダムガンダムはその蒼き自由の翼を広げて、デブリベルトの中へ飛び込む。
「(ソウジとカンナの話によると、ハヤテ教官は僕らの愛機のベース機を使ってくるってことらしいけど……」
そうなるとハヤテが使って来るのは、ノーマルウェアのガンダムAGE-1か。
すると前方より敵対反応。
アスノは有視界でその姿を捉え――
「……あれ?AGE-1じゃない、『ガンダムMK-Ⅱ』だ!?」
彼の予想とは異なる機体がそこにいた。
『はっはっはっ、AGE-1で来ると思ったかい?残念だが違うぞ!』
「そうか、僕のAGE-Iが『MK-Ⅱをモチーフにしているから』、そのチョイスなのか」
意表は突かれたものの、その仮説に納得するアスノ。
『A.G.版のガンダムMK-Ⅱ、というその設定は考えたものだね。さて、そのモチーフ元のガンダムを相手に、どう戦うかな!』
「行きます!」
フリーダムガンダムは即座にルプス・ビームライフルでガンダムMK-Ⅱを狙うものの、ガンダムMK-Ⅱはその辺に漂っていたデブリを蹴り飛ばしてビームを弾いてしまう。
構わずにルプス・ビームライフルを連射するが、ガンダムMK-Ⅱはデブリを足場にして跳躍し、三角跳びの要領でデブリからデブリへと跳躍を繰り返す。
ガンダムMK-Ⅱのバーニアが足回りに集中していることもあって、まさに忍者のようだ。
「速い……!」
加えて、その跳躍の合間にもビームライフルやハイパーバズーカを撃ち返してくる。
それだけの高速機動を行っていながらも正確な射撃だ、やはりナルカミ・ハヤテというバトラーの実力は、選手権準優勝を飾るほどということらしい。
『普通に撃っても、このデブリベルトではまず当てられないぞ!さぁどうするイチハラ君!』
……その上で、相手に発破をかけてくるときたものだ。
余裕があるのは間違いないだろうが、相手によっては挑発とも取られかねない。
しかしこの状況を正確に理解しているのも確かだ。
FCSを狂わせる不規則な高速機動に、先読み射撃をしたところでデブリを盾にされてしまう。
「(普通に撃っても当たらないのは分かる。分かる、けど……)」
トランザムも無しに残像が残るような速度で縦横無尽に駆け回っている相手に、普通じゃなくてもどう当てれば良いものか?
『イチハラ君、フリーダムの強みを忘れたかな?その機体は、『単騎で複数を相手にするための機体』だぞ?』
ふと、テンションを抑えた落ち着いたハヤテの声が届く。
『そして、MSがデブリを足場にするには、ある程度の質量が必要なんだ。さすがに石ころくらいのデブリでは足場にならないからね』
これは、何かの"ヒント"だ。
襲い掛かるビームや散弾をやり過ごし、時にはシールドで防ぎつつ、アスノは思考を回転させる。
フリーダムガンダムは単騎で複数を相手にするための機体、MSがデブリを足場にするにはある程度の質量が必要……
「……そうかっ!」
アスノは操縦桿を引き下げて、フリーダムガンダムを下げさせながらもウェポンセレクターを開き、ルプス・ビームライフルの上からプラズマカノン『バラエーナ』とレールガン『クスィフィアス』を同時にダブルセレクト。
しかし、マルチロックオンシステムは起動しない。
「行っけぇぇぇぇぇーーーーーッ!!」
多数の火砲を同時に放つフルバースト、それらを左から右へ扇状へ薙ぎ払う。
その攻撃は決してガンダムMK-Ⅱを狙ったものではない、あくまでも当たればラッキー程度のもの。
多数のビームと電磁加速弾は、次々に周囲のデブリを吹き飛ばし――辺りはまっさらな宇宙空間となった。
つまり、ハヤテが行っていたデブリからデブリへの高速機動ができなくなったというわけだ。
『……俺としては『フルバーストを使った先読み射撃』をしてほしかったところだけど、だがこれもアリだ!』
「って言っても、今のでけっこうなエネルギーを使いましたけどね」
原典と違ってGPVSは、核エンジン搭載機はビーム兵器なら無制限に撃てるわけではない。
ただでさえエネルギーや弾を大きく消耗するフルバースト、それを連続して使えば相応の消耗は避けられない。
故に、ここからは短期決戦。
フリーダムガンダムはルプス・ビームライフルをリアスカートに納め、左右のクスィフィアス上部にマウントされているラケルタ・ビームサーベルを両方とも抜き放って連結、双刃のビームサーベル(アンビデクストラスハルバード)として、ガンダムMK-Ⅱへ突進する。
『まだ距離がある内からサーベルを抜くか!思い切りが良くてよろしい!』
ガンダムMK-Ⅱはその場でビームライフルとバルカンポッドを連射して、迫りくるフリーダムガンダムを迎え撃つ。
アスノは操縦桿を振り回してビームを避け、バルカンポッドの銃弾はシールドで受ける。
そしてある程度の距離が縮まれば、フリーダムガンダムは連結したラケルタ・ビームサーベルをビームブーメランのように投擲した。
しかし、それを当てるにはまだ距離が遠く、ガンダムMK-Ⅱは回避してしまう。
ではどうするのかと言うと。
「あの時の、ソードインパルスなら!」
すぐにルプス・ビームライフルを取り出し、高速回転するラケルタ・ビームサーベル目掛けて発射する。
ビームサーベルの波動にビームの火線がぶつかり拡散し、同時にラケルタ・ビームサーベルの軌道が変わる。
『なんとっ!?』
これも回避しようとするハヤテだが、アスノは次々にルプス・ビームライフルを連射し、回避運動を取るガンダムMK-Ⅱを先回りするように誘導する。
たまらず、ガンダムMK-Ⅱはバックパックからビームサーベルを抜いて、追いかけて来るラケルタ・ビームサーベルを弾き返そうとし、
「今だっ!」
その隙をアスノは狙っていた。
ラケルタ・ビームサーベルが弾き飛ばされ――そのためにビームサーベルを振るう動作を必要とするタイムラグに、クスィフィアスを撃ち込んだ。
一対の電磁加速弾が、真っ直ぐにガンダムMK-Ⅱのボディを貫いた。
ガンダムMK-Ⅱ、撃墜。
「か、勝てた……」
ふぅ、と一息つくアスノに、ハヤテは興奮気味に称賛する。
「君も合格だイチハラ君!二度も俺の予想を裏切ってくれた、その奇抜な戦術!考えようと思えば思い付くとはいえ、それを戦闘中に思い付き、即実行に移せる行動力も見事だよ!」
「あ、あはは……ありがとうございます。でも最後の、射撃でサーベルを誘導するって言うのは、前にAIと戦った時に同じような攻撃にやられたことがあったから、思いつけたんです」
あの時はソードインパルスのエクスカリバーでしたけど、と付け足す。
「それこそ素晴らしい!過去の積み重ねを現在(いま)に活かせている証拠だ!これからもその感性を大切にするんだぞ!」
グッと親指を立てて見せるハヤテ。
「はい!ありがとうございました!」
一礼して、フリーダムガンダムをショーケースに戻してから、製作ブースへ戻るアスノ。
さて、残る最後はショウコだ。
だが、
「…………よろしくお願いします」
そのショウコはどこか上の空だ。
「コニシさん?具合が悪いなら、無理をしなくてもいいんだよ?」
「身体は元気ですからご心配なく」
「うーん……ご心配なくと言うのなら、こちらも行かせてもらうけど」
今朝のラジオ体操の時からだが、昨日までの元気さが見えない彼女の様子を訝しみつつも、ハヤテはフリーバトルの設定を切り替える。
ショウコは、ショーケースのガンプラを見やる。
「どうしよ……」
どのガンプラにするか迷っているのではない。
今の自分が、何をしたいのかが見えていない。
実のところ、新たなプリンセスルージュの塗装を進めてはいるが、その進捗は芳しいものではない。
当然だ、明確なビジョンも見えていないのだから。
ふらふらとショーケースの前を右往左往し、薄紅色の流線型の機体――『ガーベラ・テトラ』を手に取った。
原典は『0083』からで、元々はガンダム試作4号機『ガーベラ』だった機体をシーマ・ガラハウへ"横流し"する際に、ジオン系を思わせるように偽装を施したものだ。
ランダムフィールドセレクトは『ダイダロス基地』
初出は『SEED DESTINY』からで、地球連合軍(というよりはロゴス)の月面基地であり、大型戦略砲『レクイエム』を備えている。
GPVS上では、シンプルな月面フィールドとして機能している。
「……よしっ、コニシ・ショウコ、ガーベラ・テトラ、レッツゴー!」
どうにか気持ちを切り替えようと、ショウコは掛け声を張ってガーベラ・テトラを出撃させた。
ザフト側として出撃したガーベラ・テトラは、ビームマシンガンを油断なく構えつつ、索敵を急ぐ。
「自分の愛機のベースか、そのモチーフの機体ってことは……ストライク系かな……?」
プリンセスルージュが、孫尚香ストライクルージュにナイトストライクガンダムのパーツを加えたものなので、ストライクガンダムか、ストライクルージュか。
そう思っていたショウコだったが、不意に前方からアラートが反応し――レクイエムが突如大爆発を起こした。
「ゑっ?」
一体何が起こったのかとショウコは混乱していると、大爆発しているレクイエムの砲口から、"ソレ"が現れた。
それは『ジャスティスガンダム』ではあったが、だけではなかった。
そのジャスティスガンダムが乗り込む形の、双胴艦のようなオプションは……
「ミ、『ミーティア』装備のジャスティスぅ!?」
『はっはっはっ、驚いたかい?本当はデンドロビウムを用意したかったんだけど、さすがに持ってなかったから、ミーティアで代用だ』
「いや、そういう問題ですか!?」
『さぁ、原作ならガーベラ・テトラをぶち抜いたデンドロビウム、とはいかなかったが、そのデンドロビウムっぽいミーティアを相手に、どう立ち回るかな!?』
「えぇと……お前は一体っ、どっちの味方だ!?」
ショウコは操縦桿を押し出してガーベラ・テトラを加速させ、ビームマシンガンをばらまく。
ミーティアを纏うジャスティスガンダムは、そのサイズとは裏腹に高い運動性を以てビーム弾を躱していきながらも、ミーティア各部のコンテナを開き、無数の対艦隊ミサイル『エリナケウス』を一斉発射、ショウコの視界を埋めつくさんほどの大型ミサイルが襲い掛かる。
「(全部の破壊は無理……ならっ)」
ショウコは操縦を大きく引き下げてガーベラ・テトラを急速後退させながらも、両腕の110mm機関砲を連射、先頭のミサイルを撃ち抜く。
すると、ミサイルの爆発に後続のミサイルが次々に誘爆、誘爆の連鎖によって全弾が破壊される。
ミサイルの爆風を、再加速したガーベラ・テトラが突っ切る。
爆風を突っ切った先に、ジャスティスガンダムは二種一対の高エネルギー集束火線砲を差し向け、これも一斉射撃。
ミーティア先端のビーム砲で正面を薙ぎ払い、本体側面の連射力に優れるビーム砲と、さらにはジャスティスガンダム本体のファトゥム-00からのビーム砲『フォルティス』で追撃してくる。
「さ、す、がに、キッツい!」
次々に襲い来るビームを必死に回避していくショウコ。
ミーティアはその大きさ故に対MSの近接戦闘に弱い、懐に潜り込みさえすれば勝機はある。
『どうしたコニシさん!火力に圧倒される気持ちは分かるが、反撃しなければ勝てる戦いも勝てないぞ!』
「そんなの分かってますぅー!」
火力で圧倒している側が何を言っているんだと言い返したいが、それどころではない。
『昨日までの、強敵を相手にも一歩も引かない元気な君はどこへ行った!?自分の持ち味を活かせない者が、何かを勝ち取ることなど、無理の一言!!』
「なっ……」
自分の持ち味を活かせない者が、何かを勝ち取ることなど無理。
その言葉にショウコの操縦が一瞬止まり、ビームにガーベラ・テトラの左腕を撃ち抜かれてしまう。
『何を怖がっている!何を迷っている!何を遠慮している!全身全力でぶつかっていけ!それでこその君のはずだ!!』
「あの……教官、その言い方だとあたし、すごい迷惑な人みたいなんですけど」
『グフッ!?い、いや、俺はただ、元気が一番だと言いたかっただけで……!』
手痛い反撃をされて、思わずハヤテの操縦の手も止まる。
ガーベラ・テトラとジャスティスガンダムが互いに止まり、惰性で漂う。
「………………でもまぁ、そうですよね。うじうじしてるのは、あたしらしくない」
アスノとカンナの二人を傍から見ていただけで、何を恐れていたのか。
自分の気持ちに嘘をついてまで身を引く必要はないはず。
「よーーーーーしっ、行くぞぉー!!」
今度こそ気持ちを切り替えたショウコは、思い切り操縦桿を押し出してガーベラ・テトラをフルスロットルで加速させる。
元よりガンダム試作4号機の骨頂は、その機動性。
一拍遅れて操縦を取り戻したジャスティスガンダムも、ビーム砲の先端から超大型のビームソードを集束させ、ガーベラ・テトラを薙ぎ払うが、
「はいその瞬間待ってましたー!」
ビームソードを往なすようにして躱したガーベラ・テトラは、素早く飛び込んでジャスティスガンダム本体の前に躍りでると、ビームマシンガンを捨ててビームサーベルを抜き放つ。
『いいぞコニシさんっ!だが俺も簡単にはやられないぞ!』
ジャスティスガンダムは左マニピュレーターをミーティアから離すと、左サイドスカート内部のラケルタ・ビームサーベルを逆手で抜き放ち様に、ガーベラ・テトラのビームサーベルを受け止める。
鍔迫り合いになるが、ガーベラ・テトラはその体勢のまま腕部機関砲を連射、ジャスティスガンダムに銃弾を浴びせつける。
PS装甲に阻まれて有効打にはならないが、至近距離射撃によってジャスティスガンダムは体勢が崩れつつあり――ガーベラ・テトラはそのまま推進力で押し切り、押し返されたラケルタ・ビームサーベルがジャスティスガンダムのボディに突き刺さった。
ジャスティスガンダム、撃墜。
バトルが終わって、ショウコは自分の胸の中にある"モヤ"が晴れていることに気付いた。
「はーーーーー……スッキリしたかな」
「コニシさん、お疲れさま」
向かいの筐体から、ハヤテが顔を覗かせた。
「君が何に悩んでいるのか、俺には分からない。だけど、一応の人生の先達として、伝えたいことは伝えたつもりだ」
「教官。あたし、悩んでたんじゃなくて、逃げてたんです」
悩みではなく、逃げていたと言うショウコだが、その顔は晴れていた。
「怖かったんです、今のみんなとの関係が変わるのが。でも、教官が「自分の持ち味を活かせなければ勝てないぞ」って教えてくれたおかげで、それじゃダメなんだって気づけました」
「うん、そうか」
「だから教官、ありがとうございました!」
「合格だ!よくぞ自分の弱さを認め、殻を割ってみせたね!それが出来る人間は意外と少ないんだ。自分は弱いんだと、認めたくないからね。その弱さを認めることで、必ずや強さに繋がる!」
ハヤテは満足げに頷いた。
全員のガンプラの塗装乾燥を待つ間に最後の昼食を終えて、帰る準備を整える。
最後に乾燥させていたパーツを回収して荷物を纏めたら、最後にハヤテからの挨拶だ。
「みんな、よく俺からの個人指導を受け、そして合格してくれた!これで、俺達はライバルだ!チーム・月影のリーダーとして、今季の選手権で君達と戦えることを楽しみにしているよ!」
「そっか、ハヤテ教官も自分のチームで選手権に出場するんですね」
アスノは忘れかけていたが、ハヤテもチームを所属する身だ。
つまり、選手権を勝ち抜いていけば、いずれはぶつかることになる。
「上等。アカバさんにブルーローズの連中、ハヤテ教官、強い奴は多い方がいい。全員ぶっ倒してやろうじゃねぇか」
バシッと拳と掌を鳴らすソウジ。
「いいねソウくん!あたしも燃えてきた!」
「ならば私も一緒に燃えましょう!」
ショウコとカンナもテンションを上げる。
「さぁ、そろそろ時間だ。家に帰るまでが合宿だからね」
ハヤテのその言葉を締め括りに、行きと同じくツキシマ家のリムジンに乗る。
夏の選手権はもう目前だ――。