ガンダムビルダーズハイ   作:さくらおにぎり

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11話 五芒星の名の元に

 第23回GPVS選手権大会。

 

 その会場はバンダイホビーセンターのある静岡県にあり、普段はコンサート会場や商品展示会などに利用されるのだが、年に二回は、GPVS選手権の特設会場となる。

 

 新幹線と電車を乗り継いで、アスノ達『六人』は、夏の日差しが差し込むその会場に辿り着く。

 

「着いたなぁ」

 

 等身大の『ガンダムエアリアル』が聳え立つ会場を見上げながら、アスノは早速スマートフォンでガンダムエアリアルを撮影しまくる。

 

「改修型じゃなくて、一期前半の方なのな」

 

 かくいうソウジもスマートフォンのカメラを忙しなく動かしている。

 ショウコとカンナもしかり、そして、

 

「凄い盛り上がりね〜、私も記念に撮ろーっと」

 

 何故か、ミカもこの場にいた。

 

 彼女はアスノ達の保護者として同伴しており、同時に応援にも来てくれたのだ。

 

「……」

 

 けれど、この中でジュゲムだけが無口で、どこかピリピリとした空気があった。

 

「ジュゲムさん、緊張しているのですか?」

 

 ひとまず満足に撮影を終えたカンナが、いつもの飄々とした雰囲気とは違う剣呑ささえあるジュゲムに声をかける。

 

「…………そうだね、緊張はしているかな」

 

 しかしカンナに声を掛けられると、すぐに取り繕うように雰囲気を変えてみせた。

 

「さて、思う存分撮影したら、会場に行くとしよう」

 

 ジュゲムは徐ろにスマートフォンを取り出すと、ガンダムエアリアルをカシャカシャと撮影しているが、カンナから見れば、適当に連写しているようにしか見えなかった。

 

 その様子を不審がるカンナだが、次に掛けられた声に意識を向けることになる。

 

「カンナ」

 

 そちらにいたのは、青い髪の少女――ソノダ・アズサだ。

 彼女の後ろには、女子中学生グループのチーム・ブルーローズのメンバー達も控えている。

 

「あら、アズサさん。お久しぶりです」

 

「久しぶりね。前は不覚を取ったけど、この大会では負けないわ」

 

「ふふっ、ぜひとも決勝トーナメントでお会いしましょうね?」

 

 前回の雪辱を果たすべく闘志を燃やすアズサに、カンナもまた柔らかな口調とは裏腹にその闘志に真っ向から受けて立つ。

 

 また、その反対側では。

 

「あ、ハヤテ教官」

 

 大学生くらいの青年グループの中に、アスノはつい先週によく見ていた姿を見つけて、声をかける。

 

「ん?おぉ、イチハラ君。ここで会ったが百年目ってね、カクリコンの仇は取らせてもらうぞ!」

 

「しれっとジェリドのセリフを持ってきますね?」

 

「まぁそれはともかくだ。俺達のチームも優勝を目指しているから、君達が相手でも遠慮なく行かせてもらうよ」

 

「もちろんです。全力で戦わなきゃ、教官には勝てませんからね」

 

「その粋やよし!教官としても、一人のライバルとしても楽しみだ!うおぉぉぉぉぉ、燃えてきたぞォォォォォッ!!」

 

 この真夏の中で、彼の周囲だけ3℃ほど上がっているように感じられる。

 戦う前からいきなりテンション超一撃のハヤテを諫めるように、彼のチームメイトが「このバカがすまん」と苦笑してくる。 

 

 顔見知り達と挨拶を交わしたところで、間もなく開会式が始まるアナウンスが流れてきたので、一行は会場内へ向かう。

 

 

 

 何百人もの選手がひしめく開会式は、GPVSの開発陣からの挨拶と言ったものから始まる。

 そして、

 

『続きまして、アカバ・ユウイチ氏からのメッセージです』

 

 その名が出ると、場内は静かにざわめいた。

 何せ、全GPVSのバトラーの憧れの存在だ。どのようなメッセージをくれるのかと浮足立つ。

 

 壇上にユウイチが立つと、ざわめきが途端に止む。

 

『諸君、今日ここに集ってくれたこと、まずはそれに感謝を述べたい。よくぞ来てくれた』

 

 その姿はどこか、ダカールやスウィートウォーターで演説を行ったシャア・アズナブルを想起させる。

 

『我々バトラーは、今日この日のために半年間、手と力を尽くしてガンプラを作り上げ、バトルの腕を磨いてきた。今大会初出場という者も、最初の大会から今日まで皆勤だと言う者も、皆等しく。正面から全力でぶつかっていくのも良い、狡猾に勝ちを狙いにいくのも良い。だがこれだけは言わせてほしい』

 

 スッ、と両手のひらを上に向け、前に伸ばす。

 

『楽しもう。どのような結果になろうとも、この選手権大会に出場して良かったと、楽しい思い出として残る、そんな大会にしたいと、私は切に願う。この場に立つバトラー達も、観客席に座る皆様も、今日という日を楽しもうではないか!』

 

 握り拳を掲げてみせれば、バトラー達を筆頭に歓声が轟く。

 

 

 

 実に気の高まった開会式を終えたところで大会は開催され、早速バトルが始まる。

 

 A〜Gの7ブロックに分けられたリーグ戦で、最も勝ち点を多く稼いだチーム一組だけが、決勝トーナメントに進むことが出来る。

 ブロック分けは抽選にて決められ、アスノ達チーム・エストレージャはEブロックに、アズサ達チーム・ブルーローズはBブロックに、ハヤテ達チーム・月影はGブロックに。

 アカバ・ユウイチ率いるチーム・『レッドバロン』はシード権により、最初から決勝トーナメントが確定している。

 各ブロック代表と、チーム・レッドバロンによる8チームによって、決勝トーナメントは幕を開けるのだ。

 

 各ブロックにて熾烈な戦いの火蓋を切って落とされる中、アスノ達五人は円陣を組んでバトルの時を待っている。

 

「ついに来たね……」

 

 アスノは緊張感を滾らせてそう呟く。

 今までは動画の中でしか見なかった場所に今、自分達が立っているのだ。

 

「なーにいっちょ前に緊張してんだよ、アスノッ」

 

 バシッと軽くアスノの背中を叩くのはソウジ。

 

「そういうソウくんも、声上擦ってるしねぇ?」

 

 なんとか緊張を隠そうとしていたのだが、ショウコの目(耳?)は誤魔化せなかった。

 

「ふふっ、少しくらいは緊張してもいいと思いますよ。私も緊張してますから」

 

 カンナも頷いているが、かくいう彼女も少し膝が笑っている。

 

「まぁ何にせよ。ここまで来たところで、オレ達のやることはいつもと同じ。戦って勝つだけだよ」

 

 ジュゲムはいつもと変わらぬ余裕のある微笑を浮かべるだけ。

 

「よーし……もちろん勝ちは狙いに行く。けど、アカバさんが言っていた通り、みんなで全力で楽しんでいこう!」

 

 アスノが激励を発すれば、四人とも「おぉー!」と合わせてくれる。

 

 

 

『続きまして、Eブロック第三試合、チーム・エストレージャ対、チーム・フィフスソルジャーズの対戦になります。両チーム、準備をお願いします』

 

 アナウンスに従い、アスノ達五人は筐体にバナパスと愛機を読み込ませていく。

 

「相手チームのフィフスソルジャーズは、前の冬季大会で決勝トーナメントに進出している。中近距離戦に特化したチームだ、早速の強敵だね」

 

 ジュゲムが冷静に、通信回線越しに相手チームの情報を伝えてくれる。

 

「はっ、強敵だからなんだ。全部ぶっ飛ばせば済む話だろ」

 

 ソウジは拳と掌をバシッと打ち鳴らして気炎を吐く。

 

「そうそう、総当たり戦だから、とにかく勝たないとね」

 

 ショウコも気合十分だ。

 

 ランダムフィールドセレクトは『ジャブロー』

 宇宙世紀における、地球連邦軍の本部が隠された大自然のフィールドで、今回は森林地帯の中で戦うことになるようだ。

 

 各々のガンプラがリニアカタパルトに乗せられ、出撃準備完了だ。

 

「キタオオジ・ソウジ、『ガンダムアスタロトブルームⅡ』、行っとくか!」

 

「コニシ・ショウコ、『ロイヤルプリンセスルージュ』、レッツゴー!」

 

「ジュゲム、ダーティワーカー、仕事の時間だ」

 

「ツキシマ・カンナ、『ガンダムダイアンサス』、参ります!」

 

「イチハラ・アスノ、『ガンダムAGE-(ダブルアイン)』、チーム・エストレージャ、行きます!」

 

 

 

 ジオン軍サイドでの出撃となったアスノ達は、上空から降下していく。

 原作のジャブローと異なり、「降りられるのかよぉ!?」と言いたくなるような弾幕が襲い掛かってくることもなく、順次着陸していく。

 

 まずはアスノのガンダムAGE-X。

 ガンダムMK-Ⅱを意識したカラーリングから、どちらかといえばνガンダムに近いものに塗り替えられ、ビームサーベルは両足外側部に増設された装甲に格納している。

 Gエグゼスのビームライフルをベースにバレルを増設した『ロングドッズライフル』を持ち、頭部にはGバウンサーのアンテナをビームバルカンとして改造して組み込んでいる。

 そしてリアスカートには、SDのガンダムAGE-2のダブルバレットウェアのツインドッズキャノン一対を備えているが、これにはある仕掛けがある。

 なお、機体銘の『X』はエックスではなく、『I』を二つ重ねて「ダブルアイン」と読む。

 

 次にカンナのガンダムダイアンサス。

 四肢をウイングガンダムゼロのものに取り替えて軽量化し、機動性を大きく向上させている。

 オーソドックスなビームライフルとシールドを装備し、ヒートナギナタはリアスカートに懸架させ、代名詞たる弓矢は背部ラックを折り畳んでいる。

 ウイングガンダムゼロの腕部である関係上、ライジングフィンガーが使えなくなった代わりに、ビームサーベルが追加されているため、結果的に汎用性は向上した。

 また、ダイアンサスは『撫子』の英読みであり、『ネオジャパンの『ヤマトガンダム』の対になる機体として試作されていたが、第13回ガンダムファイトに備えて『ニンジャー』をベースとした『シャイニングガンダム』の開発を急いだために、お蔵入りとなった』というカンナの設定があったりする。

 

 次にソウジのガンダムアスタロトブルームⅡ。

 機体各部に装甲板を追加して耐弾性を強化し、肩部とフット部は『ガンダムヴィダール』の物に取り替え、宇宙機動性と格闘能力を向上させている他に大きな変化は見られないが、よりソウジにとって戦いやすく最適化された機体となったため、元々の武装であるハンドガンやロケットランチャーも装備可能だ。

 

 次にショウコのロイヤルプリンセスルージュ。

 肩とバックパックに『レイフガンダムGP04』のパーツを加えており、元の演者である『ガンダム試作4号機』由来の大型スラスターによる高機動性を実現している。

 武装面は、ザクウォーリアのビーム突撃銃を改造した『マギアマシンガン』に、背部に装備された『マギアサーベル』の他、肩部装甲内にはガーベラ・テトラを意識した『110mm機関砲』も内蔵している。

 

 ジュゲムのダーティワーカーは特に改造点は見当たらないが、合宿の際にリペイントが施されて総合性能は僅かながら上昇している。

 

 

 

「さてと。相手さんは距離を詰めて戦いたいはずだ。早めに捕捉して、有利に運びたいねぇ」

 

 着陸するなり、ダーティワーカーはすぐにセンサー類を起動させ、戦況把握を急ぐ。

 

 敵対反応は、突出して向かってくる三機と、その後続にもう二機。

 

 フライトユニット装備の『アストレイレッドフレーム』、『シャイニングガンダム』『ダブルオーライザー』の三機。

 後続は『ジェスタ』と『Hi-νガンダム』の二機。

 

 なるほど、前衛三機で暴れ、その支援に後ろの二機ということらしい。

 

「と……なると、こっちは"逆張り"で行こうか。キタオオジ君とコニシちゃん、前衛は任せたよ」

 

 ジュゲムはウェポンセレクターからビームスナイパーライフルを選択しつつ、指示を出す。

 

「あいよ」

 

「了解でーす」

 

 ソウジのガンダムアスタロトブルームⅡと、ショウコのロイヤルプリンセスルージュが前に出る。

 

「さぁて、生まれ変わったアスタロトブルーム、お披露目と行こうじゃねぇか!」

 

 ガンダムアスタロトブルームⅡの右マニュピレーターに握るのはハンドガンではなく、『ガンダムアスタロトオリジン』のショットガンの改造品だ。センサーとマガジンを増設して、精度の向上と装弾数を増加させている。

 突出してくる三機に向けてトリガーを引き絞れば、広範囲に銃弾を飛び散らせる。

 被弾を嫌った三機は即座に散開し、

 

「選り取り見取り!」

 

 そこへショウコが飛び込み、ロイヤルプリンセスルージュはマギアマシンガンを連射しながらダブルオーライザーへ迫る。

 

 早速陣形を乱されたチーム・フィフスソルジャーズだが、ロイヤルプリンセスルージュの相手はダブルオーライザーに任せ、アストレイレッドフレームとシャイニングガンダムはガンダムアスタロトブルームⅡに注意を向ける。

 

「オラァ!ビビってんじゃねーぞ!」

 

 ガンダムアスタロトブルームⅡはさらにショットガンを放って、相対する二機の注意を引く。

 

 しびれを切らしたのか、シャイニングガンダムは散弾を強引に突破して、徒手空拳による肉弾戦を仕掛けようと迫りくる。

 対するガンダムアスタロトブルームⅡも左マニュピレーターにナイフを抜いて肉弾戦に迎え撃とうとして――その寸前に横っ飛びでシャイニングガンダムのパンチを躱す。

 シャイニングガンダムは即座にガンダムアスタロトブルームⅡを追撃しようと目を向け、

 

「不運だったね」

 

 そこを狙い澄ましていた、ダーティワーカーのビームスナイパーライフルが火を吹き、反応が遅れたシャイニングガンダムはボディをまともに撃ち抜かれた。

 

 シャイニングガンダム、撃墜。

 

 ソウジをブラインドにした連携プレイだが、ソウジの回避が少しでも遅れていたら誤射になりかねない、非常に際どいタイミングであった。

 不利を悟ったか、アストレイレッドフレームはビームライフルを撃ちながら後退し、ジェスタとHi-νガンダムと足並みを揃えようとするが、

 

「させるかよ!」

 

 シャイニングガンダムの撃破によってフリーになっていたソウジが強襲をかける。

 アストレイレッドフレームからのビームライフルはナイフで斬り弾き、一気に肉迫、ショットガンとナイフをその場に捨てると、デモリッションナイフを抜き放って薙ぎ払う。

 対するアストレイレッドフレームは、フライトユニットによるジャンプでデモリッションナイフの一撃を躱し、素早くガーベラストレートを抜き放って斬りかかる。

 デモリッションナイフを空振りして隙が出来ていたガンダムアスタロトブルームⅡだが、即座に爪先のブレード――ハンターエッジを展開し、ガーベラストレートのレアメタルの剣刃を蹴り弾く。

 

 ジェスタがアストレイレッドフレームを、Hi-νガンダムがダブルオーライザーを、それぞれ援護しようとする。

 

 ビームライフルによる援護射撃を敢行しようとするジェスタだが、そうはさせんと足止めするのは、カンナのガンダムダイアンサス。

 取り回し重視のビームガンから持ち替えた、威力も重要視したビームライフルを連射して、ジェスタの進路先に張り付く。

 

 もう一方で、Hi-νガンダムはフィンファンネルを展開し、ダブルオーライザーを援護しようとするものの、そのフィンファンネルに立ち塞がるのは、アスノのガンダムAGE-X。

 

「行けるはずだ……『ドッズファンネル』!」

 

 すると、ガンダムAGE-Xのリアスカートに装備されていたツインドッズキャノンが自立機動し、フィンファンネルを撃ち落とそうとDODS効果を帯びたビームを放つ。

 手数こそ少ないものの一発一発が強力なファンネルとなる。

 自然とHi-νガンダムの注意はそちらへ向けられ、フィンファンネルとドッズファンネルによる、ファンネル同士の応酬が始まる。

 

 

 

 デモリッションナイフとガーベラストレートが打ち合い、鉄の火花が弾け飛ぶ。

 

 アストレイレッドフレームはフライトユニットを翻して飛び下がり、ガンダムアスタロトブルームⅡはデモリッションナイフを叩き付けようと距離を詰めて振り下ろす。

 

「逃さねぇよ!」

 

 しかし、アストレイレッドフレームは突如フライトユニットを切り離し、その切り離された勢いでデモリッションナイフを躱し、ガンダムアスタロトブルームⅡの斜め上を取る。

 ガーベラストレートを上段から兜割りのごとく振り下ろし――

 

「技を借りるぜ、教官!」

 

 だがガンダムアスタロトブルームⅡは、地面に叩き込んだデモリッションナイフの切っ先を地面にめり込ませたまま跳躍、ポールダンスのようにぐるんと空中で回転して、ガーベラストレートの一閃を躱す。

 

 デモリッションナイフを支柱にする、ハヤテがやってみせた回避運動だ。

 

 この一撃で仕留めるつもりだったか、アストレイレッドフレームは慌ててフライトユニットを呼び戻そうとするが、そこでフライトユニットを呼び戻すためのタイムラグが命取りだった。

 ポールダンスで一周したガンダムアスタロトブルームⅡは、デモリッションナイフから手を離してアストレイレッドフレームの死角に回り込んだ。

 

「くたばれ!」

 

 そのまま脇から組み付き、抜き放ったもう片方のナイフでバイタルバートを念入りに抉った。

 

 アストレイレッドフレーム、撃墜。

 

 

 

 カンナのガンダムダイアンサスは、ジェスタと鎬を削り合っていた。

 

「……行きます!」

 

 中距離でビームライフルを撃ち合っていた両者だが、不意にガンダムダイアンサスの方から膠着を破り、ビームライフルを納めてリアスカートからヒートナギナタを抜いて突進する。

 接近戦を仕掛けてくると読み取ったジェスタはビームライフルを納めてビームサーベルを抜き放って迎え撃つ。

 しかしその突進の途中で、ガンダムダイアンサスは振りかぶり――まだ射撃の間合いからヒートナギナタを槍投げの要領で投げ付けた。

 その距離から飛んでくるヒートナギナタに一瞬虚を突かれたジェスタだが、すぐにビームサーベルを振るってヒートナギナタを弾き、ヒートナギナタは上方へ飛ばされ――その方向に既にガンダムダイアンサスが回り込んでおり、その弾かれたヒートナギナタをキャッチし、

 なんとその高度からもう一度ヒートナギナタを投げ付ける。

 これまた虚を突かれるジェスタだが、二度も同じでは通じぬと言わんばかりに、今度はヒートナギナタを脇の間を通すようにやり過ごし――一瞬でもヒートナギナタに意識を向けていたが故に、ガンダムダイアンサスの次の動きに対する対応が遅れる。

 

 急降下したのか、上空にいたはずのガンダムダイアンサスは着陸しており、ビームボウ――『ロビンフッドガンダムAGE-2』の弓を改造したそれを構えていた。

 

「当てます……!」

 

 既に弦を引き絞っていたカンナは、迷いなく矢を放つ。

 真っ直ぐに射たれた光速の矢は、寸分違わずジェスタのバイタルバートを貫いてみせた。

 

 ジェスタ、撃墜。

 

 

 

 ショウコのロイヤルプリンセスルージュは、機敏に動き回って、トランザムライザーとなったダブルオーライザーの攻撃を掻い潜り、マギアマシンガンを撃ち返す。

 量子化によってビーム弾をすり抜けるダブルオーライザー、瞬時にロイヤルプリンセスルージュの死角に回り込んでGNソードⅡからビーム刃を発して斬り裂こうとするが、そこはショウコの予測範疇だ、ダブルオーライザーが量子化した時点で彼女は既にウェポンセレクターを回し、背部のマギアサーベルを抜き放ち様に振り返り、ダブルオーライザーの斬撃を弾き返す。

 

「ショウコさん、援護しますよ!」

 

 そこへ、ジェスタを撃破したことによってフリーになっていたカンナのガンダムダイアンサスがビームライフルによる援護射撃を加えてくれる。

 

「カンナちゃんさんきゅっ!」

 

 これもまた量子化でやり過ごすダブルオーライザーだが、連続で量子化で回避したせいで、そのトランザムが限界時間を迎えてしまう。

 トランザムライザーの量子化は、GPVS上では大半の攻撃を無傷で回避するのだが、これを行うとトランザムの制限時間を大きく削られてしまう。

 それを立て続けに二回も行えば、当然それだけ粒子を使うことになり、限界時間も早まる。

 

「行っけぇぇぇぇぇッ!!」

 

 ロイヤルプリンセスルージュは旋回、ガンダムダイアンサスを巻き込まない位置からマギアマシンガンと、左肩の110mm機関砲を連射、動きを止めたダブルオーライザーへ浴びせつける。

 予想よりも早くにトランザムの限界時間を迎えてしまったダブルオーライザーは、落ちてしまった機動性でロイヤルプリンセスルージュの弾幕攻撃を凌ぎ切ることは出来ず、オーライザーのバインダーを破壊され、バランスが崩れたところを畳み掛けられ、撃破された。

 

 ダブルオーライザー、撃墜。

 

 

 

 アスノのガンダムAGE-Xは、確実にHi-νガンダムを追いこんでいる。

 ドッズライフルと同等の破壊力の貫通力を持つ、ドッズファンネルによる射撃は、ファンネル同士の射撃で猛威を振るう。

 ファンネル同士が正面からビームを撃ち合えば、DODS効果によって正面からビームを貫き、フィンファンネルごと破壊するのだ。

 

 瞬く間にフィンファンネルの数を減らされたHi-νガンダムは、一度フィンファンネルを背部ラックへ呼び戻し、ビームライフルとニューハイパーバズーカを併射してガンダムAGE-Xを寄せ付けまいとするが、

 

「ドッズファンネル……サーベルモード!」

 

 アスノはウェポンセレクターを切り替えた。

 すると、自律していたドッズファンネルはさらに分離し、ライフルとファンネル本体二対に別れ、ファンネル本体は、ドッズライフルを切り離したそこからビームサーベルを発振、Hi-νガンダムへ襲い掛かる。

 縦横無尽に襲い来るビームサーベルとDODS効果を帯びたビーム射撃に、Hi-νガンダムも再度フィンファンネルを展開して対抗しようとするが、それ故にガンダムAGE-X本体への注意が逸れてしまう。

 そして、その隙を逃すアスノではない、ロングドッズライフルを両手で構え、ロックオン。

 

「そこッ!」

 

 高出力かつ螺旋状に放たれたビームは、とっさにシールドを構えたそれごと、Hi-νガンダムを撃ち抜いてみせた。

 

 Hi-νガンダム、撃墜。

 

『Battle endnd.Winner.Estrella!!』

 

 

 

 初出場の中学生メインのチームが、前季の決勝大会出場チームを完封勝ちしてみせた。

 前触れなく現れたダークホースに、会場は沸き立つ。

 

 拍手と歓声の中、アスノ達チーム・エストレージャは、互いにハイタッチする。

 

「よっしゃぁ!完璧じゃねぇの俺ら!」

 

 苦戦することもなかった完封勝ちに、ソウジはガッツポーズをキメてみせる。

 

「当然!あたし達は勝ちを狙いに行ってるからね、こっちはやる気が違うんだ!」

 

 自信満々に、なおかつ然りげ無くリディ・マーセナスのセリフを交えつつ胸を張るショウコ。

 

「まぁまぁ、まだ一勝目だ。気を抜かずに行こうじゃないか」

 

 完封勝ちに驕り高ぶることなく、ジュゲムは落ち着きを払って頷いている。

 

「やりましたねアスノさん!……アスノさん?」

 

 カンナは隣の筐体にいるアスノに呼びかけて、反応がない。

 

 その彼はリザルト画面のまま、ガンダムAGE-Xを睨むように見つめている。

 

「ファンネルの反応が鈍い気がする。もう少し早く出来ないかな……」

 

 先程のバトルの最中、二種一対のドッズファンネルを見事使いこなして見せたアスノだったが、その完成度はどこか満足いくものではないようだ。

 とはいえ、ブロック毎の予選の一戦一戦の合間は短い、今からパーツを分解して加工する時間はない。

 その時間があるとすれば、予選と決勝トーナメントの合間の昼休みくらいか。

 

 次のバトルに備えたバトラー達が控えているのを見て、アスノは慌てて筐体を空ける。

 

 

 

 アスノ達の戦いの一方で、アズサ達チーム・ブルーローズもまた着実にBブロックで勝ち点を稼いでいた。

 

 コロニー『メンデル』付近のデブリベルトにて、そのアズサのガンダムアズールカノンは両腕のダブルガトリングガンと胸部ガトリング砲を斉射する。

 広範囲に渡る面制圧砲撃に、敵対機である『ライトニングガンダム』と『G-ポータント』は散開して被弾を避けようとするが、左右から展開したシュヴァルベグレイズとギラ・ドーガに張り付かれ、多方向からの銃弾に撃ち抜かれていく。

 

 ライトニングガンダム、G-ポータント、撃墜。

 

 その二機の僚機である『ストライクフリーダムガンダム』と『ガンダムAGE-2』は、Gバウンサーとドライセンにマークされており、援護に向かうことが出来ないでいる。

 

 瞬く間に数的有利の状況を生み出したチーム・ブルーローズは、フォーメーションを組み直し、数の利を活かした弾幕戦に持ち込む。

 

「手数で押し込むわ!」

 

 ガンダムアズールカノンを中心に、ライフルやマシンガンを広範囲にばら撒き、ストライクフリーダムガンダムはビームシールドで防ぎ、ガンダムAGE-2はストライダーフォームに変形して、それぞれ弾幕を凌ごうとしている。

 そこへ、相手リーダー機の『高機動型ザクⅡ』が、ナックルシールドを片手に弾幕を掻い潜って接近戦に持ち込もうとしてくる。

 それを見て、Gバウンサーは率先して相手を引き受け、ドッズライフルを納め、ビームサーベルを抜き放って高機動型ザクⅡを迎え撃つ。

 

 乱れる戦況の中、アズサはウェポンセレクターを複数同時に開き、ロックオンマーカーも複数同時にマニュアルで制御し、ガンダムAGE-2にホーミングミサイルを、ストライクフリーダムガンダムにはダブルガトリングガンを、高機動型ザクⅡにはマイクロミサイルを、それぞれに向けて全弾発射。

 

 ストライダーフォームによるスピードで弾幕を掻い潜っているところへホーミングミサイルが追尾し、ガンダムAGE-2は対応しきれずにホーミングミサイルを直撃する。

 

 ガンダムAGE-2、撃墜。

 

 ストライクフリーダムガンダムの方は絶え間なく降り注ぐ弾幕に耐えきれずに体勢を崩し、崩した瞬間にギラ・ドーガのビームマシンガンとドライセンの連装ビームキャノンに撃ち抜かれる。

 

 ストライクフリーダムガンダム、撃墜。

 

 残る高機動型ザクⅡは、マイクロミサイルの弾幕を凌いで見せるもの、その隙を狙っていたGバウンサーは急速接近、シグルブレイドでナックルシールドを持つ右腕を斬り捨て、怯んだところへビームサーベルを突き込んだ。

 

 高機動型ザクⅡ、撃墜。

 

『Battle ended.Winner.Blue rose!!』

 

 

 

 ハヤテ達チーム・月影もまた、Gブロックでも激戦を繰り広げる。

 

 砂漠地帯の『ダカール』にて、僚機の『スサノオ』と連携して『劉備ストライクガンダム』を撃破してみせた、ハヤテの黒影丸。

 

「今こそ好機だ!突撃ィィィィィィィィィィッ!!」

 

 相手チームの陣形が乱れたのを見抜くや否やハヤテは自ら突撃、敵陣を掻き乱して乱戦に持ち込む。

 立て直そうとするよりも先に突っ込んできた黒影丸に、敵機の『インフィニットジャスティスガンダム』は慌てて対応しようとするものの、無明閃の二刀流で一気呵成に攻め立てられ防戦一方だ。

 敵機の『0ガンダム』がフォローに回ろうとするものの、そこへ『レイダーガンダム』が割り込み、破砕球ミョルニルを振り回してGNビームガンをかき消す。

 乱戦の最中でもドッズライフルの精密射撃モードによる狙撃を試みる敵機の『ガンダムAGE-1』だが、『イフリート・ナハト』がナハトブレードを抜いて斬り込んでくるのを見て対応を急ぐ。

 苦し紛れにビームマグナムを撃とうとする敵機の『ユニコーンガンダム』だが、そうはさせまいと『クロスボーンガンダムX2』がショットランサーを射出、発射寸前だったビームマグナムに突き刺さり、メガ粒子の塊は発射を阻害されて暴発、ユニコーンガンダムを巻き込んだ。

 

 ユニコーンガンダム、撃墜。

 

 瞬く間に二機落とされて、混乱する敵チーム。

 連携が取れなくなったところをイフリート・ナハトのナハトブレードがガンダムAGE-1を斬り裂き、その撃墜に気を取られたインフィニットジャスティスガンダムは黒影丸の無明閃のゼロ距離射撃を受け、0ガンダムも決死の覚悟で反撃するものの、レイダーガンダムのミョルニルに粉砕されてしまった。

 

『Battle ended.Winner.Tsukikage!!』

 

 

 

 各ブロックの戦いも進み、アスノ達チーム・エストレージャは、全試合完封で全勝、ぶっちぎりの勝ち点で決勝トーナメントへ進出、それを追うようにブルーローズと、月影も決勝トーナメント進出を決定付けていく。

 

 7チームの決勝トーナメント進出が決定された後、午前の部は終了。

 午後からは決定トーナメントが始まるのだ。

 

 

 

 特設会場のフードコートで昼食を取ろうと考えていたアスノ達だが、その前にお手洗いに行っておきたいと言うジュゲムは、一足先に用を足していた。

 手も洗ったところで、さてアスノ達が待っていると言うところで。

 

 ふと、洗面台の鏡越しに、ジュゲムの顔を見ている男がいた。見たところは、ジュゲムと同じくらいの青年だ。

 それに気づいているのか、そうでないのか、ジュゲムは素知らぬフリでその場を去ろうとして、

 

 その男に先回りされた。

 

「おいおい、久々の再会だってのに、随分とツレねぇな?」

 

「……失礼、どこかでお会いしたかな?」

 

 相手はジュゲムのことを知っている。

 

「まさか、『元チームメイト』の顔を忘れたとか言うなよ?」

 

「忘れるも何も、初対面だろう」

 

 しかしジュゲムは何食わぬ顔で惚けてみせる。

 

「そうしらばっくれんなよ、『トウゴ』。無能だったお前が、中坊どものチームに取り入ってなに偉そうなことやってんだ、ん?」

 

「何を勘違いしてるか知らないが、人を待たせてるんでね、通してもらうよ」

 

 ジュゲムはため息混じりにその男の横を通り抜ける。

 その間際に「あぁ、そうそう」と、前置きを置いて。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「本当の愚か者は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだそうだ。……どっかで聞いたような話だろ?コレ」

 

「……チッ」

 

 相手の不快気な舌打ちに、ジュゲムは鼻で笑ってからそれを背にした。

 

 

 

 ――熱く激しい戦いの陰で、暗く冷たい思惑が渦を巻く。

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