ガンダムビルダーズハイ   作:さくらおにぎり

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5話 いざ勝負!VSチーム・ブルーローズ

 ジュゲムの加入によって、ついにチームを結成したアスノ達。

 その日の夜。

 RINEのグループトークにも、ジュゲムは招待された。

 中学生は四人は学園でも会えるが、彼だけは違うので、連絡手段として互いのIDを交換したのだ。ソウジだけは不服そうだったが、「まぁしゃぁねぇな」と最終的には承諾した。

 

 ということで、ジュゲムが招待されたその日の晩のトークである。

 

 ジュゲム『初めまして こんにちは』

 

 ショウコ『ジュゲムさんようこそー!』

 

 カンナ『ようこそいらっしゃいましたー!』

 

 アスノ『ようこそー!』

 

 ソウジ『いらっしゃいませ、こんにちは、いらっしゃいませ、こんにちは』

 

 ショウコ『ソウくんそれブックオンの挨拶でしょw』

 

 ソウジ『いいから話題はよ』

 

 ショウコ『はいはーい。それで、せっかくジュゲムさんが加入して結成した、あたし達チーム・エストレージャ。そのデビュー戦になる練習試合として、よそのチームとバトルしてみたいと思います!』

 

 アスノ『早速だな』

 

 ソウジ『ハム先生「望むところだと言わせてもらおう」』

 

 カンナ『どこのチームと練習試合をするのですか?』

 

 ショウコ『それはまだ決まってなかったり……』

 

 ジュゲム『これから決めるということかな?』

 

 ショウコ『( ゚д゚ )彡そう! ジュゲムさんの言う通り!』

 

 アスノ『確か公式サイトでチームを登録して、掲示板でフリーバトルを募集とか出来るんだっけ?』

 

 ソウジ『出来るっちゃ出来るが、俺らはまだ結成したばっかのチームだ。普通に募集したら、初心者狩りのカモにされるかもしれねぇな』

 

 ジュゲム『顔の見えないインターネットの、コメント上だけのやり取りだ。「チーム初めて結成しました!」などと公言すれば、悪意のある誰かに目を付けられる可能性もあるね』

 

 ショウコ『うーん、その辺はどうもねぇ……』

 

 カンナ『もしよろしければ、私の知り合いにお声がけしましょうか?』

 

 ソウジ『お?意外なところから人脈が』

 

 ショウコ『ホント!?それってどんな人?』

 

 カンナ『連絡を取りますので、一旦失礼しますね』

 

 一度トークを停止。

 数分後に、カンナの呟きが表示された。

 

 カンナ『連絡が取れました。練習試合も快諾していただきました』

 

 ショウコ『カンナちゃんナイス!』

 

 アスノ『それで、どこのどんなチームなんだ?』

 

 カンナ『家族旅行の旅先でお友達になった方のチームです。チーム情報も送りますね』

 

 続いてカンナが送信するのは、GPVSの公式サイトを経由するURL。

 タップしてサイトに接続すると、チーム情報が表示された。

 

 チーム名は『ブルーローズ』

 

 リーダーは『ソノダ・アズサ』という、カンナと同じ女子中学生で、メンバーは全員女子中学生で構成されている若いチームのようだ。

 チームランクはCと、中堅どころといったところか。

 

 カンナ『あとは、向こうとこちらの都合を合わせるだけです。いかがでしょう?』

 

 ソウジ『俺らと同じ中学生なら、土日どっちかでいんじゃね?』

 

 アスノ『僕は土日どっちでも大丈夫だと思う』

 

 ショウコ『あたしも大丈夫。ソウくんも大丈夫よね?』

 

 ソウジ『大丈夫だ、問題ない』

 

 カンナ『あちらは、土曜日の午後からが良いとのことです』

 

 ジュゲム『なら、オレも土曜に都合を合わせようか』

 

 ショウコ『土曜よろし!』

 

 ソウジ『土曜よろし!分かってんの!?』

 

 アスノ『分かってる!子どもじゃない!』

 

 カンナ『今のは、ブライトさんですか?』

 

 ジュゲム『いや、今のはトーレスの方かな』

 

 ソウジ『なんで分かったの、やばくね?』

 

 アスノ『じゃぁ、土曜日の午後にチーム・ブルーローズとバトルってことで』

 

 RINEのトークが終了し、今週土曜日に5on5のチームバトルの予定が立てられた。

 

 

 

 土曜日を迎えるまでの間、アスノ達チーム・エストレージャは、出来るだけ都合を合わせつつ、チーム戦の特訓やミーティングを行っていた。

 ジュゲムは都合もあってあまり顔合わせには来れず、十分とは言い切れないものの、チームの連携や作戦もある程度はサマになりつつある。

 

 そんな中の、平日のある日の昼休み。

 

 人も疎らな屋上で、アスノ達四人は集まっていた。

 昼食を兼ねたミーティング(と言うのはほぼ建前で、四人で集まって談笑しているだけ)だ。

 

「さぁ、今日もミーティングミーティングぅ!」

 

 元気にミーティングをするぞと言い張りながらも、弁当箱を広げるのはショウコ。

 

「ミーティングって言っても、ただくっちゃべってるだけじゃねぇか?」

 

 苦笑しながらも今日の購買戦争の戦利品を広げるソウジ。

 

「違いますよキタオオジさん。これも立派なミーティング、私達の選手権優勝の、大事な一歩です!」

 

 ショウコと同じようにミーティングするぞと意気込みつつも弁当箱を用意するのはカンナ。

 

「まぁ、根を詰めるようなミーティングよりは、楽しいくらいの方がいいと思うよ」

 

 無難に軟着陸するように〆るのはアスノ。

 

 まずは各々の昼食をある程度進めて、適当なところで。

 

「んじゃ、そろそろ真面目にやりますか」

 

 ソウジが進行役を買って出て、"ミーティング"を開始する。

 

「俺のアスタロト、アスノのAGE-I、ショウコのルージュ、ツキシマのライジン、それとジュゲムのEz8。こうしてみると、意外と遠近バランスが取れたチームだよな、俺らって」

 

 彼ら五人は、巡り合わせのようにバランスの取れたチームだった。

 

 アスノとカンナは遠近共に卒なく戦えるオールラウンダー。

 

 ソウジとショウコはクロスレンジでの近接戦闘を得意としている。

 

 ジュゲムはその四人のカバーをするように長距離射撃と作戦参謀を努める。

 

 この五人のバランスの良さが、吉と出るか凶と出るか。

 

「どっちかって言うと、汎用タイプのガンプラを、それぞれの役割に特化させてる感じだよね」

 

 そう補足したのはアスノ。

 

 ガンダムAGE-Iは、脚部をアデルのものに取り替えている以外は大きな変更点が無いので、ほぼノーマルウェア――可不可のない安定した性能バランスを持つ。

 

 ガンダムアスタロトブルームは、接近戦を好むソウジのカスタムから、格闘戦に特化しているように見えるが、武装次第では砲撃戦も十全にこなすことが出来る。

 

 プリンセスルージュは、孫尚香ストライクルージュと言う三国伝系列の機体なため、格闘戦しかほぼ出来ないが、ライフルの類を装備することで、射撃戦にも対応出来る。

 

 ライジングガンダムは、MFでありながら、MSと言う兵器としての側面を強く意識した機体であるため、これも武装次第で遠距離戦も可能になる。

 

 ダーティワーカーは、狙撃に特化した機体であるものの、元がガンダムEz8(陸戦型ガンダム)なため、やはり装備によって得意な間合いが変わるだろう。

 

「司令塔役はジュゲムさんがするし、あたし達はジュゲムさんの立てる作戦を元にバトルしてく感じかな」

 

 ショウコが言うように、狙撃機――最後方に陣取る機体は、他の僚機の動向を後方から把握し、刻一刻と変化する戦況に応じて指示を与える役割も含まれる。

 

「あのー……少しよろしいでしょうか」

 

 ふと、カンナは躊躇いがちに挙手した。

 

「はいカンナちゃん、どうぞ」

 

 ショウコが発言許可を下ろす。

 

「ジュゲムさんのことなのですが……あの人、以前はチームに所属していたのですよね?」

 

 カンナのその意見と言うか疑問は、他三人も感じていた。

 ジュゲムは確かにハイランカーで、勝率も高い。

 それだけの戦績があれば、既にチームに所属しているものだろう、とアスノ達も思うところがある。

 けれど、ジュゲムは無所属だったために、チーム・エストレージャに加入した。

 

「なのに、どうして私達のチームに加入したのか、が分からなくて……」

 

 それに対して、ソウジは「さぁな」とどこか投げ遣りに応えた。

 

「昔はどこで何やってたかなんて、関係ねぇし興味もねぇ。今は俺らのチームにいる。そんだけだろ」

 

「でも、僕は気になるかな」

 

 しかしアスノは、カンナの疑問を真剣に感じていた。

 

「あれだけ実力があるなら、チームとしては絶対に手放したくないはずだよ。仮にもし、以前はどこかのチームに所属していたとしたら、何か理由があって抜けたのか、チーム自体が解散したのか……」

 

 その辺りのことを、ジュゲムは明かそうとしない。

 訊ねようとしても、どこか煙に巻くような発言ばかり繰り返し、結局その真意を伺うことが出来ないでいた。

 

「まぁ、言いたくないことって誰にでもあるんだし、無理に暴こうとして関係がギクシャクするのも嫌だし、今はこのままでいいと思うの」

 

 教えたくないことを無理に訊き出すことはない、とショウコはアスノの思考を遮る。

 

「それより、ごはんの続き食べよっか。ぼーっとしてたら昼休み終わっちゃうしねっ」

 

 ミーティングはそこで終了し、四人は食事に集中することにした。

 

 

 

 そして迎えた土曜日、時刻は15:00の少し手前。

 

 アスノ達五人は、蒼海学園から少し離れた位置にある大型のゲームセンターに訪れていた。

 五人分の筐体の空きを確保したところで、カンナはスマートフォンを開き、ビデオ通話を行う。

 数秒のコールの後に画面に、青いロングストレートヘアの少女――ソノダ・アズサの顔が映る。

 

 

【挿絵表示】

 

 

『もしもし、カンナ?』

 

「こんにちはアズサさん。間もなく刻限です、準備のほどはいかがですか?」

 

『こっちは万事問題無いわ。部屋はこちらで作るわね』

 

「分かりました。ではお互い、死力を尽くしましょう」

 

『えぇ、こちらも勝ちを狙いに行かせてもらうわ』

 

 カンナはニコニコと、アズサは真剣な顔を最後に、通話が切られた。

 

「そう言えば、私達のチームリーダーってどなたになるのでしょうか」

 

 ふとカンナは思い出したように、他四人にその話題を振る。

 

「ん?そんなのアスノに決まってんだろ?」

 

 何を今更とでも言うように、ソウジがアスノをリーダー推薦する。

 

「な、なんでそこで僕?そこは普通、ソウジだろ?」

 

 ソウジの方がリーダーらしいだろ、とアスノは言うが。

 

「アカバさんのお眼鏡に叶うくらいだし、アスくんがリーダーの方がいいと思うよ」

 

 ショウコが後押しし、

 

「これはもう認めるしか無いんじゃないか?」

 

 ジュゲムが逃げ場を潰し、

 

「アスノさんなら、きっと立派にリーダーをやれますよ」

 

 トドメとばかりカンナからの期待。

 

「うっ……わ、分かった、なんとかやってみせるよ」

 

 チーム・エストレージャ、リーダーは、イチハラ・アスノに決定。

 準備は可能な限り行った。

 あとは、出たとこ勝負だ。

 

 

 

 各々のガンプラとバナパスを読み込ませ、同期させていく。

 オンラインフリーバトルモード、5on5。

 

 ランダムフィールドセレクト、『モラリア空軍基地』

 

 原典は『00』のファーストシーズンからで、AEUとPMCトラストが集結した基地であり、そこへソレスタルビーイングの四機のガンダムが攻撃を仕掛け、作戦は順調に進むかと思いきや、ガンダムマイスター刹那・F・セイエイのガンダムエクシアの前に、傭兵アリー・アル・サーシェスのAEUイナクトカスタムが現れ……と言う場面だ。

 

 GPVSのフィールドとしては、余計な障害物の少ない、シンプルで広い地上戦を展開可能だ。

 

 マッチング同期が完了、出撃スタンバイ。

 

 いよいよ、チーム・エストレージャの初陣だ。

 

「イチハラ・アスノ、ガンダムAGE-I!」

 

「ツキシマ・カンナ、ライジングガンダム!」

 

「キタオオジ・ソウジ、ガンダムアスタロトブルーム!」

 

「コニシ・ショウコ、プリンセスルージュ!」

 

「ジュゲム、ダーティワーカー」

 

 全機のアイカメラが力強い輝きを放つ。

 

「チーム・エストレージャ、行きます!」

 

 一斉にリニアカタパルトから打ち出され、モラリア空軍基地へと出撃していく。

 

 

 

 出撃完了し、着地していくチーム・エストレージャの面々。

 全機の着地を確認するや否や、ジュゲムは通信を繋ぐ。

 

「さてさて全機、通信状態はどうか?」

 

 アスノは「大丈夫です」と、カンナは「感度良好です」と、ソウジは「言うまでもねぇ」と、ショウコ「バッチグーです」と、それぞれ伝える。

 

「このフィールドでは小細工を仕掛けるのは難しい。状況を見て、随時オレが指示を出そう。よろしいか?」

 

 四人から「了解」を聞き、ジュゲムは頷いた。

 

「よーし……それじゃぁまずはセオリー通りに行こうか」

 

 セオリー通り、という指示の下、ガンダムアスタロトブルームとプリンセスルージュが前に、そのやや斜め後ろ左右にガンダムAGE-Iとライジングガンダム、一番後ろ中央にダーティワーカーが控える、矢状陣形を整えて前進開始。

 

 そうして間もなく、この中で最も索敵範囲の広いダーティワーカーが、敵対機の姿を捉える。

 あちらも、アスノ達と同じような陣形を取りつつ向かってくる。

 

『ガンダムヘビーアームズ』の改造機に、『シュヴァルベグレイズ』、袖付き仕様の『ドライセン』、『ギラ・ドーガ』、少し色の違う『Gバウンサー』の五機。

 

 ガンダムヘビーアームズの改造機の機体銘は、『ガンダムアズールカノン』と言うらしく、HGACのガンダムヘビーアームズをベースに、『ガンダムヘビーアームズ改【EW】』の要素を組み込んだ機体のようだ。

 ジュゲムはその場でダーティワーカーを止め、捕捉状況を各機に伝える。

 

「ふむ……恐らくはドライセンとギラ・ドーガが前衛、足の速いシュヴァルベとGバウンサーがそのフォローに回り、指揮系統を統括するのがヘビーアームズってところかな」

 

 もう数秒もしない内に、双方の射程に入るだろう。

 距離が離れている内に、ダーティワーカーはビームスナイパーライフルを構え、戦闘にいるドライセンに狙いを付け、狙撃。

 

『狙撃?』

 

 しかし、不意を突かない射撃は反応され、ドライセンはビームを躱す。右肩を掠めた程度で、大したダメージにはなっていない。

 ダーティワーカーの狙撃を狼煙に、本格的な衝突が始まった。

 

 ギラ・ドーガがビームマシンガンを、シュヴァルベグレイズがライフルを連射して牽制、それに対してプリンセスルージュがマギアライフルを撃ち返し、ライジングガンダムもビームガンで応戦する。

 

 もう一方では、ガンダムAGE-Iとガンダムアスタロトブルームが、ドライセンとGバウンサーを相手取ろうとするが、その背後から、アズサのガンダムアズールカノンが後詰めに来る。

 

『墜させてもらうわ』

 

 ガンダムアズールカノンは両腕に備えたダブルガトリングガンを向けると、ガンダムAGE-Iとガンダムアスタロトブルームに凄まじい銃弾の嵐を撃ち込む。

 

「さすがヘビーアームズ、間近でみると火力やべぇな」

 

 ソウジはダブルガトリングガンの銃弾を掠めながらも、巧妙にやり過ごしている。

 

「呑気なこと言ってる場合じゃないって……!」

 

 アスノもシールドを使いつつも被弾を防いでいるが、それも長くは保たない。

 そうこうしている内にも、ドライセンとGバウンサーはそれぞれヒートサーベルとビームサーベルを抜いて近接戦闘に持ち込もうとするが、その側面からダーティワーカーが頭部バルカンでドライセンを牽制しつつ、100mmマシンガンでガンダムアズールカノンも牽制する。

 

「指揮官機はオレがマークしておこう。二人とも、そちらは任せるよ」

 

 ガンダムアズールカノンの相手はジュゲムが受け持つようだ。

 

「了解です」

 

「言った端からやられんなよ?」

 

 アスノは素直に応じ、ソウジは皮肉を交えて応じる。

 

「ドライセンは俺が。アスノはGバウンサーを頼むぞ」

 

「うん」

 

 ガンダムアスタロトブルームは、ドライセンへ向けてハンドガンを撃ちつつ、左マニピュレーターにナイフを抜き放って近接の間合いに持ち込む。

 

「先手必勝ォ!」

 

 ナイフを突き出すガンダムアスタロトブルームだが、ドライセンは巧みにヒートサーベルを振るってそれを弾き返す。

 

 火花と熱プラズマが鎬を削り合うもう一方、ガンダムAGE‐IとGバウンサーは、双方とも中距離の間合いを維持しつつ、ドッズライフル同士の応酬だ。

 相手からのドッズライフルを警戒しつつも、アスノは味方機の戦況を見やる。

 

 ソウジのガンダムアスタロトブルームは、重装の機体であるドライセンを相手に巧妙に立ち回っており、余程のことが無ければ負けることはないだろう。

 

 カンナのライジングガンダムとショウコのプリンセスルージュは、互いに連携しあってギラ・ドーガとシュヴァルベグレイズを寄せ付けないが、双方とも決め手に欠けて膠着している。

 

 アズサのガンダムアズールカノンと対峙するジュゲムのダーティワーカーは、積極的に攻撃はせずに回避を重点に立ち回っている。

 恐らくは、弾切れを狙っているのか。

 

 するとふと、Gバウンサーはドッズライフルを撃ちながらも距離を詰めてきた。

 シールドに備え付けられたシグルブレイドによる格闘戦を行うつもりだろう。

 今は目の前の相手に集中だ、とアスノは操縦桿を握り直した。

 

 

 

 100mmマシンガンで牽制しつつ、アズサのガンダムアズールカノンの注意を向けさせる、ジュゲムのダーティワーカー。

 ダブルガトリングガンの弾幕は距離を置くことでダメージを最小限で凌ぎ、時折発射されてくる肩部のホーミングミサイルは頭部バルカンで撃ち落とし、余裕があればビームスナイパーライフルでも反撃して見せる。

 そうして、ガンダムアズールカノンを他に向かわせないように、狡猾に立ち回っている。

 

『ここで足を止められるわけにはいかない……』

 

 すると、ガンダムアズールカノンはその場で上昇すると、両脚外側部に備え付けられたマイクロミサイルポッドを開き、全弾発射した。

 ダーティワーカーから見れば、まさにミサイルのシャワーだ。

 しかし、

 

「狙いが甘い?」

 

 対するジュゲムは、マイクロミサイルの弾道がダーティワーカーに向けたものにしては不自然であることに気付く。

 直後、ダーティワーカーの前方にマイクロミサイルのシャワーが叩き込まれ、何十もの爆発がアスファルトを吹き飛ばして爆煙を立ち昇らせる。

 けれどそれは、ダーティワーカーを撃墜するためのものではなかった。

 

「ははぁ、なるほど。しかしこれじゃ迂闊に動けないか」

 

 ジュゲムは、アズサの思惑を見抜いた。

 ダーティワーカーはシールドで爆風を防ぎつつ距離を取り、カンナとショウコに向けて回線を開く。

 

「お嬢さん方、敵指揮官機がそちらに向かっている。注意してくれ」

 

 ビームスナイパーライフルを構え直しつつ、ダーティワーカーは爆煙を突っ切りながらガンダムアズールカノンを追う。

 

 

 

 カンナとショウコは、ギラ・ドーガとシュヴァルベグレイズを相手に中近距離で競り合っていた。

 が、ジュゲムからガンダムアズールカノンがこちらに向かってくると聞かされ、攻撃の手を緩めざるを得なかった。

 

「アスくんとソウくんの方は大丈夫かなっ……?」

 

 ビーム弾と銃弾が襲い来る中、プリンセスルージュは左マニピュレーターに持つワルキューレを、ユニオンフラッグやAEUイナクトが持つ防御装備『ディフェンスロッド』の高速回転させて防ぐ。

 

「あのお二人ならきっと大丈夫です、私達は自分の心配に集中しましょうっ……!」

 

 ライジングガンダムもシールドで銃撃を防ぎつつ、頭部バルカンとマシンキャノンで反撃する。

 しかし、そこへガンダムアズールカノンの増援が到着してしまった。

 

『ここまでよ、カンナ!』

 

 ガンダムアズールカノンは両腕のダブルガトリングガンと、胸部のガトリング砲、合計六門による重機銃が猛火を噴く。

 

 この弾幕には堪らず、引けを取るしかないライジングガンダムとプリンセスルージュ。

 

 さらに、ガンダムアズールカノンは両肩装甲を開いて残ったホーミングミサイルを発射、その上からバックパックに懸架されていたキャノン砲を展開した。

 原典のガンダムヘビーアームズには無いオリジナルの装備だが、参考元は実は存在する武装である。

 

 これは、アニメ放送当時中に連載されていたコミック版『新機動戦記ガンダムW』に登場したガンダムヘビーアームズのバリエーション武装である、『キャノンパック装備』を参考にされたものだ。

 アニメにおける『ガンダムヘビーアームズ改』に当たる機体として活躍し、さらにこの装備で本編完結を迎えている。

 

 ホーミングミサイルがカンナとショウコを分断し、その溝を広がるようにキャノン――『ガイアントキャノン』の砲弾が撃ち込まれ、着弾した砲弾がアスファルトを捲りあげて炸裂する。

 

『もらった!』

 

 ガンダムアズールカノンの砲撃に便乗するように、ギラ・ドーガがビームトマホークを抜いてライジングガンダムに斬りかかろうとするが、その寸前に無防備な脇腹をビームが撃ち抜き、ギラ・ドーガは沈黙した。

 

 ギラ・ドーガ、撃墜。

 

「射程ギリギリだったけど、間に合って何よりだ」

 

 ギラ・ドーガの不意を文字通り突いたのは、ジュゲムのダーティワーカーだった。

 

 

 

 ソウジのガンダムアスタロトブルームは、依然としてドライセンとクロスレンジでの戦闘を続けていたが、それも終息に向かいつつあった。

 ドライセンの左腕部から連射される三連ビームキャノンを掻い潜りつつ、ガンダムアスタロトブルームはその大きく広がった袖の中へナイフを投げ放つ。

 ビームを発射しているそこを損傷されて爆発、ドライセンは左腕の肘から下を失う。

 

『くっ……生意気ィ!』

 

 ドライセンは怯まずに、背部からローター状の物体――『トライブレード』を射出、ガンダムアスタロトブルームを斬り裂こうと迫るが、

 ナイフを投げ付けた時点でウェポンセレクターを切り替えていたソウジは、ハンドガンを連射してトライブレードを撃ち落とす。

 その間にも、ドライセンはヒートサーベルを構え直して距離を詰めてくる。

 ガンダムアスタロトブルームはナイフに続いて、ハンドガンもドライセンへ投げ付ける。

 当然それをヒートサーベルで切り捨てるドライセンだが、そのために僅かながらの時間を稼がれていた。

 その稼いだ時間で、ガンダムアスタロトブルームはデモリッションナイフを抜いていた。

 

 瞬間、デモリッションナイフとヒートサーベルが激突するが、刀剣の質量差が違い過ぎたか、ヒートサーベルは半ばから圧し折られた。

 

『まずっ、い……!?』

 

 慌ててドライセンはバックホバーして距離を取ろうとするが、

 

「逃がすかよ!」

 

 そこは既にソウジの間合いだ。

 上段から振り抜かれたデモリッションナイフが、ドライセンの重装甲を一撃で粉砕する。

 肩口からコクピットに当たる部位を潰されたドライセンは、モノアイを弱々しく点滅させ、やがて沈黙する。

 

 ドライセン、撃墜。

 

「よっしゃ、一機撃破だ!」

 

 敵機撃破を確認し、ソウジはグッと拳を握る。

 

 ガンダムアスタロトブルームがドライセンを撃破した戦況は、アスノの視界にも見られた。

 

「ジュゲムさんとソウジが一機ずつ墜としたか。僕も負けてられないな」

 

 せめてこのGバウンサーだけでも、とアスノは攻めかかろうとするが、ドライセンの撃破を見て形勢不利を悟ったか、踵を返して飛び立ち、アズサのガンダムアズールカノンの方向へ向かう。

 

「逃さない!」

 

 アスノは操縦桿を押し上げ、ガンダムAGE-Iを加速させた。

 Gバウンサーは高機動タイプ故に足の速い機体だが、ガンダムAGE-Iの最高速度もそれに劣るものではない。

 両者は互いに牽制しながらも、混戦の中へ巻き込まれていく。

 

 

 

 ガンダムアズールカノンはなおもダブルガトリングガンを撃ちまくり、さらにシュヴァルベグレイズがそのフォローに回るため、カンナとショウコ、ジュゲムは攻めあぐねていた。

 ジュゲムは遠距離からの狙撃を試みようとするものの、シュヴァルベグレイズが付かず離れずの間合いを維持して狙撃を阻害するのだ。

 

 そこへ、互いにビームサーベルで斬り合いながらも、ガンダムAGE-IとGバウンサーが介入に現れる。

 Gバウンサーは僅か隙を突くようにガンダムAGE-Iを蹴り飛ばすと、その間にガンダムアズールカノンの元へ合流していく。

 

 ガンダムアズールカノン、Gバウンサー、シュヴァルベグレイズの三機が、並んで体勢を立て直す。

 

『数的不利ではあるけど、まだここから巻き返せる』

 

 冷静さを失わず、アズサは残る僚機に指示を与え、自機はやはりその場に留まって砲撃を敢行する。

 Gバウンサーとシュヴァルベグレイズの二機は互いに連携を取りつつ、ジュゲムのダーティワーカーを警戒するように立ち回る。

 

「なるほどなるほど、オレのことが厄介で仕方ない感じかな」

 

 執拗なまでに狙撃をさせないシュヴァルベグレイズを視界に捉えつつ、ジュゲムは操縦桿を不規則に揺らし、ダーティワーカーを左右にスラロームさせながらバックホバーさせる。

 何気なくやっているように見えて、実はかなり高度なテクニックである。

 後方を見ずにホバリングしながらそれが出来るのは、機体のバランスを熟知していなければ成し得ない。

 さらに頭部バルカンを散発させつつの攻撃だ、シュヴァルベグレイズはライフルで牽制しつつ距離を詰めていく。

 双方とも撃墜を狙える間合いではない。

 

 が、ジュゲム自身、ここで自分がシュヴァルベグレイズを撃破しようとは考えていない。

 

「しかしだな、そんなにホイホイとオレばかりを狙っていいものかな?」

 

『何を……』

 

 しょせんはハッタリだと、そう判断したシュヴァルベグレイズだが、

 気が付けば、ガンダムアズールカノンの援護が届く範囲から外れていた。

 

『しまっ、孤立した……!?』

 

「いいタイミングだ、コニシちゃん」

 

 孤立したシュヴァルベグレイズの背後から迫るのは、ショウコのプリンセスルージュ。

 

「こっちは数的有利だし、各個撃破は常套手段ってね!」

 

 プリンセスルージュはマギアライフルを納め、ワルキューレサーベルを両手に抜いて斬りかかる。

 シュヴァルベグレイズもライフルを捨ててバトルアックスを抜き、ワルキューレサーベルと打ち合いながらもワイヤークローで弾き返していくものの、

 

「ついでにこれはいかがかな?」

 

 ダーティワーカーはハンドグレネードを転がし、シュヴァルベグレイズの足元近くで爆破させる。

 直撃ではないがバランスを崩されて転倒してしまったところを、チャンス派のショウコが逃すはずがない、ワルキューレサーベルの一閃が、シュヴァルベグレイズを斬り裂いた。

 

 シュヴァルベグレイズ、撃墜。

 

 残るはガンダムアズールカノンとGバウンサーのみ。

 

 

 

 ガンダムAGE-IとGバウンサーが互いのビームサーベルで斬り合い、その後方からライジングガンダムとガンダムアズールカノンが撃ち合う。

 

 ビームサーベルと、時折シグルブレイドによる斬撃を織り交ぜて攻めたてるGバウンサーに、アスノはやや防戦気味、ガンダムアズールカノンの嵐のような弾幕に、カンナも苦戦を強いられる。

 

「アスノさんっ、『チェンジ』です!」

 

「チェンジ、了解……!」

 

 アスノとカンナの間で、作戦コードが交わされた。

 

 すると、アスノは操縦桿を押し出して、Gバウンサーに真っ向から突っ込む。

 対するGバウンサーも迎え撃つためにビームサーベルを振り翳そうとするが、その寸前にガンダムAGE-Iは、Gバウンサーにぶつけるように勢いよくシールドを切り離した。

 Gバウンサーはビームサーベルでそれを斬り捨て――残っていたシールドランチャーが爆発して爆煙を撒き散らす。

 

『目眩ましを!』

 

 爆煙を突き抜けるようにGバウンサーは前進し、爆煙を突っ切り――そこにガンダムAGE-Iの姿はなく、代わりにライジングガンダムが目前にいた

 

『な、なんでライジングが……!?』

 

 ガンダムAGE-Iではなく、ライジングガンダムがいたことにGバウンサーは思わず加速を止めてしまい、反射的にレーダーでガンダムAGE-Iを確かめようとして、それが致命的な隙を生んでしまった。

 

「行きますよッ!」

 

 カンナはウェポンセレクターを回し、輝く掌のアイコンが表示されたそれを選択した。

 

「私のこの掌が光って唸る!あなたを倒せと輝き叫ぶ!」

 

 すると、ライジングガンダムの右マニピュレーターに液体金属が塗布され、クリアグリーンの輝きを放つ。

 

「必殺!ラァイジングフィンガァァァァァーッ!!」

 

 カンナの凛とした裂帛と共に放たれたその必殺技――『ライジングフィンガー』は、Gバウンサーのバイタルバートを貫き、爆散させてみせた。

 

 Gバウンサー、撃墜。

 

 

 

 Gバウンサーを突破したアスノは、アズサのガンダムアズールカノンに肉迫せんと間合いを詰める。

 

『あとは私だけか……だとしても!』

 

 ガンダムアズールカノンは、残弾僅かのダブルガトリングガンを両方とも捨てると、右マニピュレーターをバックパックへ伸ばし、ウェポンラックに懸架させていた、ヒートダガーを抜き放つ。

 

「ダブルガトリングガンは打ち止め……反撃だ!」

 

 右マニピュレーターにドッズライフル、左マニピュレーターにビームサーベルを持ち直したガンダムAGE-Iは、ガンダムアズールカノンに迫るが、まだ相手の射撃武装が尽きたわけではない、ガンダムアズールカノンは胸部ガトリング砲とマシンキャノンを併用して弾幕を張る。

 ダブルガトリングガン二丁よりは弾幕は薄いが、それでも正面から受け切れるものではない。

 アスノは弾幕の前に迂闊に近付けず、中距離からドッズライフルによる射撃を行うものの、距離が空いている以上はガンダムアズールカノンも躱してしまう。

 だが、躱すために一度弾幕を止める必要がある。

 

「い、ま、だ!!」

 

 スラスターを炸裂させ、ガンダムAGE-Iは爆発的な加速と共にガンダムアズールカノンへ迫る。

 間合いに踏み込み、ビームサーベルを振るう。

 

『まだァァァァァッ!』

 

 ガンダムアズールカノンはヒートダガーでビームサーベルを弾き返し、

 

「(よく見たらこのフロントスカート、"カスタム"の方じゃないか!?)」

 

 アスノは、ガンダムアズールカノンのフロントスカートが、ガンダムヘビーアームズ本来のものではなく、ガンダムヘビーアームズカスタムの方であることに気づく。

 

 だとすれば、

 

『これで!』

 

 ヒートダガーの間合い――ほぼゼロ距離で、ガンダムアズールカノンはそのフロントスカートを開き、内蔵されたマイクロミサイルを覗かせた。

 

「!!」

 

 それに気付いたアスノの反応は早かった。

 操縦桿を殴り倒し、ガンダムAGE-Iは距離をつめ――そのタッチの差で、マイクロミサイルが放たれた。

 

 マイクロミサイルの爆風が、両機を包み込む。

 

「アスノさん!」

 

 最も近くにいたカンナが、アスノを呼ぶ。

 

 爆煙が晴れ――そこには、マイクロミサイルの直撃と、その爆発によって満身創痍のガンダムAGE-Iが、同じく満身創痍で仰向けに倒れたガンダムアズールカノンの喉元にビームダガーを突き付ける姿があった。

 

「僕の勝ちだ」

 

『……負けたわ』

 

 ガンダムアズールカノンはヒートダガーを手放し、続いて相手からのリタイアを告げるテロップが表示される。

 

 ガンダムアズールカノン、リタイア。

 

『Battle endnd.Winner.Estrella!!』

 

 

 

 バトルはチーム・エストレージャの完勝で決着。

 リザルト画面が流れる中、カンナのスマートフォンに、アズサからのビデオ通話の着信を告げる。

 

『お疲れ様、カンナ』

 

「お疲れ様でした」

 

『こうも見事にやられるとはね……悔しいけど、認めるしかないわね。やるじゃない』

 

「はい!私の自慢のチームです!」

 

 えへん、とスマートフォンを片手に胸を張るカンナ。

 

『そう言えば、カンナのチームは全員そこにいるのよね』

 

「はい、そうですよ」

 

『なら、あのAGE-1のバトラーは?ちょっと顔を見たいのよ』

 

「顔が見たい、ですか?」

 

 カンナは視線を画面越しのアズサから、一歩後ろにいるアスノに向けられる。

 

「アスノさん、アズサさんが顔を見せてほしいと」

 

「僕?」

 

 なんでまた、と言いながらもアスノは、カンナの差し出すスマートフォンを手に取る。

 

「もしもし?」

 

『これ、ビデオ通話なのだけど……あなたが、AGE-1のバトラーで間違いないかしら?』

 

「はい、そうです」

 

『敬語じゃなくていいわ。カンナと同い年でしょ?』

 

「あ、うん。それで、僕の顔が見たいって言うのは……」

 

『私を負かしたバトラーが、どんな人か確かめたいだけよ。もう知ってるとは思うけど、私はソノダ・アズサ』

 

「僕は、イチハラ・アスノ」

 

 互いに名乗ると、アズサは凝視するように目を細める。

 

『ふぅん……』

 

「な、なに、そんなに変な顔じゃないと思うけど」

 

『変な顔じゃないわ。ただカンナの初こ、……うぅん、これ以上言うのは無粋ね』

 

「えぇ……」

 

『もう大丈夫よ。カンナと代ってくれる?』

 

「あ、うん」

 

 アズサの言う通り、アスノはスマートフォンをカンナに返す。

 

「では、アズサさん。今日はありがとうございました」

 

『こちらこそ。私達のチームも、まだまだって痛感したわ。それじゃぁ、また今年の選手権でね』

 

「はい。負けませんからね」

 

『そのセリフ、そっくりそのまま返すわね』

 

 互いにそう告げあって、通話は終了。

 

「さーて、俺らのデビュー戦も会心の勝利を決めたことだし、これから初勝利祝いでもやるか!」

 

 背伸びしつつ、ソウジはこの勝利の祝宴を提案する。

 

「いいねソウくん!じゃぁあたし、この近くのケーキショップに行きたーい!」

 

 ショウコは便乗しつつ自分の希望を言う。

 

「ケーキ!お祝いにはピッタリですね!」

 

 ケーキショップと聞いて、カンナも目を輝かせる。

 

「おぉ、あそこだね。安くて美味しい、いい店だ」

 

 ジュゲムも反対することなく頷いている。

 

「アスノさんも、早く行きましょう行きましょう!」

 

「お、おー!」

 

 カンナに急かされるように、アスノも頷く。

 

「(今日のバトルは勝つことが出来たけど、アカバさんと戦うにはまだまだ足りない)」

 

 アスノは、今回のチーム・ブルーローズとのバトルで、自らの力量不足を感じていた。

 まだまだ、まだまだ高みを目指せる。

 そのための、AGE-Iの改造プランなども続々と思い浮かんでくるが、

 

「おーいアスノ!なにぼさっとしてんだー?」

 

「アスくーん!早く早くー!」

 

 少し前方から、ソウジとショウコに呼ばれる。

 

「(いや……今は今日の勝利を喜ぼう)」

 

 アスノは一旦その思考を置いておき、自分達のチームの勝利を喜ぶことに専念した――。

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