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えーちゃんがえーちゃんじゃないことを知ってから1週間がたち、4月下旬のある日。僕は今、旅館の大広間の奥の舞台の幕の裏で待機している。広間は座敷で大きな机の上に豪華な料理の数々が並べられている。舞台は座敷よりも一段高い位置にある。えーちゃんからは、「私が合図をしたら出てきてください」と言われている。
「すいちゃん推しです
それと、今日は皆さんに新しい社員を1人、紹介します。」
幹事として広間の奥の舞台に立ち、タレントたちを労ったり自分の人生談を語り「またその話ー?」なんて言われたりしているえーちゃん。ひと通り話し終えると、僕のことを紹介する流れになる。
「今年度の新入社員は大物ですよ〜?なんと言っても弁護士さんですからね!」
広間がざわつき始める。横どうしで新入社員がどんな人物なのかを想像しあっている。えーちゃんが幕の隙間から広間覗いていた僕に対して目配せで合図を送ってきた。
「それではご紹介します!新入社員の高野さんです!」
まばらな拍手を受け、えーちゃんのたっていた位置まで移動する。えーちゃんに舞台の中央とマイクを譲ってもらい、自己紹介を始める。えーちゃんは舞台から降りて自分の座布団に座り僕を見守るようだ。
「えーと、ただいまご紹介にあずかりました。新入社員の高野公助です。皆さんのマネジメントを担当させていただく予定です。あ、あと、司法試験に受かりましたけど弁護士ではありません。えとー…こんなところですかね。なにか質問とかあれは答えます。」
簡単に自己紹介を済ませ、言うことがなくなってしまったので目の前の皆さんに質問を募る。
「はい!!」
元気に手を挙げる人が1人。兎田さん、ときのさん、えーちゃん以外のタレントの素顔を初めて目にしているので誰かわからないので、とりあえず「どうぞ」と手を添えて質問をお願いする。立ち上がり話し始める。
「えっとー、あ、夏色まつりです!」
僕の思いを察してか、夏色さんが名前を言ってくれた。
「趣味はなんですか!」
お酒が回っているのか、テンション高めの夏色さんが元気に質問を投げてくる。今日はお酒は出ないそうなので外で飲んできたのだろうか。
「趣味は早朝のランニングです。朝は涼しくて気持ちがいいので。週2とかですけどね。」
「そうなんだ!まつりもねランニングするよ!ダンスレッスンの前にね!」
聞いてもいないのに答えてくれるまつりさん。「よろしくねー」と言いながら座布団に座った。
「よろしくお願いします、夏色さん」
「まつりのことは『まつり』って呼んでよ」
「わかりました、まつりさん」
そんな夏色さんに続いてほとんどの人が質問をしてくれた。そのおかげで顔と名前を一致させることが出来た。
さて、ここからが本番だ。3期生の皆さんを別室へ呼び出す。
「高野くーん、こんな所に私たちを呼び出してどうするつもりですか〜?」
「とても大事なお話があります」
「ま、まさか、ダメですよ。船長たち、出会ったばっかりなんですから…」
「違います」
「そんなはっきり言わなくても…」
別室へ呼び出すと、開口一番に宝鐘さんがしょうもないことを言ってきたのでばっさり切っておいた。僕は早速本題に移る。
「単刀直入に言います。潤羽さんをホロライブへ復帰させましょう。」
「へ?どういう…ことですか?」
「潤羽さん復帰を願う人たちの署名を集めて運営に対して直談判するんです。」
「るしあを復帰なんて無理ですよ…船長たちだって手はつくしたんですよ」
「そうだよ、あたしたちがどれだけ頑張ってお願いしても運営さんは聞き入れてくれなかったのに」
「今更だんちょたちの問題に首を突っ込まないで欲しいんだけど」
「手はつくした、頑張った…ですか。はっきり言わせてもらいますけど、元リスナーとしてはその努力、何一つ伝わりませんでしたけど?」
僕はあえて強めの言葉を選んだ。こんなことを言えばせっかく仲良くなれた皆さんと仲違いすることになるだろう。しかし、彼女たちの心を動かすためには必要だと思った。
「そんなことあんたたちの勝手じゃない!あたしのリスナーさんは仕方ないよって言ってくれてたんだよ!?」
「あーそういうことですか。初めから潤羽さんを助けるつもりなんてなかったと言うことですか」
「そんなこと言ってない!!」
「何が違うんですか!?現に今は何もしていないじゃないですか。」
「それはるしあには今の居場所があるからっ」
「逆なんじゃないですか?」
「…え?」
「ホロライブという、3期生という居場所が無くなったから自分で居場所を探して今に至るんでしょ?」
見透かされたことを驚くような顔をして、兎田さんを除く皆さんが次の言葉を発せないでいた。兎田さんはと言うと「るーちゃんのため、るーちゃんのため」と言いながら僕の暴言を堪えていた。
「今からでも遅くはないです。一緒に潤羽さんを助けましょう!皆さんの協力が必要なんです!」
「……船長たちの協力が必要なのに、あんなことを言うなんて…なかなか度胸がありますね。確かにるしあのためならまだがんばれそうですね。というか頑張らないといけませんね!」
その言葉を聞き、兎田さんの表情がぱーっと明るくなる。それに続いて不知火さんと白銀さんが頷き合う。
「あたしもやるよ。あんたの事はまだ気に食わないけど、それとるしあの事は別ってことにするよ」
「ありがとうございます」
「で、具体的には船長たちは何をすればいいんですか?」
「そうですね…まず、なんと言っても多くのメンバーの、出来れば全員の協力が欲しいです。なので皆さんで潤羽さんのことを伝えて協力を仰いで欲しいんです」
「わかった!そういうことならだんちょたちに任せて」
「あ、あと、これは3期生の皆さんで発足したことにして下さい。その方が協力が得られると思うので」
「わかりました、船長たちに任せてください。高野くんはどうするのですか?」
「僕は兎田さんと行くところがあるので」
兎田さんにはまだ言ってないけどね。兎田さんはなんのことかと首を傾げていた。
次の日
僕は兎田さんとドライブをしている。わけではない。
「この道で合ってますか?」
「合ってるよ。次の信号右ねー」
今は宇田さんみたいだ。僕は宇田さんに案内されて潤羽さんの家に向かっている。彼女にも昨日のことを伝えるためだ。30分ほど運転すると、あるマンションの前で車を停めた。
「ここだよ。るーちゃんはここの702号室に住んでるよ」
どうやら宇田さんはよくここに来ていたようで、エントランスのロックの番号をささっと入力するとスタスタとマンションへ入っていく。
「おいてくよー」
「待ってくださいー」
手馴れた様子であっという間に潤羽さんのいる702号室の前まで僕を案内してくれる宇田さん。702号室の前に来るとインターホンをおす。少ししてインターホンから声が聞こえてくる。
「はーい、どちら様ですかー?」
「蒼子でーす」
「今開けるよー」
プチッという電子音の後、通話が切れる。数秒後、玄関が開けられる。
「いらっしゃい。あれ、今日はひとりじゃないの?ていうかその人だれ?」
「中で話すよ。とりあえず入れて」
「わかった。どうぞ」
3LDKの潤羽さんの部屋、そのいちばん大きなDのダイニングのソファに僕と宇田さん、潤羽さんが向かい合う形で腰をかける。潤羽さんが出してくれたお茶を一口すする。
「えとー、うるh…」
「羽美」
「え?」
「『花咲 羽美』です」
「あ、はい。じゃあ花咲さん、ホロライブに戻ってきて貰えませんか?実は今、あなたをホロライブに復帰させるためにあるプロジェクトを進めているんです」
「無理です」
「即答ですか。分かっています、あなたが以前の名前でまた活動を始めたことは。ですが、やはりあなたがいないと3期生は物足りないんです!」
「それだけですか?」
「え?」
「あれだけバッサリと私のことを切り捨てておきながら今更、しかもその程度の理由で私が納得するとでも?」
「みーちゃんお願い!戻ってきて!またとないチャンスなんだよ?!」
「無理なものは無理です。今日のところは帰ってください」
「みーちゃん!」
「ごめんね、あおちゃん。また遊ぼうね」
ガチャン
部屋から追い出されてしまった。取り付く島もないというやつだった。でも
「みーちゃん、『嫌だ』とは言ってなかった。それに今日のところはって…。私、諦めたくないよ!高野くん、また来よう!」
宇田さんは諦めていないようだ。僕もそう易々と諦めたくない。それにいいことを思いついた。でもこれは最終手段として取っておこう。
「そうですね!また来ましょう、僕もまだまだ諦めませんよ!」
「どうして今更……。ぺこら」
潤羽るしあこと花咲羽美は揺れていた
いよいよクライマックスですね!
そんな感じではないかもですが…
最終手段とは…!
乞うご期待ということで
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