緊迫した空気の中、最初に動いたのは冒険者たちだった。
「よくも、よくもエヴァさんを!あいつだって弱ってるんだ!囲んじまえ!」
「ああ、それに、こいつを倒せば報奨金が出るんだ!こいつを殺して、その金で墓でも立ててやらねえとやり切れねえよ!」
殺気立った冒険者たちが各々の得物を片手にじりじりとキメラメデュラハンに近づいていく。
そこで、爆裂魔法で俯いていたキメラデュラハンが哄笑を始めた。
「ふふふ、あははははははははははは!!まさか、配下を全滅させるどころか、私自身すら痛手を受けるとはね。……残念だけど、私の蛇たちも伸びてしまって、しばらくは石化もできそうにないわ……でも、それだけで勝てるとは思わないことね!」
「はんっ!石化が使えないなら楽勝じゃねーか!いくら幹部っつっても背中に目はついてねーんだ!囲んで袋叩きにしちまえ!」
そんなフラグみたいなことを囲んでいる冒険者の一人が言うと、それを合図に冒険者たちが一斉にキメラメデュラハンに殺到する。
そして、それと同時にキメラメデュラハンは自らの頭を思いきり放り投げた。その頭は常に地面を見ながら上空を飛翔する。
……、いや、まさか!
俺はキメラメデュラハンの意図を悟り、慌てて声を張り上げる。
「やめろ!」
しかし、その思いは届かず、幹部に襲い掛かった冒険者たちの攻撃は、空しいほどにすべて躱されそして、かわりにキメラメデュラハンの持つ剣が冒険者たちに振る舞われる。
「……え?」
そんな間抜けな声が、冒険者たちの最後の言葉となり、先ほどまで動いていた冒険者は数十のさっきまで生きていた肉片に姿を変えた。
その光景に、冒険者たちに沈黙が走る。イリアスの攻撃を耐え、最強の攻撃魔法である爆裂魔法の一撃でさえ致命傷にならなかった。これ以上、どうすればいいのだろうか。
そんな絶望的な状況に、ゆらりと、水色が戦場に現れた。
「私は、環境を汚す人間を、本当はそこまで好きではなかった。そう思っていた」
皆より、一歩前に進み出たエルは、しかしすぐにその歩みを進める。
「次はあなた?」
「だけれど、あなたのやったことは、許せない」
かみしめるように言った言葉の後、まるで援護射撃のように後方から少女の声が響いた。
「あんたなんか!ミツルギ様が来たら一撃でやられちゃうんだから!」
「そうだ!時間稼ぎさえできれば、俺たちの勝ちだ!」
……いや、ちょっとまて、今なんて?
ミツルギ、ミツルギって言ったか?
俺はだらだら冷や汗を流しながら、何も握っていない自分の手を見つめた。もしかして、俺は反撃が可能だったはずの作戦を一つ潰してしまっていたのだろうか?
焦りながら周囲を見渡すと、イリアスはエルを無視して真剣な顔で切り捨てられた冒険者たちを検分していた。……何してるんだあいつ。いや、今はあいつを気にしている場合ではないだろう。
イリアスのことはともかく、エルは歩みを止めず、キメラメデュラハンの前まで進み出た。
「お手合わせ願おう」
「私こそ、あなたみたいな騎士となら喜んで」
そう言って、緊張感が際限なく膨らんでいく。先ほど挑んでいった冒険者だって無手ではなかった。重厚とは言えないまでもしっかりとした鎧を見に纏っていたはずの冒険者たちがなすすべもなく剣の一撃で両断されたのだ。常々耐久力には自信がある、と言っているエルでも、どれだけ太刀打ちできるのかは未知数だ。
「……カズマ、不安そうな顔をしないで、気が散るわ。安心しなさい。私はスライムの中のスライム。その耐久性においても、生命力においても、最高位に位置するのだと教えてあげる」
そう言うと、エルは剣を振りかぶり、そして振り下ろした。……キメラメデュラハンの近くの地面に。
「……は?」
「……///」
やだもう、動かない的ですら外すなんて。しかもそれが俺のパーティメンバーとか。
若干恥ずかしそうにしながらも、こんなの日常茶飯事ですよ。的な雰囲気を醸しながら、更にエルは前進し攻撃を加えた。
が、やはり盛大に外した。
「……ふん、所詮こんなものなのね。いいわ。死になさい」
何度振るわれても自分に当たらない剣にあきれを通り越し興味を失ったのか、無造作に剣を振りかぶり、エルに向けて振り下ろした。
「エル!」
「ふん、あっけな……は?」
再びキメラメデュラハンの口から漏れ出た声の示す通り、エルの身に纏っているスケスケの服には小さなほつれしか見受けられなかった。
「え?あ?何この服。私の剣でちょっとほつれるくらいとか。え?装備の質が伝説級の装備だったりするの?いや、でも」
それを見て、俺は声を張り上げた。
「デュラハンの攻撃はエルが受け止められる!魔法使いたち、とにかく攻撃をするんだ!」
俺の言葉で魔法使いたちが詠唱を開始する。
「……カズマ」
そして、火や水が飛び交う中、イリアスが俺に話かけて来た。ちなみにたまもは安全な場所に移動済みだ。
「イリアス?どうした」
「はっきり言いましょう。このままでは勝てません」
それを聞いて、俺は反論しようとするが、エルに攻撃を加えながらも攻撃を受け続けて耐えきっているキメラメデュラハンを見て口をつぐんだ。
「……で?どうするんだ?逃げれるもんなら逃げたいが、そんなことができそうな感じでもないぞ」
「私が、奥の手を出します」
「……できるのか?たまもの爆裂魔法でも無理だったんだぞ?」
イリアスはそれを聞いて、少しの不安を拭い去る様に微笑んで宣言した。
「私を誰だと持っているんですか?偉大なる創世の女神、イリアスですよ!」
「なら、信じる。その奥の手とやら、使ってくれ!」
それを聞いて、イリアスは大きく頷き、そして、小さくつぶやいた。
「……もし、私が私でなくなったら、あなただけでも逃げてください」
「え?」
イリアスのそんな声に思わず振り向くと、既に詠唱の準備に入ったイリアスの姿があった。
「仮身に問わん、悠遠の刻、我が身を縛りし星霊の箍、日輪の聖光にて焼き尽くさん」
そして、カッと目を見開き、最後の一言を絞り出す。
「我が仮身よ、ここに在れ!」
そして、莫大な落雷と共に姿を現したのは俺があの神聖な空間で見た大人のイリアスの姿だった。
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「仮身に問わん、悠遠の時」
私は自らの枷、六祖封印を解くための呪文を詠唱する。
「わが身を縛りし星霊の箍」
その身を縛る巨大な力がほどけ、自分以上の大きな存在がおりてくるのを感じていた。
恐怖はある。私は私であって私ではない。ただの分け身が分身とはいえ本体の意志に逆らえるわけもない。
伝えることができるのは、私の体験と経験だけ。はっきり言って私は自分を信頼なんてできない。
「日輪の聖光にて焼き付くさん」
だから、私の意にそわない形で、私は暴走してしまうのかもしれない。
だから、カズマ。せめて、せめてあなただけでも生き残れるように……。
「我が仮身よ、ここに在れ!」
久々にすっきりした頭に、私は一度頭を振ります。
あぁ、本当に久しぶりの感覚です。力がみなぎり、思考が冴えわたるこの感覚。解放の瞬間に力がほとばしり、雷となっていくらか落ちてしまいましたが、まあいいでしょう。
さて、それでは、
モ ン ス タ ー 娘 を 根 絶 や し に し ま し ょ う か。
私はこれから味わえる愉悦に、思わず笑みをこぼすのでした。
邪神がINしました。
中ボス戦を攻略するためにラスボスを顕現させる愚行よ。
因みに、イリアス様が唱えた解呪の詞はイリアス様オリジナル。しかもあえて真身じゃなくて仮身を召喚してる。まあ、六祖封印されてるのがそもそも仮身だからだけど。
これでも大本のイリアス様と比べたら実力の1割も出せてないってマジ?
気が付いたらお気に入りが100を超えていました。
2~3話前は、一巻分超えたあたりで来るかな、と思っていたので結構うれしいです。
あと2話くらいで1巻分が終わりますが、ちょっと読者の皆さんにもご意見を頂きたい&機能を使ってみたいので、アンケート機能を使ってみようと思います。
変更点
・冒険者が取り囲んだ時点で被害者が出ている。
・爆裂魔法に魔王軍幹部が巻き込まれている。
・クルセイダーが魔王軍幹部に挑む理由が少し違う。
・女神がラスボス化する。
このすば原作1巻終了時に、モンむすクエスト側(主にクエ世界にいる大本のイリアス様)の閑話が欲しいかどうかについてのアンケート。
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欲しい(本体イリアス視点)
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欲しい(ルシフィナ視点)
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別にいらない