この素晴らしい世界にもんむすを!   作:邪魅魑

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EX1 純白の翼と蒼の瞳

「…………

 正攻法で行くなら、シルフとノームの二段構えが定石でしょう。

 シルフはあえて外し、強力な剣技で速攻を掛けるというのも悪くないですね。

 では行きなさい、勇者ルカ。

 魔の大陸のモンスターは強力ですが、決して負けてはなりません」

 

 そこまで言い、ルカを送り返して私は一つ大きなため息をつきました。

 流石に創世の女神、唯一絶対の神として君臨する私、イリアスと言えども時空を捻じ曲げ時を遡るためにはそれ相応の労力を掛けなければなりません。

 まあ、それも矮小な人間に例えるならば、細い木の枝を手折る程度の手間ではありますが……。

 

「ちょっと、あんた聞いてるの!?そもそも私がこんなことになってるのは……!」

 

「聞いていますよ、アクア。それで、結局何を求めているのですか?」

 

 ……唯一絶対の神、というのは誤りでしたね。正確に言えば、この世界においては唯一絶対の神。というべきでしょう。何しろ事実としてここに……神らしくないとはいえ、一応神としてあがめられる存在がいるのですから。

 

「だから!私がもう一回地球担当の神になれるようにして欲しいの!?」

 

 そう言うアクアに、私は困ったように言葉を返す。

 

「だから、それに関しては私にはどうしようもないと言っているでしょう?そもそも、私はあなたに会うまで他の神には……一人の例外を除き出会ったことがありませんでしたし、他の神と関わる気はありません。他の神に認められることが地位が高い証明であるというのであれば、あなた以外に認識されていない私は、不本意ながらあなたよりも下位の神ということになるでしょう」

 

 尤も、アクアの持つエネルギー量から言って実力という意味の神格では私の方がはるかに高いのでしょうけれど。

 

 そう考えていると、アクアは悪い顔をして私に耳打ちしてきた。

 

「そこでよ、イリアス。あんたって結構デキる神様でしょ?神の集会に出ても結構いい所行けそうな気がするのよ!だから、私の紹介ってことであんたを神様の集会に連れて行って、そこであんたが私達神々のトップになる!そして、紹介した私もついでに昇進!もう一回地球担当に返り咲くっていうのはどうかしら?」

 

「……ほう。なるほど」

 

 確かに、アクアの実力程度の神々が殆どなら、掌握するのはあまり手間もないかもしれませんね。そして、神を掌握すればその世界を掌握するも同然。それは即ち、今後復活する可能性のあるアリスフィーズに対する対策とするもよし、創世計画を行い、複数個所で実験を並行することも可能になる……。

 

「え?ちょ、イリアス大丈夫?なんだか悪魔が乗り移ったような顔してるわよ!ターンアンデッド!ターンアンデッド!」

 

「……何をしているのですか?」

 

 ふと気が付くと、アクアが浄化魔法を連打するという奇行を行っていました。

 まあ、とりあえず神々に喧嘩を売る前に、少し情報収集をするとしましょう。

 

「アクア、一つ質問なのですが、それは本当にうまくいくのですか?もちろん私は自身が力ある存在であると自負していますが、それでもまともな神と言える者にはあなたとしか会ったことがありません。それに……ここだけの話ですが、この世界で私と敵対した邪神、アリスフィーズは私と対等に渡り合いました。故に、私は自身を精強だと自負はしていますが、無敵だとは思っていません。そちらの神々の実力如何によっては、目的の達成に支障をきたすのではないですか?」

 

 そう聞くと、アクアは指を下唇に当て、上を見上げながら答えた。

 

「えーっと、一応言っておくけど、私はそんなに戦い得意じゃないし、まだ神様としては若い方だから、具体的に何番目とかは分からないんだけど、少なくともイリアスの雰囲気的にはバトル大好きっていう脳筋連中と対等に戦える雰囲気はしてると思うわ!そう言う神様は基本的に他の神様に仕事丸投げしてるし、統治もしっかりしてるイリアスとは雲泥の差ね!つまり総合力的には一番ってことよ!」

 

 それはつまり、実力行使するには自分と同等の相手を薙ぎ払っていかなければならないということ。

 

「……そうですね、アクア。申し訳ありません。今現在は、この世界でも勇者が魔王を倒そうと冒険を続けている大切な時期です。少し手が離せません。……どうでしょう?私の世界が落ち着いてから、その神の集会とやらに案内してくれませんか?」

 

 流石に創世計画を並行して進めながらなんとかなる程容易い相手ではなさそうなので、私はひとまずそう告げます。それに、うまく事が進めば、私は更に力を付けているかもしれないのですから、万全を期すためにも今は見送った方が良いでしょう。

 

「あら、そう?分かったわ!また、行きたくなったら言ってね案内するから!」

 

 そう言うと、私が手慰みに出したゴルドワインをもって青髪の女神はその姿を消しました。

 

 それと同時に、一人の天使が姿を見せます。

 

「何なのですか!あの態度は!あれが女神?ただの破廉恥で、実力も分からない馬鹿な女ではないですか!イリアス様!私に一言、消せと命令してくれればあんな女!」

 

「口を慎みなさい、エデン」

 

 私が一にらみするとエデンは息をのんでその口を閉じる。

 

「主人の客人にそんな暴言を吐くなど、あなたは私の忠臣、熾天使の自覚があるのですか?そして、アクアの話を聞いていなかったのですね?彼女の知り合いには、私に伍する存在がいるのですよ」

 

「お言葉ですが、あの女の大言壮語なのではないですか?イリアス様に伍する者がいるなど」

 

 その言葉に、私は頭を抱えてため息をついた。

 

「この世界でさえアリスフィーズという私に比肩しうる存在がいたのです。なぜ他の世界の神が私に伍する実力がないと断言するのですか……まあ尤も、私も他の神々が私に匹敵する存在だとは思っていません」

 

「ならば!」

 

 エデンのその言葉に、私は更にかぶせるように言葉を続ける。

 

「ですが!私に傷をつけうる存在であることは十分に考えうることでしょう?我々は先の聖魔大戦で、邪神率いる六祖に苦しめられました。邪神の眷属でさえ、私を、神を殺しうる存在になりえたのです。況や神ならば、確実な神殺しも可能でしょう。

 そして、アクアは組織に属しているようです。組織を構成するほどの神の集団。そしてその中に存在する戦いに長けた神も、まあ相応の数がいるでしょう。一人一人は確かに私に勝てないでしょう。ですが、集団で襲ってこられたら?六祖を超える実力者が10人も20人も襲ってきたならば……口惜しいですが、現在の私では滅ぼされるしかないでしょうね」

 

「そこまで考えて……失礼しました」

 

 エデンを言い負かし、そこでふと、私は一つの事象を思い出しました。

 

「そう言えば、今日はあの世界の私は帰ってきていないのですね?いったい何をしているのでしょうか」

 

 水の女神を名乗るアクアが関わっていた世界。私はその世界で今、転生をつかさどる神として活動をしています。とはいえ、流石に世界をまたいで存在し、仕事をするのは不可能。そのため私は自分の力の一部……具体的に言えば、別に戦闘をするわけではないため、戦闘面は控えめに、事務能力や神の権能に多くを振った分身をその世界に派遣していました。

 

 その分身は世界をまたいでいるため、常時意識を共有することはできないけれど、それでも一日に一度……向こうの世界で言えば10~12日程度に一度はこちらに戻ってきて意識を共有していたのだけれど……。

 

「そろそろルカが魔王城に入りますし、そうすれば創世計画が始動する可能性がありますから、もしかしたら意識共有できるのも今日を最後に暫くはできなくなるかと思っていたのですが……」

 

 私は少し考えて、先ほどから変な顔で固まっているエデンに目を向けます。

 

「そうです、エデン。向こうの世界の私の様子を見てきてもらえませんか?それと、伝言を頼みます。そろそろルカの魔王討伐が大詰めになるので、雑念を抱きたくありません。しばらくは……そうですね創世計画が始まった時のことを考えればそちらの世界で一年程度でしょうか。それくらいの間は、そちらの世界での活動に終始してください、と」

 

「はい!分かりました!」

 

 そう言って嬉しそうに走り去っていくエデンの後ろ姿に、私はなぜか不穏なものを感じながらも、今度こそ巨大な竜に打ち勝ったルカの姿で、その不安を拭い去ったのであった。

 

~~~~~~~~~~~~~~

「全く、イリアス様は心配性なのですから。イリアス様なら、たとえ他の神々であっても容易に打ち破れましょうに」

 

 エデンは、イリアスが用意している次元のはざまに向かいながらそんなことをつぶやいていた。……そんな考えだから下々の天使にも馬鹿にされるんですよ……。とどこかの研究気質の天使が聞いていれば突っ込まれそうな独り言だったが、幸いなことに現在の彼女の周りには誰もいなかった。

 

「さて、それでは、ここをこうして……っと」

 

 現在イリアスは魔王城に突入する勇者に注目しており、それ以外の大規模作戦も進行中である。にもかかわらず、一応、立場上は天界に残った唯一の最高位天使にして、イリアスや天使以外の実力ある部外者を除けば最高位の戦力であるエデンを、イリアスが異世界に向かわせたのは、決して近くにいたからという理由ではない。

 

 何だったら、この考えなしに舞台を引っ掻き回されたら厄介だからと厄介払いされたということも……少なくとも主目的ではない。

 その理由は、熾天使の生み出され方が関係している。天使の最高位、熾天使とはイリアスがその身を削って作った存在。つまり熾天使であるエデンの構成要素には、イリアスの成分が色濃く残っており……それは即ち意識と構成比重こそ違うものの、異世界を任せることになった分身体にきわめて酷似した製造方法で作られた存在ということだ。

 

 そして、分身体イリアスのために作られたこの時空のはざまは、余計な影響を世界に与えないよう、通常時はイリアスの聖素によって封印されている。それを通り抜けられるのは、同じくイリアスの聖素と同じ性質を持つ存在だけだ。

 

「さて、それでは、行きますか!」

 

 そう言って飛び込んだ先にいたのは、弓を携えてこちらに構える少女の姿だった。

 

「……なんだ、エデンですか」

 

「る、るるるるるルシフィナ!?」

 

 エデンは予想外の相手の登場に慌て、槍を構えることもせずに無造作にルシフィナに近づいていく。

 

「い、一体何をしているのですかこんなところで!と、いうか、あなたは人間としてはやり病に罹り死んだはず!」

 

 驚愕と、そしていくらかの憎悪を向け詰問するエデンに、しかしルシフィナは動じずに弓を引き絞る。そして、射撃。

 狙いは過たずエデンの服に突き刺さり、床にエデンを縫い留めた。

 

「こちらもいろいろあったのですよ。エデン……とはいえ、私はあなたの知っているルシフィナとは、正確には別人なのですけれど」

 

 ルシフィナはそう言うと、エデンの槍を取り上げ、魔方陣を浮かび上がらせる。

 

「いま、あなたの探しているイリアス様はいろいろと重なって、異世界に力を失った状態で転移しています。助けられるのは、あなただけですよ」

 

 そう言って、魔方陣を指さした。

 

「私は、イリアスの味方というわけではありません。もしも行くのなら、あなたが起動させてください」

 

 エデンはノータイムで魔力を注ぎ、すぐさま転移されていった。

 

「……流石に熾天使一人分の魔力は過剰な魔力になりますね。しかし、これで時間が稼げるはず……。イリアス、カズマ。あなた達に幸あらんことを。そして……」

 

 そう一言呟いて、ルシフィナは再び下界へと視線を向けるのだった。




 イリアス様視点です。ルカ君は中章終盤まで行っています。つまるところ、本体イリアス様は今後創世計画で手いっぱいになるので動けなくなります。

 エデンさんは六祖封印こそされていないものの、聖素を極限まで吸い尽くされて弱体化しています。簡単に言うと、ぱら本編の結解によって極限まで消耗した裸エデンくらい追い詰められてる状態です。何だったらルシフィナが徹底的に搾り取る術式を組んだので裸エデンさんよりも限界かも。

 ルシフィナさんはクエラストに出て来た思念体ルシフィナさん……ではありませんが、性格としてはそれに近いものがあります。
 智の同盟とかに参加してる可能性すらあります。

PS ci-en様より、とろとろレジスタンス様の続報がありましたね。
七大天使&六祖の人間?関係相関図。ちょっと笑いました。

 天使勢は仲いいけど、六祖はほぼ敵やん。こんなもん。

 恐らくみんなをまとめたい沙蛇、主導権を握りたい玉藻、それを横目に見ながら邪神のために動く魅凪、
 その下で自分と自己種族のこと以外は興味がない禍撫と、植物族のトップという誇りを過剰に持っている華音、強ければだれでも捕食対象の蛭蟲が三つ巴になってる、と。

 さてはクエ世界でも実質的に動いてたのは上の3人だけだな?

 そして、ルシフィナさんの超絶バッシングに見逃しそうになるけど、ルカのおばさん!あんた完全に天使たちの事部下としか見とらんやん!いや、もちろん部下ではあるんだけどすごく私生活が充実してないキャリアウーマン感が透けて見えるというか。

 禍撫さんをエルベディエの親族として出そうとも思わんでもなかったけれど、ちょっと考えものかなぁ。
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