この素晴らしい世界にもんむすを!   作:邪魅魑

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EP22 カズマは金欠だ

「……金が欲しい!」

 

 俺は血反吐を吐く気持ちでそう呻いた。

 金が欲しい。しかもそこそこ大きい額が欲しいのだ。

 

 冒険者ギルドの机に突っ伏し、俺は頭を抱える。

 

「カズマ、いつまで俯いているのですか?あなたは、この私、イリアスが認めた勇者なのですよ?顔を前に向けなさい。そして、魔王を倒すのです!」

 

 俺はそう宣う女神さまを見つめる。

 

「なあ、俺が何でこんなに打ちひしがれてるか分かってるのか?」

 

「……自由にできる資金がないのは確かに悲しいことです。ですが、それでも、稼いでいけばいいではないですか!私も……くっ!一日にパフェ一個で食事は我慢しますから」

 

 それを聞いて、俺の中の何かのスイッチが入った。

 

「自由にできる資金!?馬鹿言ってんじゃねー!自由にできる資金どころか、本来なきゃいけない資金までどっかの誰かさんが作った借金のせいでクエスト報酬から容赦なく天引きされていくんだよ!そろそろ冬だぞ!今朝なんて、朝起きたらまつげが凍ってたんだぞ!?ほかの冒険者ももう宿を取って寝泊まりしてんだよ!このまま本格的な冬になったら、俺たちは凍死待ったなしだ!あぁ、違うな、女神パワーだか何だか知らないが、イリアスは寒冷地でも大丈夫だもんな!?自分だけ安全地帯で高みの見物ですか!?あぁ!?」

 

「……言わせておけば!そもそも、借金の原因となったあの奥の手も、あれが無ければキメラデュラハンを倒すことは不可能だったでしょう?それとも、カズマにはあれを何とかする方法が思いついていたのですか?ないでしょう!?ないのですよね?それでよく私に意見しようと思いましたね。流石は女心どころか物事の理非も知らないチンパンジー童貞野郎様ですね!」

 

 その言葉を聞いて、俺もヒートアップする。

 

「ばっ!ど童貞じゃねーよ!というか、その時は俺のスティールが炸裂したさ!爆裂魔法も直撃してたし、首さえこっちが抑えてれば勝ち目はあったはずだ!」

 

「やはり運頼みではないですか!しかも直撃した爆裂魔法というのも私を囮にして放ったものでしょう?あなたの功績など、ないに等しいことをことさらに自慢されても……」

 

「……あぁ、そうかい分かったよ!確かに今回はイリアスの功績が大きいかもしれないな!ならあの時の報酬も手柄も借金も全部あんた一人の物ってことで良いんだな!もう俺は何も言わないから、ちゃっちゃと借金返してこい!」

 

「……!ちょ、それは卑怯です。……その、私にも非があったことは認め……認めますから!だから帰ろうとしないでください!」

 

 そんな風にギャーギャーやっていると、エルとたまもが姿を現した。

 

「全く、朝からうるさいわね。ギルドの皆も注目を……あら、あまりしていないわね。もう日常になってしまったってところかしら」

 

「二人とも、えらく早いのう。いい依頼は見つかったかの?」

 

 そう言いながら俺たちの向かいに座る二人に、俺は首を横に振った。

 

「いや、まだだ。どうせ皆あんな感じだし、皆集まってから依頼を探しても変わらないと思ってな」

 

 初心者冒険者たちの拠点にして始まりの街、アクセルに住む冒険者は決して強い冒険者ではない。そして、冬という季節は、雪や寒さという厳しさとは別に、出現する魔物たちが非常に強くなってしまうという厳しさがあった。そのため、この時期にはあまり依頼を受けずに宿を取ってゆっくりする冒険者が多いのだ。

 しかも、今回は魔王軍幹部の討伐報酬が参加した冒険者を始めとする人々に配られている。

見れば、朝っぱらから酒を飲んでいる冒険者もいるくらいで、ひと冬を越すくらいなら十分に足りる金額を持っているのにわざわざ依頼をこなそうとする冒険者なんて、少なくともこの街には存在しないようだった。

 

 と、いうわけで掲示板はほぼ選び放題なわけだが……。

 

「やっぱり、報酬自体は高いが、本気でろくなクエストがねえな」

 

 

 冬ごもりのために、アルラウネたちが活発になっているため鎮静化させてほしい。一株鎮静化するごとに5万エリス。完全に鎮静化させれば追加で報酬100万エリス。

 人里にシロクマ娘が迷い込んでしまった。ダンジョン内にある彼女の故郷まで追い返してほしい。報酬100万エリス。※シロクマ娘の故郷は3000m級の霊峰の中腹です。

 アルラウネの密集地とかやばいだろ。この人数だと確実に人手が足りない。

 シロクマ娘は……まあ、迷い込んでしまった、とかあるしもしかしたら道案内だけでいいのかもしれないが、そもそも3000m級の雪山に登るのが厳しすぎる。

 

 

 

「お、民家に入り込むスライム娘たちを追い出してほしい、報酬は30万エリスだが、これなら」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……カズマ」

 

「はい」

 

 俺はそっとクエストの紙を元に戻す。決して、決してエルの威圧感に屈したわけではない。民家に入り込んだなら、それはスライム娘たちが悪くない?とか思ってない、思ってないったら思ってない。

 

 と、紙を戻す際に、スライム娘の依頼の後ろに隠れるように張ってあった依頼を見つけることができた。

 

「……そう、あそこの森のスライム娘たちね、これは私が対応しておくわ」

 

「あぁ、そう。ところで、この凍えるちいぱっぱの討伐って言う依頼があるんだが、凍えるちいぱっぱってなんだ?アホっぽい響きだが」

 

 ……結局スライム娘はエルが何とかするらしい。なら威圧するんじゃなくて依頼受けろよ。と思わないでもないが、イリアス曰く”クイーン”スライムらしいし、冒険者としてではなくスライムとして何とかするのかもしれない。

 気を取り直して仲間の方を見ると、たまもが世話好きの血をたぎらせたのか、やたら嬉しそうに解説してきた。

 

「うむ♪ちいぱっぱというのは、簡単に言えば精霊未満の力の塊、と言ったところじゃのう。正確に言えば精霊ではあるのじゃが、自我も薄く力も弱いゆえ、一般的に精霊としては数えられておらん。

 そして、冬場に現れる凍えるちいぱっぱはちいぱっぱの中でも氷属性の力が集まったものでのう。一匹倒せば半日冬が短くなると言われておるのじゃ」

 

「そいつって強いのか?」

 

「強いわけあるまい?自我も力も弱いからこそのちいぱっぱじゃぞ?そりゃ、普通のよりは冷やっこいが、それだけじゃ。その依頼を受けるのかの?うちは構わんぞ」

 

 目線を向けるとイリアスとエルも頷いて同意を……いや、なんかエルの顔がやや強張っているのだが。大丈夫なんだろうか。

 

 とにかく、俺たちは凍えるちいぱっぱ討伐に出発したのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 街から少し離れた平原地帯。他の場所より少し離れたそこには、鳥よりは虫に似た軌道で、薄黄緑色の小さな影がふわふわと浮かんだり、飛び交ったりしていた。

 

「ちいぱっぱ!ちいぱっぱ!」

 

「ちいぱっぱ!ちいぱっぱ!」

 

「…………」

 

 なんか妙な声をあげているが、まさかこれが討伐の理由ではあるまい。

 討伐すると一匹ごとに半日冬が早まるらしいし、早く春が来てほしい金持ちが依頼を出しているのかもしれない。

 

 まぁ、このちいぱっぱ討伐で、なぜ高額な報酬がもらえるのかというのも気になるものではあるのだが、他に気になることがある。

 

「なあ、もしかして、エルって寒いの苦手なのか?」

 

「……っつ!大丈夫。子ども達を置いて私が帰るわけにはいかない!」

 

 エルは見た事ないほどもこもこの服を着こんでこの冒険に臨んでいた。もちろんキメラデュラハン戦の時のスケスケ服も無しだ。

 

「……まぁ、そう言うなら、いいんだけどさ。無茶するなよ」

 

 とりあえず無茶してそうなのが気になるが、服装自体は現在の状況に即しているので、もっと気になる人物に目線を向ける。

 

「で、イリアスは何でそんな恰好なんだ?」

 

 イリアスは、なぜか虫取り網と籠を持ったスタイルでこのクエストに挑んでいた。

 

「……精霊とはその世界の法則そのもの、いわば魔法陣の一部、機械の歯車のようなもの。凍えるちいぱっぱだけでは無理ですが、いくつか調べれば魔王討伐に寄らず、元の世界に帰る方法もわかるかもしれません

 

 それに、クリスがこれを使って夏に酒を冷やして飲むと美味しいと自慢していましたし……」

 

「……ちなみに、その方法で帰るためにはどれくらいかかるんだ?」

 

「そうですね。世界一つを解析するわけですから、上手くことが進んで200年と言ったところでしょうか」

 

……よし、討伐数が振るわなかったらこいつの捕獲した分も討伐しよう。

 

 密かにそう決めて、俺は凍えるちいぱっぱの討伐を開始したのだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「たまも!そっち行ったぞ!」

 

「わかっておる!」

 

 主に俺とたまもが主体になり、凍えるちいぱっぱ狩りは順調に進んでいた。今回の相手は小さく数が多いので、爆裂魔法はお預け……と言いたいところだが、たまもがうずうずしているので10匹のノルマをこなしたらまとまっているところにぶっ放しても良いと伝えてあった。

 

「10匹倒したぞ!撃って良いよな?な?」

 

「あぁ!あそこに固まってる!デカイの1発頼む!」

 

 その言葉に、嬉しげに詠唱を始めるたまも。術はすぐに完成し、轟音を上げて雪野原を荒野へと変貌させる。結構な数のちいぱっぱも巻き込んだと思うが……。

 

「9匹追加じゃ!」

 

 雪の中を寝転びながらたまもが自慢げにつぶやいた。

 

「でかした!」

 

 そう言いながら、俺は顔をニヤつかせた。

 なんだ、冬の依頼は厳しいのしかないと思っていたが、凍えるちいぱっぱの討伐、美味しすぎるだろ!

 

 と、ふと気がつくと、風が吹き荒び、雪が強くなっているのに気がついた。

 

 そんな中、今までちいぱっぱを追い回し、数匹のちいぱっぱをカゴに入れることに成功していたイリアスがこちらを見て語りかけてきた。

 

「そういえば、カズマには言っていませんでしたね。凍えるちいぱっぱの討伐依頼を。他の冒険者が受けない理由を。

 

 あなたも、日本出身なら、名前くらいは聞いたことがあるのではないですか?そう、冬の風物詩にして、凍えるちいぱっぱ達の主人!冬将軍の到来です!」

 

イリアスのその言葉が終わると同時に旋風が巻き上がり、その中から凄まじい力を持った存在が姿を現した!

 

 ……ん?

 

 俺は目を擦りながらもう一度旋風があった場所を見る。大男でも出てくるのかと思ったが、誰も出てこない……。いや。

 

「うぅ、さむいよ……」

 

そこにいたのはとても寒そうな格好をした、身長20センチ前後の緑髪の少女だった。

 




 大変遅くなって申し訳ありません。
 一巻分が終わったことで気が抜けた&年末の忙しさで筆が止まっておりました。
 今後も少し筆が遅れそうですが、ボチボチやっていきます。

 ……そして、2巻分は一巻分以上にもんクエに寄り(改変多めになり)そうです。

 変更点
・女神さまとカズマの金欠に対する認識を少し変更
・張られている依頼をもんクエ風に変更
・雪精を凍えるちいぱっぱ(なんだそいつは)に変更
・アークウィザードの討伐数大幅上昇(身体能力の為)
・冬将軍じゃなくてちいぱっぱの親玉が出現
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