この素晴らしい世界にもんむすを!   作:邪魅魑

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EP24 カズマは入れ替えた!

 それは、俺がギルドで情報収集をしている時だった。

 

「全くさぁ、カズマは本当にだらしがないと思わないか?」

 

 そんなことを割と真剣な声色で、しかしだらしない口調で酒場中に響くように話す声が聞こえた。まあ、要するに酔っ払いが説教するような声色ということだ。

 

「あいつの仲間は、クルセイダーにアークウィザード……あと一人はよくわからん職業だが、上級職ではあるんだろ?それなのに馬小屋生活ときてる。本当に情けない奴だ!」

 

 仲間たちがまぁまぁと抑えているが、それでもそいつの愚痴は止まらない。

 

「ふん!どうせカズマが足を引っ張っているのだろう!全く情けない男だ!」

 

 そう言って同意を求めるそいつに、流石に俺も声をかけた。

 

「酔っぱらってるのは分かるが、せめてそう言うことは本人がいないところで言ってくれませんかね?……って、お前。たしかベリア、だったか」

 

 俺のことを盛大にこき下ろしていたのは、なんと俺とも面識がある冒険者。ベリアだった。ベロンベロン、とまではいかないがそこそこ酔っぱらっているのだろう。非常に酒臭い。

 

「あぁ!?お前カズマかぁ?カズマだな!?全く!貴様というやつは!あんな美人所を捕まえて、よく馬小屋暮らしなんかできるな!この甲斐性無しめ!?」

 

 そう言うが早いか、俺の頭を小脇に抱えてぐりぐりと頭を締め付けて来た。

 

「ちょ、やめろよこの酔っ払い!」

 

 若干胸を押し付けられているという事実に名残惜しさを感じつつも、酒臭さと皮鎧の生臭さにすぐさまベリアを押しのける。

 

「全く、代われるものなら代わってほしいものだ。なぁ、カズマ」

 

「……そこまで言うなら代わってみろよ!」

 

 俺は常々俺の頭を悩ませているあいつらへのストレスと、こいつの酒臭さへのうっとうしさでそう叫んだ。

 

「……えっ」

 

 そうすると、一瞬にして酒が抜けたかのようにベリアが変な顔をする。

 

「いやっ、仲間だぞ!?しかも、あんな上等な、そんな簡単に決めていいのか?」

 

「いや、代わりたいって言ったのお前じゃん!責任もってやってみろよ」

 

「……そうか。分かった!なら明日はパーティを交換して依頼を受ける。いいな?」

 

 そうして、俺たちはパーティを入れ替えることになったのだった。

 

「少し酔いを醒まさなくては……店主、コーヒーを頼む」

 

 本当に大丈夫か?

~~~~~~~~~~~~~~~

「……はぁ、そう言うことは、私たちに確認してから決めてほしいのですが……」

 

 そう言って頭を抱えるイリアスを、まあまあとたまもがなだめにかかる。

 

「カズマは頼りないが、それでも考えなしではない。うちらだっていつ死ぬか分からん冒険者。今のうちに他のパーティと顔をつないでおいて損はあるまい。

 それに……カズマだってうちらをそうそう手放すような事はすまいて。おおよそうちらの悪口を言われたとかそんなことがあったのではないかのう?」

 

 いや、普通に手放せるなら手放したいが……。しかも、別にベリアは悪口は言ってなかっ……あ。いや。

 

「そういやベリアは、イリアスのことをなんだか分からん一応上級職って言ってたな」

 

「何ですって……。いいでしょう。グランベr……ベリアに私の偉大さを存分に知らしめてあげましょう」

 

 イリアスが乗り気になったことで、割とスムーズにパーティの入れ替えの話が進んだのだった。

 そして当日。ベリアとたまも、エル、そしてイリアスが連れ立って出て行くのを横目に見ながら、俺はベリアのパーティで自己紹介をしていた。

 

「まずは俺からだな、俺はテイラーだ。このパーティのリーダーをしている。それと、盾職として皆を守る役目だな」

 

「俺はキース。弓使いをしている。」

 

「私はリーン。魔法使いよ。中級魔法くらいは使えるから、頼りにしてよね」

 

 

「俺はカズマ、佐藤和真だ。よろしく。それで、今日はどんな依頼をするんだ。いやーいつものパーティだと俺がリーダーだったから、ついて行くだけってのは新鮮だな」

 

 俺がそう言うと、テイラーが驚きながらも答えてくれた。

 

「あの上級職ばかりパーティでリーダーが君なのか。意外だな。と、依頼だったな。依頼は盗賊団の相手をすることだ。これが結構おいしい依頼でな」

 

「ちょっと待て、盗賊団退治がおいしい仕事?うそだろ?」

 

 そもそも人相手の討伐依頼がおいしいとか、ありえないだろう。ありえるとすればそれはこいつらが予想以上に実力があるという可能性位だが、そんな感じでもない。

 

 そう考えていると、リーンが苦笑しながら肩をすくめて同意してきた。

 

「確かに普通の盗賊討伐ならそうね。でもこの街の盗賊討伐は大丈夫なのよ」

 

「どういうことだ?」

 

「この街には代々『ちびっこ盗賊団』っていう子どもたちの集まりがあってね。名前の通り盗賊団っていうのは名ばかりのいたずらっ子の集団なんだけど、この子達が不定期に盗賊団を名乗って近くの洞穴に拠点を構えるの。で、私たちはそこに行って盗賊団討伐をするってわけ」

 

 えーと、つまり。

 

「要は子どものごっこ遊びに付き合えってことか?」

 

「まあ、平たく言えばそう言うことだな。ただ、ごっこ遊びと思って油断するなよ。相手は魔物娘たちだからな一般人じゃ太刀打ちできんくらいには強い。しかも盗賊気分だから容赦もしてくれないぞ。あんまり弱すぎると心配してくれるらしいが……。で、俺たちはそいつらを全員倒して街に連れ戻せばクエストクリアというわけだ」

 

 なるほどな。

 

「内容は理解した。それで、俺は何をしたらいいんだ?職業は冒険者なんだが。使える魔法なんかも言った方がいいか?」

 

「いや、今回は君も言っていたが、ごっこ遊びだしな。ひとまず荷物持ちってことでお願いしようか。一般人じゃ太刀打ちできないとは言ったが、それでも子どもだからな、油断はできないが、連携の取れたパーティなら大丈夫だ。……そうだ!治癒系の特技か魔法を持ってるか?それがあるなら倒した後に治療してやってほしいんだが」

 

 それを聞いて、俺は肩をすくめた。

 

「残念だが、うちには呪いも跳ねのけられる実力の聖魔導士様がいるんでね、そっち方面は門外漢だ……とはいえ、簡単な手当て程度ならできないこともないぞ。これでも手先は器用な方だからな」

 

「ふむ、ならちょっと包帯とポーションを多めに用意しとくか。準備は良いな?なら、さっさと行くことにしよう」

 

 そんなこんなで、俺たちは冒険に出発したのだった。

 

~~~~~~~

 ゴブリン、と言えば、どのような存在を想像するだろうか?ファンタジーの定番、ザコ中のザコ。身長は成人男性の腰程度しかなく、その力は極めて脆弱。

 ただし、その繁殖力と闘争心は大したもので、油断していると大量の手勢に足元を掬われる。あと、ファンタジーモノではオークに次いで定番の竿役……といったところだろうか。

 

 と、ここまで言ったところで、実物を見てみよう。

 

「来たなー!ぼうけんしゃめ!盗賊団四天王、土のゴブリンがあいてだー!」

 

 小さいとはいえ、小学校の3,4年生くらいの背丈を持つ少女の姿がそこにはあった。浅黒い肌と、大きな目がヘルメットから覗き、少しよれた簡素な服装ながらも結構な美少女具合を強調していた。

 

「こりゃまた……なんとも頼りない四天王だな」

 

 そんな俺のつぶやきに、仲間からもゴブリンからも突っ込みが入る。

 

「おい!カズマ油断するな!相手は手加減を知らない魔物娘なんだぞ!」

 

「そうだそうだ!私の力をよく見ろー!」

 

 そう言って、若干ふらふらしながらもそこそこの速度で俺に接近し、その手に持った身長ほどもある長い柄のハンマーを振り下ろした。流石にそんなものを食らってしまえば、エルのような高耐久を持たない俺は何とかなってしまうので、狙いを定める前に素早く身をかわした。その直後。

 ガチン!という鈍い音がして、俺がよけたことで地面にハンマーが直撃し、そこそこ立派な穴が地面に出現した。

 

「……オゥ」

 

 予想以上の威力に俺は絶句する。ゴブリンなんて名乗るからどれだけ弱いのかと思ったが、コントロールはともかく威力だけを見れば絶対に油断できないレベルの存在だった。

 

「カズマ!」

 

 次の瞬間、テイラーが俺とゴブリン娘の前に立ちふさがり、盾とハンマーでのつばぜり合いを始めた。リーンとキースはタイミングを計っているようだが、そこそこの速さで急接近されたので直後の対応ができないでいるようだ。

 

「大丈夫か!テイラー!」

 

「大丈夫だ!……だが、この子は四天王って言ってたよな?4連戦だとすると、結構厳しいかもしれないぞ!」

 

 その言葉にゴブリン娘は得意げに肩を震わせた。

 

「ふっふっふ、そうだろう!土のゴブリン、水のラミア!風のヴァンパイア!火のドラゴン!私達四人が集まれば、負けなしなんだ!」

 

 ……ん?なんだかその組み合わせ、聞いたことあるぞ……。確か、この世界に来てすぐの辺りに、イリアス関係で聞いたことが……。確かゴブリンは……。

 

「なあ、ゴブリン、ちょっと勝負の内容を変えないか?」

 

「うん……?なんで今更勝負の内容を変えなきゃいけないんだ?」

 

 そう言いながらも、ゴブリン娘は攻め手を一旦止めてこちらを見た。テイラーたちからすれば好機なんだろうが、それも手で制する。

 

「なあ、お前、こんなちっこさの天使、見た事ないか?」

 

「…………?…………あぁ!」

 

 ややあって、思い出した顔をした。確定だ。

 

「俺は男女平等主義を標榜しているが……それでも知人の知り合いを問答無用で殴り飛ばすのはちょっとな」

 

 まあ、実際は殴った方がいい場面なら俺はためらいなく殴りつけるが、まあ、そこはそれ……。俺はゴブリン娘に提案をした。

 

「だからさ、けがをしないような勝負の内容に変えたいんだよ……。そうだな、例えば俺とあんたがお互いにクイズを出す、それで問題を出す側と答える側、二連続で勝った方が勝ちってのはどうだ?」

 

 ゴブリン娘はさんざん悩んでいたようだが、最後には友達の友達を叩きのめしたら嫌われるかも……と呟きながら、俺の提案を飲んだのだった。

 

「それじゃ、俺からだな。ちょっと待て、それじゃあ、こんなのはどうだ?「朝は四本、昼は二本、夜は三本足になる」のは何だ?」

 

 ゴブリン娘はうんうん唸りながらポン、と手を叩いて答えた。

 

「それはフェニちゃんだ!朝は寝ぼけて羽根と足を使って体を起こしてるから4本、昼は空飛んでるか、二本足で立ってる!そして、夜は止まり木に止まって、尻尾を地面につけて寝てるから3本だ!」

 

「……答えは人間な」

 

「え、うぇ!?人間ってそうなのか?」

 

 びっくりしているゴブリン娘に俺はゆっくりと説明する。

 

「人生を一日に例えてるんだよ。朝はつまり生後間もなく、ハイハイする赤ちゃんだ。昼はほら、二本足。そして、人生も終わりに差し掛かれば杖を突いて三本足、な?」

 

「な、なるほど!」

 

 納得したようで、今度は俺に問題を出そうとうんうん唸りだした。

 

「私、あんまり頭良くないからこうする、あっちの端から、こっちの端まで行くのに5秒かかるかかからないか」

 

 俺は少し考えて、ゴブリン娘に聞いた。

 

「なあ、それってさ、予想した後に、俺たちが何かすることは考えないのか?」

 

「……それって、私が走ってるのを邪魔するってこと?」

 

 そう言うと今までの顔から一変し、獰猛な笑顔を浮かべる。

 

「悪いけど、君たちくらいのスピードじゃ、妨害しても大したことないよ。それに、そう言うんなら、私も考えがあるよ」

 

 そう、一見選択肢があるように見えて、実のところ俺たちが当てるためには5秒以上かかると予想しなければならない。なぜなら、5秒以内と予想すれば、ゴブリン娘がただゆっくりと歩くだけで予想は簡単に外れてしまうからだ。

 

「なら、妨害してもいいってことだな?」

 

「うん、できるもんなら、やってみろー!」

 

 そう言ったゴブリン娘が、ゆっくりと洞窟の端へと向かう。公正も何もないが、一応判定とカウントはリーンに頼んだ。

 

「それでは、よーい、どん!」

 

 そう言った途端、ゴブリン娘は信じられないスピードで洞窟内を疾駆した。俺は慌てて用意していた魔法を放つ。

 

「フリーズ!」

 

「ダメだよ!このくらいの時間、凍えなんて……わひゃ!?」

 

 俺が魔法を放ったのはゴブリン娘ではなく、その先の地面だった。恐ろしい加速ではあったが、流石に滑り止めはついていなかったらしい。

 足を取られてたたらを踏み、再び走り出した時にはすでにリーンのカウントは5を数えていた。

 

 こうしてようやく、俺たちはちびっこ盗賊団、土の四天王を倒したのだった。




大変お待たせしました。
 というわけで(本来は)メンバー入れ替えからのゴブリン討伐依頼編。
ですが、もんクエの設定と依頼内容が鬼ほどミスマッチなので依頼内容ごとごっそり入れ替えてイリアスベルクのちびっこ盗賊団騒動を投入しました。

 そのせいで話の目途を付けるために時間がかかったという。
 ……ごめんなさい嘘ですちょっとさぼってました。

 変更点
・依頼内容がゴブリン退治からちびっこ盗賊団退治に変更。
・入れ替えのタイミングをカズマ一人の時に変更。
・入れ替えの話が出てから実際に入れ替えるまでに一日のタイムラグがあるように変更。
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