この素晴らしい世界にもんむすを!   作:邪魅魑

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EP25 ラミアは追いかけた!

「さて、土のゴブリンはやられた様だけど、私、水のラミアにかなうかしらねぇ?」

 

 そう言いながら姿を現したのはとても小さいラミアだった。先の戦場で一瞬だけ見た、クリスの蛇体など比べるべくもなく小さい、とはいえ人間の子供が上についているので蛇として見ればそこそこ大きいのは大きい。そんな中途半端な大きさだ。

 

「なあ、戦う以外の方法で決着をつけるのはどうだ?」

 

「?なんでそんなことしなきゃいけないのよ?」

 

 その言葉を受けて、俺は後ろを振り返った。

 

「よし、プランBだ!」

 

 そう言うと、俺たちは一斉に彼女の間をすり抜けて走り出す。

 

「えっ!?あ、ちょ、待ちなさい!」

 

 彼女はかけっこで負けていたはず、だからこそ。

 

「待ちなっ、待ちっな、さい、よぉ!」

 

 

 全力で追いかけようとすれば、それは速度が出ないという問題以上に、体力と集中力を奪っていくだろう。

 

 つまり……。

 

「隙あり」

 

「しまっ!?」

 

 こうして、闇討ちも可能というわけだ。

 

「…………」

 

 気絶するラミアをじっと見つめるゴブリン娘に、俺は苦笑しながら答えた。

 

「ゴブちゃんの友達なのは分かってるんだが、俺たちも余裕があるわけじゃないからな。悪いがなるべく素早く終わらせたいんだ」

 

「……むぅ、まあ、私は負けたからな、口は出さないことにするよ」

 

 そう言って、ゴブはそっぽをむいた。

 さて、次は……。

 

~~~~~~~~

「ふむ……そろそろ来ても良いはずなのだが……遅いな」

 

 我はヴァニラ。誇り高きヴァンパイアガール。今は仲間たちと共にアジトで仲間たちと共に愚かにも入り込んだ冒険者を返り討ちにする日であった。

 しかし、先達たちの話によれば、四天王のうち1、2人は一時間ぐらいすれば倒されてしまうという話だ。スタンバイしてから1時間経ち、もう大分手持ち無沙汰になってしまっている。

 

「……ん?」

 

 ふと、視界の端に見慣れぬものがよぎった気がした。

 

「……ふぇ?」

 

 そちらを見ると、風に揺られるようにふよふよと白いものが浮かんでいた。

 

「な、なんであるか?これは」

 

 驚いている我の目の前で浮かぶそれは、まるで風が吹いているかのように浮かんでいる。

 

「…………はっ!まさか、ゆ、幽霊、か?」

 

 いや、そんなはず。

 

 次の瞬間、背筋にゾクリとした寒気が走る。

 

「な、ななな、なんだこの悪寒、これは、ほ本当に?」

 

 そして、そのうえ、どこからか女性の笑い声が聞こえてくる。

 

”アハハハハハ、アハハハハ!”

 

 その哄笑に我はあたりを見回した。

 

「な、なんなのだ、これは、なんなのだ!え、ええい!あの布っきれみたいなのが何か分かればよい!」

 

 我は蝙蝠を使ってふわふわした何かを貫いた。

 

「……え?」

 

 布は何事もなかったかのように力なく蝙蝠に搔っ攫われた。蝙蝠は布を持ったままこちらへと戻ってくる。

 

「な、何もない!糸もついてないし、中にも何もいないっ!ってことは、ほ、本当に!?」

 

 その時、不意に入り口から声が聞こえて来た。

 

「ヴァニラ!ヴァニラ、た、助け、きゃああああああ!?」

 

 それは、仲間の断末魔の悲鳴だった。その声に、私は……。

 

「あ、あ、あ、…………きゅう」

 

 あっさりと意識を手放したのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~

「いきなり水を掛けるなんてひどいじゃないか……って、なんでヴァニラが気絶してるの?」

 

 そう、吸血鬼っ子を襲った怪奇現象の数々は、実のところ俺の仕込みだ。生活魔法のウィンドで落ちそうになった布を適宜浮かせつつ、そっちに注意が言っている間にこっそり背後に回ってフリーズで吸血鬼っ子の首筋を冷やし、そして丁度いいところでテイラーに頼んでおいた仲間の悲鳴が発動したわけだ。

 

「あ~まあ、気絶してたならちょうどいい。ゴブ、介抱してやれ」

 

「まあ、いいけどさ」

 

 さて、それじゃあ、最後の一人、彼女らの話によれば、火のドラゴンとの戦闘だ。残念ながらイリアスはこいつの弱点を言ってなかったから、ガチの戦闘になるだろう。

 

「みんな、気を引き締めていこう!」

 

「「「おう!」」」

 

 そう言って、俺たちは洞窟を進んでいく。だんだんと洞窟はごつごつとした岩場から、滑らかな石質へと変わっていった。

 

「……なあ、なんか嫌な予感がするんだが」

 

「ん?そうか?歩きやすくなっていい感じじゃないか?」

 

「……確かに、気になるわね。ゴブちゃん、ここ、なんでこんなに床が滑らかなの?」

 

 俺の違和感を受けて、リーンがゴブにそんなことを聞いた。

 

「……それは……って、言わないぞ!捕まっちゃったけどもともと私と君たちは敵同士なんだから!パピが戦いやすいようにって火……一人でやったんだ!パピはすごいんだぞ!」

 

 ……いや、言ってるじゃないか。

 

「まあ、なんとなく分かった。テイラー、火の対策は?」

 

「そりゃ、盾役だからある程度はしてるよ。ただ、そこまで本格的なのはしてないからな。まあ、今までの戦いを考えると、3回は耐えられると思う」

 

 そうか……。

 

 とりあえずぶつかるだけぶつかってみようと俺たちは先へと進み、そしてその姿を見つけた。

 

「わっはっは!待っていたのだ!早く戦うのだ!」

 

「よし、行くぞ!」

 

 そして、俺たちの本当の戦いが始まった!

 

 最初に動いたのはドラゴンパピーの少女だった。少女はその腕をテイラーに振り下ろす。

 

「っぐう!?こいつ、やばいぞ!」

 

 真正面からほぼ完ぺきに攻撃を防いだにもかかわらず、そして、少女が拳で攻撃したというのに、攻撃を受けたテイラーはその顔を焦りで歪ませた。

 

「この威力、盾が割られかねないぞ!」

 

「っ!アイスバレット!」

 

 リーンの放った魔法が、少女に直撃する。驚く少女だが、それで大きなダメージを受けた感じはない。

 

「っつ!フリーズ!」

 

「‼冷たいのだ!」

 

 俺はフリーズを相手の手に向けて放つ。その分俺に意識を割かれているが、予定通りだ。

 迫ってくる少女の姿が、一瞬で見えなくなる。

 

「痛いのだ……」

 

 否。俺が使ったフリーズの余波、というかあらかじめ地面に向けて放っていた一発目のフリーズで凍った床で転んだのだ。

 

「うがー!でも負けないのだ!」

 

 そう言っていきり立つ少女に、リーンの氷の魔法が突き刺さる。さらにテイラーのシールドバッシュが続き、キースの弓が襲い掛かった。

 

「う、うがー!ま、まだまだなのだ!」

 

 これだけの総攻撃をかけても倒せないというのはどれだけ彼女が強いかを証明していると言えるだろう。さて、どうするか……。

 

 そう考えていると、急に少女が動きを止めた。

 

「う、うが?」

 

 そして、いきなり少女が空中に吊り上げられる。

 

「な、何なのだ!?」

 

「おいしそうな餌が捕まったわね」

 

 そこにいたのは、八本の足を持つクモの魔物娘だった。

 

「な、何なのだお前!離すのだ!」

 

「ふふふ、どうして餌と話す必要があるのかしら?あら、でもかみつかれたら怖いわね、口をふさいでおくわ」

 

 そうして、見る間にドラゴン少女ががんじがらめにされていく。

 

「……おいおい、まずいんじゃないのか?あれ」

 

「助けるぞ!」

 

 俺の声に応じて、テイラーが声を上げて突撃していった。それに応じてリーンとキースもクモ娘に攻撃を始める。

 

 まずい!まずいまずい!そりゃあ、勝てる可能性もあるが、俺たち全員で苦戦したドラゴン少女を戦闘不能にできる魔物だ、下手したら全滅もありうる。

 どうすれば……あのクモ娘に有効な手は……!

 

 俺はバッと後ろを見た。後ろには伸びているラミアとヴァンパイア、そしてそれを担いでいるゴブリンの姿がある。

 

「おい!お前ら!お前らの中で一番足が速いのは誰だ!」

 

「え?それは、私だけど……」

 

「なら、頼みがある!あんたらの仲間を助けるために買ってきてほしいものがあるんだ!」

 

 街からここまでの距離はそこまで遠くない。時間さえ稼ぐことができれば、間に合うかもしれない……。俺は、そんなことを考えながらゴブリン娘に金を握らせて送り出した。

 

「わかったよ!急いでいくね!バビューン‼」

 

「濃い目のを頼むぞ‼」

 

 ゴブリン娘は、残像を残すレベルで素早く走り去っていった。……あいつ、でかいハンマーじゃなくて素手で殴りかかってきたら実のところ俺達勝てなかったんじゃないだろうか。

 

 そう考えつつも、俺は時間を稼ぐためにクモ娘に対峙する。幸いなことに、テイラーたちはそこそこ善戦しているようで、多少糸に巻き付かれながらも、何とか全員無事であった。

 それは、クモ娘が巣から離れようとしないのも関係しているのだろう。

 

「テイラー!シールドバッシュはしちゃだめだよ!盾を囮にしてでも、太い糸には捕まらないで!」

 

「もちろんだ!」

 

 リーンの言葉もあり、全員糸に捕まらないことを最優先に来たらしい。俺ができることは……。そうだ!

 

「クリーン!からのウォーター!」

 

 俺はクモ娘の足を狙って油汚れもこれ一つ、の生活魔法クリーンを使い、すぐ後に水を出す魔法、ウォーターを放った。

 アリなどの昆虫は足に呼吸器を持つため、水の侵入を防ぐ油を消し、そしてすぐに水を放てば、相手はおのずと窒息で……。

 

「何してるのかしら?」

 

「あ、あれ?息は?」

 

「息?何のことかしら?」

 

 そうだよ、よく考えたら上半身人なんだから、そりゃ呼吸できるよ。何やってんだ俺!

 

 だが、それであのクモ女の意識がこちらに向いた。これで俺は逃げられなくなったが、時間稼ぎという意味では悪い手じゃない!

 

「な、なあ、あんた、あんたの捕えてるドラゴンっ子。息は大丈夫か?結構ぐるぐる巻きにしてるみたいだが」

 

「……あら、確かに。助かるわ。踊り食いが一番美味しいものね」

 

 そう言って、クモ女はドラゴン少女の顔全体に掛っていた糸をほどいていった。ありがたいことに、何かするつもりかとテイラーたちも攻撃の手をやめていた。

 

「ところでなんだが、あんたは普段何を食べてるんだ?こんなところにいつも人が来るわけじゃないだろう?」

 

「あら?そんなことないわ。私と同じ、魔物娘ならしょっちゅう来るわ。まあ、大体警戒心が強い子が多いから、なかなか罠にかかってはくれないけどね。……そうね、どうしても耐えきれないときはネズミとかで飢えをしのぐこともあるかしら」

 

 それを聞いて、俺はクモ娘に提案した。

 

「なぁ、あんたの口を見ると、どうしてもそのドラゴンっ子を食べられるとは思えないんだ。町で作った料理を持ってくるから、それとドラゴンっ子を交換とかできないか?」

 

「私は生肉しか食べないわ。それに、口の大きさも関係ないし」

 

 そう言うと、クモ女はどこからかネズミを取り出し、舌を出してそのネズミに突き刺した。

 すると、みるみるうちにネズミは空気の抜けた水風船のように揺らめき、だらしなく垂れさがっていく。

 

「私たちはこうして、生き物の中に溶解毒を注入してドロドロになったものを吸い上げて食べるわ。流石にこれだけ大きいと、一旦眠らせてから毒を入れるけれど、口の大きさと食べられる大きさにあまり関係がない事は分かったでしょ?」

 

「そうなのか、そりゃすごい」

 

 提案は簡単に却下されてしまった。ただ、そこまで悪くはない。あちらは、こちらを話し相手として認識している。うまいこと乗せれば、時間が稼げるだろう。

 

「……あなた、この竜の娘を助けたいのよね?」

 

「?あ、あぁ」

 

「あなた、ちょっとおもしろいし、見逃してあげても良いわよ。ただし……」

 

 そう言って、テイラー、リーン、キースの三人を指さした。

 

「あいつらのうち、誰かと引き換えならね」

 

「…………」

 

 少しの後、俺は無言でテイラーに突進する。

 

「ちょ、カズマ、嘘よね?」

 

 慌てて呪文を唱える体制にかかるリーンに対しスティールで下着を盗み、更にテイラーに接近、かぶりつくくらいの距離で短刀を振りかぶる。そして、小さく一言。

 

「長引かせるぞ」

 

 テイラーが振りかぶった盾の攻撃に逆らわず距離を取ると、三人は身を寄せ合って何やら話し合っている。その間に俺は今この場にいる残った二人……ラミアとヴァンパイアの頬を張る。

 

「おい、起きろ!」

 

「ん、なによ」

 

「なんだというのだ……って、何なのだこの状況は!」

 

 二人が目覚めたところで、俺はざっと今までの状況を説明し、捕まっているドラゴンっ子を助けるために戦いを長引かせる作戦を説明する。

 

「わかったわ!パピを助けるためなら、協力は惜しまない!」

 

「そうだな、我の偉大なる呪術の神髄を見せてやろう!」

 

 ピリピリとした空気、そして、それを肴ににやにやと笑いを浮かべるクモ女の思惑を遮るように、爆音にも似た音が洞窟内に響き渡った。

 

「な、なんだ!?」

 

「わーっ!どけてどけて~!」

 

 見れば、それは巨大な樽を背負って爆走するゴブリン娘だった。急停止しようとして転んだゴブリン娘の背中から放たれた樽は放物線を描いてクモ娘の頭上にぶつかり、クモ娘の全身に真っ黒い液体が降り注いだ。

 

「!!ぺっぺっ!なによ、こ、え?」

 

 クモ娘はその液体がかかってすぐろれつが回らなくなり、しっかりと握っていたはずのドラゴンっ子も取り落とす。

 慌てて受け止めるちびっこ盗賊団を見ながら、俺たちはクモ女の方に近づいていった。

 

「なんだ?こりゃ」

 

「うぃー、ヒック、あらしは、クモむふゅめらぞー!!ヒック」

 

「完全に酔っぱらってるわね」

 

「ああ、蜘蛛はコーヒーで酔っぱらうっていう話を知ってたからな。買ってきてもらってたんだ」

 

 俺がそう言うと、テイラーたちは感心したように声を上げる。

 

「意外と博識なんだな、カズマは」

 

 そんなことを話しつつ、俺たちはてきぱきとクモ女を縛り上げていった。これで一見落着だ。

 

「それより、わたしの、ぱ、パンツ返してよ」

 

「ア、ハイ」

 

 俺は思わずポケットの奥底にしまい込んでいたパンツを返すのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「しかし、今回はカズマの策で上手くいったな。助かったよ」

 

「本当にな。どうだ?臨時と言わず、これからも固定パーティってのは?」

 

「何言ってんのよ!私、ぱ、……取られてるのよ。ま、まぁ、機転が利くのは認めるけど……」

 

 依頼の達成とクモ女の引き渡しの結果、予定の倍ほどの報酬が得られることになった。だからこそ、こうして軽口をたたきながら俺たちはギルドを後にしようとしているのだ。

 

「……あ」

 

「……あ」

 

 ギルドの扉を開いたところにいたのはベリアとたまも、そして二人に背負われた白目をむいているイリアスとでろんと伸びているエルの姿があった。

 

「……カズマ、すまん。私の勘が間違っていたようだ」

 

「おう、何があったんだ?」

 

 俺が聞くと、ベリアがわなわなと震えだし、大声でわめき始めた。

 

「広場で各人の使えるスキルを聞いて、爆裂魔法を使えるってことに驚いただけで、「なら、早速お見せするのじゃ!」とか言って、何もない所に爆裂魔法放つか?それで、様子を見に来たサキュバスの衛兵に何も言わずに襲い掛かるか?謝り倒して何とか見逃してもらったけれど、一歩間違えれば前科者だったぞ!そして、こいつ!この水色!野生のフェニックス娘が襲い掛かってきたとき、言うに事欠いてこどもだからって私たちの攻撃を全部受け止めるんだよ!その後なんだかコーヒー臭いクモ系の魔物が大挙して襲い掛かってくるし……。本当に、本当に……はぁ」

 

 俺は頭を押さえ、天を仰いだ。はぁ、なんというか、はぁ。

 

「なあ、テイラー。さっきのパーティの話だけどさ」

 

「な、何を言おうとしておるんじゃカズマ!」

 

 ギャーギャーわめくタマモの声が響き、騒がしい夜が更けていくのだった。

 

 




お待たせしました!

 なかなか難しい展開だった。
 なお、最後の方に出てきたクモの魔物は娘ではなくただのクモの魔物です。
 多分クモ娘は意図せずカフェインを腸とかで摂取してる気がする。

変更点……サボっていいか。

・初心者殺しをクモ娘に変更
・リーンがセクハラの被害に会う
・不良冒険者と一緒にギルド前まで来た仲間を女神から魔法使いに変更
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