この素晴らしい世界にもんむすを!   作:邪魅魑

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EP26 カズマはダンジョンに入った!

「というわけで、明日はダンジョンに行きます」

 

「いや、いやじゃが?」

 

 次の冒険者としての仕事を決める話し合いでの俺の第一声を、たまもがきれいにぶった切った。

 なお、凍えるちいぱっぱ依頼から4日後の話である。俺の主観では一度死んでいるわけだが、時間遡行した感じで復活したので、皆にとっては臨時収入が入ったための休憩タイム程度の扱いであり、途中でメンバー入れ替えで依頼をこなしたものの、借金のこともありそこまで休むことは許されない。

 

 というわけで冒険の定番、ダンジョンを提案したのだが、あっさりと却下されてしまった。

 

「そもそも、うちとて爆裂魔導士じゃぞ?まあ、確かに洞窟内でも戦えんことは無いが、耐久性は並みじゃ。洞窟の中で素早さを殺されればそのまま自分自身もあの世行きじゃ。それとも、カズマは仲間に自爆特攻を強要する鬼畜じゃったのじゃろうか?」

 

「いや、そもそも俺、お前がパーティ入るときにそのこと言ってたよな?むしろ普通の魔法使いと思ってた段階で言ってたから現実の方がいくらかマシじゃないか?それ聞いてもパーティ入れてくれって言ってたのはどこの誰だよ」

 

「……むぅ、それを言われると弱いのう」

 

 そう言って唸るたまもは、仕方なしに頭を振った。

 

「まあ、仕方あるまい。そのダンジョンの難易度次第ではあるが、同行するのもやぶさかではないのじゃ。ただ、その場で放置とかはやめてくりゃれ?」

 

「あぁ、すまん、言い忘れてたが、たまもはダンジョンの手前で待っててくれればいいから。道中の強敵に爆裂魔法をぶっ放してくれればいい」

 

「……ふむ。なんぞそんな言われ方をすれば中までついて行きたくなってしまうのう……」

 

「おい、絶対やめろよ」

 

 そんな風にたまもとじゃれていると、横合いからイリアスの声が聞こえて来た。

 

「ダンジョンですか……。カズマはダンジョンに行くことを既定路線にしているようですが、正直今のパーティでは不足を感じますね。通り抜けるだけならともかく、十分に利益を上げるなら盗賊職の助力は必須でしょう。それに、罠の心配もあります。……少し業腹ではありますが、あのクリスとか言うラミ……女盗賊に助力は乞えないのですか?」

 

「クリスも誘ってみたんだが、なんでもちびっこ盗賊団がらみで忙しいらしくてな。方々に話を付けに行っているらしい。それと、ほら、クリスって……あれだ、お宝に詳しそうだからさ、ポケット魔王城についても話してみたら、ちょっと調べてみてくれるって話だったからそのこともあるんじゃないか?」

 

 一応、俺もイリアスもちょっと口走りそうになったクリスの正体について口をつぐみつつ、言葉を続ける。

 

「一応その話をするタイミングでダンジョン探索に必要な罠解除と罠感知は教えてもらったし、パーティ入れ替えの時の冒険でちょっと前に取った新スキルの有用性も分かってきたからな。ダンジョンなら季節に合わせて急に危険なモンスターが現れる、みたいなことは無いし、きっちり安全マージン取れば行けると思うんだ」

 

 それを聞いていたエルが、少し胡乱な顔で俺を見た。

 

「申し訳ないけど、まだキメラデュラハンの灰の排出が間に合ってないの。盾になろうにも、いつもみたいには耐えられないわよ。それに剣もメンテナンスに出してしまったし」

 

「お前、剣持っててもあたらねぇじゃねえか」

 

「まぁ、確かにそうなのだけれど……」

 

 そうぼやくエル含め、俺は3人に告げる。

 

「言っておくが、今回は俺一人でダンジョンに潜る。お前らはダンジョンに入るまでの護衛をして欲しいんだよ

 

「「「?」」」

 

〜〜〜〜〜〜〜

 街を離れて半日。俺たちが向かったのはキールダンジョンという名のダンジョンだ。

 はるか昔、キールという名の王子が罪人に恋をし、王子の身でありながら最高の魔術師となるまでに己を鍛え上げ、その武勲を持って父王にかの罪人を妃にすることを要求したのだという。

 

 このダンジョンがあることから、その結果は推して知るべし、と言ったところだが、王子は王位継承権を放棄し、罪人と共にこのダンジョンに立てこもったのだという。

 

 その結果は詳らかにされてはいないが、まぁ、いくら優秀な魔法使いといえ、たった一人で戦い続けることは出来なかっただろう。

 

 今ではそんな逸話もほとんど忘れ去られ、駆け出し冒険者のいい練習場所になっていた。

 

「よし!それじゃあ行ってくる。もし一日たっても帰って来なかったらテイラーたちに救援を頼んでくれ」

 

「本当に一人で行く気か?危ないと思ったらすぐに引き返すんじゃぞ?」

 

「だから、言ったろ?敵感知と潜伏スキルを活用すればお宝だけゲット出来るって。心配すんなよ」

 

「必ず帰ってきなさい。どんな魔物を引き連れてきても、一撃くらいは庇ってあげる」

 

なんだかいつもと比べて嫌に心配されつつ、俺はダンジョンの暗闇へ続く仄暗い階段を降りていった。

 

「よし!《千里眼》!これでよく見えるな」

 

周囲が闇に飲まれる前に、キースから教えてもらったアーチャースキル《千里眼》を発動する。あとは、敵感知を常に発動させれば……。

 

「なんでついてきてるの?」

 

 振り返るとそこには、なぜかついてきていたイリアスの姿があった。

 

「いえ、このダンジョンについた時、アンデッドの気配を感じましたから。アンデッドは普通の魔物と周囲の感知方法が違うからか、『潜伏』スキルが役に立たないことがあるのです。ですからアンデッドの対策が必要だと思って急いでついてきたのです。崇めても構いませんよ」

 

「お、おう、そりゃありがとう……じゃねーよ!『潜伏』で隠れるのにあんたがいたら隠れられないだろうが!そもそもイリアスは視界は大丈夫なのかよ!スキル無しで見通せる暗闇じゃねぇんだぞ!」

 

 俺がそう言うと、イリアスは嘲るような眼で俺を見た。

 

「哀れな人間と違い、私の目は闇夜の中でもある程度見通せます。何しろ、以前は全ての人間を天上から見守っていたのですからいうなれば千里眼のオリジナルですよ?」

 

 ……こいつはきっと降りるのをやめないだろう。本来ならこの方法で通用するかどうかを俺でもレベル的に余裕のあるこのダンジョンで確認するつもりだったのだが、まあ、仕方ないか。

 

 俺はあきらめつつダンジョンを降りていった。

 

~~~~~~~~~~~~

 暗い階段を黙々と降りていく俺達……というか、あまりに深い。その深さは、初心者ダンジョンとは思えないほどだ。果てのない深淵に挑むつもりで、俺は階下をにらみつけた。

 

「……全く、何が一人で行く!ですか。そのように怖気づいたへっぴり腰で、よく大言を吐けたものですね。それとも、もしかして自殺志願者でしたか?これは失礼」

 

 そう言って冷笑するイリアスに反論しようとするが、こいつはこの暗闇の中でもここが己のための宮殿だとでもいうかのように優雅に階段を下っている。ビビっているなんて間違っても言えないだろう。

 とはいえ、そんないつも通りの言葉に救われるところもある。少なくとも心細さは感じずに済んだ。

 

 何もない場所、しいて言えば近くに朽ち果てた人のような物がある、だ、けで?

 

「ふわー!?」

 

 それは俺のように一人でダンジョンに潜ろうとした人物の成れの果てか、それとも仲間に置いて行かれたのか……。ともかく俺たちの先輩だったらしい。

 

「ふわーっって、くっくくくくく。ふわーって。ふ、ふぐっ。カズマ、少し離れます、ぷっ、くくくっ」

 

 そして、イリアスが少し距離を取った後、驚くほどに大きな笑い声が響き渡った。

 

「ちっ、あいつ……」

 

 しばらくすると笑い声が収まり、イリアスが帰ってきた。

 

「おい、イリアス!お前なぁ……」

 

「少し待ちなさい。この死体、アンデッド化しかけています」

 

 そう言うと、イリアスは手で印を結びながらぶつぶつと何かをつぶやき、死体に触れていく。

 すると、死体が淡く青色に発光し、そしてすぐに消えた。恐らく女神の力でアンデッド化を防いだのだろう。普段からこういうことをやっておけば、多少は女神らしいのに。

 

「さて、それじゃあ行きますよ。カズ……マ、ふわーっ、ぷっ」

 

 こいつ!

 

 殴りかかろうとして、俺は動きを止めた。どうやらイリアス以外の動く者がいることを敵感知がとらえたからだ。敵感知できる領域まで来てしまうと、物音を立てるのも得策ではない、手で逃げるように伝えるが、思ったよりその動きは迷いなくこっちに来ていた。

 

「……お前が馬鹿笑いしてたから敵呼び寄せちまったじゃねーか!」

 

 理由に気付いて思わず怒鳴った俺にその人型の影は飛び掛かった。しかし、あらかじめ気付いていた敵だ。俺も無策ではなく、そのまま手持ちの剣でそいつの胴体を薙ぎ払った。

 当たり所が良かったのもあるだろうが、それだけでそいつは真っ二つになり息絶えた。

 

「なんなんだ、こいつは」

 

 残念ながら、千里眼を使って見えるのは輪郭までで、色などはさっぱりだったので何の魔物か分からないのだ。

 

「それは……恐らくグレムリンですね。魔物娘ですらない下位の悪魔です。因みに、魔物娘だと……ほら、あそこにいるみたいな」

 

「はわわっ!見つかっちゃった!?」

 

「びくびく……」

 

「くたー」

 

 指さした方向には、なんだか胸のあたりにクッソでかい球体を付けた影と二人のつるぺたすっとんの影が見えた。

 

「あれが、悪魔系の最底辺ですね。大体。ついでに浄化して差し上げましょうか」

 

 そう言って恐らくにやりと笑ったイリアスの圧に屈したのか、バタバタとせわしなく羽ばたく音が聞こえ、姿を感知できなくなる。

 

「……とまあ、あれくらい脅かしてしまえばもう襲ってこないでしょう。元来悪魔は最低限の知恵を持っていますから、低級悪魔は臆病なものが多いのです。まあ、次に見つければ容赦はしませんが」

 

 そう言って胸を張るイリアスに、俺はふと思いついてしまい、恐る恐る声をかけた。

 

「……すまん、イリアスって、もしかしてこの暗闇もかなりしっかり見えちゃう感じか?もしかしてなんだが、俺が馬小屋で夜何してたか見てたりとか……?」

 

「……カズマ。あなたのために口をふさぐことをお勧めします。まぁ、安心しなさい。私にとっては一日に何度も見守っていたものです。今更見ようとも思っていませんでしたから、すぐに後ろを向いていました」

 

「……助かる」

 

 俺は状況を忘れて、安堵のため息をつく。

 

「それよりも、来たようですね。ターンアンデッド!」

 

 イリアスがそう言うと、やってきたゾンビがすぐさま浄化され、光の粒になって消えていった。

 

「さぁ、まだまだ来ますよ!」

 

 イリアスの声によってきたわけではないだろうが、ゾンビや幽霊っぽい見た目の魔物が大挙して現れる。本格的な戦いの始まりだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

「ターンアンデッド、ターンアンデッド!ターンアンデッド!」

 

 ダンジョンというのはかようにもアンデッドがはびこる場所だとは知らなかった。もはや四方八方から襲い来るアンデッドは波かと見まがわんばかりだ。そして、そんな波を片っ端から浄化して回るイリアスも、普段とは違いいっぱしの聖職者に見える。

 

「いと貴き女神、イリアスの名のもとにあなた達の未来の安寧を約束しましょう。長い停滞を離れ、黄泉への旅路を進みなさい。《セイクリッド・ターンアンデッド》!!」

 

 膨大な魔力があふれ、その場に動く者がイリアス以外にいなくなると、彼女は自慢げに俺に振り返ってきた。

 

「どうですカズマ。私を崇める気になりましたか?」

 

「その言葉が無ければな。っつっても、ついて来てくれたことには感謝してる。こんなの俺一人じゃ絶対対処できなかったよ。助かった。ありがとう」

 

「っ……!当然です。もっと崇めなさい。カズマ。……と、そろそろ本腰を入れて探索をしましょう。まあ、もう探索しつくされたダンジョンです。期待は薄いですが」

 

 そう言って探索を続けて暫し。大量のアンデッドにたかられながら探索を続けていると、ふとイリアスが動きを止めた。

 

「……妙ですね」

 

「妙って、あれか?アンデッドが多すぎるって話か?確かに下級職のプリーストじゃさばけないくらいアンデッドの数は多いけど」

 

「あぁ、それもありますが、違います。一番の問題は、このダンジョンの構造です。脳内でマッピングしていたのですが、丁度この先、ここがこの階層だけすっぽり二部屋分ほど抜けているんですよ。下り階段も入って来たものしかありませんでしたが、ここだけ何も作らないというのは……」

 

 そう言って、イリアスが行き止まりの壁に手をかざすと、急に壁がクルリと回転する。

 

 

「きゃぁ!?」

 

「回転扉!?」

 

 慌てて回転扉をくぐると、そこには巨大な人影があった。そして、そいつはこういったのだった。

 

「おや、久々の訪人じゃな」

 

 




ということでキールダンジョン編です。
ただし、感動の浄化イベントは既にシロムでこなしてるので、そこはガバッと入れ替えます。

変更点
・全体的にパーティメンバーの物分かりが良い
・体調が悪いのはクルセイダー
・クリスの用事のを変更
・インプ3人組がゲスト出演
・隠し部屋に気づくプロセスの変更
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