この素晴らしい世界にもんむすを!   作:邪魅魑

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EP28 サザーランドのおかみの依頼だ!

 ダンジョンから出た翌日、俺は街に繰り出していた。行く先はギルドで落ち合う約束をしたとある店だ。

 

「……で、なんでイリアスが付いてくるんだ?」

 

「ついて来てはいけませんか?それともどこかいかがわしい所にでも行くというのですか?最低ですねこの遅○様」

 

 イリアスは昨日からご機嫌斜めだ。理由は単純。ダンジョンからの帰り道、アンデッドがイリアスによってきているという半ば確定した事実を俺が彼女に告げてしまったからだ。

 指摘以前から若干気付いていたようなのだが、事実陳列罪で雷が落ちたというわけだ。

 

 まあ、とはいえ、こちらからちょっかいをかけなければそれ以上の被害はない。俺はイリアスと共に店の前に立った。

 

「おーい、シロム、いるか?」

 

「……む、カズマか。ああ、いるぞ。ただ、それは生前の名前だ。今はラ・クロワと呼んでくれたまえ」

 

「まあ、いいじゃないか」

 

 そう、俺は以前であったアンデッドの女性、シロムに用があってここまで来たのだ。

 

「ふむ、貴方はここに店を構えていたのですね」

 

 そう言ってきょろきょろと店内を見渡すと、そこにあった椅子にどっかりと腰かけた。

 

「……おや?もしかして、この店は客にお茶も用意しないのですか?なるほど、流石魔物の営む店、野蛮ですね」

 

「おいイリアス!」

 

 窘める俺に、しかしシロムは笑って返す。

 

「いや、構わないよ。確かに彼女には少し待ってもらうことになるんだ。ラディオ、頼む」

 

「カシコマリマシタ、マスター」

 

 そんな声が聞こえると、店の奥から謎動力で浮遊するメイド服のような物を見に纏った小柄な機械少女が姿を現した。

 

 ラディオと呼ばれたその機械少女は、おずおずとイリアスの前にやってくると、手に持った盆から茶を差し出した。

 

「……ふむ、はぁ、なんとも貧しい茶葉を使っていますね。この店の品格が知れるというものです」

 

「おい、イリアス、いい加減にしろよ!……っと、まあイリアスにはあとで話すとして、シロム。来て早々だが、前話した通り、リッチーのスキルを教えてくれない「ちょっと待ちなさい、今何と言いましたか、カズマ」……」

 

 イリアスを無視して話を進めようとしたら、イリアスの方から絡んできた。

 

「聞き間違いですよね?リッチーのスキルを教えてもらう?頭でも打ちましたか?あなたは勇者なのですよ?しかもリッチーのスキル!そのようなスキルを覚えるくらいならば魔界の剣技を身に付けていったルカの方が何倍もマシです」

 

「いや、誰だよルカって。……って、それは良いんだ。そもそもリッチーのスキルなんて、滅多に取れるもんじゃないし、取得できれば結構な戦力アップになりそうじゃないか?現状が戦力不足だってことは、イリアスだってわかってるだろ?俺が勇者とかどうとかってのは戦力がそろってから気にすりゃいい話だよ」

 

 そう言うと、腕を組みながらイリアスは俯いた。

 

「ふむ……女神としては、そのような勇者らしからぬ振る舞いは控えてほしいものですけれど……」

 

 その言葉を聞いて、シロムが眉根を寄せてこちらに問いかけてきた。

 

「女神?強力なアンデッドを浄化した実力と言い、まさか君は本物の女神なのかい?」

 

 あ、まずい。流石にここまでの条件がそろっていて、リッチーなんていう魔法と知恵に優れた種族だと、女神というものを見分けることも十分に可能なのかもしれない。

 

「……まあ、いいでしょう。私は女神、偉大なる創世神、創世の女神イリアスです」

 

「!?……っ!」

 

 その言葉を聞いて、シロムは一瞬でラディオを自分の後ろへと引きずり込み、自身はメスを握りしめてイリアスを凝視した。

 

「お、おいおい、警戒しなくていいって、女神ったって、無差別にアンデッドを浄化しているわけじゃないんだから」

 

「い、いや。イリアス教徒と言えば、排他主義が強く、魔物娘と見做せばすぐさま排斥にかかり、時には同族でさえも差別し貶めるから、あまり関わり合いにならない方が良いというのが世間の常識でな。特に魔物娘たちからは避けられている……。そんな宗教の親玉と聞いて、つい、な」

 

「ちょ、ちょっと待ってください、なんですかそれ、詳しく聞かせてください!」

 

 怒っているわけではないようだが、イリアスはシロムに掴みかかって前後に思いっきりゆすっていた。……いや、俺のスキルの話は?

 

「話が進んでねぇ」

 

 結局、イリアス教の世間一般の評価の話については後回しにしてもらい、この店の商品を見てくるように促して、こっちの話をすますことにした。

 

「……ラディオ、案内をしておいで、何かあったら、大声を出すんだよ」

 

「ハイ、カシコマリマシタ」

 

「っと、すまなかったね。しかし、たしか君たちはあのキメラメデュラハンのロンドを倒したんだろう?それを考えると、どれを伝授したものか……。あの人は魔王軍幹部の中で比べても、剣技や呪術の面で高水準にまとまっていたしね」

 

 その口ぶりに、俺は思ったことを口にした。

 

「なんだか、キメラメデュラハンについて、詳しい感じだな?もしかして、知り合いだったりしたのか?」

 

「ああ、何しろ、私は魔王軍幹部の一人だからな」

 

「確保―!」

 

「ゴシュジン様!?」

 

 先ほどまで店内を見回っていたはずのイリアスが、いつの間にか目の前におり、シロムを羽交い絞めにしていた。

 

「尻尾を見せましたねリッチー!カズマ!この女を衛兵に突き出せば、借金も払いきれるかもしれませんよ!これはお手柄でしょう!」

 

「待ってくれ、イリアス殿。そもそも私を衛兵に突き出しても無駄だ!私は、まぁ私の特性として死者を生き返らせてしまったことは有るが、それ以外には悪いことはしていない!」

 

 それを疑わしそうに見るイリアスだが、俺に目を向けると完全には腕を解かない者の、ある程度はその腕を緩めた。

 

「私は、魔王軍の関係者と面識があってね。まあ、それほど親密にしていたわけではないのだけれど、その者経由で、魔王城の結解の維持を頼まれてしまったんだ。私は人と敵対するのは避けたかったんだが、ならば結解の維持だけでも、と強く頼まれてな、断れなかったんだ」

 

「それって、あなたがいる限り魔王城を攻略できないということではないですか!」

 

 再び締まる腕に、シロムは少し慌てて答えた。

 

「いや、イリアス、君の力であれば、魔王軍幹部2~3人の結解なら十分に破壊することができるだろう!わざわざ私を倒さなくても、十分に魔王城攻略は可能だ!」

 

「それが、私があなたを始末しない理由になると?」

 

「おいイリアス!」

 

 俺がそう叱責すると、イリアスはやれやれ、と言った風に今度は完全に手を解く。

 

「……はぁ、あなた自身に感謝することですね。私は創世の女神イリアス。約束は守らなければなりません。以前墓地で出会った時に、貴方を見逃しその意識を今後も保つことを認めました。今それを反故にするには、貴方の罪は軽すぎます……。良いでしょう。あなたは最後にして差し上げます。存分に感謝することですね」

 

「ああ、感謝するよ。恐らくそのころには、私の目的も達せられているか……もしくはもはや叶わぬことが分かり切っているはずだ」

 

 そう言って、俺たちはほっと溜息をついたのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 

 

「……っと、そうだったそうだった。リッチーの技を覚えたいんだったね。それじゃあ、ドレインタッチなんてどうだい?この技は、手のひらで触れた相手の生命力を奪う技だ。吸収効率や有効な使い方なんかはまた話すが早速実践してみようか……ラディオは機械生命体だから耐性がかなりあるしな……イリアス殿、お願いできるか?」

 

「……私の高貴な生命力を奪おうとは、たかが動く死体ごときがずいぶんと調子に乗りましたね。……良いでしょう。そこまで言うならやってみなさい?」

 

 意外なことにあっさり手を出したイリアスの手を掴み、シロムは力を籠め……そして変な顔をする。

 

「……ふむ、こうか?いや、むしろこうして……」

 

 そして、イリアスの手を四方八方撫でまわしながら何やら唸っていた。

 

「……んっ、……あぁっ……」

 

「ちょちょちょ、ストップ、ストーップ!!」

 

 さらに、イリアスが怪しげなため息をつき始めたところで、慌ててシロムを止めた。

 

「何なんだよさっきのは!?」

 

「いや、ドレインタッチをしようとしたのだが、上手くできなくてね。要は相手の生命エネルギーや精神エネルギーを吸収する技だから、相手の警戒を解き、よりエネルギーを取り込みやすいようにマッサージのような事をしたのだが……」

 

「それ、頭に性感ってついてないよな?」

 

 そもそも手だけだが。

 

 まあ、何はともあれこれでは何も始まらないため、もう一度、今度はイリアスにもきっちり言い含めてからドレインタッチを実践してもらった。

 

「と、まあ、こういうものだ。先ほどは吸収の話だけしたが、このスキルの神髄はエネルギーの受け渡しにある。つまり、スキル保持者からエネルギーを他者に受け渡すことも可能なわけだ……。ふむ。なるほど、女神のエネルギーを吸収するとこうなるのか、興味深い……あぁ、なんだか意識が遠く……」

 

「ゴシュジン様、成仏シカカッテイマス」

 

「ちょ、イリアス、手離せ!手を!」

 

 なんとかスキルは入手できたものの、その後はシロムが倒れかけ、それをラディオが受け止めるドタバタ具合だ。

 

 そんなとき、店の扉が勢いよく開き、一人の女性が店の中に入って来た。

 

「ラ・クロワの嬢ちゃん!いるかい?」

 

「え?」

 

 俺たちは、思わずその女性を凝視したのだった。

 

 




 というわけで、2巻分もようやく半分くらい?……とはいえオリジナル展開になりすぎて消費的には1巻の時の倍くらいの分量で消費してますね。まあ、しゃーない。

 というわけで幽霊屋敷騒ぎになりますが、ここも結構変更があります。さて、どうなることやら……。
 因みに本編に明示する気はありませんが、依頼者は題名の人です。

変更点
・リッチーの店に女神が来たのはイレギュラーなことだと変更
・リッチーの店に最終兵器PONKOTUが配備されているように変更
・リッチーが魔王軍幹部だと明かした後の弁明を多少変更
・リッチーがドレインタッチする際の反応を変更
・幽霊屋敷の原因が幽霊でない?ように変更(この世界の女神は邪悪であっても無責任ではないため)
・幽霊屋敷の依頼者を、男性から女性に変更
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