「それでは、説明させていただきますね。冒険者になろうとしている方ですから、おおむね理解はされていると思いますが」
そう言って、受付のお姉さんは冒険者について説明してくれた。簡単に言えば、冒険者というのはありとあらゆる依頼を受け、達成することを目的とする職業であること、そして、ギルドはそのサポートをすること、最後に、生命を殺したり、摂取したりすることで経験値がたまっていき、より強くなれるということ。
それらを話し終えると、受付のお姉さんは無記名の冒険者カードと書類を取り出した。
「まず、こちらの書類に必要事項をお書きください」
身長、体重、年齢、身体的特徴などを記入していき、お姉さんに渡すと、大きく頷いてカードをこちらへ差し出してきた。
「はい、結構です。では、お二人とも、こちらのカードに触れてください。こちらを使えば、普段は見ることができないステータスを参照することができ、それに合わせて職業を得ることも可能になっています。職業を得れば、その職業ならではの専用スキルなどを習得できるようになりますから、そのあたりも踏まえて職業を選んでください」
早速来たな、と思いつつ、俺はカードに手を振れる。これはあれだ、俺のチートな性能が周囲にばれて、大騒ぎになる展開だ。そんな期待を胸に、カードを確認する受付嬢のお姉さんの反応をじっと待つ。
「ああ、そうですね、能力は平均的で、ちょっと知力が高いくらい……あ、でも運がかなり高いですね、あ、でも運って冒険者にはあんまり必要がないんですけど……。これだと、基本職の冒険者ぐらいしかなれるものがないですね。商人などになられる方が良いと思いますが……」
「……その、冒険者でお願いします」
意気消沈している俺に、受付嬢のお姉さんは気づかわし気に言葉を続けた。
「いや、ですが、レベルが上がれば能力値も上がりますし、そうすれば転職も可能になります。それに、冒険者の名前が示すように、あらゆる職業をまとめたようなものでして、決して初級職だから悪いというわけでは……?あの、先ほどから無言でどうしたのですか?」
ふと女神さまに目線を向ければ、そういえば先ほどから黙りこくっていたのに気づいた。先ほど敵対神の信者にお金をもらっていた精神的ダメージがまだ癒えていないのかとも思ったがそれにしてはその横顔は理知的な光を宿していた。
「いえ、試してみればわかることです。さぁ、カードを」
「あ、は、はい!」
そう言って受付嬢が女神さまにカードを渡し、俺の時と同じように軽く手を振れた。そして……。
「あ、あれ?なんで?これ、どういう!?」
受付嬢の狼狽ぶりに、やはり、と悩ましげな顔の女神さまを横目に、俺は彼女のカードをちらりと見た。
バグっていた。数字のところに変な文字が書かれていたり、■で塗りつぶされていたり。おおよそ人間が読める文字ではないとわかる。
「やはり、こうなるのですね。少し待ちなさい」
そう言って、慌てる受付嬢からカードを奪い取り、何やらカード片手に神秘的なオーラを纏わせながら何かをいじっていく。
「表記を合わせました。これでよいでしょう」
何を言っているかさっぱりだが、何とかなったらしい。手渡す一瞬だが、確かに普通に読める文字に代わっていた気がしないでもない。
そして、それを読みこんだ受付嬢さんが、またしても驚愕の声を上げる。
「な、なんですかこのステータス!運が絶望的なまでに低いですが、そのほかはかなりの高水準ですよ!あれ?でも、クルセイダーやアークウィザードなんかにはなれないみたいですね?その代わり見慣れない職業がたくさん?」
それを聞いて、女神さまは再びカードを受け取り一瞥してから一つの職業を選びだした。
「なら、私は聖魔導士になるとしましょう。この先回復役は必要となるでしょうしね」
「わ、わかりました!」
そうして冒険者登録を済ませると、周囲にいた冒険者たちが沸き立った。
「おい!レア職だってよ!」
「いったいどんな職業なのかしら?」
「新しい英雄の誕生だ!」
そんな歓迎の波は瞬く間に俺たちを覆い、そのまま宴会の様相を呈すのであった。
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夜、宴会も解散し、俺たちの持っているお金で泊まれるところを探して、結局馬小屋で寝泊まりすることとなってしまった。
最低限しかない荷物を置くと、俺はふと、今日の冒険者登録の時のことが気になってしまった。幸いまだ女神さまも寝る様子はないし、聞いてみることにしよう。
「なあ、冒険者登録の時の一体何があったんだ?」
「あなたは何か聞く前に、自分の頭で考えられないのですか?」
「んなっ!?」
女神さまの物言いに、カチンときて言い返そうとするが、その前に女神さまがため息をついて言葉を続けた。
「いえ、あなたにはわかりようもない話でしたね。折角です。今の私の現状と一緒にお話ししましょう」
そう言って、女神さまは今までにないほどに真剣な瞳で俺を真正面から見据える。俺の胸がドクンと鳴り、その言葉が紡がれる一瞬の沈黙にごくりと息をのんだ。
「まず、端的に言ってしまえば、ここにいる私は本物ではないのです。それどころか、偽物ですらありません」
「は?いや、一体何を言ってるんだ?実際、お前はここにいて、話しているじゃないか」
「……私たちがこの世界に堕ちる際、六祖大縛呪。光の帯に私が封じられたことは覚えていますね?」
「あ、ああ」
その際のことを思い出し、同時にあの恐ろしい形相の女神さまを思い出してしまい、思わず身震いしながらも、何とか返答する。
「あれは、昔私がアリス……邪神アリスフィーズ擁する6体の魔物、六祖と、そしてアリスフィーズ本人を封印するために生み出した呪法。内部の存在から力を奪い取り、それを結解の維持に使う、囚われた対象が強ければ強いほど逃れえないという大魔法です。当然、女神である私も、一度とらわれてしまえばそこから逃れるすべはありません」
でも、今ここにいるじゃないか!と言おうとした俺の口に、女神さまの指が添えられる。
「ただ、例外はあります。例えば、内部の存在に比べれば弱小と言っても過言ではない存在を分体として生み出し、それを遠隔操作する。あるいは、一時的に魔素を爆発的に上昇させ、吸収される以上の魔素の暴力によって一時的に本体を顕現させるなど、ね」
そして、女神さまは憂鬱そうに顔を俯かせる。
「尤も、今の話もまだ半分なのです。私、女神イリアスは、本来ならこの世界の転生に関わる神ではありませんし、日本に関わる神でもありません。邪神アリスフィーズと世界をめぐって争い、勝ち取った。そんな世界で唯一崇められていた神。それが私でした。
何年も、何十年も、何百年も。人と、人ならざる者との戦いを遠いところから眺め、時に導き、時に罰し、天使を派遣してきました」
その話しぶりに、少し自嘲のような物を感じ、俺はいぶかし気に女神さまを見るが、女神さまはそれに気づかず言葉を続けた。
「そんな時に、あの私たちが初めて会ったあの場所を見つけたのです。そこには青髪の女……女神がいて、私がお酒飲む間ちょっと仕事替わって!などと……思い出すたびに腹立たしいですが。そういう経験がなかったものですから、驚いて対応を考えている間に、気が付くとあの人はいなくなっていて……」
今度は打って変わってうれし気な顔をする女神さまは、かすかに口の端を上げながら思い出を懐かしむように目を細めた。
「でも、なんとなく、その時のことが忘れられなくて、私は分身を作って度々あそこに行くようになったんです。……まぁ、あまりに通いつめすぎて、いつの間にか職務放棄していた青髪の女神がクビになってたのは驚きましたが。今でもたまに愚痴りに来るんですよ……ふふっ。
だから、私のギルドカードが上手く登録できなかったのは、そのせいでしょう。私は本体の分身のそのまた分身なのですから」
「なぁ、女神様……いや、イリアス様」
「何ですか、カズマ」
「いや、大丈夫か?」
「?何がです?」
「いや、だってお前、今にも泣きそうな顔してるぞ?」
バッと顔を抑える女神さまは、自身の顔を確認して眦にたまった雫に気が付くと、堰を切ったようにその青い瞳から涙が溢れ出した。
「あ、ああああっ!な、なんで……」
泣きじゃくる女神さまに、俺は思わず女神さまの頭を抱えた。女神さまはそれに抵抗せず、何度も何度も俺に頭をこすりつけては嗚咽を漏らした。俺は思わず抱きしめてしまったが、それ以降の対応が思い浮かばず、固まってしまった。
「カズマ……サトウカズマ、一つ答えなさい」
一通り泣きじゃくり、少し落ち着いたところで、女神さまがそう聞いてきた。
「私は、一体何者なのですか?私の大本は異世界におり、私を生み出した本体は封印されて、残りかすの搾りかす。そんな私は、一体何だというのですか」
俺は一瞬目をつぶり、そして大声を張り上げる。
「知るかボケぇ!」
「!?」
「俺たちゃ今日あったばかりの仲だぞ!そんな重いこと言われてもなんて返せばいいかわかんねぇし知りたくもねえよこんちくしょう!」
「なっ!なんという言いざま!あなたには人の心がないのですか!女が泣いているのに暴言とは、流石童○ですね!」
「ど、童貞は関係ないだろ!っと、とにかく俺はあんたが今までどんなこと考えてどんなことをしてきたかなんて知らない……ただ、あんたはあんただ。俺をこの世界に転生させて、その特典で連れてこられた女神さまだ。そうだろ?」
「……え?」
呆然とする女神様に、俺は照れ臭くなり、顔を見れないまま語り掛ける。
「その、さ、あんたの本体がどうだとか、異世界の原点がどうだとかってさ、本当に大事なことなのか?俺はお前のことはよく知らないけどさ、せっかく異世界に来たんだ。自分は何者か、なんて小難しいことは忘れて、今の自分として楽しんだ方がいいんじゃないか?」
「今の自分を……楽しむ?」
話すのをやめてしまった女神さまと同じ場所にいるのがいたたまれなくなり、俺はそそくさと寝藁の方へともぐりこんだ。
「お、俺はもう寝るからな!お、お休み!」
なんだかどぎまぎしつつも、慣れない異世界での疲れもあったのか、俺はあっさりと夢の世界に堕ちて行ったのだった。
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「おはようございます。サトウカズマ。ご主人様よりも起きるのが遅いなど、出来の悪い下僕ですね」
「下僕じゃねーよ!」
思わず聞こえて来た言葉に飛び起きると、そこには満面の笑みを浮かべた女神さまがいた。
「あ、ああおはよう。女神様」
その言葉に、少し眉を揺らして女神さまは俺の手に自分の手を置いた。
「違いますよ」
「え、でも、お前は女神……」
「違いますよ。あなたも昨日言っていたじゃありませんか。自分は何者かではなく、何をしたいかが大切だと。あれから考えて、思ったのです。私がやりたかったのは、この手でアリスの手先、モンスター娘どもを駆逐することだと!」
「うんう……うん?」
一瞬納得しかけたが、なんか変なのが入ってなかったか?
「だから私は、これから創世の女神イリアスではなく、ただのイリアスです。よろしくお願いしますね。サトウカズマ」
「あ、ああわかったよ。よろしくイリアス」
何はともあれ、元気になってよかったと思ったのだが、その後、街中にいた冒険者風のミノタウロス(女)に突撃し、斧の一撃でビクンビクンしてたイリアスを見て、説得失敗したかな、と思ったのはまた別の話。
こんなにがっつり書く気はなかったけど、こういうことになってしまったよ。
二次創作って難しいね。
本当はカズマも妖術師とかのもんパラジョブにしようかとも思ったけど、逆におもんなかったので普通に冒険者のままで行きます。
今後で行くとエクスプロージョン(オーバーロード※もんパラでのマダンテっぽい技)の置換も考えたけど、森羅万象士って現状なれる人がほぼコラボキャラだけだからうーんってなる。
主要キャラを誰に置き換えるかはとても悩ましい問題です。一応設定的には、クエ世界やパラ世界のもん娘とは同種別個体扱いで記憶引継ぎは無しの形にはなると思うけど。例外は、イリアス様、アリス様関連。
個人的にはイリアス様の傲慢さの原因の一つって、その唯一無二(初代アリス除く)の実力にあると思うから、分身の分身っていう立場に置かれると大本のイリアス様と、自身の間の線が薄くて「(大本の)自分という絶対存在がいるせいで自分の絶対性に自信を持てないイリアスちゃん」ができるんじゃないかと思ってる。
変更点
・イリアス様のみパラ世界のジョブシステムを使用
・駄女神が開始時点でクビになっている