この素晴らしい世界にもんむすを!   作:邪魅魑

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EP29 商人の頼み事

「「「幽霊屋敷?」」」

 

 シロムと、ついでにということで俺達も同席して話を聞くと、そんな話が始まった。

 

「ええ、最近の幽霊騒ぎはラ・クロワの嬢ちゃんも知ってるだろうが、あたしが世話してる不動産屋でも起きちまってねえ」

 

「あぁ、話は聞いている。なるほど……そのことだったか」

 

 改めてペストマスクを目深にかぶり直したシロムは、先ほどよりも幾分か低い声で女に対応していた。

 

「……って、ちょっと待て、ここって道具屋だよな?シロ……じゃなくて、ラ・クロワさんになんで依頼の話を持ってきてるんだ?」

 

「おや、知らないかい?ラ・クロワの嬢ちゃんは、ここに店を構える前は凄腕のウィザードとして冒険者や町の者たちの間でも有名だったんだよ。特にアンデッドに対する造詣と対応力は一線を隔しててね。商店街の者は、何かあればラ・クロワの嬢ちゃんに助けを求めているんだよ」

 

 それを聞いて、ラディオが無表情に胸を張っていた。

 

「それよりも依頼の話だったね。詳しい話はまた話すけど、その屋敷で怪異現象が収まらなくてね。どうも悪霊の類がすみ着いてるみたいなんだけど、除霊しても除霊しても、怪異現象が収まらないようなのさ。それで売り払いたくても、屋敷も処分できないと大層困っててね。どうにか怪異現象が収まらない理由だけでも分かれば、対策が立てられるかもしれないんだけど……そうだね、今日はこれくらいにしようか」

 

 そう言うとその女性は話を切り上げた。

 

「どうやらお嬢ちゃんは体調がよろしくないようだしね。来週位にまた来るから、体調を戻しておいてくれると助かるよ。ちょうど、イキのいい従業員も入って来たところだしね。いろいろと忙しいのさ」

 

「いや、私は……」

 

 そう言って立ち上がろうとしたシロムは、しかし少しバランスを崩してその場でたたらを踏んだ。それを見た女性はうなずいて帰ろうとする。

 

「……」

 

「……」

 

 俺がイリアスを見つめると、流石に原因が分かっているからか、イリアスが少しばつが悪そうに座っていた。

 

「……」

 

「……っ、ええ、ええ分かりました!いいでしょう!その依頼、私達が引き受けます!いいですね!カズマ」

 

 結局そう言うことになった。イリアスにも良心の呵責があったようで何よりだ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 俺たちがたまも、エルと共に以来の屋敷に行こうとすると、声をかけて来る者があった。

 

「久しいな、カズマたちよ」

 

「クリス!そっちは良いのか?」

 

 声をかけて来たのはクリスだった。クリスは静かに頷き、不敵に笑う。

 

「うむ、商店街の者に世話になってな、結局盗賊ごっこはやめて、奉公修行に出ることになった。それと、例の件も目途がついたぞ」

 

「本当か!あぁ、そりゃ……あー、タイミングがいいのか悪いのか」

 

 苦笑する俺に眉根を寄せるクリス。どうせならと俺はたまも、エル、クリスの三人に今回の依頼を受けることになった経緯を説明をした。

 

「……ってわけでイリアスがラ・クロワの代わりに依頼を受けたんだが、その時の報酬でその家の悪評が消えるまでは住み続けていいって話になっててな」

 

「ふむ、なるほど。商店街からの依頼であったか。それなら余も手を貸そうではないか!先ごろチビ共を預けた借りもある。余の力、存分に使うがよい!」

 

 そう言うと俺の肩に手をかけた。

 

「して、具体的にはどのようにすればいいのだ?」

 

「除霊と怪奇現象の解明」

 

 ピシリと、空気が凍った。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「なあ、クリス。俺たちが受けた依頼なんだから、そんなに怖いんなら帰っていいんだぞ?」

 

「なななな、何を言うのだ!私は誇りあるアリス……ではなく、旅のグルメ!約束を破るなどそんな不義理なことができるものか!そ、それに、怖いとはななんだ?だれが怖がっているというのだ?」

 

 明らかに怖がっているクリスだが、邪神の末裔であるプライドからか、一向に帰ろうとせず、結局こんなところまでやってきたのだった。

 

「……おるのう」

 

「おる!?な、なにがいるというのだ!?」

 

 たまもの言葉に敏感に反応するクリスに、追い打ちをかけるようにイリアスが言葉を続けた。

 

「安心なさい、クリス。悪霊ではありませんよ。あれは地縛霊の類です。どうやら生前は熱心なイリアス教徒だったようですね。名前は、”アンナ・フィランテ・エステロイド”皆に愛されるような素直な少女。ただ、現実は非常で、病弱な父親は病死し、母親であるメイドは行方知れず。腫れ物に触るかのような周囲の反応に、自分への愛を感じながらも寂しさを感じていたようです。とはいえやはり子供、少しいたずらをすることは有ったようですね。好きなものは……」

 

「……なあ、あれって本当なのか?」

 

 ぺらぺらとしゃべりだしたイリアスを不審に思い、たまもに問いかけると、たまもは肩をすくめて答えた。

 

「知らぬよ。うちは聖職者でも呪術師でもないのでのぅ。ほれ、うちはあれじゃから、ここに何かいる、というのはなんとなくわかるのじゃが、それが何かとかはようわからんのじゃ」

 

 つまり、狐ならではの勘の鋭さ、という事か。

 

「ただ、そこに何かおるのは間違いない。まあ、恐らく敵意はないじゃろう」

 

 実際にいるのはいるらしかった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 俺たちは一旦荷物を置き、少しリラックスする。早めに到着したが、異変が起こるのは真夜中だそうだ。だから、今日はここに一泊泊まることになる。

 

「……ん」

 

 ふと、俺は部屋の中を見回した。品のいい調度品に紛れて、精巧な人形がいくつか配置されている。いわゆる西洋人形と言われる人形に近いものだろう。正直精巧過ぎて少し怖いくらいだ。

 

「ここの家の持ち主は、結構そう言うのを集めていたのかもしれないな」

 

 とはいえ、怖いのは怖いので、部屋の中にある西洋人形は壁の方を向かせておく。その後は特に何が起こるでもなく、食事を済ませた後はさっさとベッドに潜り込んだのだった。

 

 そして暫し。トイレに行こうと目を開くと、部屋の隅に置いた西洋人形がこちらを見ていた。

 

「……ん?何でこっち見てるんだ?ひっくり返し忘れたか?」

 

 そう考える俺だったが、違和感がぬぐえない。そもそも、あんな場所に人形は置いてあっただろうか?

 空恐ろしくなって俺はトイレも忘れて布団をかぶった。

 

 なんだか、ザリザリとした音が聞こえる気が……いや、気のせいだ気のせい!俺は目を閉じ続けた。……すると、ふと音が止まる瞬間が訪れた。俺はほっと溜息をつく。あれは気のせいだ、俺がビビッて幻聴を聞いたに決まってる。しかし、それを確信に変えるために、最後に一度だけと決めて、俺は目を見開いた。

 

 俺の目に飛び込んだのは、先ほどの西洋人形が、俺の顔をじっと見降ろしている姿だった。

 

「あああああああああああああああああああああ!?????」

 

 俺は西洋人形を突き飛ばし、屋敷内を走り出した。

 

「イリアス!イリアス様ぁ!助けて!助けてぇ!?」

 

 俺は全力でイリアスの寝泊まりする部屋のドアに突撃し、中に転がり込んだ。そこにイリアスの姿はなく、替わりに巨大で細長い体をした化け物が……。

 

「うあああああああっ!?」

 

「もう、いやだあああああ!?」

 

 混乱する俺達だったが、その声に聞き覚えがあることに気付いた俺は、その声の主に声をかける。

 

「な、なあ、もしかして、クリスか?」

 

「ガクガクガクガク……、ふ、ふぇ?も、もしやカズマなのか?」

 

 ラミア状態のクリスはこちらをちらりと見ると、ハッとして姿勢を正した。

 

「カズマも、ここに来たのだな。うむ、ということは、其方でも、異変が起こったのだな?」

 

「今更取り繕っても意味ないと思うぞ?」

 

「ぐっ……」

 

 俺の言葉にぐうの音の出なかったのか涙目でにらみつけるクリスに、俺は問いかける。

 

「それで、イリアスはどこなんだ?ここ、イリアスの部屋だったろう?」

 

「……どうやらイリアスはここを出て行ってしまっているようだ。たまもの臭いも残っているから、おそらくはこの異変の元凶を探しに行ったのではないか?」

 

 そう言うクリスはぎゅっとシーツを掻き抱いた。

 

「くっ、恥を忍んであの女神の所に来たというのに……何たることか」

 

 そう言うと、引き裂かんばかりにシーツを抱きしめる。

 

「……まあ、お互い大変だよな」

 

 俺も同じ口だから大きなことは言えない。……二人になって安心したからだろうか。忘れかけていた尿意を思い出し、俺はブルリと身を震わせた。

 

「……あーすまん。クリス、ちょっと後ろ向いててくれるか?ちょっと窓から失礼して……」

 

「いやちょっと待て、貴様、何をしようとしている……まさか、一人ですっきりする気ではあるまいな?」

 

 その言葉にクリスを凝視すると、ラミアでわかりにくかったが、人間で言う腰のあたりを小刻みに揺らし、顔を赤らめる姿は、人間でもたまにやるある姿に酷似しており……。

 

「なあ、もしかしてクリス……」

 

「ち、違うぞ!邪神の末裔たる余はトイレなど行かぬ!行かぬが……」

 

「ああ、行かないのか、ならいいよな。うん、どいてくれ、俺はただの人間だからそう言うのが必要なんだ」

 

「まてまてまて!」

 

 俺の言葉にクリスは俺の襟首をつかんで引き留める。

 

「は・な・し・て・く・れ!このままじゃ俺の膀胱がエクスプロージョンすることになるぞ」

 

「何とは言わぬが離さぬぞ!何を一人で気持ちよくなろうとしておるのだ、行くならば余も一緒だ」

 

 邪神の末裔とは思えない良い顔でそう言うクリスに、しかし俺はなおも反駁する。

 

「いやいやいや、ホントで限界だから!何だったらほら、お前にはこの壷をだな……」

 

「な、貴様、今何を言おうとした!まさか貴様余にこれで、用を……」

 

 急に声が止まったことを不審に思い、クリスの視線の先、窓の方を見る。

 

「……ひぇ」

 

 そこには、窓にびっしりと張り付いた人形、人形、人形。恐ろしいほどの数の人形がこちらをのぞき込んでいた。

 

「う、うあああああああああああ!」

 

 俺は呆然とするクリスの手を引いて、全力でその場から退散するのだった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「な、なあ、カズマ、そこにいるのだな?」

 

「ああ、いるぞ、というか、少し早くしてくれないか?正直おれも限界なんだが……」

 

 人形たちから逃げ出して少し、追手がいないことを確認して、俺たちはトイレに向かっていた。

 

「いや、暫し待て、その、人間用の便器というのは、あまり慣れなくてな。……うむ、これでよいはず……」

 

 不安にさせる言葉を吐きながら、クリスは準備を済ませたようだ。

 

「……」

 

「……」

 

「なあ、少し歌でも歌ってくれないか?その、音を聞かれるのは、ちょっと……」

 

「言ってる場合か!さっさとしろ!」

 

 俺がそう言って扉をドンと叩いたその時だ。……。

 

「?」

 

 なんとなく寒気を感じ、俺はちらりと曲がり角を見た。そこにはじっとこちらを見つめる目が……。

 

「クリス‼クリス!」

 

「な、なああっ!?」

 

 俺はクリスにかまわずトイレのドアをこじ開け、幸い人の姿になっていたクリスを抱えて逃げ出した。

 

「この下郎!ゲス!ドアホ!」

 

「言ってる場合か!後ろ見ろ後ろ!」

 

 視界の先で人形を見た俺は、慌てて近くに空き部屋に飛び込んだ。……だが、万事休すか。扉の前に何者かが集まってくる音が聞こえていた。

 後ろのクリスを見て、俺は心を決めた。

 

「ガクガクガクガク……」

 

 ここは、俺がやるっきゃない!俺はドアを思いっきり開け、そして手を振り回す。

 

「オラッ!人形ども散りやがれ!しまいにゃうちの狂犬女神けしかけるぞオラァッ!!……あれっ?」

 

 そこにあったのは、散乱した人形と、それを弄ぶたまも、そして、なぜかはいつくばっているイリアスの姿だった。

 

「……どうやら、術は解けたようじゃの。何よりじゃ」

 

「じゅ、術?どういうことだ?」

 

 たまもに聞くと、どうやらこの大騒動、幽霊の仕業ではないらしい。

 

「恐らくは魔芸師がおるのじゃろうて。多少は本物がおるのかもしれぬが、少なくとも今動き回っておったのは全て誰かが操っておったまがいものじゃ」

 

 そう宣うたまもの言を聞き、先ほどまでガクブル震えていたクリスがこちらへとやってきた。

 

「……そうであったか。全く、余をこれほどに追い詰めるとは、許しておけぬな」

 

 そう言って、先ほどの怯えはどうしたのかというほどに落ち着き払ってあたりを見回した。

 

「イリアスは……気絶してるな」

 

 見れば、顔に痛々しい縦の跡が付いている。

 

「……」

 

「……」

 

 無言でたまもを見ると、あきらめたように頷かれた。つまり、俺のせいということだ。

 

「よ、よし、イリアスは今まで頑張ってくれてたみたいだし、一足早く部屋で寝ててもらおう、俺たちは、原因を探るぞ!」

 

 俺たちは一旦イリアスを部屋へ返した後、たまもが人形を捕えて確認した、術者の場所へと急ぐのだった。

 

 

 




と、いうわけでホラー回です。
 ここのアークウィザードはどっちかって言うとオカルト系にクッソ強そうなので、女神様と一緒に討伐隊で出張ってもらいました。

 そのせいで割を食う盗賊さんェ……。こいつの対になってる女神がガチで排泄不要な可能性あるから実際排泄不要言い張ってもおかしくないんだよなぁ。(なお実際)

 もんクエやってる人の中には職業で察した人もいると思いますが、犯人は例のちんちくりんです。そして、リッチーがあの人という事は……?

変更点
・依頼を取り下げる理由を変更
・依頼前に盗賊に出会うよう変更
・アークウィザードが何者かの存在を察知
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