この素晴らしい世界にもんむすを!   作:邪魅魑

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EP30 あ、野生のクロムが飛び出してきたぞ!

 俺たちが人形を操っていた術者を探して向かった地下。そこは地獄絵図だった。

 

「な、何なんじゃあ!おぬし!」

 

「「「いいじゃないちょっとくらい……じゃなくて、そのいたずらをやめなさい!」」」

 

 それは、見た目こそ黒いナース服を着た紫色の肌をした幼女という、ちょっと異色の存在に対してではあるものの、完全に幼女とそれを追いかけまわす水色の変態の姿だった。しかもなぜかその変態は数が3人に増えている。

 

「お、おぉ!お前たち、この変なスライムを止めるのじゃ!ずっと追いかけまわされて困っているのじゃ!」

 

「あなたが悪いことをしているから捕まえようとしているんでしょう?」

 

「嘘なのじゃ!ならなんでフレデリカの包帯だけが溶けて消えちゃったのじゃ!」

 

 見れば、隅の方に全裸でうずくまっているゾンビっぽい人の姿があった。

 

 というか、エルはエロ同人御用達の装備だけ溶かすスライムだったのか。いや、そんなバカな。

 

 若干エルに対する認識が下方修正されつつも、俺たちはエルに制止の声をかけた。

 

「おーい、エル!そろそろいいんじゃないか?上の人形たちも全部止まったみたいだぞー」

 

「……」

 

「おーい、エル―!」

 

「……」

 

「おーい、エル―!」

 

「……」

 

「おーい、○リコンスライムのエル―」

 

「……っ!分かったわよ!」

 

 四度目の声掛けでやっとエルは追いかけるのをやめ、出していた分身も一つにまとまった。

 

「ふぅ、助かったのじゃ」

 

「……クリス」

 

「バインド」

 

 安心してこちらに近づいてくる少女に対し、クリスに目くばせをするとその意図を察してクリスがさっと少女を捕縛する。

 

「な、なんでじゃあ!?」

 

「いや、勘違いしないで欲しいんだけどさ、俺達、この屋敷の持ち主に頼まれて、怪異現象の原因を探ってる冒険者なんだわ」

 

 その言葉を聞いて、少女の顔がサッと青ざめる。

 

「そ、それは、その、あの」

 

 しどろもどろになる少女に、いっそ安らかな顔でクリスが笑いかけた。

 

「ふむ、話さぬか。良いぞ、話さんで、話したくなるまで、じっくり、たっぷり、余が相手をしてやろう」

 

 そう言って、その笑みを嗜虐的なものに変えたクリスに、少女はすぐに限界を迎えた。

 

「は、話すのじゃ、全部、全部話すのじゃ!!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「儂の名はクロム、クロム・アルティストなのじゃ。栄えある魔芸三大大家の一つ。偉大なる魔術の深淵を覗く家だったのじゃ」

 

 それを聞いて、クリスが驚愕の表情を浮かべ、そして次にそれが憐みの表情に変わる。

 

「そうか、貴様、アルティスト家の者だったか。アルティスト家は、現在、没落しているのだったな」

 

「なのじゃ。栄華を極めたアルティスト家が没落することなど本来はないのじゃ。じゃが……儂のせいで……姉さまは……」

 

 クロムの口から語られたのは、暗い過去だった。

 素材を求めるために冒険者としても名をはせていた姉について行きそして研究と称してダンジョンのあちこちを調べているうちに、ランダムテレポートの罠にかかり深層に転移。そこにいた機械仕掛けの悪魔と相対した彼女の姉が取った手段は、クロムを再びランダムテレポートで緊急避難させることだった。

 

「儂はるか遠くまで飛ばされ、それでも姉さまなら窮地を脱しておると信じておった。しかし、屋敷に戻ると、そこはもうアルティスト家のものではなかったのじゃ」

 

「……アルティスト家はある時期から当主とその唯一の血縁が行方知れずとなり、捜索の手掛かりすら掴めなかったため、血が断絶したとして取り潰されたはずだ」

 

 クリスの言葉に、俺達は同情の色がこもった目でクロムを再び見る。

 

「じゃが!儂はあきらめぬのじゃ!儂が魔芸を極め、そして再び貴族として返り咲くことで、姉さまの威光も知らしめられるはずなのじゃ!」

 

 その、底抜けに明るい言葉に、しかしから元気を感じ、俺たちは微妙な顔で顔を向け合った。

 

「……その、この屋敷を使ったのは、研究には広い場所が必要だったからなのじゃ。じゃから、その、……ごめんなさいなのじゃ」

 

 先ほどの元気さは鳴りを潜め、項垂れるクロムだが、俺たちの中のクロムを衛兵に突き出そうという気持ちはかなりしぼんでしまっていた。

 

「なあ、どうする?これ」

 

「ふむ……じゃが、放置するわけにもいかんじゃろう?同情できるからと言って、このまま放置していい案件でもないじゃろうし」

 

 そう言う俺達の言葉を聞いて、クリスは腕を組んで答えた。

 

「クロム、貴様は貴族になって何を望む?」

 

「なんでそんなことを聞くのじゃ?……意味が分からぬが、そんなもの、一つしかないのじゃ。アルティスト家の復権。姉さまの威光を世に知らしめることなのじゃ」

 

「その威光と力を使って、貴様は何を成したい?」

 

「……」

 

 立て続けの問いに、クロムはやや黙って、そしてにこりと笑った。

 

「何も、ただ、私の大好きな、シロムお姉ちゃんがどれだけすごかったかを皆に教えたいだけなのじゃ!」

 

 その言葉で、彼女の対応が決定したのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「おーい、シロム、屋敷の依頼、行ってきたぞ!」

 

「全く、だから私はラ・クロワだと、なん、ど、も……」

 

 シロムの雑貨屋に顔を出した俺達、俺、イリアス、たまも、クリス、そして最後にクロム。その全員を見渡して、シロムはペストマスク越しでも分かる驚愕を全身で表していた。

 

「おねえ、ちゃん、なのじゃ?」

 

「違う」

 

 先ほどとは違う、ラ・クロワと名乗るときに使う低い声が、ペストマスク越しに響く。

 

「いや、お姉ちゃんなのじゃ、儂にはわかる」

 

「違う」

 

「シロム、お姉……「違う!」」

 

 あの穏やかなはずのシロムが激昂して机を叩いた。

 

「私はラ・クロワだ。貴様の姉はダンジョンの奥深くで機械仕掛けの悪魔に殺されたのだ」

 

「……そんなはずがないのじゃ!姉さまは、誰よりも強くて、優しくて、すごい人だったのじゃ!」

 

 その言葉に、シロムはしばし沈黙し、そしてペストマスクを外した。

 

「!やっぱり、シロムお姉ちゃんなのじゃ!」

 

 喜色を浮かべるクロムに、シロムはため息をついてクロムを見つめた。

 

「分からないか?クロム。私はお前に、会いたくないんだよ。こんなこと、私の口から言わせないでくれ」

 

 その突き放した口調に、しかしクロムは妙な納得を伴った表情で姉を見据えた。

 

「お姉ちゃん。やっぱり、そうゆうことじゃったのか。お姉ちゃんの死因は、儂、なのじゃな?」

 

「何を馬鹿な、お前ごときが、私を殺しうるとでも?」

 

 そう言うシロムの声は、しかし動揺に上ずっていた。

 

「なら、お姉ちゃんのお腹を見せてほしいのじゃ」

 

「……っ!」

 

 シロムは思わずと言ったように腹を押さえて後ずさった。

 

「そんなことないって、思っていたのじゃ。きっとお姉ちゃんは無事だって思っていたのじゃ。だけど、だけど、お姉ちゃんがランダムテレポートで儂を逃がしてくれた時、お姉ちゃんの脇腹から、何かが出てくるのを見た気がしたのじゃ。きっとあれは、あの悪魔の攻撃だったのじゃ。

 

 もし、儂が冒険について行っていなかったら……儂をランダムテレポートで逃がそうとしなければ、きっとお姉ちゃんは悪魔も倒して、生きていたのじゃ」

 

「違う!あれは私の不注意が……あ」

 

 思わず出てしまったシロムのその一言は、遠回しにクロムの予想を肯定するものだった。

 

「……はぁ、どうやら私も焼きが回ったようだね」

 

 そう言って、シロムは疲れたように椅子にもたれ掛かり、そして一筋の涙を流した。

 

「……さっきはああ言ったが、本当は、会いたいと思っていた。どうか、生きていてくれと。そして、矛盾するようだが、あの場にいた中で、唯一生死が確認できなかったお前が、どうか私にかまわずに、自分の生を謳歌してくれと、そう思わない日はなかった。お帰りクロム。こうして会えて嬉しいよ。そして、私なんかにかまわず、君は先へ進むんだ。アルティストのためじゃない。私のためでもない。君自身のために。君は進まなくちゃいけないんだ」

 

 その言葉を受けて、クロムは顔を伏せて暫く黙った後、一筋の涙を浮かべながらそれでも満面の笑顔を浮かべて、姉に……否。偉大なる魔芸師、シロム・アルティストに宣言する。

 

「シロム・アルティスト!儂はここに、世界一の魔芸師になることを宣言するのじゃ!そして、この国に、この世界に偉大なる魔芸師の遺志を継ぎ、その思いを継いだ魔芸師としてその威光を知らしめるのじゃ!だから、どこでもいいから、儂のことを、どこかで見ていて欲しいのじゃ」

 

 その宣言にシロムは淡く頷くことで答えたのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ふう、荷物の運び込み、終わったな」

 

 最後の荷物を屋敷に運び込み、俺は大きく伸びをして新しい住処となる屋敷を見回した。

 結局、怪異騒動の主犯であるシロムを突き出さなかったため、あわや依頼未達成になる可能性もあった今回の事件だが、同行していたクリスの口添えと、後日確認という言い訳で一日滞在したシロムの「今後怪異が起こる可能性は低い」とのお墨付きを用意した結果、依頼は成功、俺たちが無料でしばらく住んでもいい契約が履行されることとなった。

 そして……。

 

「ほうほう、それで、どうするのじゃ?」

 

「ここをこうして、こうなのじゃ!すると、ここがこうなって」

 

「なるほどのう」

 

 のじゃロリ二人が魔芸の術に関して議論を交わしている。結局、最高の魔芸師になることをシロムに宣言したクロムはこの屋敷に引き続き逗留することになった。その理由の一つが、所在さえ分かっていればシロムが万一会いたいときに会いに行きやすいこと、そして、もう一つが……。

 

「カズマ、頼むのじゃ」

 

「おう」

 

 そうして、俺はポケット魔王城を取り出し、ボタンを3回おし、底の台座をぐるりと回す。すると俺とクロムが吸い込まれるように小さくなっていき、気が付けば巨大な禍々しい城。つまりポケット魔王城の前へと移動していた。

 そう、前回の依頼の帰り際に、クリスが教えてくれたことによりとうとうポケット魔王城の利用も可能になったのだ。現在ポケット魔王城は、いろいろと道具を持っているクロムの住居兼物置のように利用されている。

 

 これが使えることになったのなら、サバサも迎えに行ってやらなきゃな、と思いながら俺は久々ののんびりした昼の時間を謳歌するのであった。




 お待たせしました。幽霊改め、野生のクロムちゃんが原因でした。なお、もんクエのクロムちゃんはお金がないという理由で死霊術に手を出していますが、この世界のクロムちゃんはどこかから資金を調達したらしく、魔道人形術に手を出しています。

 あと、作中でも語られていますが、クロムちゃんと出会うことはシロムの目的ではありません。彼女の目的は、ウィズと似た感じです……。ただ、機械の悪魔さん(意味深)から逃げられるかって言うとね……という話もあるので、そこは別行動してた体で行きます。

変更点
・幽霊騒動の原因を変更
・貧乏店主に妹が生える
・貧乏店主の仲間が少なくとも一部死亡している
・見通す悪魔を見通す悪魔(機械)に変更
・貧乏店主の妹が屋敷にすみ着くことに決定
・超絶便利アイテム「ポケット魔王城」の仕様が可能に!(まだ過去の姫君は収容されていない)
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