街を歩いていると、不審な人物二人を見つけ出した。
「おい、ベリアとテイラー、こんなところで何のぞき込んでるんだ?」
「……っ!っと、なんだカズマか……って、ちちち、違うぞ私は、テイラーがこんなところにいるから止めようとだな!」
「いやいや、お前がこんなところにいるから声かけたんだろうが!」
言い合いを始める二人に疑問符を浮かべつつ、俺はとりあえずその先に何があるかを見つめる。
「……ん~?」
ピンクのネオンが輝くそれは、蠱惑的な雰囲気を漂わせる……まあ、ありていに言ってしまえばそっち系のお店のようだった。
「え?ベリアってああいう店に行くの?」
「ち、ちちち違う!ただあそこにはこの街に来る時にお世話になった人がいて……」
「下の世話か?」
「…///」
冗談交じりに行ったセクハラでベリアが黙り込んでしまった。
「え?もしかしてマジで?」
さらに顔を赤くするベリアに野郎二人は顔を見合わせる。
「……なんつーか、すまん」
「まあまあ、ベリアもお年頃ってことだよ」
そう言って赤くなるベリアを楽しみつつ、俺は頭を巡らせた。
「なぁ、もしかしてベリアはその恩人にお礼を言いたいんじゃないか?でも、女性でこんな店に一人で入るのは勇気がいるよな?いいぜ!俺があの店に行く付き添いって感じでついてくれば良い!」
「みずくさいぜ、カズマ。そういうことなら俺も手を貸してやる」
「あ、いや、その……お願いします?」
俺たちはベリアが正気に戻る前にさっさと店の扉を開き、中に入る。
「あら、いらっしゃい」
中で出迎えてくれたのは多少ふくよかな、しかしとんでもない色気を持った女性の悪魔……いや、サキュバスだった。
淡い紫の紙から生えた耳の上にはその力の強さを示すように巨大な角が二本のび、背中には大きな蝙蝠のような翼、尻にはともすれば植物のツタのようにも見える巨大な尾が伸び、その先端が男を誘うようにくぱくぱと四つに分かれ開閉していた。
「あ、ど、どうも」
「えぇ、どうもこんにちは。それで、何の御用かしら?まあ、この店に来るなら、理由は決まっているようなものだけれど」
蠱惑的な流し目に、俺は思わずベリアの方を見て言い訳してしまった。
「いや、俺たちは、そのこいつが恩人に会いたいって言うから……」
「ちょ、待てカズマ、話が違っ!……いや、違わないけど違っ!」
混乱して意味不明なことを話し出すベリアに、何かに気付いたかのように笑みを深くするサキュバスさんはこちらに近づいてベリアの顔を撫でた。
「あら、また来てくれたのね。ベリアちゃん。うれしいわ……。あなた達もありがとう。サービスしちゃうわよ」
そう言って微笑むと、改めてと言う風に居住まいを正して店の説明を始めた。
「さて、ベリアちゃんから聞いているかもしれないけれど、このお店のことを説明させてもらうわね。
ここはサキュバスの集まるそう言うお店。あなた達冒険者は馬小屋生活の肩が多いでしょう?だから欲望を発散しようにも、環境がなかなか整わない。
だからと言ってもし仲間の女性冒険者を襲いなんてすれば……」
そう言って目を眇めたサキュバスさんを見ていると、心臓がドクンと鳴る。どうなるのだ、という視線を受けて、十分なためを作ったサキュバスさんは言葉を続ける。
「よくて武の心得のある女冒険者に逆襲され、最悪もん娘に逆レ○プされて金も精もすべて失い枯れ果てて死ぬまでその女性の奴隷となってしまうでしょうね」
その言葉に、ぞっとするものを感じ、俺とテイラーは顔を見合わせる。
「だからこそ、私達がいるのです。私たちサキュバスは性の種族。性に長けているという事は、逆に言えば手加減も、手心も思いのままという事。もちろん拒否もしないし、搾り取ることしか考えない他のもん娘とは違う。そして、私達は夢を通じてあなた達の元へと向かうことができる。ほんの少し精気を頂くことになるけれど、それも次の日の冒険に支障がない程度……もちろん、ご希望であれば精も根も尽き果てるほどの快楽も与えられるけど……。
とにかく、この店をご利用のお客様に快楽と明日への活力を与えること、それがこの店の存在意義というわけね」
話が終わったのを見計らって、俺はおずおずと問いを投げかけた。
「あの、夢を通じてってことは、もしかして現実とは違うこととかも」
「ええ、可能よ。だって夢だもの」
「も、もしかして、同じパーティメンバーのあの子とか、アニメのヒロインとかも」
「もちろん可能よ。アニメ……というのはよく分からないけれど、夢だもの。認識さえしっかりしていれば……」
「例えば、条例に引っ掛かりそうなロ○とかでも」
「もちろん、夢だもの」
俺とサキュバスさんはお互いに笑い合い、そして俺は答えた。
「で、ですよねー!だって夢なんだから!」
「あら、ノリノリね。必要事項があるから、こちらへどうぞ」
そう言うと、たくさん机が並べられた場所へと案内された。見ればたくさんの男たちが自分の欲望を紙に書き記している。……いや、違う!
「女が……いる!」
「あら、あなたは英雄様じゃない」
そうしてちょうど書き終わったのか立ち上がった女は、あのエヴァだった。
「ここは良い店よ。楽しみなさい」
そう言ってすたすたとエヴァは歩いていく。
”あいつ、女王様願望とかあるのか”
一瞬見えたクィーンの文字を見て少しどぎまぎしつつ、俺は自分の契約票を作成するために机に座ったのだった。
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サキュバスのお店によった夜。今日来るサキュバスの出張サービスに、俺はドキドキしながら屋敷で待機していた。
「口臭大丈夫か?それに、身体もよく洗っとかないと……いや、夢の中だから問題ないのか?あと、泥酔しないようにお酒は控えて、さっさと寝ること、だったよな」
そう言う風に考えていると、すごくはしゃぐたまもの声が思考を遮った。
「カズマカズマ!早ぅ降りてこい!すごいのじゃぞ!」
それを聞いて降りてみると、そこにはとても立派なカニが食卓を占拠していた。
「おぉ!カニか。こりゃすごい……が、どうしたんだ、これ」
「実家から私宛に送られてきたのよ。世話になっているパーティの皆様で召し上がってくださいって。ついでにお酒もあるわ」
そう言うエルの言葉に、全員が歓喜の声を発した。おずおずと食卓に座り、早速カニに手を付け、食べ始める。プリプリのカニは霜降り赤ガニというようで相当な高級品らしい。少し火であぶった後に、足を折って身を取り出す。
!!こりゃすごい。取り出すととてもいい色つやの身がぎっしりと詰まっている。恐る恐る口に運ぶと、電撃が走った。これはうますぎる!思わず次のカニの足に手が動く。
そうして3つ目の足に手が行こうとしたとき、クロムがその手に待ったをかけた。
「待つのじゃ、皆の者。折角いい酒もあるのじゃ。ここは儂が、この霜降り赤ガニと酒の、本当に美味い楽しみ方を教えてやろう!まずはこのカニ味噌を酒と合わせて……火であぶって……、そして、こうじゃ!」
その冒涜的な所業に、そして、それを飲み干した後のクロムの恍惚の表情に、思わず俺たちの喉もゴクリと生唾を飲み込んだ。……これは、分かる。絶対に旨い奴だ。しかも、一度手を付けたらもう止まることなどできないほどに!あぁ、どうして今日なのだ!今日でなければ思う存分この美味を堪能できるというのに!
この食事を楽しみ、泥酔するべきか、それとも食べずに済ますべきか。そう葛藤する俺に心配そうにイリアスが声をかけて来た。
「どうしたのですかカズマ?先ほどから手が止まっているようですが……?もしや、なにかありましたか?あなたは私の大事な眷属なのです。何かあったらすぐに言うのですよ?」
その言葉に、俺ははっとしてイリアスを見つめ返す。そうだ、何を考えていたんだ俺は。一番大事なのは仲間、そうに違いないじゃないか。今日はサキュバスのことなんて忘れて、この時間を楽しもう。それでいいじゃないか!
そう思い、俺は全員を見回して、一言。
「じゃ、俺は先に寝るから」
……欲望には勝てなかったよ。
今日は筆が乗っているので早めに投稿します。
今回から某決戦兵器対策前の卑し枠、サキュバスデリバリー編(超短編)です。
なお、店にいるサキュバスさんが誰かはご想像にお任せします。正直今でもちょっともったいないと思うところもあるので明言はしません。
あ、ベルアちゃんはあの後無事にお召し上がられました。
変更点
・不良冒険者が店に入ることをためらう(性別の違いから)
・店長サキュバスと不良冒険者が知り合い
・機織り職人をクィーン○○。○○に変更(性別の違いから)
・お酒の飲み方を女神ではなく貧乏店主の妹がレクチャー
今回も終わりが近づいてきたのでアンケートを置こうと思います。
章の間に挟む閑話についてのアンケート(すべてオリジナル展開となるため、ご期待に沿えない可能性があります。また、思いついたものを列挙しているので、完成が遅くなる可能性があります)
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