夜、静寂があたりを包む中、俺は湯船に浸かってのんびりしていた。
「はぁ~、いい湯だなぁ」
こうして浸かっていると日々の疲れが抜けていく、よう、で……。
……どうやら、あまりの心地よさに意識を飛ばしていたようだ。気が付くと電気が消え月明かりのみが浴室を照らしていた。そして……。
「ふぅ、疲れた時には風呂が一番なのじゃ……まあ、フレデリカがおるとうるさいからそこは嫌じゃ、が……」
おい、なんでクロムがここに……と思ったが、確かに俺は先ほど意識を飛ばしていた……つまり、これは夢!
「な、ななななな、なんでじゃ!?」
「クロム、こっち来いよ?」
俺はキメ顔でそう言う。
「な、何を言っておるのじゃカズマ!いや、おかしいじゃろコレ、おかしいよな?」
「いやいや……でもなんでクロムが出て来たんだ?確かに世間知らずのお嬢様って書いたし、お前は没落したとはいえ貴族令嬢だから当てはまってはいるけど……まあ、いいや、早くこっちに来て背中流してくれ」
「な、なんでお主はそんなに堂々としておるのじゃ!これ儂がおかしいのか?」
慌てるクロムに、俺はあきれつつも言葉を続ける。
「おいおい、無知設定にしてもちょっと凝りすぎだって、寒くなってくるし、早くしてくれよ」
「え?これ、儂がおかしいのか?いや、え?」
そう言いつつも、クロムはおずおずと俺の目の前までやってきて背中に手を当てる。
「えっと……」
「早く洗ってくれ。はよう!はよう!」
「わ、分かったのじゃ」
ペタペタと触れる小さな手に心地よさを感じながら、俺は背中をクロムに預ける。
「うう……儂は偉大なるアルティストの血族……何じゃったら、お姉ちゃんがその身を偽っているいま、当主と言っても過言ではないのじゃぞ?こんなことをしていては……」
そう言うクロムは、しかし俺の言葉に促されるように、ぎこちなくその手を背中に滑らせる。
「ああ、良い感じだ……。今度は、その胸を使ってくれよ」
「……な、なななな、なにを言うとるんじゃ!流石にそれはおかしい!おかしいのじゃ!」
そうイきるクロムに、呆れて俺は振り返る。
「もう、そういう小芝居はいいからさ、あぁ!もし小さいのを心配しているっていう話なら大丈夫だ!俺は小さいのも良いと思うぞ!」
「な、ななななな、あ、ああああ……」
もはや言葉を発しなくなったクロムに、俺は少し違和感を抱きつつ、しかしこれを趣向を変える機会ととらえた。
(……そうか、世間知らずのお嬢様を、俺がきれいにしてやるってシチュもありか……)
俺はそう思い直し、そしてクロムに手をかけようとしたとき……。
ドゴン!と玄関の方から凄まじい音が鳴り響いた。
「おいおいおい、何だこの音」
こんなことで俺のお楽しみの時間を不意にされてはたまらない!俺は呆然とするクロムを置いてタオル一枚で玄関へと走っていった。
「てめー!時間考えろ!一体何があ、った?」
俺が視界に捉えたのは、イリアス、たまも、エルの姿と、紫髪の小さな少女の姿だった。その少女は頭に小さめの角が生え、背中には蝙蝠を思わせる羽が、尻には逆ハート型の尻尾が生えている。
「え……?(あそこにいるのは、サキュバス?なんで?)」
「おや、カズマ、来ましたか……って、なんて格好をしているのです。あなたの変態性は置いておいて、早くここから去りなさい。下級とはいえ淫魔に裸同然の格好で相対するなど、搾り取ってほしいと言っているような物ですよ」
「全く、人形騒動の後は下級淫魔が忍び込んでくるとは、この屋敷には何かそう言う因縁でもあるのかのう?」
その理知的な言葉に、俺は己の勘違いを確信し、各々の得物を握りしめる仲間たちの前に立ちはだかった。
「……何のつもりですか?カズマ。まさか、下級淫魔に魅入られでもしましたか?」
「……ふむ、多少きついお灸をすえねばならぬかのう?」
イリアスとたまもの目が吊り上がる中、それでも俺はサキュバスの少女を目に収めることなく声をかける。
「ニゲロ」
「……ガクガクガク。だけど、私が逃げたら、あなたが……」
「ニゲロ」
「……ガクガク」
震えが止まらない少女を後ろに庇いながら、俺は不倶戴天の決意で少女の前に立ち続ける。
「気を付けるのじゃ!カズマは、そのサキュバスに操られておる!先ほども儂にいやらしい命令を!」
「……なんですって!?」
それを聞いて、静観していたエルが剣呑な空気を纏う。
「ロリに手を出すとはうらや……許せないわ!ぶっころしてやる!」
「ハヤク……ニゲロ!」
そう言うと、俺は仲間たちに向かって飛び出した。俺の決意が変わらないうちに、そして、俺の招いた不始末で彼女が討伐されないために!
「ショウ、ワッツ!!」
こうして、俺と彼女たちの戦いが幕を開けたのだった。
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「……なあ、本当に何も覚えておらぬのか?」
俺が庭にある石碑近くで草むしりをしていると、そんな声が降り注いできた。
因みに石碑につづられた名前は「アンナ・フィアンテ・エステロイド」ここを例のおかみさんから借り受けるときに、どうか墓の世話をして欲しい、と教えられたこの屋敷に住んでいたらしい元住人の墓だった。なんでも冒険の話が好きだったそうで「冒険者なら、冒険の話を屋敷ですれば、天国でこの子も喜んでくれるさね」と笑うおかみさんの顔が印象的だった。
と、そんな感傷もそこそこに、俺は声の主に振り返る。
「何も覚えてないってのは、昨日の話か?ああ残念なことにさっぱりだ」
俺はサキュバス騒動で彼女たちに襲い掛かってからモノの五分もかからずに伸され、そのままボコボコにされたのだが、良い感じにサキュバスに操られている、というのを皆信じたため、その勘違いを利用させてもらい、そのまま「操られて記憶を失った」ことにした。真実を話しても波風が立つだけだ。利用させてもらおう。
「む、むぅ」
あんまり納得していなさそうなクロムだったが、しかし俺がしらを切ればそれ以上の追及はできない。
「だけどさ、そもそも、聞いた話、お前インプの家系なんだろ?下級とはいえ淫魔に連なる一族なんだから、たかが男の体洗ったくらいで大げさだぞ」
「儂は研究一筋でそっち方面には疎いのじゃ!というか、お主、本当に記憶がないんじゃろうな?なぁ!」
そんなにぎやかな声を聞きつつ、緩やかに時が過ぎていく。
”緊急!緊急!ギガントウェポン警報!ギガントウェポン警報‼現在古代兵器ギガントウェポンがこの街へ接近中です!冒険者の皆さんは装備を整えて至急ギルドに!そして、住民の皆さんは直ちに避難を開始してください!”
そんなすべてをぶち壊す声が聞こえるまでは……。
お待たせしました。サキュバス編後編です。
if 原作準拠なら
エル「はあ、ちょっと汚れちゃったわね。あら、カズマ。入ってたのね」
カズマ「(なんか反応薄いな)俺の背中洗えよ」
エル「……まあ、それくらいならいいけど」
カズマ「(なんか反応薄いな)胸触らせろよ」
エル「……はい」ズポッ
カズマ「ぎゃああああ!?手が、手がああああっ!!」
強酸による化学火傷END
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if アークウィザードなら
たまも「くぅくぅ。風呂は良いものじゃのう……ん?おお、すまなんだ!もうカズマが入っておったか。うちはあとで出直すゆえ、ゆるりと過ごすがよいのじゃ」
カズマ「……こっち来いよ」
たまも「……ふむ、どうやらうちの耳が悪くなったらしい。うちは聞こえておらぬよ。うむ」
カズマ「こっち来いよ!洗えよ!こちとら待ちわびてんだよ!」
たまも「……カズマ。少し黙りおれ」
カズマ「なっ……(死ーん)」
…………
カズマ「はっ!?」
書置き”つぎはないのじゃ たまも”
何とか許されたEND
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if 女神様だったら
イリアス「ふぅ、やはり湯あみは良いものですね……おや、そこの下郎、今から私が入浴をするのです。早くこの湯から立ち去りなさい」
カズマ「いや、俺が最初に入ってたじゃん!?」
イリアス「……それもそうですね、やはり私には一番風呂がふさわしい。そう言うことですね。いいでしょう。ならば、カズマ、貴方は私のために風呂を徹底的に磨きなさい」
カズマ「なんでそんなことしなきゃいけなんだ!そして、さっきから思ってたがちょっとは恥じらえよ!隠せよ!」
イリアス「?いや、だってここには、私とあなたしかいませんし?下男程度に見られたからと言って、何になるというのですか?」
カズマ「さっきから下男下男うるせーよ!ああ!分かったよ!なら俺がお前を何とかしてやるよ!」
イリアス「裁きの雷」
カズマ「ぎゃああああああああああ!?」
イリアス「……ふう、仕方ありませんね」
…………
カズマ「……はっ!」
イリアス「目覚めましたか、カズマ。ここまで運ぶの結構大変だったのですよ」
カズマ「あ、あぁ、ありがとう?」
イリアス「まあ、その過程で、エルとたまもに今回のことを話したわけですが」
皆「覚悟は良いですか(かの)?」
カズマ「ぎゃああああ!?」
みんなでお仕置きED
みんな動揺しそうにないのでよそ者であるクロムちゃんを使いました。
変更
・セクハラ相手をクルセイダーから貧乏店主の妹に変更
・サキュバスをサキュバス三姉妹の一番震えてる子に変更
章の間に挟む閑話についてのアンケート(すべてオリジナル展開となるため、ご期待に沿えない可能性があります。また、思いついたものを列挙しているので、完成が遅くなる可能性があります)
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三番さんのアルカンレティア放浪記
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あの人は昔~サバサ編~
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よそ者たちのポ魔城会合
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IF もし駄女神がもんクエ参入(1)
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アンナ・フィランテ・エステロイドの一人言