あーでもないこーでもないと話を重ねた俺達だったが、一向に結論はまとまらなかった。なにしろ相手が相手だ。
例えば落とし穴はダメでも泥の底なし沼ならどうか、という意見に関しては、そもそも誰がそれをするのか、そして、以前雪で似たようなことをして失敗したと意見が出て黙り込み。
植物系のモンスター娘にツタで拘束してもらおうと提案すれば、危なすぎるうえに恐らくギガントウェポンを止めるには強度が圧倒的に足りないと言われてしまい口をつぐまざるを得なくなっていた。
なるほど、確かに厄介で、イリアスとたまもが逃げるのもわかるというものだ。
今もクロムが唾を飛ばしながらフレデリカでヒット&アウェイすると豪語しているが、失笑されていた。
そんな中、意見も出尽くして暇になったテイラーが俺に声をかけて来た。
「なあ、カズマ、カズマは結構知恵が回るし、何とかなるような手は思いつかないのか?」
突然の無茶振りに、俺は嫌な顔で答える。そもそも、俺だってたまもの爆裂魔法で吹っ飛ばしてもらおうと思っていたくらいで、それも結界があって上手くいかない。
……結界?
「なあ、イリアス。お前って、魔王城の城の結界でも、力が弱まれば解除できるんだよな?なら、ギガントウェポンの結界も解除できるんじゃないか……って、なんだこれ!?」
気が付けばイリアスの前にはそれはそれは見事な砂絵が完成していた。
「おや、カズマ。そうですね、結界を解除ですか……。少なくとも、封印される前の私なら片手間で可能だったでしょうね。現在でも苦手とはしていません。シロムの目算が間違っていないのならば、可能性は低くはないと思いますよ」
そう言いながらイリアスは砂絵を只の砂の塊に戻していってしまう。
「あぁ、もったいない」
「……ただの手慰みです。この程度ならいくらでも描けますよ。凡愚」
そんな風に言っていると、ギルド職員が身を乗り出してイリアスに顔を近づけた。
「ギガントウェポンの結界を破壊できる!?それは本当ですか?」
「落ち着きなさい。えぇ、できるかどうかは分かりません。ですが、全く勝ち目が無いのと、少しは勝ち目が出てくるのでは、かける手は決まっているでしょう?」
そのイリアスの言葉に、職員は頭を下げた。
「ええ!お願いします!」
そう言った職員の姿に、しかし冒険者たちは依然暗い顔であたりを見回していた。
「しかし、結解が壊れたとして、誰が攻撃するんだ?生半可な呪文は無意味なんだろ?」
その言葉でしんと静まり返った中、誰かが言葉を発した。
「いるだろ。この街にも、頭のキレるやつが」
「そうだな、よく冴えわたるキレた頭の奴が一人いる」
「よく切れる頭の子が、確かにいたな」
「ちょっとまて、その略し方じゃと、なんか怒りやすい子みたいに聞こえるからやめぬか!」
そう言って冒険者を止めたたまもは、ため息をついて続けた。
「残念じゃが、一撃ではあのギガントウェポンは倒せぬ。二人、欲を言えば三人は欲しい」
そうタマモが言い、皆が誰か凄腕の魔導士はいないものかと考えたところで、ギルドの扉が開く音がして誰かが入って来た。
「すまない!雑貨シルク・ドゥ・クロワのラ・クロワだ!冒険者の資格も持っているため、微力ながら力添えしに来た!」
それはクロムの姉、シロムであった。そして、シロムの登場に、冒険者たちが沸き上がる。
「貧乏店主さんが来てくれたぞ!」
「これで、これで勝てる!」
湧き上がる冒険者たちに呆然としていると、それに気づいたベリアが声をかけて来た。
「あぁ、ラ・クロワ殿は上級魔導士としてかなり有名だったんだ。引退後一時期姿を見せなかったんだが、結局この街に落ち着いてな。ああ、貧乏店主っていうのは始まりの街であるここで、上級のポーションなんかを売っているからだな。いくら品が良くても初心者の街では売れないんだ」
そんな話をしている間に、シロムはギルド職員に連れられて、今までの話を受けていく。
「ふむ……それでは、足を狙った方が良いだろうな。それと、クロム。他にも人形師がいれば足止めを頼む。左右の足を我とタマモで狙う……だが、できればもう一つ欲しいな。恐らくそこまで行けばギガントウェポンも撤退するだろうが、討伐は無理だ。我らが足止めした後に頭を狙えるような存在がいれば、一気に討伐まで持って行けそうなのだが……」
「とにかく、撤退まで行けるのなら十分です!早速準備しましょう!」
そう言う職員の声を聞き、一人の冒険者が視線を集めた。それは、以前の実績によるものだ。
「う、うちが仕切るのかの!?え、ええい!わかったのじゃ!緊急クエスト!開始じゃ!」
たまもの一言で、冒険者たちは歓声を沸かせたのであった。
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そんな作戦会議を経てすぐ、俺、イリアス、そしてシロムはケンタウロス娘に背負われてキールダンジョンに急いでいた。
「イリアス!本当に大丈夫なんだろうな?」
「えぇ!スフィンクス娘は、はるか昔から生きる強力なモンスター娘です!超古代の魔法を覚えていてもおかしくありません!」
そう、時間が合わずいけていなかったサバサを今の段階で迎えに行っているのだ。
「今回帰りはシロムのテレポートになる!ケンタウロスの二人に関しては、悪いけど走って帰ってほしい」
「分かっているさ」
そう言うケンタウロス娘たちに別れを告げ、俺たちは再び迷宮に入っていく。
そして数分後。俺たちの背後には無数のアンデッドがついて来ていた。
「……リッチーやべーな」
そのアンデッドたちは、元々敵だったはずのアンデッドだ、だが、イリアスに釣られてできた彼らは、リッチーの威光の前に降り、膨大な数のアンデッドの兵として俺たちの後をついて来ていた。
「死者を冒涜するようだが、彼らも街の防衛に出てもらおうか」
「安心してください。町の防衛で滅んだアンデッドは、私が祝福し、良き輪廻へ向かえるように導きましょう」
別の意味ではあるが、両者とも死者のエキスパートの二人である。仲間が増えることは有っても戦いは無く、あっさりとサバサのところまでやってきた。
「サバサ」
「……ん、おう、カズマではないか……。まて、カズマ、お主が来たという事は、まさか……」
「そのまさかだ。それと、ちょっと困ったことも起きててな」
俺が手短に説明すると、サバサは薄く微笑んで答えた。
「よかろう。妾はお主の物。我が秘術、お主のために振るおう」
そう言ったサバサと、ついでにアンデッドの大群を収容し、俺たちはテレポートで街へと帰ったのだった。
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サバサや大量のアンデッドの出現にいろいろと戸惑う冒険者の姿もあったが、シロムの人望と、そもそもそんなことに関わっている時ではないというたまもの鶴の一声で速やかに配置に着くことになった。
進行してくるであろう方面に大量のアンデッドの軍勢、そして、次が大量の冒険者、そして、更に後ろ、巨大な外壁の上に三人の姿があった。
「ふむ、生きる伝説に会えるとは、長生きしてみるものだな」
右にいるのはラ・クロワ。手に大きな錫杖を持ち、遠方を見据える。
「む、これは緊張感がヤバいのう。正直すっごく自信がないのじゃが」
左にいるたまもは、いつものふてぶてしさが無く、不安そうだ。
「若いの、もしや委縮しておるのかえ?ほほ、安心せい、もし失敗したなら、妾が二発はなってやるわ」
「な、何を!良いのじゃ!百年単位で引きこもっていた老いぼれに負けるものかや!とくと見よ魔術の深淵を!」
サバサのからかいに、たまもも奮起したようだ。そして、その上空にはイリアスが控えており、極限の集中からか、まるで後光のように周囲に力があふれていた。
「正面!ギガントウェポン接近中、数分後に接敵します!」
そんな声が響き渡り、全員に緊張が走る。そして、すぐに巨大な姿が見えた。
……でかい。それが人の姿をしていることが、遠近感がバグったような見た目に拍車をかけていた。その見た目は麗しい女性の上半身と、おぞましい六足獣の下半身。サバサも似たような見た目ではあるが、その攻撃的な見た目は彼女とは比べ物にならないほどの威圧感だ。
「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」
「いけません!急激に接近中!早急に、早急に作戦を!」
跳ねるように駆け出したギガントウェポンは巨大な足跡を作りながら超高速で接近してくる。
それに立ち向かうは、小さな天使だ。
「悪しきものよ。その身を隠す悪しき霧を霧散させん。『セイクリッド・ブレイクスペル』‼」
強力な閃光が光り、真正面からギガントウェポンに直撃する。
「UAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA‼」
叫ぶギガントウェポン、その言葉に、イリアスが目を見開く。
「人間が神を超えることを夢想するなど、恥を知りなさい!勝つのは私です!」
そう言って、イリアスが気合を入れ直すと、更に光った閃光がギガントウェポンを包み込み、そしてその結界を消失させる。
「GYAO!?」
驚愕の声を上げるギガントウェポンに、中指を立てつつイリアスが降下していく。
「任せましたよ!皆さん!」
その言葉で、シロムとタマモが詠唱を始める。
「「黒より黒く、闇より昏い漆黒に、深紅の混交を望み給う。覚醒の時来れり、無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!」
「UGAAAAA!?」
その詠唱に危機を感じたのか、少し硬直していたギガントウェポンがもう突進を始めた。が、直後にその顔が唐突な爆発でのけぞった。
「ふん!どうじゃ儂のフレデリカは!」
クロムがそう言ってガッツポーズを取った。見れば、戦車モードのフレデリカが真下にで主砲をぶっ放していた。そして、彼女はすぐにシロムの集めて来たアンデッド軍団の中に紛れた。
ギガントウェポンはよほど先ほどの攻撃が気に障ったらしい。その巨大な足でアンデッド軍団を潰しにかかる。なお、フレデリカ自身はすぐさま主砲を脱ぎ捨て、こっそりとこちらへと走り出していた。
そんな時間稼ぎを経て、シロムとたまもの詠唱が続く。
「踊れ踊れ踊れ、我が力の奔流に望むは崩壊なり。並ぶ者なき崩壊なり。万象等しく灰塵に帰し、深淵より来たれ!これが人類最大の威力の攻撃手段、これこそが究極の攻撃魔法、穿て!エクスプロージョン!」」
魔力の奔流がきらめき、莫大な魔力がギガントウェポンに飛来した。瞬間、巨大な轟音と爆音が響き、ギガントウウェポンの巨体が浮き上がる。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?」
絶えることのない悲鳴が響き渡り、ギガントウェポンが何もできずにうずくまった。
「よくやった二人とも。では、妾も見せるとしよう。古き魔術の深淵を!」
そう言ってサバサは六本の蛇の尾を逆立たせる。
「古き理、偉大なる精霊よ。我が魔力を喰らいてその力を示せ。回れ、回れ、回れ。巡る世界の果てに、終末を詠う果ての王よ。我こそが天蓋の破壊者、我こそが滅びの足音である。この顎にてそこに躯を曝せ。疾く果てよ『オーバーロード』」
膨大な魔力が空気を揺らし、先ほどとは異なる魔力が剣のような鋭さでギガントウェポンに迫った。
「GYA……O?」
そして、その一撃をもって、ギガントウェポンは頭を完全に俯かせ、沈黙したのだった。
お待たせしました。もうギガントウェポン沈黙まで行っちゃいました。
サバサちゃん大活躍の巻。
因みにギガントウェポンは若干デストロイヤーより強いイメージで書いていますが、耐久的にはそこまで変わりありません。足六本ある+生物的な思考ができるので、残った脚四本で逃亡可能なだけです。気絶させないと状況判断で逃げます。
多分、本作ギガントウェポンVSこのすばデストロイヤーすると、決着がつかない感じ。どっちも踏みつぶし以上の威力を持った攻撃が自爆以外ないので、どっちかが撤退して終わります。
変更点
・女神さまが乗り気
・古代の姫君参戦!
・貧乏店主の妹参戦!
・古代兵器への攻撃が執拗
章の間に挟む閑話についてのアンケート(すべてオリジナル展開となるため、ご期待に沿えない可能性があります。また、思いついたものを列挙しているので、完成が遅くなる可能性があります)
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