この素晴らしい世界にもんむすを!   作:邪魅魑

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EP35 【ダンジョン】ギガントウェポン!

 浮足立つ冒険者に、ラ・クロワとサバサからほぼ同時に声が飛んだ。

 

「油断するな!ギガントウェポンがこの程度で滅ぶはずがない!」

 

「冒険者たち!急ぎ内部へ向かえ!あのキメラが機能停止している間に内部の統括機能を叩け!妾の一撃で大分痛打は与えたが、まだ倒せた手ごたえはない!進め!」

 

 その声で、警戒をする冒険者と突入する冒険者に分かれた。俺はたまもの方へと向かう。

 

「やったな、たまも!」

 

「くっ!なんじゃあのスフィンクス、『オーバーロード』じゃと!あの威力、もしや爆裂魔法よりも……いや、そんなことは無いはず、爆裂魔法が最強のはずなのじゃ!」

 

「言ってる場合か!いや、まあたまもは十分すぎるほど働いているから、休んでればいいかもしれないけどさ」

 

 そう言って、肩を叩くと、たまもは不満そうに口をとがらせる。そして、一言言おうとしたとき、莫大な音が響き渡った。

 

『生体活動の低下を確認、生体活動の低下を確認、生命エネルギーを電気エネルギーに変換、エラー、エラー、異常な体温の上昇を確認、生体を開き、排熱を開始します。排熱を開始します。

 生命エネルギー異常、生命エネルギー異常、制御コアの安定性が著しく低下しています。暴走の可能性があるため、乗務員の皆さんは直ちに避難してください』

 

「!……こんな近くで暴走されたら、結局まずいのじゃ!皆!急いで中枢を破壊するのじゃ!逃げるものはいち早く逃げよ!」

 

 その言葉を受けて、冒険者たちはいきり立ってギガントウェポンに挑んでいく。どうやら生体部分は大分いかれてしまったらしく、触手含む体に障っても反応はない。これ幸いにとアーチャーがロープの付いた矢を射ってそのロープを伝ってギガントウェポンの内部に侵入していく。

 

「なんだこいつら!」

 

 しかし、俺たちを迎え入れたのは何もない場所ではなかった。

 

「おい!そこの肉球みたいなのに触れるな!取り込まれるぞ!」

 

 紐のようにぶら下がった触手の上が不自然に膨らんでおり、紐に触ると勢いよく巻き上げられて咥えられる、そんな罠があった。他にも。

 

「ゴーレムだ!囲め!」

 

「こっちにはキメラもいるぞ!結構素早い!まずは足を狙え!」

 

 身体が全部石でできた人型の魔物や、ヤギのような角を持ち腕は獣、身体は人間で複乳が特徴的なキメラが闊歩していた。だが、それらも冒険者を止めることはできず、そのまま冒険者たちはギガントウェポンの仲へとなだれ込んでいく。

 

 そして、進んでいくと、冒険者たちが金属製の扉をこじ開けようとしているところに遭遇した。……まるでこっちが侵略者だな。

 

 そんな風に思っている間に、扉はガコンと外れ、冒険者たちが中になだれ込む。俺たちが入り込むそのわずかな間に、室内はかなり効率的に破壊されていた。

 本当に、どっちが悪役かわからねえな。

 そんな風に思っていると、テイラーが俺たちを見つけて声をかけて来た。

 

「カズマ、いい所に来たな、見ろよ、これ」

 

「これって……ん?」

 

 テイラーが指していたのは一つの白骨死体だった。玉座のような椅子にたった一人で眠っている。それを見て、イリアスがぽつりとつぶやいた。

 

「これは……ダメですね、未練もなくすっきりと輪廻の輪に帰ってしまっています。欠片すら残っていない」

 

「いや、おかしいだろ!だって、これ、完全に一人で孤独に死んでいった、みたいな感じじゃないか!?」

 

 と、ふと見ると骸骨の近くの机に一冊の本が置いてあった。黙り込む冒険者たち、その中で、イリアスがその本を手に取り読み始めた。

 

「○月×日、国のお偉いさんが無茶を言い出した。魔道技術にキメラ製造術、魔芸術に魔法化学まで全てを網羅した究極の生命体を作れと言ってきた。しかも、他国の技術者が作ったアルカンシェルなんて言う化け物を例に出しながらそれ以上の物を作れと言ってきた。泣いたり謝ったりしても駄目だった。辞職したいと言っても受理されなかった。馬鹿になったふりをして裸になって走り回ったら、職員のサキュバスに骨抜きにされて、製造を約束させられた。俺はもうだめかもしれない」

 

 ……思わず、皆の視線が白骨死体に向いた。

 

「○月×日、設計図の期限が今日までだ、どうしよう。まだ白紙ですとか、今更言えない。だってやけになって前金全部飲んじゃったし、サキュバス職員にはバックレたら死ぬまで吸い尽くすって言われちゃったし。どうしようと思って荒い紙に亀だのハリネズミだのエロ触手に襲われる女性冒険者だのを書いていたが、気が付くとちいぱっぱどもがスタンプみたいにして清書用の紙に押し付けて遊んでやがった!

 足は六本に見えるし、触手はうねってるしどことなくきもいが、きれいな紙は高い。請求されても困るし、このまま提出してしまう事にする。もう知らない」

 

 ……知らないのはこっちのセリフだよ。

 そう思う俺達の思いなど関係なく、イリアスがさらに文章を読み進める。

 

「○月×日、あの設計図が思ったよりも好評だ。ちいぱっぱのいたずらの産物なんだけど、ほんとにいいの?とかもう言えない。コンセプトは何ですか?って、知るかんなもん!だけど、どんどん計画が進んでる。今日から私が所長です、ひゃっほう!」

 

 ……これ、人が人ならそいつの創作だと思う程度にはひどいぞ、イリアスがそんなつまらないことをすることは無いと思うが……。

 

「○月×日、俺が何もしなくても計画が進んでいく。ねえ、何なの?俺いらないの?もういいや。もう知らん!勝手にしてくれ、俺は俺で勝手にする。……何か、動力をどうとか言われたけど、俺が知るか!キメラ術使うんだから、精力を無限にためることができるというクィーンサキュバスの生命核でも持って来いと言ってやった!無理だって言うのに作り始めるからだ!ざまーみろ!」

 

 ……

 

「○月×日、ホントに持ってきちゃったよ、生命核!え?もしかして、これ、動かないと俺処刑じゃない!?動いてください!お願いします!」

 

 イリアスが、何か暗黒のオーラを発している気がする。

 

「○月×日、明日が起動実験と言われたが、正直何もしていない。したことと言えばちいぱっぱに落書きをいたずらされただけだ……。今日がこの椅子でふんぞり返っていられる最後の日か……ああっ!もういい!今日は飲むぞ、そして、どうせサキュバスに搾り取られるんだ!嫌がらせにオ○ニーで限界まで出し尽くしてやる!」

 

 イリアスがわなわなと震えながら読み進めていく。

 

「○月×日、終わった、ギガントウェポン、ただいま暴走中、これ、絶対おれがやったと思われてるよね!ね!?これ、引きずりおろされて処刑されるんじゃない?ああ!もう嫌だ、幸い食料はあるし、飯食って酒飲んで寝る!」

 

 もはやどす黒いオーラで人を殺せそうなイリアスは、しかし最後まで日記を読み終えた。

 

「○月×日、やっべ、国滅んだ、まじやっべ!でもちょっとすっきりした。もういいや、俺、この上で過ごすわ。っつっても、そもそも降りられないしな。これ作ったやつ馬鹿だろ!……おっと、これ作った責任者、俺でした」

 

 読み終わった直後、白骨死体が電撃の直撃で爆散する。

 

「ふ、ふふふ、いいでしょう!ええ!私が天界に戻ったら真っ先にこの愚か者の魂を地獄に突き落としましょう!」

 

 そう言ったイリアスに、俺たちは何も言えずにいたのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

「それで、これが日記にあったクィーンサキュバスの生命核ってやつか」

 

 人数がいても仕方ないということで、俺、イリアス、シロムの三人で向かった最奥に、その物は存在した。それは眩く光る小さな宝石だ。その周りは鉄格子で封鎖され、取り出すことができないようになっていた。

 

「……!!あのバカは!一体なんてものを動力源に使っているのですか!これは明らかに魅凪の……いえ、今言っても仕方ありませんか」

 

 そう言うイリアスは、そのままその石を見つめる。

 

「とにかく!あの石をどうにかしましょう!」

 

「なら、俺の出番だな『スティール!』」

 

「あ!待ちなさい」

 

 イリアスが止めるも、もう遅かった。スティールによってクィーンサキュバスの生命核は俺の手に握られる。

 そして、握ってみて分かった、これは素晴らしいものだ!持っているだけで幸せな気持ちになり、その幸福感だけで絶頂しそうになる。もはや、持つ麻薬と言っても過言ではないほどの幸福感が俺を包みこむ。

 

「放しなさい!カズマ『セイクリッドブレイクスペル!』それに『メンタルガード‼』」

 

 イリアスがパシリと手をはたき、そしてイリアスの魔法の波動を受けた途端、俺ははっとして後ろに後ずさった。

 

「おいおいおい、触っただけで、俺ちょっとおかしくなってなかったか?やばいぞ、この石」

 

「私の予想が正しければ、あれは私と同じ、六祖封印された魔物の成れの果てです。……といっても、恐らくこれが本体というわけではないでしょう。精力を奪うための分身……いうなれば姿かたちは違えども、今の私と同じような存在です」

 

 そう言うが早いか、クィーンサキュバスの生命核は不気味に白い光を発し始めた。

 

「まずい!爆発するぞ」

 

「恐らく長期の採取による経年劣化と、ギガントウェポンの機関部から外された環境の変化で自壊を始めています!良くて爆発、最悪こちらを殺す気満々の大量のサキュバスがわいてきますよ!」

 

 その言葉を聞いて、俺は顔を青くする。

 

「おい、どうにかならないのか!?」

 

「方法は、ある!」

 

 シロムの言葉に思わず振り返った俺だったが、彼女はやや気の乗らない顔で言葉を続けた。

 

「とりあえず急を要する。カズマ、少し吸わせてもらうぞ」

 

「え、ちょ、ちょっと強引、でもそう言うのも悪くないってぎゃああああ!?」

 

 眼前まで顔を寄せたシロムにどぎまぎしていた俺だったが、『ドレインタッチ』によって凄まじい勢いで生命力が吸い取られていった。

 

「ちょ、ま、待ちなさいシロム!それ以上吸ったら、カズマがひもの以下になってしまいますよ!」

 

「……あっ!す、すまない。コホン、とにかく、だ。これで、準備は整った……のだが、少々問題があってな」

 

 続きを促すと、シロムはため息をついて言葉を続けた。

 

「まず、正規の方法で封印なり消滅なりするのは待ってくれないだろう。だから、私がこれからやるのは投棄。要はテレポートでこのアイテムを捨てることなんだが、今確実に飛ばせるのは街と、王都とダンジョンくらいなんだ」

 

「ダンジョンはどうなんだ?」

 

 その言葉に頭を振ってシロムは窘めて来た。

 

「ダンジョンと言ってもかなり人気の場所でね、階層によっては観光ツアーまである大ダンジョンだ。悪いが被害が出ないとは思えない。結果、もし可能性に欠けるとするなら、私はランダムテレポートでこれを捨てるべきなのだが……それこそ大量の人間を殺してしまう可能性だってある」

 

 そう言って俯くシロムに、しかし俺は肩を叩くことで答えた。

 

「心配すんな、シロム、俺は、運だけは良いらしいからな。そのまま、ランダムテレポートをしてみてくれ。全責任は俺が持つ!」

 

 俺がそう言うと、イリアスがコツン、と頭を叩き、そして魔力を纏わせた。

 

「『ブレッシング』このような言い方は良くないのでしょうが、今は私たちが生き残るのが最優先です。最大限の努力はしました。後は天運に任せましょう」

 

 ……かっこいいこと言っているが、それ、お前が祈られる側だよな?

 

 内心そう思いながら、しかし俺は黙っていた。

 

「分かった。ならいくぞ!”ランダムテレポート”!!」

 

 シロムがランダムテレポートで生命核をどこかへ飛ばし、俺たち含む冒険者はギガントウェポン内部を立ち去ったのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 俺たちが、ギガントウェポンの前で、あの巨体をどう処理しようかと話し合っていた時の話、またしてもけたたましい音が響き渡った。

 

「エラー、エラー、エネルギーの枯渇を確認、エネルギーの枯渇を確認、生体制御不能、生体制御不能、聖tュアし是お軍msiykoanitea……」

 

 そして、そんな警報が収まった瞬間、先ほどまでしなびていた触手が一斉にうぞうぞと蠢き始めた。

 

「おい!あいつは倒されたんじゃなかったのか!」

 

 その言葉に、サバサ、クロム、シロムの三人がしまった、とでもいうように頭を抱えた。

 

「不覚じゃった!あやつは単純なキメラでなく、キメラと絡繰りの融合体か!」

 

「どういうことなんだよ!サバサ!」

 

「つまり、本来ギガントウェポンとは、制御できない強大な魔獣、仮にウェポンビーストと呼称するが、それを魔道科学の枷を付けることで制御していたということじゃ。それこそ死の間際まで全く動かなくなるほどに完璧にじゃ!」

 

 クロムの言葉に続いて、シロムが冷や汗を流しながら言葉を続ける。

 

「まずいな、あいつは重傷を受けた上にエネルギー源を取り上げられた存在だ。見境なく周囲のものを取り込み、エネルギーに変えかねない」

 

 その言葉を聞いて、状況が周囲の冒険者にも伝播する。そして、今度こそクモの子を散らすように冒険者たちが逃げ出した。

 

「お、おい!」

 

「放っておきなさい、ウェポンビーストの動力源は人間の精力。有象無象がいくらいたところで、稼働時間が延長されるだけです。あれほどの巨体、一時間も暴れれば、最悪機能は停止するでしょう」

 

 確実に討伐が可能、それはうれしい話だ。だが、一時間もあれば、あの巨体でこの街は蹂躙しつくされてしまうだろう。

 

 俺は、イリアスの手を握って声をかけた。

 

「こうなったら、イリアス!サバサに魔力を送ってもう一回『オーバーロード』を!」

 

「すまぬ、カズマ、『オーバーロード』は古代の秘術。魔力だけでなく生命力も、多量に使う。お主がどうしてもというなら構わぬが、例え魔力が回復しても二度使えば妾の命は尽きるじゃろう。次に使えるのはおおよそ一年後じゃ」

 

 そう言われてはしょうがない、今度はシロムを見る。

 

「なら、シロム!あんたの爆裂魔法で!」

 

「すまない。イリアス殿の魔力は我には毒だ。爆裂魔法に十分な量の魔力を受け入れれば、仮に一撃放てたとしても、次の瞬間我は消滅するだろう」

 

 八方ふさがりの俺たちに、上空から声が降り注いだ。

 

「真打登場!じゃな!」

 

 そこにいたのは、漆黒の翼をもつ女性に背負われた、金髪の和服少女。我らがアークウィザードの姿だった。

 

 




お待たせしました。

次回も多少触れますが、前回のオーバーロードはエクスプロージョンと関係がある設定です。具体的に言うと、命まで絞りつくす99%メガ○テがオーバーロード、それを回避して基本魔力、不足分を体力で補う改良版(マダ○テ)がエクスプロージョンの設定です。
 それと、サキュバスクィーンの生命核はオリジナルアイテム、というか実際の所本作世界でもそんな品は有りません。
 本作の生命核と言われているアイテム?は六祖封印により封じられた魅凪が作りだした遠隔操作できる分身体です。たまもが生み出した解呪の詞とは違い、自由には動けませんが、眷属を生み出したり催淫効果のある特殊フィールドを生み出したりできる。意志は薄めだけどないわけじゃない感じ。
 おとなしくギガントウェポンの燃料になってたのは、ギガントウェポンが栄養補給で性を貪るのが定位置で催淫フィールド張るよりも効率よさげだったからです。

変更点
・古代兵器に搭載された魔物を”ゴーレム娘””サックボア””キメラビースト”に変更
・女神さまが読んだ手記への感想の変更
・コロナタイトを謎のアイテムに変更
・”オーバーロード”をメガ○テ仕様に変更(本来はマダ○テ)仕様

章の間に挟む閑話についてのアンケート(すべてオリジナル展開となるため、ご期待に沿えない可能性があります。また、思いついたものを列挙しているので、完成が遅くなる可能性があります)

  • 三番さんのアルカンレティア放浪記
  • あの人は昔~サバサ編~
  • よそ者たちのポ魔城会合
  • IF もし駄女神がもんクエ参入(1)
  • アンナ・フィランテ・エステロイドの一人言
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