俺はイリアスとたまもの首筋を触りながらドレインタッチを発動する。
「いいか?ドレインタッチは皮膚の薄い所、そして心臓から近い所ほどより吸収率が高い。まあ、例外的に粘膜同士の接触でも効率は良いが、流石に今それをするのはな」
「そもそも胸に手を突っ込む時点でためらっている童貞にそんなこと言っても無為ですよ。ラ・クロワ」
シロムの説明に、すげなくそう答えるイリアス。ちょっとむかつくので頑張って吸収力を増してみたが、全く痛痒を与えているようには見えない。そもそも、たまもがどれほどの魔力を貯めておけるかもわからない。いっそのことこんな女神の態度には目をつぶり、たまもに集中することにしよう。
「たまも、大丈夫か?」
「おう、ちょっと不思議な感覚じゃが、問題ない。お”お”う”っ”。来た、ブットいのが来たのじゃ。あ~そこ、もうちょっとなのじゃ!あ、ちょっと漏れそう、いや、大丈夫なのじゃ!」
そう言って魔力をみるみる回復するたまもに、サバサが声をかけた。
「たまも殿、一つ言っておこう。爆裂魔法と『オーバーロード』は別系統の魔法ではない。『オーバーロード』の肉体的なダメージを取り除く努力をした結果、魔力のみを極限まで絞り出すように改変されたのが、爆裂魔法じゃ。
つまり、はっきり言ってリスクを抑えた爆裂魔法は威力面では『オーバーロード』の劣化じゃ。しかし、爆裂魔法と『オーバーロード』では明確な違いがある。それは生命エネルギーが混じるか、純粋な魔力であるかじゃ。純粋な魔力であるならば。力を借りることができるものもいるかもしれぬぞ」
魔術に疎い俺には全く理解できなかったが、たまもはそれで何かを得たらしい。考えた様子で目をつむり、そして見開いた。
「風よ」
何も起こらない。
「水よ」
何も起こらない。
「風よ」
……何も、怒らない。
「大地よ!」
そう言った途端、何かの少女の幻影が、たまもに重なった気がした。
「世界に秘められし狂乱よ、大地に眠りし厄災よ!我が呼びかけに応え!ここに顕現せよ!……っ!誰が何と言おうと、爆裂魔法のことに関しては!誰にも負けたくないのじゃ!行くぞ!『エクス・プロ―ジョン』‼」
そうして放たれた爆裂魔法は、今までの爆裂魔法とも何か違い、黄色の光を湛えながらギガントウェポンにに吸い込まれていき。そして、そのすぐ後に轟音を上げて爆発した。
「……はい?」
呆然とするたまもに、こちらも驚いた顔のサバサが呆然と答える。
「これは、驚いた。失敗とはいえ、まさか一度で変化するとは」
そう言うと、サバサはたまもに問いかけた。
「爆裂魔法がどういうものかわかるかの?」
「自身の魔力を凝縮し、敵に向かって放ち、半暴走状態にして爆発させる魔法じゃ」
「そう、爆裂魔法というのは多量の魔力を無属性の爆発力に変え放つ究極魔法じゃ。しかし、実のところ、属性魔力でも爆発のエネルギーに変化させることが可能でのう。尤も、属性を付与した分爆発力に割く力が削がれるゆえ、威力が落ちてしまうがの」
そうしてサバサの視線の先を見ると、しかし先ほどとそん色ない……否、むしろやや強力になったように見える魔法の跡が見えた。
「しかし、この、属性を付与して爆発力に変えられる、というのは、メリットもある。それが、精霊の力を借りることができるということじゃ。精霊は属性を持った魔法が意志を持ったようなもの。無属性の精霊はおらぬゆえ、そなたらが使う爆裂魔法では力を借りることができぬ。そして、お主の着眼点も良い。四大精霊彼らに力を借りるが最も良い、さらに、その全ての属性を合わせると、全ての魔力が溶け合い、数十倍に膨張して強力な一撃となる。もはや魔法形態としても爆裂魔法とは離れて別の魔法になっておるが、原理は一緒じゃから爆裂魔法の亜種と呼んでも良いじゃろうな」
そう言って虚空を眺めるサバサは言葉を続ける。
「昔、四属性を極めた魔導士が、全ての魔力と四大精霊の協力を得て、放った究極魔法。儂も一度だけ見た事がある。すなわち、我が旦那様が、追手に対して放った一撃『カドラプル・エクスプロ―ジョン』と旦那様は言っておった」
「そうか」
それを聞いて、たまもはその顔を俯かせる。
「なら……忙しくなるのう!爆裂の道はまだまだというわけじゃ!」
そう言って、たまもははるか遠くを見通したのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
ギガントウェポン討伐。それは、町中に響き渡り、そして街を飛び越して世界中へと広がった。
そして、俺たちはいつものギルド酒場で頬を緩ませる。周囲には人数が増えて少しにぎやかになった仲間たちがいた。
「いやーそれにしても、魔王軍幹部の次は古代兵器!討伐した奴らだけ見たら、俺たちもいっぱしの冒険者だよな!」
「いっぱしどころか、伝説の冒険者と言われても誰も疑わんじゃろうな。ま、実際は他の冒険者や街の人々の協力があるのじゃ。天狗になっておっては足元を掬われるぞ」
「ま、まあそうなんだけどさ」
たまもの突っ込みにたじたじの俺だが、珍しくイリアスが手を添える。
「よいですか、カズマ。英雄というのは一人では成れぬ者なのです。人を束ね、意志を繋ぎ、そして道を示す。それが英雄の、勇者の役割なのですよ。あなたは私の勇者として立派……しっかり……うまく……とにかく、役目をはたしているのではないかと思います。自信を持ちなさい」
「あぁ!お前がそこまでどもらなきゃ、もうちょっと自信持てたんだがなあ!?」
そう言ってにらみ合う俺とイリアス。だが、お互いにほぼ時を同じくして吹き出してしまう。
「ぷっ、あはは、なんだか、そんなこと言われると、俺がほんとに英雄みたいじゃないか」
「ふふふっ、安心なさい、今でも十分英雄ですよ。今はまだ、この街の英雄、であったとしても、ですが」
そうやって笑う俺たちに、仲間たちもつられて笑顔を見せた。そして、ひとしきり笑った後で、クロムがふと気が付いたように声を上げた。
「そうじゃ!そう言えば、報奨金はどうなったんじゃ?確か、ギガントウェポンには非常識な額の報奨金が出とったじゃろ?」
「あぁ、それなんだが、今王都の方に問い合わせ中らしい。何しろ、報奨金もそうだが、前代未聞の状況だろうしな」
と、話していると、ギルドの扉がバン!と開き、物々しい出で立ちの兵士と戦闘に見目麗しい女性の姿があった。そして、女性が大声で、周囲に言い放つ。
「サトウカズマ!サトウカズマはいるか!」
それを聞いて、一同は俺を見つめた。つまるところ、そう言うことなんだろう。
報奨金に期待を持ちつつ、俺は手を上げた。
「そんな大きな声を出さないでも聞こえてるよ。俺こそが、ギガントウェポンを討伐した冒険者、佐藤カズマだ」
そう言って決めポーズをすると、女性は大声でこう叫んだ。
「いたぞ!捕えろ!?」
「は?」
その言葉に俺は一瞬意識が飛び、その間に取り押さえられてしまった。
「何をするのですか痴れ者!その者は先のギガントウェポン討伐の中心人物ですよ!」
そう言うイリアスに、女性は臆することなく声を上げた。
「この者には、この街の領主、アルダープ様暗殺の嫌疑がかけられている。突如としてアルダープ様の屋敷に大量のサキュバスが現れたかと思うと、完全に生命力を奪う勢いで襲い掛かってきたそうだ。近衛たちの尽力もあり、何とか屋敷内のサキュバスはすべて討伐済みだが、その際サキュバス共が、サトウカズマという名前をしきりに呼んでいたという証拠が出ているんだよ!」
その言葉に、周囲の冒険者たちも言葉を失うのだった。
正直改変度合いで行くと結構な感じになったのでちょっと不安に思ったり。
爆裂魔法周りの設定はほぼほぼ私の自己解釈です。
前回の解説も含めて例えると
”オーバーロード” メガ○テ
”エクスプロージョン” マダ○テ
”カドラプル エクスプロージョン”メド○ーア+カドラ○ル ギガ
この作中のたまもちゃんは無意識に大地の精霊に愛されているのでノームちゃんが手を貸してくれました。威力的には
エクスプロージョン=自己魔力(100%)=無属性100%威力
アース・エクスプロージョン={自己魔力(100%)+地属性魔力(100%)}÷40%(属性変換ロス)=大地属性120%威力
みたいな感じです。属性魔法を覚えたり、精霊と仲良くなったりする毎に属性を増やすことも可能ですし、属性を重ねることも可能ですが、属性の相性や変換ロスがあるため、逆にしょぼくなる可能性もあります。
ファイア+ウォーター{(50+100)÷2(威力減衰)+(50+100)÷2(威力減衰)}÷45%(属性変換ロス)=約70%複合属性威力
みたいな。
因みに弁明ですが、純粋な爆裂魔法がカドラプル爆裂魔法に劣るわけではありません。何より今後たまもは最低レベルであっても属性魔法に触れざるを得ないので。
今回はどこをどうって言うのが難しいので変更点紹介はお休みです。
章の間に挟む閑話についてのアンケート(すべてオリジナル展開となるため、ご期待に沿えない可能性があります。また、思いついたものを列挙しているので、完成が遅くなる可能性があります)
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