この素晴らしい世界にもんむすを!   作:邪魅魑

38 / 71
If もしもアクアがもんクエ参戦(1)

「あーっ!もう頭来るんですけど!」

 

 私は水の女神アクア!地球の若くして亡くなった人々を導くことを担当としている女神……だったんだけど……。

 

「何よ何よ!あいつら!何が『アクアくんはちょっと仕事をイリアス?さんとやらに押し付けすぎだね。それに、イリアスさんが君の代わりに転生を導くようになってからの方が、評価は高いようだよ。だから、今後はイリアスさんを地球の転生担当の神として任命することにしたから』よ!そりゃ、確かにイリアスはすごい奴だけどね、だけど、長年仕事をしてきた私へのリスペクトが足りないと思わない!?」

 

 そうしていきり立つ私は、ずんずんと何もないように見える虚空を歩き続ける。次元のはざまを通り、世界の間を渡り、私から仕事を奪った、あのイリアスの所へとたどり着いたのだ。その場所は楽園と言って差し支えないだろう。美しい花が咲き誇り、良き行いをした亡者が、天使たちと、あるいは同じ亡者どうしで触れ合い、語り合っている。

 

 と、そこで一人の女が声をかけて来た。

 

「貴様、ここをイリアス様の治める天界の地であることが分からぬか?何用だ!」

 

 そう吠える槍を持った天使に、私は慌てて手を振った。

 

「いやいや、違うわよ!私、アクアって言うの。イリアスの友達なのよ」

 

「馬鹿を言うな!イリアス様は唯一絶対の存在!友達などという甘っちょろい仲の存在がおられるとでもおもっているのですか!」

 

 それを聞いて、私はドン引きした。

 

「え?イリアスって友達いないの?えー。引くわー」

 

「な、なぜイリアス様を憐れむのです!それに、イリアス様には忠実な天使が幾千と存在するのですよ!憐れまれる存在であるはずがないでしょう!あぁ!なるほど!こいつはイリアス様が友達がいないと馬鹿にすることで、自分の優位性に悦に浸っているのですね!分かりました、この背信者に天罰を下します!」

 

「いや、部下と友達は全く別の関係じゃない?なに?イリアスって、もしかして天使にそんな教育もしてないの?……確かに真面目ちゃんぽかったけど……。まあ、とにかく通してくれない?」

 

 いきり立つ天使が私に詰め寄ろうとしたとき、彼女の背後からポン、と手が置かれた。

 

「少し落ち着いた方がいい。エデン」

 

「プロメスティン……何の用です!いまこの愚か者に天罰を!」

 

「だから、それを控えろと言っているんだ。彼女の名前は聞いたのか?イリアス様に会いたい理由は?事前連絡はしていたのかは確認したか?」

 

「あ、う、それは……」

 

 白衣姿の天使の言葉に、エデンと呼ばれた天使は口ごもり、黙り込んでしまった。

 

「つまり、そういうことだ。すまなかったね。名前を伺っても?」

 

「アクアよ。水の女神アクア」

 

「……ふむ、確かにイリアス様が最近その名前を口に出していたね。……いいだろう。入るといい。イリアス様はこのまままっすぐ行って一番奥だ」

 

「プロメスティン!」

 

 噛み着かんばかりに詰め寄るエデンを、プロメスティンは鷹揚に受け止めた。

 

「エデン、貴方は今やこの天界のナンバー2だ。それをよく考えて行動しなければならないだろう?アクアという名前はイリアス様の口からも、何度も聞かれた名前だ。君はイリアス様の知り合いを、一方的に天界から追放できるほどの権限を持っているというのかい?

 それに、彼女に危険なものはないよ。中級位までの天使ならともかく、上位天使なら抑え込める程度の実力だ。万に一つでも、イリアス様がどうにかなることは無いだろう?」

 

「ぐぬっ……確かに、それはそうですが……」

 

 そんな風に言っている声をしり目に、私は長い廊下を進み、巨大な扉の前に立ち、ためらいなく扉を開けた。

 

「はあああああああっ!死に曝せっ!」

 

「それは、こっちの!セリフです!」

 

「…………は?」

 

 そこでは、紫色の肌と蛇の体を持った存在と、イリアスがドンパチやっている姿があった。

 

「……!!アクア!?なぜここに!?」

 

「貴様!援軍か」

 

 二人に凝視された私は思わず扉を閉めようとしたが、一瞬で近づかれて蛇女に締め付けられる。

 

「ちょ!何するのよ!この馬鹿!悪魔!『セイクリッド・エクソシズム』!」

 

「ぐっ!やはり貴様!」

 

 思わず締め付けを緩めた蛇女に私は渾身の拳を握り、力を貯める。

 

「アクア!離れなさ……「ゴッドブロー!!」ちょ、ちょちょちょちょ!」

 

 焦る声に思わず目を向けると、目の前にあったのは膨大な光の渦だった。

 

「……ふぇ?」

 

「なっ!おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼‼」

 

 そして、私と蛇女は一緒に下界へと弾き飛ばされたのでした。

 

~~~~~~~~~~~~~~~

「……えっと、その、大丈夫ですか?」

 

 気が付くと、目の前に一人の少年が立っていた。見目は整っており、なんとなく冒険者風の服装だ。

 

「はっ!ここ、どこかしら!それにあなたは?」

 

「えっと、僕はルカ。ここはイリアスヴィルって町の近くだよ。その、そこにいる魔物娘さんと、貴方が倒れてたから、声をかけたんだ」

 

 見ると、そこには見覚えのある魔物娘の姿があった。イリアスとドンパチやっていた蛇女だ。

 

「あーっ!こいつ!こいつが私を天界から落としたのよ……いや、落としたのはイリアスだったかしら?いえ、でも結局、こいつがいなければ私は天界から落ちることもなかったわけだし……とりあえず討伐しましょう!」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ。この子だって、今気絶してるだけだしさ、もしかしたらいい魔物かもしれないじゃないか!」

 

 それを聞いて、私はあきれてこのおこちゃまに説法を解いてあげることにした。

 

「いい、君みたいな子どもにはわからないかもしれないけど、悪魔や魔物ってのはみんな人間を滅ぼしたり困らせたりするような、頭も精神もねじ曲がった存在なのよ!だから、同情なんてしちゃダメ!魔物は見つけ次第、しばいて、しばいて、しばきまくるのが正解なのよ」

 

「うーん。そりゃ、確かに悪い魔物もいるかもしれない……というか、話が通じないののほうが多いかもしれないけどさ、もしかしたら、話の分かる魔物もいるかもしれないじゃないか。僕は魔物と人間の懸け橋になるような人になりたいんだ」

 

 私はその言葉にショックを受けて、少し後ずさってしまった。

 

「あなた、本気でそんなこと言ってるの?魔物と人間が共存なんてありえないわ!あなたはまだ若いのだから、まだ正しい道に進めるわ」

 

 そう言うと、ルカは気分を害したようにそっぽを向いた。

 

「そんな風に決めつけるのは、間違ってると思う。僕はこれからこの人を助けるから、ちょっとどっか行っててよ」

 

「……あーっ!もういいわ、分かったわよ!ただし、こいつ直したら、すぐに逃げるからね!って、あら?」

 

 私は蛇女を見ておかしなことに気付いた。

 

「まあ、いいわ、魔物ごときが私の回復魔法を受けられることに感謝しなさい『エクストラヒール』」

 

 そう言って回復魔法を撃った私は、すぐさま少年の所へと走る。

 

「さ、これであの魔物は完全回復よ。あなたの望み通りにしたんだから、貴方、アクシズ教に改宗しなさいな」

 

「えっ、ちょ、そんな話聞いてないよ。僕、今からイリアス様の洗礼を受けに行くんだから」

 

「あー。イリアスの信徒だったのね……。なら無理強いするのも……いえ、イリアスよりも私の方がいろいろと特典あげられるわよ!」

 

「いや、神様を信仰するのって特典で選ぶとかそう言う話じゃないような気が……」

 

 後ろで何かが動く気配を感じながら、私達は少年の村へと走り出したのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「……おわった」

 

 少年の村の教会前、イリアスの洗礼とやらを受に行った少年を見送ってすぐ、少年が項垂れた様子で帰ってきた。

 

「あら、洗礼を受けられなかったみたいね」

 

 私がそう言うと、少年が驚いたように私を見つめてくる。

 

「な、なんでわかるの?」

 

「いや、そりゃ、私女神だし?あんだけ魂が変質してる人たちがいてあんたがそうなってないんだったら何があったかくらいわかるわよ。

 というか、イリアスも結構エグいことするわね。まあ、こうするしかないくらい魔物と人間の距離が近いのかもしれないけど、これ、下手したら肉体ごとジュッってなるわよ」

 

「肉体?ジュッ?」

 

 困惑する少年に私は手を差し出した。

 

「ま、とにかく、くよくよしてたってしょうがないわ!これからどうするの?」

 

「……僕は、勇者になるんだ。洗礼を受けられなくても、それは変わらない。洗礼を受けられなかったのはとても残念だけど、少しでも世界のためになる様に、僕は旅に出るよ」

 

 それを聞いて私は少し目を閉じて、そして微笑んだ。

 

「よろしい。ならば、この、水の女神アクアが、イリアスに変わって祝福を授けましょう。流石に天界にいるときのようにというわけにはいきませんが、多少なりともあなたの旅の助けになるはずです」

 

「あ、いえそれは結構です」

 

「なんでよー!!」

 

「だって、イリアス様の教えに『他の神を頼むことなかれ』という教えがあって……」

 

 そんな風にワイワイ話しながら、私達は少年の家に向かうのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~

「それで、ルカ、あれがあなたの家……悪いことは言わないわ。準備はあきらめて、さっさと旅に出ちゃわない?」

 

「いや、なんでさ。旅の荷物も無しに旅に出るとか、戦いとか以前に死んじゃうよ」

 

 イリアスの洗礼を受けることができなかった少年、ルカの家の前で、私は感じるものがありルカに提案したのだけれど、即刻却下されてしまった。

 

「あのね、私はあなたのためを思っていってるのよ!はっきり言うけど、貴方の家の方からとっても嫌な気配が……」

 

「ほう、どんな気配か教えてもらえるか?」

 

 その言葉に私は慌てて構えを取る。

 

「……ふむ、見たところやはり貴様、あのとき……。いや。治療をしてくれた礼だ。早々に立ち去るがいい。そうすれば襲いはすまい」

 

「誰が逃げるもんですか!少年を襲うつもりでしょう!そんな魔族は私が女神として倒してあげるわ!」

 

「ちょっと待ってよ!喧嘩しないで!たまたま会っただけだけど、知り合いが喧嘩してるところなんて見たくないよ!」

 

その言葉を聞くと、蛇女が意味ありげな顔で笑いかけてきた。

 

「どうやら信者の少年は余と貴様が対立するのは好まんようだな?女神とは信者の言葉を蔑ろにするものなのだな?」

 

その声に、私は胸を張って答える。

 

「残念だけど、ルカはまだ私の信者じゃないわ!私の可愛い信者たちに頼まれたならともかく、まだ信者になってないルカの頼みなら、私はあんたを倒す方を優先するわ!」

 

 それを聞いて、なぜか虚をつかれたような蛇女がルカと私を交互にみた。そして、少しの沈黙の後、蛇女はルカに声をかける。

 

「ルカとやら、どうやら、貴様がこの自称女神の信徒にならん限り、この女は余と戦うつもりらしいぞ?余としては、売られた喧嘩を買わん道理はない。必然、余かこのドアホか、どちらかが死ぬことになるな」

 

「……わかったよ!僕はイリアス教だけど、アクアさんにも祈るよ。これで喧嘩をやめてくれる?」

 

「なんか釈然としないけど、まぁいいわ。ルカに免じて、見逃してあげる。さ、早くいきましょ」

 

 そう言って歩き出そうとした私に、しかしルカはついてこない。

 

「……どうしたのよ?」

 

「だから、旅の準備をしないと戦い以前に行き倒れちゃうから!」

 

「アクアとやら、安心せい。余も下賤で考え無しな魔族ではない。貴様の回復魔法があの少年の要請によって行われたことについても知っている。余がこの小僧を無理に害する気はない」

 

 にらみ合う私たちに、ルカが慌てて声をかけた。

 

「とにかく、一回家に入りましょう!せっかくだからご飯も作りますから」

 

 そのルカの言葉に渋々同意して、三人そろってルカの家に入る。

 

 その後、私達は一緒に冒険をして、最終的には魔王どころか邪神なんかと相対することになるのだけれど、それはまた、別の話。

 

~~~~~~~~~~

予想されるアクアの反応

 

アクア「うわぁ、何この剣。エンジェルハイロウ?いや、これ、剣の形しただけ……っていうか剣の形すらしてないけど、ぶっちゃけ天使への恨みと、天使自身の恨みが凝り固まった特級呪物よ、これ。って、ルカ!これ使うの?駄目よ!捨てちゃいなさい!」

 

アクア「え?ナメクジ娘?あんなの、塩撒いときゃ良いのよ。ほら、しっ!しっ!……って、何この金色のナメクジ!あ、ちょ、ま、まって、話し合いましょ、や、やめ……ひやぁぁぁぁ!!」

 

アクア「インプ!あいつ悪魔よ!ほら、ちゃっちゃとやっちゃいなさい!最高火力で焼き払うのよ!」

 

アクア「ねえ、アリス。あなた、もしかして料理とかできないの?プークスクス。……って、ちょっと待って、ねえ、なんでレイピアを構えてるの?ええ、分かったわ、苦手なことからかったのはちょっと悪かったわ。だから、その剣を置きましょう?ね?うんうん、そうよ。落ち着きまs……ねえ、待って?なんで呪文唱えてるの?ねえ、ねえねえねえ!まってまってまってごめんなさい許してだからちょっと待ちましょう落ち着きましょうおちt……」

 

ルカ(……この人、本当に女神なんだろうか。でも、アンデッド系に関してはかなり強いし、旅芸人として資金面ですごく助かってるから強く言えないんだよなぁ)

 

アリス(……この馬鹿、天使ではないよな?そもそも天使ならイリアスの信者を引き抜こうとはせんはずだ。だとすると堕天使……ないな。こやつにそのような翻意は感じられん。

 まあ、良かろう。こちらとしてはイリアス以外に信仰を得る者がいることはそれだけでイリアスへの妨害になるだろうしな。

 ……それに、幽霊とか簡単に退治してくれるしな。たまも辺りにアクアの術を解析してもらうか?)

 

たまも(……何で異界の神がこんなところにおるんじゃ?明らかにこの世界の存在ではないのぅ。……いや、あやつ神か?持つ力や性質は神というにふさわしいものじゃが。本人の性格が……まあ、静観しておこうかの)




 前回明言していませんでしたが、2巻分完結しました。
 と、いうわけで、以前アンケートを取ったアクア回です。やるとしてもダイジェストとなりますが、これで人気が無かったらこれっきりです。

 因みに、今作の設定ではアクアセンサーに引っ掛かるのは淫魔、妖魔系だけです。

 具体的に言うとクィーン系が魔王軍幹部扱い、淫魔、妖魔系が悪魔扱い、アンデッドとかもん娘によっては好き嫌いがあるけど、他のモン娘はジャイアントトードとかの、倒さなくてもいいけど倒せるなら倒す、くらいの感じ。

 あ、近々また新しいアンケートを出します。
 具体的には、最近爆炎で出て来たあの人の配役についてです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。