この素晴らしい世界にもんむすを!   作:邪魅魑

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EP4 イリアスは飲み込まれた!

「よーし!今日は上がっていいぞ。ほれ、今日の分だ」

 

「はい!ありがとうございます」

 

 土木工事の仕事を終え、俺たちはその日の給料を受け取った。

 

「まったく、麗しいこの私になんてことをさせるのですか……」

 

 空を飛べるという特性をフル活用し、なんだかんだ俺よりもこき使われているイリアスがぶつくさ言っていると、親方がもう一枚の封筒を差し出し、イリアスの頭を撫でた。

 

「あんたのおかげで、仕事がかなりはかどってるからな。ありがとよ。今日は頑張ったあんたに追加報酬だ!それでいいもんでも食べてくれ!建築の女神様!」

 

「めがっ……! コホンッ。そ、そうでしょうそうでしょう。世界を作り出したこの私なのですから、建物の一つくらいわけありません。これからも頼りにしてくれて構いませんよ」

 

 建築の女神と言われてまんざらでもない女神さまは、親父の頭撫でであっさり陥落したらしい。チョロ女神。と、のどまで出かかったが何とか飲み込み、俺たちは酒場へと繰り出した。

 

 このタイミングのイリアスはたいていの場合上機嫌だ。なんでも女神及び天使という存在は元来食料を必要としない存在だそうで、見ているだけだった食事を摂取するという行為は前々からやってみたかったことの一つなのであったという。

 で、封印されてエネルギー供給が制限されてしまった影響もあり、初めて試みた食事でうちの女神さまは陥落した。

 シェフを呼べ、だのシェフを洗礼して守らなければ、などひと悶着はあったものの、その後もこの食事の時に関してはイリアスの機嫌が必ず良い時間となっていた。

 

 なお、普段のイリアスはあんまり機嫌がよくない。なぜなら、彼女の言うところの邪神アリスフィーズの眷属であるはずの魔物の特徴を持った人々、モン娘が普通に街中を闊歩しているからだ。

 転生してきた当初は、異世界だから当然だと思っていたのだが、もともとはこういったことにはなっていなかった、あるいは、同じような世界だが、住人が違う別の世界へと飛ばされたのではないかというのがイリアスの推測だった。

 

 ……。

 

「……って、そうじゃねーだろ!」

 

 いつの間にか特盛ジャンボパフェを注文し、スプーンでつついていたイリアスがビクリと震え、そして肩を怒らせて俺をにらみつけて来た。

 

「私の至高の時間を奪おうとするとは……サトウカズマ、あなたは天罰を食らいたいようですね」

 

「いや、そうじゃねーよ!なんで俺たち日雇い労働者してるんだよ!俺たちは冒険者だぞ!魔物を倒して、強くなって、英雄譚とかになったりするのが冒険者じゃないのかよ!」

 

 それを聞いて、ハッとしたイリアスがジャンボパフェに二投目を突き刺した。

 

「……たしかに、アム、……ふぉのとふぉり……ング。でふね……」

 

「せめて手を止めてほしいんだが」

 

「ンンッグ、……待ちなさい。何も私もこれまで手をこまねいてきたわけではありません」

 

 そう言って、イリアスはナプキンで口を拭い、ともすれば悪辣にすら見える微笑を浮かべた。

 

「常々モン娘たちを尾行し、その弱点、弱みを探るついでに手に入れた情報がここにあります。それによると」

 

「おい、なんだそれは」

 

「何とは?言葉通りですよ。それとも、童○には難しすぎましたか?」

 

 俺は机をバンと叩き、直後に少し我に返って抑えた声でイリアスを詰問した。

 

「俺はその情報の入手経緯を問題にしてるんだよ!尾行して弱みを握る!?いったい何考えてんだお前は!」

 

 俺はイリアスの持っていた紙束を奪い、ざっと目を通す。

 

『ゴブリンとラミアの子どもを尾行していたら、吸血鬼と竜の子どもと一緒に合流して遊んでいた。それぞれ敏捷性や手先の器用さ等、気を付ける点はあるが、竜の子ども以外は罠にはめてしまえば簡単に倒せる程度の実力。鬼ごっこではラミアに、クイズではゴブリンに、度胸試しでは吸血鬼に勝った』

 

 さっとイリアスの方を見ると、さっと目を逸らされた。続きを読むことにする。

 

『町を歩いていると、人間に化けた和服の金髪モン娘に出会った。かなり強い力を持っていたが、気付かれないように尾行した。たまたま入った店で隠れることができず、たまたま向こうから話かけられたが、飴をもらった。警戒はされなかったようだ。もしかしたらいいモン娘なのかもしれない。少なくとも人間に化けている間は見逃すことにする』

 

 ……無言で3例目に目を通す。

 

『ローパー娘を尾行していたら、狭い裏路地で見つかって拘束されてしまった。しかし、騒ぐとカニ娘がカニ光線を放ち気絶させたのち、衛兵詰め所まで連行してくれた。憎きモン娘を一匹豚箱にぶち込めたのでよしとする』

 

 俺は三度イリアス様の方を見て満面の笑みでイリアスの頭を撫でた。

 

「イリアス様なりに、この世界に馴染もうとしているんですね」

 

「そんなわけないでしょう!?重要なのはその下です!」

 

 憤慨するイリアスの言葉に従い、もう一度視線を落とすと、このような文字が書いてあった。

 

『食事というのは素敵なものだ。今日はジャイアントトードの唐揚げというのを食べた。なんでも初心者冒険者の定番依頼になっているようだ』

 

と。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 冒険者としての生活を鑑みた翌日、俺たちは拠点としている町、アクセルの外に存在する広大な平原で、ジャイアントトードを物陰から見つめていた。

 

 なお、俺たちの武装は、俺がショートソード、イリアス様が初心者用のワンドを装備している。数週間にわたった日雇い労働だったが、流石にその短期間では鎧等は準備できなかった。

 

「それで、どうするんだ、イリアス」

 

「わかりませんか?私の”さばきのいかずち”は雷属性の固有魔法です。そして、ジャイアントトードは水属性。古今東西、水に雷は効果抜群と相場が決まっています」

 

「……ふんふん、それで?」

 

「?」

 

「え、まさか、ほんとにそれだけ?」

 

 心底意味が分からないという風なイリアスは、まあいいか、とすっくと体を起こし、ジャイアントトードを見つめた。

 

「あの邪神が作った魔物でないことが若干残念ですが!我が血肉となりなさい!”裁きの雷”‼」

 

 そう言うが早いか、イリアスの持つワンドからきらめく閃光が走り、ジャイアントトードに激突する。ジャイアントトードは直撃を受け、煙を立ち昇らせ、何度か左右に大きく揺れた。

 

「どうですカズマ!これでわかったでしx……へぷっ!?」

 

「あ」

 

 揺れ動いたジャイアントトードは、何度目かの揺れでイリアスをぱっくり頭から飲み込んでしまった。

 

「い、イリアス―!?」

 

 幸いなことに、ジャイアントトードは一度何かを飲み込んだ後は動かなくなるようで、それを利用して滅多打ちにした結果、何とか討伐することができた。

 

 ただ、その際イリアスが「なっ……どこを触っているのですか、この下郎!」とか、「んっ……んんっ!」とか、主に下半身に悪い悲鳴をあげるものだから、戦闘中なのにそういう気分になってしまい、非常に困った。

 

 救出時にイリアスがこれ以上ないくらい顔を紅潮させて気絶していたのは不幸中の幸いだったのだろう。その顔見て余計に変な気分になってしまったが……うん。多分幸運だったんだ。そうに違いない。

 

 なお、翌日から「幼女を粘液まみれにして楽しむ変態」と噂されたのは少し納得いかなかった。

 

 




というわけで、残念ながらイリアス様もカエルには勝てませんでした。
ワンチャンカエル娘POPさせようかとも思いましたが、それはまたの機会にしようと思います。

本日の変更点
・イリアス様に特別報酬
・モン娘が市民権を得ている世界(特段記述はないが当初から同設定)
・若干カズマの女神さまに対する態度が軟化(知力が高いため、一応信じられる)
・イリアス様が住民とやや敵対的(イリアス様の特性)
・イリアス様が若干チョロい(重圧から解放された&六祖封印の影響)
・ジャイアントトードの攻撃で女神さまが気絶する(イリアス様の快楽弱点が影響)
・初日の討伐数が1体に減少(イリアス様が気絶した影響)

 次回、いよいよ大魔法使いが登場!……今でも配役ちょっと悩んでたり。
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