朝早く……かと思ったが、実際は真昼間まで寝こけていた俺はたたき起こされ、セナに取調室に連れていかれた。
現代のドラマでもありそうな小さな取調室にいるのは俺とセナ、それにセナの護衛兼俺が逃亡するのを止めるための騎士二人だ。
厳戒態勢の向こうの対応にびくびくとした俺に、セナは一つのベルを取り出した。
「この道具を知っているか?こういった取り調べや裁判で使われる道具で、嘘を吐くとベルを鳴らす。つまり、今後、ここでは気を付けて発現するべきということだ」
そう言うと、俺が座っているのと反対の椅子に座り、トントンと威圧するように机を叩く。
「それでは、サトウカズマ、16歳で冒険者、か。それではまず、出身地と冒険者になる前は何をしていたかを聞こうか?あぁ、野で暮らしていたというのは無しだぞ?たまにモン娘の中にはそう言ったのもいるが、それでもどこら辺に住んでいたのかくらいは知っているはずだし、そもそも貴様は人間だ」
……いきなり答えにくい質問だ。日本ってどうやって説明するんだよ。
ベルの影響で嘘もつけないし……。まあいいか。
「出身は日本です。学生をしていました」
チリーン
おいおい、嘘なんかついていないぞ。
「おい、サトウカズマ……?」
「いや、本当に嘘なんかついて……!」
俺は確かに嘘なんかついていない……俺は本当に日本出身だし、学生を……学生、を。
「……出身は日本です。実家に引きこもって自堕落な生活をしていました」
ベルは、ならない。それを確認して、セナは呆れたように俺を見つめる。
「どうして見栄など張った」
「いや、見栄じゃなくて……」
俺、この魔道具嫌いだ!
その後もいくつかの質問をされたが、何度もベルはなり、その音が鳴るたびに、そして、その音によって訂正された回答を聞くたびに、セナの呆れ顔が大きくなっていった。
「……ええ、正直、俺自身もまあイリアスの暴走って面もあるので多少罰金があるのも覚悟していましたが、正直暴走したのもイリアスの責任だし、何で俺が中心になって借金返すことになってるのかとか、せめて賞金相殺くらいにできなかったのかとか考えて、その判断をした奴は頭おかしいんじゃないか、死ねばいいのにと思いました」
「そ、そうか。それじゃあ次は……」
「ちょっといいですか?せっかくならもっとストレートに聞いてくれません?お前は魔王軍の手先なのか?とか領主に敵意をもって攻撃したのか?とか。何度も言ってますけど、ランダムテレポートを指示しただけで、それが領主の館に転移するとか思ってもいなかったですし。もちろん狙ってもいません。テレポートの指示も街を救うためだったんです」
その言葉にベルをじっと見るセナ。もちろんベルはならない。
「……どうやら、先ほどの言葉に嘘はないようですね。大変失礼いたしました」
セナは、居住まいを正して俺に頭を下げて来た。
「ねぇ!やっぱりそうだったでしょ!俺は魔王軍幹部を倒し、ギガントウェポンを打ち倒した英雄ですよ!その英雄様に?こんな仕打ち、していいと思ってるんですかぁ?取り調べが始まってからお茶もカツ丼も出ない!?どうなってるんですかねぇ!?」
「す、すみません。カズマさんの功績は聞き及んでいたのですが、同時に悪評も聞いていたものですから。パーティメンバーの下着を公衆の面前で剥ぎ取り、カエルの粘液に塗れさせては喜んでいる、と」
「誰だ!そんな根も葉もない噂流したやつは!」
チーン
「……」
「ま、まぁ、パーティ内の話ですので何も言いませんが、もう少し節操というものを持った方がいいと思いますよ?それで、念のためにもう一度聞いておきますが、あなたは魔王軍の幹部とは関係がないのですね?魔王軍幹部と交流があるとか」
「おれがそんな大それた人間に……」
チリーン
見えますか?と言おうとして、俺はとんでもないミスをしたことに気が付いた。
俺は取調室に響くベルの男を聞きながら、俺は、魔王軍幹部のシロムのことを思い出していた。
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「な、何をするんだ!まて!それに触るな!」
大変な失敗をして落ち込んで帰ってくると、何やらベリアが騒いでいた。
「あ、カズマ!このカニ娘がひどいんだ!日々の訓練のために、短槍を取り出したらいきなり取り上げに来るんだ!」
「牢に入っている危険人物にそんな危険物持たせられるわけないだろう!」
うん、これはベリアが悪い。
「というか、そんなでかい槍どこに入れてたんだよ」
「それはこう、鱗の間にこうしてな……ん?何だこの鍵」
ベリアが、俺が昨日懐に忍ばせた最後のカギに気付いたところで、カニ娘がため息をつきながら言葉を吐き捨てた。
「釈放を撤回させられたくないならその槍をしまえ」
「釈放?」
聞き返すベリアにカニ娘は頭を抱えながら答えた。
「貴様を投獄してからの話だが、被害者が「あれはプレイの一環だった」という証言しか出ていなくてな。誤認逮捕ということで釈放だよ。尤も、留置所でそんなブツを振り回してるんだ。今からでもしょっ引いても構わんが」
そう言われたベリアは慌てて槍をしまい込む。太ももの辺りの鱗がゾロリとめくれて、そのまま槍が隠れてしまった。
「あー、お先に失礼する」
そう言うベリアに俺は緩く手を振りつつ、またしても一人になった牢屋の中で寂しく座り込むのだった。
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深夜、昨日と同じようにかすかな振動が聞こえ、意識が覚醒する。
「カズマ、カズマ!」
「ん?ああ、イリアスか」
その声掛けに、イリアスは不満そうな声を上げる。
「なにが、ああ、イリアスか!ですか!何故昨日逃げ出さなかったのですか!」
「いや、それがさ、牢のカギが南京錠だったんだよ」
「…………」
「…………」
ショックを受けたようなイリアスは、しかし気を取り直したように言葉を続けた。
「……いえ、大丈夫、大丈夫です。南京錠も、魔力を込めて触れれば解除されることもあります。最後のカギは持っていますね?それを、初級魔法を使っている感覚で……」
「すまん、脱獄できないのに持ってるとまずいと思って、一緒に牢に入ってたべリアにこっそり持たせちまった」
「……」
俺がそう言うと、今度こそ思考が停止したのか、イリアスが固まったまま動かなくなる。
「それよりもそっちは大丈夫だったのかよ。昨日は爆裂魔法を目くらましにしたんだろ」
「あ、あぁ、流石に爆裂魔法はダメでしたね。意識は引けましたが、たまもが厳重注意を受けてしまいました。って、だまされませんよ!あなたは貴重な道具をそんな!……こほん、時間がないので、説教は脱出してからにしましょう。今回はクロムに頼んで人形で気を引いてもらっています。もしばれても彼女ならいたずらってことで厳重注意くらいで済むでしょう。もしとっ捕まって有罪になっても別に惜しくありませんし……おっと。それよりも今後のことですね」
おい、こいつさりげなく腹黒いこと言わなかったか?
「最後のカギが失われたのは予想外でしたが、今回は、これを使おうと思うのです」
イリアスはそう言うと、一つの模型を取り出した。
「それは、ポケット魔王城か!」
「そう、ポケット魔王城は人をその中に入れるとき、物理法則を無視して縮小させます。この力を使えば、カズマをポケット魔王城の中に収容し、そのまま逃げることができるというわけです!」
おぉ!なんだかいけそうな気がするぞ。
「……ん?あれ?でも、その鉄格子からそれ、入れられないよな」
かなり縮小してあるとはいえ元が魔王城だ。ポケット魔王城の大きさはそこそこあり、牢の鉄格子を通すには無理がありそうだ。
「いえいえ、それは、こうすればいいのですよ!」
そう言うと、イリアスはポケット魔王城を地面に置くとボタンを押して台座を回し、一度ポケット魔王城内部に入り、そしてすぐに外へと飛び出した。
「……ん?」
「あ、あれ?私の計算によればこの角度で行けば牢屋の中へ転移できるはずなのですが……」
そう言って、何度かポケット魔王城への出入りを繰り返していたイリアスだったが、結局建物内への侵入は不可能だったらしく、あきらめてすごすごと帰っていったのだった。
今回意外と変更点無いな……と思ってみたり。
そして、たくさんのアンケート回答ありがとうございます。
最終的にどうなるかはわかりませんが、現状、彼女が本格的に参戦した時点でカズマさんたちの道行きがスーパーハードモードになりそうで爆笑しています。そこまでストーリーたどれるように頑張らないとですね。
因みにですが、今回、仮にイリアスが牢屋の中に入れたとしてもカズマさんを持ち上げたままポ魔城の複雑な操作をするのが難しいので結局試行錯誤の結果すごすごと帰ることになります。(そもそも粘体生物であるエルべぇが体を伸縮させればこの脱獄は成功していたりする)
・変更点
不良冒険者が釈放されている
脱獄方法を糸鋸から魔法道具に変更
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