この素晴らしい世界にもんむすを!   作:邪魅魑

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思ったより筆が乗りました。


EP39 イリアス「えぇ、まさかこんなことをやらかすなんて」 

 この世界での裁判は、えらくシンプルだ。検察官が調べた証拠を提示し、弁護人が反論、そしてその結果を裁判官が判断する。

 弁護士なんて職業は存在しないため、被告の弁護は友人や知人が行うこととなる。

 

 俺たちは見やすいようにか開けた場所に設置された策に囲われた裁判場で、開廷の時を待っていた。

 

「ねぇねぇ、オジサマ。私を寵姫に加えてくれないかしら?いっぱいサービスするわよ?」

 

「下民が口をきくな、煩わしい!」

 

 ……なぜかエヴァが原告であるおっさんに言い寄っていた。いや、確かに金持ちなんだろうが、脂ぎったデブのおっさん、しかも性格も悪い相手によくやるものである。

 

「安心せい、カズマ、我々が付いておる」

 

「えぇ、私達に任せておきなさい」

 

 そうだ、俺には心強い仲間がいるのだ。

 

「そうなのじゃ!儂に任せておくのじゃ!」

 

「うん、クロムは他の人に任せておこうか」

 

 若干気が短いが、それ以上に頭の回転が速いたまもや、若干抜けているところはあるが老獪なイリアスはともかく、正直クロムは単純で気が短い。いわゆる技術馬鹿なため、この裁判ではあまり活躍できないだろうと思われた。

 

「な、なにぉう!?」

 

「カズマ、もし本当にどうしようもなくなったら、私が何とかしてあげる。今回のことに関しては、カズマは全くの無実よ」

 

 エルのその言葉に頼もしさを感じつつ、前を見ると、丁度裁判が開始されそうな様子だった。

 

「静粛に、これより、国家転覆罪で起訴されているサトウカズマの裁判を始める!告発人は、アレクセイ・バーネス・アルダープ!」

 

 でっぷりと太った男が裁判長の言葉に立ち上がり、そしてこちらを値踏みするように見つめて来た。俺のことをちらりと見た後は、俺の後ろにいる三人だ。

 たまもを好色そうな顔で見つめ、次にイリアス。そして、エルに目が留まると、その目を驚愕で見開き、暫し固まった。

 

「……あのような下衆、負けるものですか」

 

 ふつふつと燃えるような闘志をにじませながらイリアスが宣言すると、それを聞いていたわけではないだろうが小さく頷いた裁判長が木槌を打ち鳴らした。

 

「静粛に!裁判中は私語を慎むように!では、検察官は前に!ここで嘘をついても、魔道具ですぐにわかる!それを肝に銘じて発言するように!」

 

 裁判長の言葉と共に再び木槌化振り下ろされ、それと同時にセナが立ち上がった。

 

「それでは起訴文を読み上げさせてもらいます。被告人サトウカズマは、古代兵器ギガントウェポン襲来の際、これを他の冒険者と共に討伐、この際、暴走寸前であったクィーンサキュバスの生命核をテレポートするように指示。転送された生命核は、告発人であるアルダープ様の屋敷に出現し、大量のサキュバスを呼び出しました」

 

 アルダープを見れば、まだエルを凝視したままだ。正直不気味すぎる。

 

「毒物、爆発物、生物をランダムテレポートさせることは、法によって禁止されている!それを指示し剰え、領主という地位のある人物の命を脅かしたことは、国家を揺るがす事件であるため、私は国家反逆罪の適用を求めます」

 

「異義あり!」

 

 セナの言葉に半ばかぶせるようにして、イリアスが異議を唱えた。

 

「……、弁護人の陳述の時間はまだです。意見がある場合は許可を取ってから発言するように。裁判は初めてでしょうから、今回は大目に見ましょう。発言を許可します」

 

「……それでは失礼します。とはいっても、これは検察官に対する異議ではありません」

 

 その言葉に裁判長は不可解な顔をする。

 

「此度は、国家反逆罪という重大な罪の可否を問うもの、そして、被告が先ごろギガントウェポンの討伐の中心人物ということで、普段以上に裁判の傍聴者が多くなっています。一度裁判の流れを確認すべきだとは思いませんか?」

 

 イリアスの言葉に、裁判長は少し考えた後、小さく頷いた。

 

「弁護人の意見を認めます。確かに、此度は初めて裁判に参加した者も多くいることでしょう。ただ、時間を多くとることはできません。軽く本日の流れを説明しますから、質問があれば声を出してください」

 

 そう言うと、裁判長は裁判の日程を語っていく。とはいえ、そこまで難しいものではない。開廷、起訴分の読み上げ、そしてこれから行われる被告人、弁護士による被告人弁護、検察官による証拠の提示、その証拠に対する反論、そして、判決という流れだ。

 

「……証拠人は誰でも構わないという認識でよろしいですか?」

 

「言っている意味が分かりませんが、弁護人、証拠人はどなたでも構いません。ただし、いま、この場にいる、もしくは弁論に間に合うものだけです。よろしいですか?」

 

 それを聞いて、小さく頷いたイリアスを受けて、裁判長は改めて木槌を振った。

 

「それでは、改めて裁判を再開する!被告人、弁護人は、弁明をするように!」

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ですから、俺たちはキメラデュラハンを討伐し、そして今回ギガントウェポンを倒しました。こんなにこの街に貢献している俺が、国家転覆罪なんておかしいと思うんですよ!というか、むしろこれ表彰されてもおかしくないと思いませんか?」

 

 俺がどれだけかっこよくキメラデュラハンと戦ったか、熱弁を振るっていると、裁判長はもう結構、とでもいうかのように手を振った。

 

「わ、分かりました。それでは、次は検察官。被告人に国家反逆罪が適用されるべきとの証拠の提示をお願いします」

 

「では、これより、被告人サトウカズマが国家反逆罪にふさわしいと思われる証拠を提示します。証人の方々、前へ!」

 

 そうしてやってきたのは殆どが冒険者……というか、そのほぼすべてが俺の知り合いだった。

 一番最初にやってきたのは、銀色の髪が美しい女剣士風の盗賊だ。

 

「では、アリスさん、あなたがカズマさんに公衆の面前で下着を剥ぎ取られたというのは本当ですか?」

 

 その言葉に少し考えた後、アリスは口を開いた。

 

「うむ、余が持ち掛けたスティールでのギャンブルによる景品だ。まあ、その後返還を要求したが、そのこと自体に不正はないし、余も合意しておる」

 

 言い切ったアリスに、セナはたじろいだように身を強張らせ、慌てて次の証人を呼び出した。

 

「つ、次は、ミツルギキョウヤさん!あなたは、天軍聖剣をカズマさんに奪い取られたと聞いています!それは本当ですか?そして、其方の二人は取り返そうとしたときに下着を奪い取ると脅されたとか」

 

「検察官殿、その前に一つ言わせてほしい、僕とカズマ君は同じ神を信仰する同士だ。確かに天軍聖剣を売り払われはしたが、それは信仰が足りない僕を戒めるためのもの、むしろ僕はカズマ君に感謝しているんだ」

 

 その言葉にミツルギ以外の皆がドン引きする中、何とか気を取り直してセナが取り巻き二人に声をかけた。

 

「そ、その、後ろの二人はどうですか?」

 

「え、えっと、確かに俺のスティールが炸裂するぞって!」

 

「そうよそうよ!」

 

「よ、よし、それじゃあ最後です!」

 

 やっと有用な証拠を掴めたからか、少し笑みながら最後の証人を呼び出した。

 

「……えっと、なぜ私はここにいるのだ?」

 

 最後の証人はベリアだった。

 

「ベリアさん、あなたは先ごろとあるお店での乱闘騒ぎから投獄されていましたね」

 

「……それが何だというのだ?」

 

 不機嫌そうに答えるベリアに、セナは一呼吸おいて言葉を続けた。

 

「その際、そこにいるサトウカズマに辱めを受けた、と聞き及んでおりますが、それは真実ですか?」

 

「な……!」

 

 驚愕に目を見開いたベリアは、みるみる顔を紅潮させ、顔を隠して俯かせた。

 

「そ、その日のことは、聞かないでくれ、思い出したく、ない」

 

「ちょ、ま、まて!その言い方は誤解を招くだろ!そもそもあれはお前の方が!」

 

「わーっ!わーっ!な、なななな何のことだカズマ!なあ!なあ!」

 

 俺の言葉にかぶせるようにして大声で俺の声をかき消すベリアと、さらに言い募ろうとする俺の声は、すぐさまセナの声に遮られた。

 

「お判りでしょうか!つまり、被告人、サトウカズマは反省すべき投獄中でさえ女性との交流にうつつを抜かし、そして相手の女性に責任を押し付けるクズなのです!」

 

 そう声高らかに言ったセナに反論しようとしたが、涙目で見つめるベリアの目に思わず一瞬声を出すのが遅くなってしまった。

 

「ふむ、分かりました、これは……少々難しいですなぁ」

 

 裁判長がそう言って木槌を振り上げる。その瞬間。

 

「異議あり!」

 

 再びイリアスの鋭い声が響き渡った。

 

「またあなたですか?いったい何の御用で?」

 

「こちらも話を聞きたい方がいるのです」

 

「ほう?それはこの会場にいる方ですか?」

 

 小さく頷いたイリアスは静かに告発人の席を見る。

 

「アルダープ卿、いくつか質問を致します。お答えください」

 

 イリアスのその言葉に、アルダープは冷笑する。

 

「ふっ、何を言うかと思えば、下民の言葉に応える気などない」

 

「……(今怒ってはいけません、冷静に、冷静に)いえ、貴方は答えなければなりません。もしあなたが発現を拒否するなら、それはあなたの言葉に裁判で負ける要素があると認めるようなもの、そうではありませんか?」

 

 イリアスが流し目で裁判長を見ると、いきなり質問を放り投げられた裁判長は多少慌てつつ言葉を発した。

 

「む、あ、いや……。そうですな、質問も聞かず、全て質問を拒否は、確かにやりすぎかもしれませんな」

 

 それを聞いて、アルダープはいらだったように頭をコツコツと人差し指で叩き、そして声を出した。

 

「よかろう、そこまで言うなら答えてやろう。だが3つだけだ。そして、もしそれでこの男の無実が証明できなければ、その時は……」

 

「そうですか。ではまず、貴方はこの裁判、正当なものだと思っていますか?」

 

 アルダープの言葉を軽く流したイリアスは早速質問を始めた。鼻白むアルダープは、しかし皮肉下に笑って答えた。

 

「当然だ!儂の命が危ぶまれたのだぞ!死刑が妥当だ!」

 

 その言葉に冷めた目をしながら、イリアスが頭を振った。

 

「すみません、言い方が悪かったですね。あなたはこの小男が、本当に、100%国家反逆の思想をもってあなたを害そうとしていたと考えていますか?」

 

「……ふんっ!その可能性が一番高いだろう!いや、それ以外のことは考えられんな」

 

 その言葉に少し瞑目し、イリアスは静かに言葉を続けた。

 

「それでは、アルダープ卿、悪魔と言葉を交わしたことは有りますか?」

 

 唐突な質問にアルダープは一瞬呆けた顔をし、そして烈火のごとく気炎を上げた。

 

「なっ!何を言いだすか!あのような下賤な連中と話をすることがあるわけが無かろう!そして、この裁判に関係ないことを聞くとは何事だ!もういい!この女も法廷侮辱罪でひっとらえろ!」

 

 そう言い切った後、がやがやと少し騒がしくなった会場で、イリアスは意外そうな顔をしてから、クスリと笑った。

 

「ふふ、ふふふ、あははははははははははははははははは!」

 

 あまりの異常さにアルダープでさえぎょっと動きを止めたその直後、イリアスの目がギョロリとアルダープを見据えた。

 

「あらあらあら、おかしいですね?あなた、さっきエヴァと話していましたよねぇ?どうして嘘を感知する魔道具に反応がないんでしょうか?」

 

 その一言で、その場にいた全員が思わず魔道具の方を見つめた。確かに言われてみれば、先ほどから一度も魔道具はその音を鳴らしていなかった。

 

「エヴァはサキュバス、れっきとした悪魔ですよねぇ?彼女と言葉を交わしたのに、なぜ魔道具は反応しないのでしょう?」

 

「貴、貴様!儂を愚弄するか!」

 

 アルダープの言葉を聞いて、イリアスはさらに目を鋭くする。

 

「愚弄?愚弄しているのは誰なのでしょうね?魔道具が反応しなかったという事は、悪魔とあなたの関係が出た時点で、何らかの方法を使って魔道具を無効化したという事。

 ……おかしいですね?エヴァと話したのは裁判の直前、しかもこの場にいる多くの人物が見ている公然の事実。それを隠し立てする意味はなく、だからと言ってあなたが悪魔に指示を出すタイミングもありません。つまり、”あなたが事前に悪魔との関係性がばれないように細工をした”か、”悪魔が自己判断であなたとの関係を隠匿した”かということになりますね?」

 

 コツコツと足を踏み鳴らしつつ、イリアスはアルダープの顔を覗き込んだ。

 

「裁判を愚弄しているのは、一体どちらなのです?」

 

「え、ええい!うるさいわ!こいつは国家反逆罪で死刑!そうに決まっておる!裁判長!そうであろう!」

 

「え、あ、あぁ。確かに、そうかも、しれませんなぁ?」

 

 明らかに無理筋の、というか全く別の方面で炎上しかかっているアルダープの言に同意する裁判長。その不自然さに、敵側として立っているセナでさえも変な顔をして裁判長を凝視した。

 

「……アルダープ卿。私は厳正な裁判を望みます。魔道具の故障という線も一応考えられますし。もし、厳正な裁判の結果、こちらに過失があったというのなら、罰金や、多少の禁錮であるならば甘んじて受けましょう。ですが、もしこのままこの男の死刑を断行するというのならば」

 

 そう言うと、イリアスはラスボスの如き威圧感を放ちながらアルダープを威圧し、言い放った。

 

「我々は有志を募り、その全員で王都へ上り、不正裁判をする貴族について陳情しましょう。果たして国王陛下はあなたのことをどう判断するのか、楽しみですねぇ。あぁ、言っておきますが、私に洗脳の類は効きませんよ。尤も、仮に私一人を洗脳したとしても、この場にいる誰か一人でも王都までたどり着ければそれで最低限の目的は果たせるわけですが……」

 

 その言葉に、焦ったようにアルダープは周囲を見渡した。

 そして、俺自身は冒険者たちの視線を浴びながら冷や汗を流していた。

 イリアス、陰険すぎるだろ!要するに正当に裁判を行うというのは和平条件なのだ。これ以上は要求しないという手打ちの条件。それを飲むのであれば、アルダープへの不信感は残りつつも、『魔道具の故障による不具合によって少し問題のある裁判だったが、改めて正しい裁判が行われた』だけの裁判となる。

 だが、もし、それを飲まなかった場合、アルダープは不正裁判を断行した者となり、そしてそれは貴族とはいえ一個人が簡単に誰かを死刑にすることができる権力を持つということになる。そしてとどめにイリアスが周囲の人間の存在を強調したことにより、この場にいる全員が、アルダープを野放しにしていればいずれは自分自身が処刑台に上がる候補者として認識されたことを自覚することになったのだ。

 

 それはアルダープにとっては数百人規模の敵が一瞬で目の前に出現したに等しく、傍聴人たちにとってはいざとなれば絶対に王都へと向かわねばならない理由が発生した瞬間だった。

 

 そんなある意味どちらにとっても最悪な状況を作り出した女神さまは、勝ち誇った笑顔でアルダープに言い含めるように言葉を重ねる。

 

「さぁ、では再審を致しましょうか。えぇ、いい結果になることを期待していますよ。何しろあの男は、魔王軍幹部を倒し、古代兵器を倒した英雄!過去一度たりとも、魔王軍の幹部と情報を共有し、パーティを組むような関係になったことなどないのですから!」

 

 リーン!

 

「「「「「「「え?」」」」」」」

 

 もはやイリアスの独擅場となった裁判所内に澄み渡ったベルの音が響き渡り、その場にいるほぼ全員が、イリアスやアルダープでさえも呆けた声を出すことになったのだった。

 

 




※たまも→もんクエ世界で魔王の教育係かつ四天王
 エルベディエ→もんクエ世界でクィーンスライムかつ四天王
 グランベリア→もんクエ世界で勇者ルカと最初に戦うことになる四天王
 アリスフィーズ・フェイタルベルン→旅のグルメとは仮の姿、真の姿は魔王 つまり、そういうことです。

 なお、イリアスはああいっているが、実のところここまで上手くいくとは思っていなかった。本当は悪魔特有の嫌な気配を感じたので、エヴァに話かけさせ、悪魔の質問で罠にかけ魔道具を起動、もしくは嘘をつかなかったとしてもどんな悪魔と関わりがあるのか、とかを聞いてそっち方面から傍聴人たちを先導していくつもりだった。今回はアルダープ側の用心が裏目に出て思わず悪魔に関する質問に過剰反応して魔道具を止めてしまったためある意味不自然すぎる状況が生まれました。イリアス様もウッキウキです。むしろはしゃぎ過ぎてポカをしました。

水の都、アルカンレティアでハンスさんと共に入浴していた相手の特徴に関するアンケート

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