「ふむ、……カズマ、これはお主にやろう。借金返済の足しにするとよい」
そう言ってたまもは一つの石を投げ渡してきた。それは赤く輝く石で、具体的に言うと先の格闘戦で、ギブアップした七尾がなかなか技を解かないたまもに降伏の対価として提示されたものだった。
「なんだ、これ?」
「マナタイト結晶と言っての。この内部の魔力を自身の魔力の代わりにすることで、魔力消費無しに魔法を扱える、言ってしまえば使い捨ての外付け魔力容器じゃ。……じゃが、爆裂魔法の魔力を賄うにはちとこの大きさと純度では役不足での。うちには無用の長物なのじゃ」
……それって、要はすっごい扱いにくい魔法を常に使っているってことなのでは?
「なあ、たまも、別の魔法を覚える気とかって……」
「ない……と言いたいところじゃが、精霊との契約のこともある。何か覚えんといかんかと吟味しているところじゃ。尤も、それもポイントの少ないものにするつもりじゃから戦闘ではあまり役に立たんと思うがの」
「だよなぁ」
俺は一つため息をつく。
まあ、たまもも頼りがいのある時はある……徒手空拳を使っている時や作戦指揮をしている時という、どっちかって言うと魔法使いとしてではない場面で活躍しているのがなんとも残念だが。
それに比べて……と俺は七尾を思い浮かべる。先ほど見たライトニングセイバーは一撃でカエル娘を薙ぎ払っていたし、まだまだ余裕はありそうだった。しかもプロポーションはボンキュッボンと大したものだった……。
「のう、カズマ。紅魔族というのは魔力だけでなく知力でも有名な種族じゃ。お主のため息の理由、当ててやろうか」
少しドスを聞かせてそんなことを言うたまもに、俺は少し詰まってからたまもに向き合った。
「七尾よりもたまもの方が美人だな、と思ってました」
「ほほ、面白いことを言うのう。では、その美人さんがお主に抱き付いてやろう。光栄に思うがよい」
「おいちょっとやめ!ったたたたた!」
気に食わなかったからって関節を決めるな!関節を!
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屋敷に戻ってもポ魔城からイリアスを始めとして仲間たちが姿を現すことは無かった。まだ気絶しているらしい。
とりあえず俺たちは連れ立って風呂場に向かう。
「むぅ、カエル臭くてたまらんのじゃ」
「俺のカエル臭いのも半分はたまもが抱き付いたからなんだが?」
「役得であろう?ヌルヌルのおなごに抱き付かれるなど、場所によっては多少払ってもされたいと思う男は多かろう?」
しれっとそんなことを言い放つたまもをスルーして脱衣所に入ろうとすると、その服の袖が引っ張られた。
「……なんだよ」
「鼻がひん曲がりそうでのう。先にうちが入りたいのじゃが」
「俺だってヌルヌルが気持ち悪いし、臭いからさっさと汚れ落としたいんだが。そもそも、お前じゃお湯沸かせないだろ。魔力すっからかんなんだから魔力式湯沸かし器動かせないんだから。分かったら俺が出るまで暖炉であったまってきなさい」
そう言ってシッシッと手で追い払うと、嫌そうな顔をしながら反論をしてきた。
「この着物、そんな乾かし方したら確実に痛むのじゃ。においが定着して取れんくなったら、新調するしかないのじゃが、お主がその代金を持ってくれるかえ?」
「それはそれ、これはこれだ」
俺はさっさとお湯を張り、上着を脱ぎ始める。
「むぅ、お主、ためらいなく乙女の前で服を脱ぐのう」
「何が乙女だ、ちみっこ。そう言うセリフは、もうちょっと成長してから言ってくれ」
その言葉にむぅとうなるたまもだったが、にいっと笑って着物に手をかけた。
「致し方あるまい。カズマはうちのことをロリっ子と思うておるようじゃし、共に湯船に入ろうではないか」
「あぁ、それなら万事解決だな!」
「……お主、少しは躊躇いとかないのかや?まあ良いか」
そう言ってたまもは割と躊躇なく服を脱ぎ捨てるのだった。
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「「ふぃー」」
俺たち二人の気の抜けた声が重なり、くたりと体の力が抜けていく。
「あぁ、やっぱり風呂はいいな。疲れが抜けていく」
「全くじゃな。どうじゃ、借金の方も、ある程度目処がついたら温泉にでも行くというのは」
「あぁ〜それもいいなぁ」
そんなふうにリラックスしていた俺は、チラリとたまもの肢体を盗み見る。体はもう、完全にチミっ子であり、欲情のよの字も出ないつるぺたすっとんとんだ。逆にこれで欲情したらそれだけでロリコン認定不可避だろう。
……。いや、しかし、俺はある一点に視線を向ける。それは彼女の尻の付け根から生えた九つの豊かな毛並みの塊である。
「む?……ほほう?なんじゃカズマ?お主、うちには欲情せんと言うておきながら、いやらしい目でうちのチャーミングな尻尾を舐めるように視姦しおって……。ほほ、愛いやつじゃのう」
「ばっ!違っ!」
慌てて否定するものの、少し前を気にしているのを勘づかれてしまったらしい。揶揄うように含み笑いされてしまった。
「よいよい。うちの尻尾は極上じゃからの。それを思い出して反応してしまうのは男の性と言うものよ。
とはいえ、今は風呂に入って濡れ鼠。流石に普段の尻尾と比べれば触り心地も見た目も半減じゃな」
そう言ってしゃなりと尾を振るたまもの姿に、思わず顔を背けてしまった。幸いなことにそこで満足したのだろう。彼女はニヤリと笑った後はそのことには何も触れずに話を変えた。
「しかし、エルべぇは一体何をしとるんじゃろうな?明日、あのメイドについて行けばわかるとは思うが」
「まぁ、心配しなくても大丈夫だろ。メイドが来たってことはどこかのお屋敷にいるってことだろうし」
そんなふうに話していると、何やらゴソゴソと音がし始めた。
「全く、酷い目に遭いました。というか、なんですかあのカエル娘は。うぅ。お陰で体がぬるぬるです」
「イリアス、起きたみたいだな……って、たまも!風呂の鍵閉めたか!?」
「忘れておったのう。こりゃ、ちとまずいかもしれん」
割と慣れてきたとはいえ、潔癖症の気のあるイリアスのことだ、この状態を見られたら、雷を落とされる可能性は高い。
「早く鍵を!」
「いかん!悠長に閉めておったら間に合わんぞ!」
「っく!間に合え!『フリーズ』!!」
冷気が当たりを包み、錠前を凍結させる。
「む、カズマ、中にいるのですか?まあ、良いでしょう。上がったら私に声をかけるのですよ」
そう言ってイリアスはその場を離れていった。
良かった。まぁ、良く考えればイリアスが好き好んで俺の裸を見ようとする訳がなかったのだから、中に俺がいることをアピール出来れば良かったのだ。
安心感も手伝い俺の全身から力が抜けていく。いや、これは。
「大丈夫か?カズマ」
「イリアスに関しては大丈夫だだけど魔力切れで全く動けないよ。まぁ、なんとかなっただけありがたいけど」
そう言って脱力する俺をたまもが担ぎ上げる。
「まあ、とりあえず湯船に浸からせてやろう。凍結魔法で風邪をひかれても敵わぬ」
「あぁ、ありが、あ」
その時、ハラリとタオルが落ち、休眠状態のアレがたまもの目に晒される。
「……」
「……」
沈黙して暫く。侮蔑か、羞恥か、そんな感情の爆発を予想していた俺は、その予想を大きく裏切られることになった。
「うちと風呂を共にしておいて、その反応かや?気に食わんのう……お主もうちの尻尾を無断で触ったことがあったわけじゃし、股座についた前尻尾をうちが弄ろうが問題あるまいな」
「た、助けてくれイリアス!のじゃロリ幼女に悪戯される!」
その後、イリアスに助けられ、ロリコンカズマと、雷撃と説教を喰らったが、間に合って本当に良かったと思う。
大変お待たせしましたお風呂回です。
なおこの世界のたまもの羞恥心はめぐみん準拠でなくエロゲ内の魔王軍四天王、たまも準拠です。
彼女は普段はのじゃのじゃ言いながら遊び感覚で勇者と戯れるたまも様ですが、魔王城でのガチ戦闘(本気ではない)の時はなぜか初めから全裸で戦うとかいうアルマエルマですらしなかったことを平然とやってのける羞恥心皆無なお方なので。まぁ、お風呂で裸体晒すのもまぁわかるかなー。と。
因みにサバサとシロムも起きていますが、サバサはさもありなんと静観しており、シロムははわはわしてます。
変更点
・アークウィザードの抵抗感が全体的に低め
・風呂場での会話内容を変更