「サトウカズマ、サトウカズマはいるかー!」
冒険者ギルドで食事をとっていると、そんなにぎやかな声が聞こえて来た。
「あ、セナさん」
「そこにいたか、サトウカズマ!貴様に魔物の繁殖の嫌疑がかかっている。神妙に縛に着くがいい!」
「は!?」
驚いて聞き返すと、セナさんは若干目をそらしつつ言葉を続けた。
「いいか、貴様が先ごろ向かったキールダンジョン!あそこで妙な魔物が大量に発生しているのだ。そして、公式の潜入記録はお前たちを最後にこれまで踏み入られたことは無いんだよ!つまり、貴様が何かダンジョンの中でしたことで、魔物が溢れ出したに違いないのだ!」
「いや、待て、最後に行ったのってあれだろ?ギガントウェポン討伐のために、サバサを連れて来た時だろ?そんなら中には入らなかったが、ケンタウロス娘も同行してたぞ。流石にあんな状況で妙な気は起こさないって。何ならケンタウロス娘たちに確認してもらってもいいぞ」
「ふむ、妾からも、一応言っておこう。少なくとも妾の知る限り、つまりキールダンジョン最奥部の隠し部屋において、この者達が妙なことをしていたことはない。それは保証しよう」
俺の言葉とサバサの証言から、セナの目がさらにあっちこっち泳ぎだす。
「しかし、それは困りましたね。あなた方に何か関係があると考えていましたので……あぁ、どこかにキールダンジョンに詳しい冒険者の方はいないのでしょうか、あなた方でないとすれば調査の必要があるのですが」
そう言いながらちらちらとこちらを見るセナ。
なんだその目は。
「まさかとは思うが、疑いをかけたこちらに仕事を任そうなどという事は考えておるまいな」
たまもに言われて、セナがぐっと言葉を詰まらせる。
「え、ええ、そうですね。それでは、私はギルドに依頼を出してきます。もし、お手伝いいただけるならお声掛けください」
そう言って、去っていくセナを見て、イリアスが不安そうにつぶやいた。
「カズマ、あの対応でよかったのですか?」
「?……なんか問題あったか?ケンタウロス娘たちも現場は見てたし、実際俺たちは関与してないんだから、別に何かあるとは思えないんだが」
そんな俺の言葉に、イリアスはじっとサバサを見つめる。
「いえ、そもそもの話、サバサがあの場所を離れたということ自体が、事件の発端の可能性もあると判断されてもおかしくないと思うのですが」
「む?」
サバサが思案顔で顎をさすり、続きを促す。
「サバサは上位魔獣……魔物のくせに神の名を冠するなど不敬にもほどがありますが、神魔と呼ばれる上位魔族の更に上に属する存在。スフィンクス娘というだけで世界有数の実力者だと知らしめる程度の力を持った大魔族です。例え彼女が生に絶望し、能動的に動かなかったとしてもまともな上位魔族なら戦闘どころか遭遇を避けるはず。つまり……」
「……妾が知らぬうちに、魔族の発生をあの隠し扉のさらに奥へと押し込めておった、と言いたいわけじゃな……下らんな。あの隠し扉の先に他の隠し部屋などはない。伊達に百年単位であそこに引きこもってはおらんぞ」
そう言って冷笑するサバサと対照的に、俺は少し冷や汗をかく。
「いや、待て、サバサ。今回の新種の魔物の発生は、結構規模の大きい物だったんだ。キールダンジョンを拠点にするなら、そして、ダンジョンの最新情報を持ってるなら、あの隠し部屋は潜伏先にうってつけだろ?もし改装なんかして、奥の部屋が増えてたりしたら……」
「む……それでも新しく取り付けたとかでわかりそうなものではあるが……」
「その場合も、サバサ、お主が何かしらの魔族を作り出して隠し部屋に置いておいたのを忘れとったとか、いちゃもんはいくらでも付けられるのう?というか、お主がキールダンジョンに百年単位で住んでいた以上、いくらでもでっち上げようと思えばでっち上げることはできるのではないか?セナはそのことには気づいておらんかったようじゃが」
確かに、よく考えればサバサがあのダンジョンでどうやって過ごしていたかなんて言うのは、時たま俺たちに話してくれる昔語りでもなければ殆ど分かっていないことだ。俺の言葉とたまもの指摘に、徐々に顔色を悪くするサバサは、すがるような眼で俺を見つめた。
「か、カズマ、こ、こういう時この時代の法ではどうすればよいのじゃ?いや、勿論昔のやり方は知っておるのじゃが、今も同じかとか、そういう」
「まあ、サバサをしょっ引かれても困るし、俺たちが調査隊になって、なんかおかしなところがあっても何とかできるようにするしかないか。はぁ……というか、なんでサバサはこんなにおびえてるんだ?」
その言葉に、イリアスが端的に答えた。
「魔族の場合、無計画な繁殖や下級魔族の繁殖で大きな被害を出したなら、アリスフィーズ王家の名の下に、問答無用で討伐対象になる。という時代がありましたから、それでではないですか?」
なるほど、そう言えばクリスも裁判とか経ずにイリアスを討伐しようとしていたな、と俺は納得したのだった。
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「すまん、妾が原因のようなものなのに……」
「まあ、仕方ないさ。今回は俺たちに任せとけって」
珍しくしょげ返るサバサを見て、俺はそうフォローを入れた。そうして歩いていると、キールダンジョン付近で奇妙な魔物を見つけることになった。
それは、全体的に白い魔物だ。大きさは腰よりも少し低いくらい、見た目的には、触手を人間の形に加工したような見た目だった。足は複数の細い触手であり、手も人よりもはるかに大きい掌に、吸盤のないイカの足のような触手が付いている。髪は無く代わりに二対の触手が生えており、顔に口や目はうかがえず、代わりに額の真ん中と顔の側面に青いひし形の水晶の様な器官が備わっていた。
「な、なんだこいつ」
それは今まで見たどの魔物とも全く違う魔物だった。及び腰になっている俺に対して、イリアスがおもむろに近づいていった。
「……?何を不思議にしているのです?彼女は人間の女の子ではないですか」
「は?何言ってるんだ?イリアス」
イリアスの口から出た、そんな突拍子もない言葉に、呆然としている間に、イリアスはその謎の魔物の頭をなでる。
「少し見た目は違うかもしれませんが、ゲノムの99.9%は人間と一致しています。その肉体の精強さも、寿命の長さも。そして女神に対する従順さも、まさしく新人類というにふさわし……」
そして、撫でられた魔物は彼女の手の中で思いきり爆散した。
「……おーい、イリアス、大丈夫か?」
「……えぇ。まさか彼女にも裏切られるとは……これはもう少し調整が必要かもしれませんね」
なんだか妙な話をしているが、それについて問いただす間もなく、更に大量の魔物、イリアス的には新人類が現れた。
「ちょ、ま」
俺が思わずそう言って動揺していると、目の前を水色の粘体が覆った。そして、そのまま捕食するように取り込まれた新人類が、粘液の中でボンボンと爆発する。
「ふぅ、これくらいならなんてことないわね」
とりあえず、エルを盾にしておけば、何とかなりそうなので、俺はイリアスに声をかける。
「なあ、イリアス、もしかしてあいつらって、お前と関係あるの?」
「……そうですね……元の世界で人類が滅んだあとの新人類として、私の本体が用意していた人類、レプリカントの近縁種でしょう。大きさはやや縮小しているようですが」
「女神様、なんで人類絶滅なんてことを想定してたんですかねぇ?」
「……」
俺の質問にイリアスはツイッと目を逸らす。
「い、良いではないですか、今はそのようなこと考えていないのですし、そんなことはどうでも!」
……こいつ、暗に自分が原因で人類が滅ぶような行動をしていたことを認めたよな?
「……まあ、今はそんなことを話してる場合じゃないか。だけど、新人類を知ってたことは絶対に表ざたするなよ!絶対厄介なことになる」
「そうですね、分かりました」
とりあえずそれだけ取り決めて先に進むことにしたのだった。
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「おや、カズマさんたちではないですか?どうしたのですか?」
キールダンジョンの前まで来ると、セナがそう声をかけて来た。
「いえ、よく考えれば、これだけ街に近いダンジョンだと、俺たちにも影響があるかな、と思って手伝いに来たんだ」
それを聞いて、セナが、薄く笑みを浮かべた。
「それは本当にありがとうございます。どうか、ご協力をお願いします。……そうですね、ご協力いただけるという事でしたら、これをお持ちください」
そう言うと、セナは、一つの紙きれをこちらに手渡してきた。
「これは?」
「これは、封印のお札というものです。なんでも、はるか昔に女神、アリスフィーズ様を封印したとされる術式を解析して作ったという曰く付きのお札で、流石に神様を封印するほどの力はないとは思いますが、それでも大悪魔クラスでも封印してしまうことができるとされている強力な結界を張ることができる魔道具です。性質上魔素を肉体の基本構成に持つ魔物娘たちが持っていると悪影響があるのですが、カズマさんとたまもさん、それにイリアスさんは使えるはずですので……」
「いや、いらないだろ。よし、たまも、いけ」
「黒より黒く……」
「ちょちょちょ、何をしてるのですか!」
慌てるセナに、俺は言い含めるように言葉をかけた。
「あそこから新種の魔物が出ているんだろ?なら入り口を潰せば問題ない。だろ?」
「いえ、こんなに新種の魔物が出てくるとなるとこの中に相当に強い相手がいるのが明らかです!ですから、その原因をきっちりと討伐しておかないと後々壮途にまずいことになりかねないですから!」
そう言われては仕方がない。というか断行したらそれこそそのまま犯罪者ルートだ。
「仕方ない。ダンジョンに行くか。……とりあえず」
そうして俺は仲間を見回した。サバサ……は当然その大きさから同行は無理、イリアスは以前のアンデッド大量引き寄せの前科があるためやはりこっちに残っていた方がいいだろう。クロムは、有りっちゃありだが、クロム自身の戦闘能力がそこまで高くない上に、相方のフレデリカさんはゾンビとしてはかなりの大柄で狭いダンジョン内ではやや手狭なうえ、クロムがいないと動きが鈍る。たまもは頼りにはなるが、肝心の爆裂魔法を使えないとなるとあの魔物に囲まれた時など話すすべがないだろう。そして、封印の札が使えるのが人間や天使である以上俺が降りるのは必須。となると。
「エル、護衛を頼めるか?」
「ええ、任せなさい」
ということで、俺とエルの二人でキールダンジョンに潜ることになったのだった。
というわけで、とうとう登場しました見通す悪魔。
もんクエ民からすればバレバレだったと思いますが、見通す悪魔は全知の悪魔が名前の元であるラプラスさんです。
ただし、原作のラプラスさんはどっちかって言うとドレインラボ自体が本体で人間部に見えるのは内部の意志表出器官という扱いなのですが、このすばナイズされたラプラスさんは本作の通り、ヘルメットが本体となっています。
ラプラスさんについては、ロイド系最高位の魔物娘であることは間違いありませんが、ギガントウェポンの際に名前だけ出たプロメスティン作かつ、別に天使として活動していないので、コンセプトが異なり、内部に悪魔の魂を封印し、ロイドの肉体と悪魔の精神を融合させたとか多分そんな感じ。
彼女もロボット工学三原則を設定はしていますが、マッドよりなうえ、戦乱の最中だったため、敵を殲滅することも考慮に入れた設計を行いました。
しかし、その際、魔族の多彩な性質が邪魔をして、正確な数値を入力できなかったため、苦肉の策として、プロメスティン自身が一緒に過ごせる仲間としての認定したものと、ある程度に力とラプラス自身の人工知能によって仲間になりえると判断した者を人間の定義として設定する特殊なルールを設定しました。
ただ、見た目が異形なこと、そして何しろその巨大なツインテ―ルの破壊力がうっかり壁とか破壊するレベルの為、ある程度の実力が無ければうっかりで人を殺しかねないという事実から、仲間になれるものはいませんでした。
そして、とあるきっかけによりプロメスティンが死に、その最後の願いとしてプロメスティンは魔族の王に彼女の保護を願い出ました。ラプラスに対しては、魔王を仲間と設定せず、ラプラス自身の判断で魔王の善悪を判定できるようにしたうえで、です。
この結果、ラプラスは魔王軍の幹部として取り立てられつつも、魔王に懐疑的な存在となりました。そして、長い時を過ごし、経験の蓄積により、自己意志がよりはっきり確立してきたことで、魔王が人間や魔物娘を滅ぼそうとすることに疑問を感じ、積極的に幹部として動くことは無くなりました。
みたいな裏設定があるんだと思う。多分、きっと、メイビー。
あ、口調に関しては、能力を使って事象を確認したり、事実を言及する際は事務的口調、本人の思いやただの会話の際は砕けた口調で話しているつもりです。
そして、前々回すごい甘々な空気を醸していた片割れがこのザマだよ。ま、まあ、他のショタを襲ったわけじゃなくて自身がショタになる素敵空間に耐えられなかっただけだから……。
なお、もし生還した場合はバルター君にちょっと心配そうな目をされながら「こんなうわさ有りますけど、僕はあなたがそんな人じゃないって知ってますから!」って言う割と精神をえぐり取る光属性と、その後ろで若干軽蔑すら籠った視線でにらみを利かせるお母さまという地獄絵図が繰り広げられます。
変更点
・見通す悪魔(男)を見通す悪魔(機械生命体)に変更
・クルセイダーの変態具合を強化
3章後閑話に挿入する閑話、どれがいいかのアンケート※思いついたのを列挙しているだけなので(以下略)
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