故郷を飛び出し、少し。いくらか魔物娘たちに追いかけられ、アクアとアリスがご飯の取り合いや意見の対立で言い合うのを仲裁しつつ進んだ旅の道中は、ひとまず第二の村、イリアスベルクへ着くことで一旦の終わりを迎えることになった。……はずだった。
「……なんだか、おかしい?」
僕はカスタムソードを握りながら周囲を警戒する。時刻は夕暮れ、確かにもう食事の準備に忙しくなる時間かもしれないが、それにしても人が一人もいないというのはおかしい。それに飯炊きの煙もなく、極めつけに姿は見せないのにあたりを警戒するようなピリピリとした感覚だけはひしひしと感じるのだ。
「……ね、ねぇルカ。ちょっと、この村に泊るのやめとかない?なんかとってもまずい気がするの?」
そう言うアクアの声に、アリスの意見も聞こうとすると……すでにアリスの姿は跡形もなかった。アリスはいつもこうだ。僕が魔物娘と戦おうとすると、いつの間にか姿を消している。
逆に言えば、今のこの現状は、魔物娘が関わっている、ということだ。
「!あっちの方から音がした!」
僕がそちらへ向かうと、こわごわとした様子でアクアが後をついてきた。
そして、そこには……。
「うぅ……」
「ちくしょう……」
死屍累々と転がる戦士達と、僅かに残った武器を持つ男たち、そして……。
「もう私に挑む者はいないのか!挑む者がいないのならば、この街を魔王軍が占領し、魔王領として統治することになるぞ!」
そんな、規格外な大剣を携えた鱗を纏う女戦士の姿があった。
その言葉は、自身に向けられたものではない。それがわかっているのに、肌が泡立ち、まるで剣を突きつけられているかのような怖気が背中を走る。
実際にそれを受けた戦士たちは色を失って逃げ出してしまった。
「あれは、魔王軍四天王よ!折り紙つきの賞金首!ま、まずいんじゃないかしら。逃げちゃいましょう!」
こそこそとそんなことを言うアクア。だけど、僕は……。
注意深く見れば、家々からは、不安そうに覗く顔が見える。僕が逃げれば、この罪のない人々はどんな仕打ちを受けるか……。
そう思うと、僕は立ち上がり、声を上げていた!
「こ、ここにも戦士がいるぞ!」
「ほう……少年。これは遊びではないのだ。私とお前の実力差、わからぬわけではあるまい?今なら見逃してやろう。遊びなら疾く立ち去るがいい」
諭すような、しかし明らかな軽蔑を内包したその声に、僕はそれでも剣を向ける。
「それでも、僕はこの街の人たちを見捨てない!」
その言葉に、ベリアは静かに瞑目し、先ほどとは一転、少しの尊敬と、そして憐れみを纏った視線で僕を見据えた。
「よかろう。ならば、一人の戦士として、貴様を潰してやろう」
そうして、戦いの火蓋は切って落とされる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
戦いは、意外なことに5分の状況で推移した。もちろん、実情は全く別、必死で避けつつも何とか致命傷を避けている僕に対し、ベリアは危なげなく攻撃をいなしている。
ただ、それでも両者に横たわる絶望的なまでの実力差を鑑みれば奇跡のようなものだ。
そして、その奇跡の元凶は、明らかに最初に僕が放った技にあった。
「秘剣・首刈り」アリスから教わったその剣に、ベリアは反応し、その分だけ攻撃がおざなりになっていた。
「貴様がなぜ、魔族の剣技を使っていたのか、それは分からんが見込みはありそうだ。せめて、私の最高奥義で葬ってやろう」
その言葉と共に、彼女の剣が炎を纏う。
「紅蓮の業火に焼かれ、辱められることなく滅ぶこと、誇りに思うが良い」
「セイクリッド・クリエイトウォーター!」
その時、それこそこの街全てを飲み込むほどの濁流が、空から降り注いだ。
「!ちぃ!『炎刃・気炎万丈!』」
その濁流を、グランベリアが非常識な熱量で切り込んでいく。
「え!?嘘!」
グランベリアが飛び上がり、濁流の中に消えた直後、恐ろしい轟音と共に水が膨れ上がり、そして恐ろしい爆音を響かせて破裂する。
膨れ切り破裂した濁流は、その範囲を町全体から、街の周囲一帯まで規模を拡大させながらも、驟雨というレベルまでその密度を低下させて降り注ぐ。
「ゼェ、ゼェ。ぐっ……!流石にこれほどの聖素を浴びると、キツイものがあるな。だが、貴様と、そこの女僧侶に引導を渡してやることくらいはできる」
満身創痍ながら、瞳をギラつかせるグランベリアが僕たちを見つめる。グランベリアが剣を構え、そしてアクアがもう一度詠唱をしようとしたとき、涼やかな声が俺たちを遮った。
「やめよ。馬鹿者ども」
「……!あなた様は!」
「なんで止めるのよ!今あいつは弱ってるのよ!」
姿を見せたアリスに驚愕するグランベリアと抗議するアクア、しかし二人にアリスはぴしゃりと言い伏せた。
「それで街ごと相打ちになるつもりか?グランベリア、そなたの命はそれほど軽いものだったか?
アクアもだ。魔力にはまだ余裕がある……む、なんで貴様そんなに魔力が余っておるのだ?……まあよい。とにかく、グランベリアは貴様が脅威だと認識した。このまま戦うというのなら、グランベリアは貴様を真っ先に殺そうとしてくるだろう。貴様はそれを防ぐことができる方策があるのか?
此度の戦い。誰が何と言おうと余が預かる。双方武器と魔術を納めよ。否というならば、殴ってでも止めねばならぬ」
その言葉に、グランベリアが片膝をついて、アクアが渋々と言ったように了承の意を示した。
「はっ、あなた様がそうおっしゃるのであれば」
「納得できないわね……ま、とりあえずそいつがどっか行くなら今は良いわ」
「貴様…………様が止めたからと言って……」
「やめよベリア。それと、貴様もだアクア。それと、一応言っておくが双方暗殺など企てようとはせぬことだ。感知した時点で残った方も余が相手をすることになる」
そんな声を聞きながら、僕は急に視界が狭まっていく感覚を覚えた。
よく考えれば、少し前から体が冷え切っていて、段々、いしきが……。
「えっ!ルカ!ルカ!?」
最後にそんなアクアの声を聞きながら、僕は意識を手放したのだった。
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温かい、まるで、母親の膝の上でまどろんでいるかのような心地よさを感じて僕はそこに手を伸ばす。
「……かあさん」
「ほーら、よしよし。って、私はあんたの母さんじゃないんだから!」
「……ふぁ?」
目を開ければ、そこには割と大きい二つの双丘と、その上に除くアクアさんの顔があった。
「……っ!?」
「あ、ちょっと待ちなさい、そんな急に動いたら」
「っつ!」
ガバリとアクアさんの膝枕を振りほどいた僕は頭の後ろの鈍い鈍痛に顔をしかめる。
「一応回復魔法はかけて傷は全部直したけど、あんた殆ど死にかけだったんだからね。もうちょっと座っときなさいな」
そう言ってポンポンと自分の膝を叩くアクアさんに僕は再び寝転ぶ気は起きずさりとてベッド以外に座るところもなさそうなのでアクアさんの隣に座る。
「あの、街は?」
「街?あぁ、あのラミアが何とか収めたわよ。今ならちょっとは落ち着けるんじゃないかしら」
そう言うと、大きな皿を持った宿の女将らしき女性と、人間の姿を取っているアリスの姿があった。
「アリス!街のこと、何とかしてくれたんだって?」
そう言うと、女将が大声で笑い始めた。
「あはは!何言ってんだい!この街を救ってくれたのはあんたたちだろ!」
そう言って背中をバシバシ叩くものだから、僕はその痛みに少し顔をしかめてしまった。
「あっ、ごめんね、ちょっと調子乗っちまったよ。そりゃ、あんだけ激しく戦ったらそりゃ身体にがたも来るさね」
そう言うと、女将さんは皿を俺に差し出してきた。見れば、最初に見た時と比べて数がだいぶ減っている。横には頬を膨らましたアリスがいた。
「うちの名物あまあま団子さ。たんと食べておくれ」
「あまあま団子……ってことは、ここはサザーランドなんですか!?あの、すみません!僕たちただの旅人で、お金なんてなくて!」
「ん?何言ってんだい?宿泊料ならそっちの剣士さんから受け取ってるよ。勇者料金適用で5Gね」
その言葉に、僕は更に顔を青くする。
「いや、僕は洗礼を受けてなくて……」
その言葉に、女将はキョトンとした顔をした後あっはっはと笑った。
「何を言ってるんだい!さっきも言ったが、この街を救ってくれたのは他の誰でもないあんたじゃないか。洗礼を受けたとか受けてないとか、そんなことは関係ない。あの時この街を救ってくれた、私たちにとっての勇者はあんたなんだ」
「お、女将さん」
僕が女将さんの言葉に感動している間にアリスとアクアがひょいひょいとあまあま団子をつまんでいき、気が付けば団子は一つもなくなっていた。
「……あ」
「あっはっは、心配しないでおくれ。街の英雄様だからね。材料がある限りいくらでも作ってあげるさね」
そう言って女将が去ると、アリスとアクアがこちらを向いた。
「とりあえず、貴様のドアホ加減には驚かされるばかりだ。貴様、ベリアが本気であれば手も足も出なかった事は分かっておろう?」
それを聞いて、僕は小さく頷いた。確かに僕に勝ち目なんてなかっただろう。だけど……。
「だけど、あそこで見てみぬふりをしていたら、僕は勇者と名乗れなくなっていたと思う」
「ドアホめ。無謀と勇敢をはき違えるな」
アリスに辛らつな言葉をかけられた僕を擁護したのは、意外なことにアクアだった。
「いいじゃない。それくらいで」
「何?」
鋭い目を向けるアリスにアクアはひょうひょうとした風に答える。
「英雄ってのは最初はみな無謀に見えるものよ。どんな戦士だって、最初は見習いから。なら、私はこの世界の信徒として、彼を守ればいいのよ」
その言葉にアリスが白けたように目を逸らした。
「まあよい。こいつの言うことも尤もではある。そんなド阿呆は早晩死体を晒すことになることを勘案せねばな。さて……」
そう言って、アリスは腰を上げた。何事かと思ってアリスを見れば、アリスは酒瓶をもって僕の前に顔を寄せて来た。
「さて、此度は余の技が随分と役立ったようだ。貴様に、対価を請求しようと思うのだが……」
「待ちなさい。何をするつもりかしら?うちの信徒に変なことをしようってことなら抗議するわよ」
そんなアクアの言葉に、しかしアリスは鷹揚に手を振って頷いた。
「ふん、何も変なことはせぬさ。我らの糧は精。行為とまではいわぬこのド阿保の若く猛る性を有効活用してやろうというものよ。おぉ!それとは全く関係ないが、実は良い酒が手に入ってな。我らのそう言った諸々を見るのも暇であろう?下の食堂で飲んできてはどうだ?」
そんなあからさまな賄賂を、アクアは、ためらうことなく受け取った。
「アクア!?」
勿論、僕はアクアの信者じゃないし、魔法を使えるから天使様かもしれないとは思っているけれど、彼女自身が神様かもしれないとは微塵も思っていない。だけど、それでも、今までの話の流れから、まさか賄賂を堂々と受け取るとは思わなかった。
「なんだ、そんなことなのね。いい。私は水の女神でもあるけれど、豊穣を司る愛の女神でもあるの。私の教義ではね『恋愛は、それが犯罪だったり悪魔っ子やアンデッド娘だったりするわけでなければ、それがどんな種族であったとしても受け入れるべきだ』としているの。だからあなた達が合意の上でそう言うことを行うなら、私としては全く問題ないわ」
そう言ったアクアは少し心配そうに僕を見た。
「一応あなたが望んでいないって言うのなら私は止めるけど……」
その一言で、僕は思わず、アリスに迫られている内容を思い浮かべ、赤面してしまう。やめなければと思うのに、妄想は膨らみ、身体にも影響が出始める。
「どうやら、このド阿保はまんざらでもないらしいぞ、アクア」
「そ、なら私は食堂で飲んでくるから、後から来るのよ」
そう言ってアクアは立ち去ってしまった。これも、僕が強く拒否できなかったからだ。そして、それからのことは……。
翌朝女将さんに「昨日はお楽しみでしたね」という一言と、結局宿泊料がもう5G必要になったことで察してほしいと思う。
ちびっこ盗賊団の面々
アクア「花鳥風月!」
土のゴブリン「な、なんなんだそれ!お前すごいな!」
水のラミア 「何よゴブちゃん、さすがにうるさ……って、何々、あなた大道芸人?すごいわね、この芸」
風のヴァンパイア「蝙蝠が騒いでいたから来てみればなぜゴブリンとラミアがここに……な、なんなのじゃ!それは、こ、この芸を前面に押し出せば、いい商売に……」
数十分後
火のドラゴン「うがー!なんでみんな呼んでくれないのだ!私も見たかったのだ!」
ルカ「ほら、アクアが悪い子にはもう見せたくないって言ってるから、街のみんなに謝りに行こ?」
火のドラゴン「う、うぅ、うがー!というか、なんでほかのみんなは見てるのだ!」
ドラゴンパピー(憤怒)が現れた!
火のドラゴン「みんな、許さないのだ!」
ルカ「ちょっと、待って!喧嘩は良くないよ!」
アクアが花鳥風月を使っている辺りで観戦に来たアリス(これで悪事を白状する気になるとは……やはり子供だな)←最前列で見ていた
このあと無茶苦茶謝った。
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お待たせしました。
とりあえず次回があってもちびっこ盗賊団編はカットです。
ハピネス村編は悩み中だけど、今回アクアさんが魔物娘(悪魔っ子除く)のチョメチョメを肯定するシーン入れたので、ぶっちゃけハピネス村も肯定するのが目に見えてるんですよね。
今度ifのアンケート取るときはシーンも出そうかな。
海鳴りの洞窟編とかアリを奴隷にしている魔道王の顔に女神パンチを叩き込むグランゴルド編とか、魔王城編とかは面白そう。
3章後閑話に挿入する閑話、どれがいいかのアンケート※思いついたのを列挙しているだけなので(以下略)
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