この素晴らしい世界にもんむすを!   作:邪魅魑

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EP51 龍の鍛冶師

「おっす、親父。来たぞ」

 

「おっ、カズマか、待ってたぞ」

 

 俺が鍛冶屋に向かうと、鍛冶屋の主人が軽く手を上げて応じてくれた。

 

「それで、俺の頼んでたのは?」

 

「……まさかお前、手紙読んでないのか?」

 

 ……思えばセナさんの手紙に気を取られて鍛冶屋の方の手紙は目を通してなかったな。

 

「まぁ、来てくれたんなら問題ない。ちょっと来てくれ。おい!パピ。あれ、もってこい」

 

「分かったのだ!」

 

 奥の方から聞き覚えのある声が聞こえたかと思うと、ガチャガチャと鎧と肩慣らしき武器をもって一人の少女がやってきた。

 

「おい、親父、脅かすなよ。ちゃんとできてるじゃないか」

 

 そう言うと鍛冶屋の主人は肩をすくめてドラゴンパピーの少女、パピの持ってきた鎧と刀を指さした。

 

「まあ、いろいろあるんだよ。とりあえず、鎧の方はプレートメイルを基本に、アダマンタイトを各部に混ぜ込んである。ここらで手に入る防具の中じゃこれ以上を手に入れるのはそうそうできないだろうぜ」

 

 そう言いながら、俺に防具を着せていく。

 

「ほう、なるほど。カズマ、お主、なかなか男ぶりを上げたのう」

 

「……ふむ、ハインリヒにはまだ足りませんね。しかし……なかなかいいのではないですか?」

 

 鎧を着こんだ姿を見た仲間の返答に嬉しくなりつつ、歩き出そうと……。

 

「……どうしたの?」

 

「いや、その。重くて一歩も動けないんだが……」

 

「「「……」」」

 

 仲間たちの視線が非常に微妙なものになっているのを感じつつ、俺は店主に鎧を脱がしてもらう。

 幸い、中肉中背だったこともあり、買取してもらえたので、資金的なダメージは無いが、精神的な落胆は抑えきれない。

 

「その、落ち込んでるところ悪いんだが、話を聞いてくれないか?」

 

 はっとしてそちらを見ると、鍛冶屋の親父が一振りの武器をもってこちらに向かってきた。

 

「まず、お前の言っていたkatanaって武器なんだがな、そこで話を聞いてた弟子が、勝手にやっちまってなぁ」

 

 そう言って親父がパピを見ると、パピが委縮したように身を縮こませた。それを見て親父が大きくため息をつき、頭を振りながら武器を机に置いてきた。近くで見れば、それはやはり刀だ。ただ、腰佩きの刀にしては短く、小太刀というのが適当な大きさだろう。

 

「本来なら、まだ半人前にもなってねぇ弟子の武器なんぞ客に渡すわけにはいかねぇんだが……何しろ俺もkatanaなんて武器を作ったことがねぇし、こいつはドラゴンだからか、鍛冶の覚えも早くてなぁ……」

 

 親父が顎で刀を差すので、俺は刀を抜き放ってみる。

 

「……おぉ」

 

 まず、俺は素人だ。武器の良しあしなんてのは分からない。だが……だが、だ。それはいささか完璧に過ぎた。しなやかに伸びる緩いカーブを描く曲線に、肌に触れる冷ややかな鋼の感触。流麗に伸びる白く波打つ刀身は、柄飾りの美麗さと相まって、大きさを除けば俺の創造したとおりの日本刀だった。

 

「ふむ、これ、素材をケチりましたね。質の低い鉄を使ったせいで、性能が落ちていますよ。それに、精錬も造成も甘いですね。これでは花神楽の半分も性能を発揮できないではないですか」

 

 俺の横から発言したイリアスの言葉に再び涙目になるパピに、俺は慌てて声を張り上げる。

 

「俺は、これ、気に入ったぞ!親父!これをくれ!」

 

「おぉ!そうか。まぁ、素人……ではねぇが、半人前の作品だ。安くしとくぜ」

 

 そう言うと、親父は少しきれいに包んだ剣と共に、一つの札を取り出してきた。

 

「この武器は、お前さんと共に戦う相棒だ。いい名前を付けてやってくれ」

 

 どうやら、銘を入れることができる道具のようだ。しかし、銘、銘かぁ。

 俺は思わず顔が緩むのを止められなかった。何しろ銘を入れた武器を持てるのだ。まるで上級冒険者の様じゃないか。

 

「それじゃあ、かっこいい名前がいいよな。……アロンダイト、デュランダル……いや、ここは日本っぽく雨の叢雲とかがいいかな……ん?」

 

 ふと気が付けば、パピが俺と刀をじっと見つめていた。そして、俺に気付くとおずおずとこちらに近づいてくる。

 

「あ、あの、パピのお願い、聞いてくれないか?」

 

「いや、今名前つけてるから、それが終わってから」

 

「それじゃ遅いのだ!」

 

 俺があしらおうとすると、それ以上の声でパピは俺の声を遮った。

 

「本当はダメだって分かってるのだ。その剣はおにーさんのものなのだ。だから、だから……ほんとは、おにーさんが名前を付けるべきなのだ。だけど、それは、パピにとっても、最初に作った刀なのだ……だから」

 

「……つまり、お前はこの剣に名前を付けたいってことか?」

 

 パピが頷くと、鍛冶屋の親父が肩を怒らせてパピに向かっていった。

 

「お前は!」

 

「待ちな、親父」

 

「いや、しかし」

 

 俺はその親父を制して、パピと親父を交互に見る。

 

「彼女にとっては特別な剣なんだ。それにこれは作った彼女と、俺の間の話だ。違うかね?」

 

「いや、まあ、そうだが……しかし」

 

「なら!俺が決めればいいことだ。気持ちはありがたいが、今回は遠慮してくれ」

 

 かっこつけてそう言うと、親父は渋々と言ったように下がってくれた。そして、俺はパピの頭を撫でながら言葉を続ける。

 

「この刀は、お前がいなければできてなかったんだ。それに、特別な武器だってのもわかる。だからさ、教えてくれよ。俺の新しい武器の名前をさ」

 

 そう言うと、パピの顔が花が咲いたかのように綻んだ。

 

「この武器はすごいんだ!だけど、きっと私はもっとすごい武器を作れる。だから、この武器は鍛冶師として雛みたいに未熟なパピが最初に出した産声なんだ。だから、ひなの声を取って、ちゅんちゅん丸って、そう言うんだ!」

 

「……えっ」

 

 ダサい。圧倒的にダサすぎる。正直、武器の名前を聞いたのを軽く後悔するレベルのネーミングセンスのなさだった。だが、その謂れも、花のようなパピの笑顔も、何だったら後ろでじっと見ている仲間たちの視線も、その全てが俺に一つの結論を迫っていた。

 

「えぇい!しょうがねぇなあ!」

 

 俺は内心泣きながら、札に文字を書きつけ、柄にその札を叩きつけた。

 

「ほら!この武器の名前は、今日からちゅんちゅん丸だ!その代わり、次の武器もお前に頼んで、今度は俺が名前つけるからな!」

 

「!なら、それまでに腕を上げておくのだ!」

 

 そう言って嬉しそうに笑うパピの姿と、後ろで訳知り顔で頷く仲間たちに、俺は乾いた笑いを張りつけながら、俺の新しい武器となったちゅんちゅん丸を見つめるのだった。

 




※ちゅんちゅん丸 今作のちゅんちゅん丸はネタ武器の域を超え普通に上等な武器です。そもそも、イリアス様が例に出した花神楽はモン娘世界において、現在公開されている中で混沌武器(エンドコンテンツ)を除き最高品質のアイテムであり、正直な話武器種としての刀が強力すぎるため最弱の刀よりやや劣るステータスだけど、普通に初心者武器ではありえない性能をしています。

変更点
チュンチュン丸作成者変更
命名者を変更
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