この素晴らしい世界にもんむすを!   作:邪魅魑

58 / 71
EP55 トラブルが舞い込んできた!

 俺たちが馬車に戻ってから少し、気分転換なのか、まだ上空を飛んでいたイリアスがこちらに舞い降りて来た。

 

「カズマ。何やら、こちらに近づいているようなのですが……」

 

 そう言う俺たちに、御者の親父が言葉を返してきた。

 

「何かが近づいてきた。そいつぁ、恐らくハシリタカトビじゃないかねぇ」

 

「ハシリタカトビ?」

 

「あぁ、丁度これくらいの時期に度胸試しに固いものに向かって走るって言うチキンレースをすることで有名な魔物さ」

 

 そう言っている間に、俺にも見える砂煙が遠くに見え、そしてその中にぽつぽつと米粒程度の大きさの爆走する何かが見えた。

 

「あぁ、やっぱりあれはハシリタカトビだね。……何かこっちに近づいている気がするが、気のせいかね」

 

 のんびりそう言う御者だったが、俺は嫌な予感がして砂煙を注視する。

 

「おい親父、あれ、確実にこっちに近づいてきてるぞ!」

 

 俺の言葉に、俺たちの乗る馬車含めた馬車の一団が止まり、少しの協義の後に護衛に雇われた冒険者たちが外に飛び出した。

 

「おい、何かあいつらを刺激する硬いものを持ってる奴は居ないのか!」

 

 そう言う商人たちの声に俺たちもなんとなく顔を見合わせる。

 

「俺たちの中で一番防御が高いと言えばエルだけど……お前は固いって感じじゃないよな……。シロムは何か持ってないか?」

 

「私は後衛職だよ。勿論上級冒険者だったからアダマンタイトやミスリルを扱ったことだってあったけど、今はそんな武器は持ってないね」

 

 武装ということなら、以前フレデリカがガチガチの大砲とかつけていたが、現在は完全に武装解除している。

 

「ってなると、俺たちは関係ない……いや、そういやこのポ魔城って何製だ?」

 

 思えば、効果としても規格外なポ魔城は、もしかしたら異常な耐久力を持っているのかもしれない。

 そう思ったが、ポ魔城の内部からそれに否定の意見が出る。

 一瞬ポ魔城が光り、巨大な獣の体が浮かび上がる。

 

「それはあり得ぬ。ポ魔城は確かに破壊不能じゃが、それは位相変更の魔術がかかっておるからじゃ。詳細な理屈は省くが、要は壊れるような力がかかると、ポ魔城に力が行かぬように別の場所に力が逃げるように魔術がかかっておる。故にポ魔城の材料自体はそれほど物質的に硬いわけではない。そしてポ魔城の世界断絶能力は高い。時空の観測ができる一部の上位魔族や天使ならともかく、野良の中級か下級の魔物に内部に硬いものがあるかなど分からぬ」

 

 サバサの言葉に、やっぱり俺たちは関係ないか、とハシリタカトビの方を見ると……なんか先頭に妙な人影が見えた。

 

「ほらほら!あそこ目がけていくっすよ!!」

 

「ん!?」

 

 相当遠くだったので、弓使いのスキルを使ってもぎりぎりしぐさが分かったくらいではあったが、明らかにまっすぐ俺たちを指さして走ってきていた。声もよく分からないが、何か話しているようだ。

 俺がそれを言うと、イリアスが顔を青くして一人の人物を見つめた。

 

「まさか!」

 

「な、なんじゃ、うおっ!?」

 

 そう言うと、イリアスはたまもを掴んで上空に飛翔した。

 

「なんじゃなんじゃ!?」

 

「カズマ!ハシリタカトビはどうですか!?」

 

「んっ……イリアス達に、指、さしてるな」

 

 つまり彼らのねらいは俺たちということだ。

 

「おい!どういうことだ、イリアス!」

 

「言ってる場合ですか!まずは対処しなければ!」

 

 確かにその通りだ。俺は走り抜けるハシリタカトビと、標的のたまもを見つめる。

 

「!……御者さん、ここらに池か大きな穴はないか?」

 

「え、えぇ、ここから少し行ったところに小さな池があったはずです。って、まさか戦うつもりですか!?いけません!貴方たちはお客さんなんですから!」

 

「そうは言ってられるか!エル、こういうのは出来るか?」

 

 エルは俺の作戦を聞いて、大きく頷いた。

 

「可能よ。でも、急がなくてはならないわね」

 

「妾に乗るが良い。まだかつて野を駆けていた時ほど本調子ではないが、それでも馬よりは速かろう」

 

 そう言って俺とエルを乗せたサバサは、驚くほどの勢いで馬車から離れ、あっという間に小さなオアシスにたどり着いた。

 地上で細工をしていると、その様子から作戦を察したイリアスが空は空で調整を始めた。

 

 迫り来るハシリタカトビ。先頭にいるのはダチョウのような足をした少女だ。砂煙をあげてやってくるその一段は、やはり、少し恐ろしいものがある。

 

「いくっすよー!突撃ー!」

 

 そんな声が響き、ハシリタカトビが甲高いピーヒョロローという鳴き声を響かせる。そこから三歩、ハシリタカトビたちが次々に飛び上がった。

 その瞬間!たまもが素早く口を開いた。

 

「シルフ!頼む!」

 

「はいはーい!」

 

 そんな言葉が聞こえるが早いか、小さな少女の姿が現れ、それと同時に凄まじい下向きの風が吹き荒れた。あまりの強さにハシリタカトビ達はイリアス達に届くことなく墜落していく。そして。

 

 ボチャン……

 

「……あの、動けないっすけど」

 

 下に待機していたエルにハマり、動きを止めたのだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 結局、あのハシリタカトビ娘たちは迷惑行為をしたとして、罰として暫く商人達を手伝うことになったらしい。ハシリタカトビ自身は人慣れする魔物ではないが、運がいいのか悪いのか人化した個体がいたため、無駄に血が流れずに済んだ。

 なんでも硬いものに突進する本能が否応なく刺激されてしまった、とのことで、酌量の余地ありという認識らしい。応急処置としてサバサがポ魔城内から何かの粒を持ってきて、ハシリタカトビの背中に貼り付けていった。

 

「うむ。これはアダマンタイトのカケラじゃ。硬いものに突進する性質を悪用して、まず自身の背中に意識を向けさせ、スピードを削ぐという処置じゃ」

 

「いや、まて、アダマンタイトなんてあったのか?しかもこんなにたくさん」

 

「あぁ、これは例の最強の人形とやらの残骸の一部じゃよ。アダマンタイトは世界で一番硬いが、その加工技術は非常に限られておる。正直扱いにくくてしょうがない物じゃから大きな塊ならともかく小さな欠片は大して価値はないのじゃ。いうなれば「絶対に欠けない小石」と同じじゃからな。それと、最強の人形とは言うたが、あのデカブツを製造して維持するのは不可能。それ故に妾らが今作っておるのは、コンセプトを同じくした小ぶりな物じゃ。故にアダマンタイトもそれほどいらんのじゃよ」

 

 俺の問いに答えたサバサを見て、呆れた俺はジト目をサバサに向ける。

 

「いや、それでも俺にも声をかけてくれよ。何かに仕えるかもしれないだろ」

 

「何、残骸は城ほどあるんじゃぞ。むしろ適度に放出せねばポ魔城の一角が埋まったままになるぞ」

 

 そう言って笑うサバサに、もうだめだと感じてあくせく働く金髪のハシリタカトビ娘とその後ろをついて行くハシリタカトビを見やる。

 

「……まぁ、いいか」

 

 そもそも、元々の原因はうちのたまもみたいだし……。

 

「というか、なんでたまもが狙われたんだ?そもそもたまもってそんなに硬くないだろ?」

 

 そんな問いにイリアスが少しため息をつきながら答えた。

 

「実のところ、あの鳥頭は実際にそれが硬いかを判断しているわけではないという事ですよ」

 

「……いや、全然わからないんだが」

 

 俺のそんな言葉に、イリアスは言葉を選ぶように説明を続けた。気づけば、そこらで後始末をしていた仲間たちも集まってきていた。

 

「そうですね。カズマ。四大精霊のの中で一番硬いと思うのは何だと思いますか?」

 

「風と、水は違うわね。氷になれば話は変わるけど」

 

「火も、硬いとは言えぬのう。なれば、まぁ、地の精霊、ノームが一番硬かろうのう」

 

 エルとたまもの言葉に、イリアスはちょっと釈然としない顔をしながらも頷いた。

 

「私はカズマに聞いたのですけれど……まあ、良いでしょう。そうノームが最も守りに優れた精霊です。しかし、恐らくあなた達の考えるよりも土の精霊は頑強です。火の精霊が世界の温度を管理するように、水の精霊が世界の液体を管理するように、風の精霊が世界の大気を司る様に、土の精霊は世界の大地を統べるもの。どのような大男でも、いかなる魔人でも自身の両足で立つ大地を壊そうというものは……いないでしょう?」

 

 なぜか言いよどんだイリアスにしかし俺は頷いた。

 

「まあ、確かに大地に喧嘩を売るとか馬鹿な話だよな。で、さっきの話とたまもが狙われたのはどういう関係があるんだ?」

 

 そう言うと、イリアスは口を大きく膨らませてそっぽを向いていた。

 

「気分が悪くなりました。もう話しません」

 

「えっ……?」

 

 そのまま飛び去ってしまったイリアスに代わって、今度はシロムが話を繋いだ。

 

「なら、続きは私が話そうか。とはいえ、これは学会の定説、程度の話だけれどね。ハシリタカトビは、別にそれが本当に硬いかどうかを判断しているんじゃないんだ。じゃあ、どうやって硬いと判断しているか。それがノームの精霊の力、つまり土の魔力なんだ。ノームの力が宿ったものは、即ち大地の延長線も同じ。大地の力を貯め込めるものはそれだけ硬いもののことが多いし、魔力が宿ったことによる強化もしっかり受けている。だから、大地の力を無意識に放っているたまも君にハシリタカトビは惹かれたんだろうね」

 

「つまり、本当は硬くないのに硬いと思えるような雰囲気、というか魔力を持ってたから、たまもは襲われたってことか?」

 

「まあ、かみ砕いていってしまえばそうだな」

 

 そこまで聞いて、俺はどっと脱力した。

 

「なぁ、たまも、その大地の魔力とやら、隠せないのか?」

 

「うむ……少し試しておる……ふむふむ……完全には無理じゃが、抑えることはできそうじゃな」

 

 そんな会話をしていると、この馬車隊のリーダーらしき男がこちらに走ってきていた。

 

「おぉ!ここに居ましたか!護衛の依頼も受けていないのに、この活躍!ぜひとも報酬をもらってください!」

 

「いや!いいですから!」

 

 小心者の俺には、原因が自分のパーティにあるマッチポンプなお金を受け取る勇気はなかったのだった。




イリアス「……」←聖魔大戦の時に脅すためとはいえ世界を破壊して邪神を倒そうとした人。

オリジナルモンスター娘三匹目。ハシリタカトビ娘ちゃんです。というか書いてて思いましたが、この巻求婚関係で魔物が騒ぐのが続いてたんですね。
 ハシリタカトビ娘ちゃんも体育会系女子で、ダチョウ娘ちゃんの色違いです。
 たまもちゃんがシルフを呼べたのは、属性爆裂を使うためにもう一回会いに行ったからです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。