この素晴らしい世界にもんむすを!   作:邪魅魑

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お待たせしました。


EP57 野生の聖職者が現れた!

 そんなこんなで残された、俺とクロムとエミリ、後おまけのフレデリカだったが、クロムはシロムの言った通り、魔王軍幹部の娘だとかそう言うことを全く気にせず、どこかに出て行ってしまった。取り残された俺が、少し呆然としていると、誰かが扉をノックして、すぐに扉を開けて来た。

 

「カズマ。戻ってきているかしら」

 

 そう言いながら入って来たのはエルだった。

 

「あぁ、エルか。どうしたんだ?」

 

「えぇ、すこし街を歩こうかと思って。一緒にどうかしら?」

 

 それを聞いて、俺は少し考える。

 

「……まぁ、そうだな。荷物持ちくらいはできるだろ。温泉に入る気分でもないし、いいぜ」

 

 そう言うわけで、俺はエルと共に街へと繰り出したのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~

 俺たちが町で散策していると、何やら言い合いしている声が聞こえて来た。

 

「全く、あなたのせいでこちらの商売あがったりですよ」

 

「はん!下級の天使のくせにえらそうですねぇ」

 

 見れば、明らかに天使っぽい見た目の人と、八重歯とマントが特徴的な人が言い合いをしていた。ついでにその前にはクロムとエミリの姿があった。

 

「あれは、もしかして、天使と……吸血鬼か?」

 

「えぇ、どうやらそうみたいね。しかし……イリアス以外の天使は私も初めてね」

 

 見ていると、二人の店主はクロムたちに向けて声をかけていた。

 

「お客さん、あのわからずやの夜行性のことは無視して、アルカン饅頭……ではなかった。イリアスヴェル名物、イリアス饅頭を買ってはどうですか?」

 

「ふん、そこの弱小天使なんて無視して、商売の天才、ヴァンパイアの商品をみてみるといい。値打ち物ばかりだよ」

 

 二人はそう言うと、またしても火花を散らせる。

 

「ど、どうしようかのう、エミリ」

 

「どっちも買う必要はないんじゃないかしら?」

 

 エミリが冷たくそう言うと、二人はどちらも相手のせいにしてまた喧嘩を始める。

 

「天使と吸血鬼って、やっぱり仲悪いんだな」

 

 俺はそう言って、クロムに声をかける。

 

「よっ」

 

「お!カズマ!どうすればいいんじゃろうか!?」

 

 俺は少し二つを見比べて、店主に声をかける。

 

「これって、この街の名物だよな?イリアス饅頭とこの木刀を買うから会計頼む」

 

「「まいど」」

 

 喧嘩していたはずの声は驚くほどきれいにそろったのだった。

 

 あきれ顔のエミリと結局買い物したシロムを見送った後、俺は歩きながらイリアス饅頭を一つつまむ。

 

「おっ!これ、マジ美味いな。ほら」

 

「……んっ。確かにこれは美味しいわね」

 

「ちょっと、皆で食うには足りないな、ちょっと待っててくれ。買い足してくる」

 

 そう言って、エルを待たせて俺は来た道を戻り、先ほどの店に向かった。だが、折り悪く先ほどの場所に戻っても吸血鬼と天使の店主は立っていなかった。

 俺は誰かいないものかと店の裏手をのぞき込む。

 

「ほら、ヴィルヘルミナ。顔をこっちに向けてください……。やっぱり、少し字になっていますね」

 

「気にしないで。というか、顔が近いわ」

 

「……」

 

 なんか店主二人が百合百合しい感じで絡み合っていた。

 

「……!なんでこっちまで入ってきているの!」

 

 吸血鬼の方が俺に気付いて大声を上げた。それを驚いたように見た天使が、巨大な注射器をもって俺に接近する。

 

「うわ、待て待て、今見た事絶対言わないから!」

 

「その言葉、嘘ではありませんね」

 

 咄嗟に見てはいけないものを見たと判断しそう言ったことが功を奏したのか、天使は注射器を俺に刺す直前で動きを止めていた。

 

「あぁ、勿論だ。俺も馬鹿じゃない。……とはいえ、ちょっと驚いたよ。あんときはすごい仲悪そうだったろ」

 

「何故詮索をするのです?やはり……」

 

「いいじゃない。この人は旅人よ。気にすることじゃないわ」

 

 そう言って、吸血鬼の方が事情を説明してくれた。なんでもこの国はイリアス教の総本山というだけあって、魔物排斥の気風が強いらしい。まだ、スライム娘や狐娘などなら冷たい目線を向けられるくらいで済むらしいが、悪魔娘やサキュバスなどだと割と激しい迫害まで発展することもあるそうだ。

 

「そこで、私が彼女に因縁をつけることで逆に彼女への迫害を抑制しているのです」

 

「……つまり、天使が対応しているから、この悪魔は任せておいていいって思わせてるってことか?」

 

 俺の問いに二人は頷いて、更に吸血鬼が言葉を続けた。

 

「それに加えて、天使が対処できないなら人間にはどうしようもないって思わせるって言う意味もあるわ。大体過激派って、弱そうなら容赦なく攻撃するけど強そうならビビッて放っておいてくれるね」

 

 そう言うと二人はじっと俺を見た。

 

「それで、この話を聞いてどうするのかしら?」

 

「……いや、信用できないのは分かるが、流石にこんな話を聞いてぺらぺら話すほど俺も鬼じゃないって……黙っとくよ。……仲間にもな。あ、そうだ。あの饅頭あるか?追加で買いたいんだが」

 

そうして、たくさんの饅頭を購入して、俺はその場を後にしたのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「おそかったのね。何かあったのかしら?」

 

「……いや。何も」

 

 そう言う俺の言葉に、エルは微妙な顔をしながらもそのまま街をぶらついた。街は閑静な様相を呈し、ゆったりとした空気が漂っている。

 

「あっ!」

 

 エルの声にそちらを見ると、とてとてと歩いていた幼女が今にもこけそうになっていた。

 

「危ない!」

 

 エルがその体を液状化させてクッションになろうと飛びついたその時、幼女の後ろから大きな手が彼女の体を支えた。

 

「大丈夫かね?」

 

「うん!有難う、おじいちゃん!」

 

 幼女は老人にそう御礼を言うと、こちら……具体的にはエルに向けてキッとにらみつけて歩いて行ってしまった。

 

「あ、あぁ」

 

 幼女には敏感なエルだ。よっぽどこたえたのか、液状化した体が戻ることもなく項垂れている。

 そして、その液体に、老人が手を差し伸べる。

 

「ありがとう、スライムのお嬢さん。君の声が無ければ、あの幼い者の危機に手をさしの得ることができなかかっただろう。ほんとうに感謝する。……そして、すまなかった」

 

 そうして頭を下げる老人に、エルは怪訝な顔を向ける。

 

「どういうことかしら?少なくとも私は、あなたに非礼な態度を取られた記憶はないのだけれど」

 

 老人は悲しそうにエルに目を向ける。

 

「いや、あの子の態度のことだ。我らアルカンレティアの民は皆、敬虔なイリアス教徒だ。だが、近頃一人の天使がやってきたころから、魔物を排斥して、イリアス様を唯一絶対の存在とするクロイツ思想という過激思想が流行しているのだ。全く。イリアス様がそのようなことを望んでおられない心清きお方だというのは、自明の理だというのに」

 

 ……いや、お宅の神様、バッチリ魔物を目の敵にしてましたよ。今でもちょっと討伐したがる風潮がありますよ。

 内心そんなことを考えて微妙な顔になっていたからか。老人が少し不思議そうな顔でこちらを見つめて来た。

 

「おや?何か私の顔に変な物でもついていますかな?」

 

「あぁ、いや、何でもないよ。しかし、あんたは、ずいぶんイリアスを信仰してるんだな?もしかして、えらい神官様だったりするのか?」

 

 それを聞いて、老人はかすかに俺に笑いかけた。

 

「はっはっは、そう言ってくれると嬉しいが、私はただの信仰心の強いだけの男だよ。何しろ、時計職人として何十年もやってきたような身分だからね。……いや、そうだな……」

 

 そう言って、顎に手を当てると、老人は俺に一つの言葉を投げかけて来た。

 

「旅人の君になら、聞いてもいいだろう。忌憚ない意見を教えて欲しい。君は例えば、イリアス様が人類の敵となり、魔物と共に4つの大国を滅ぼすような世界があると言われたら、どう思うかね?」

 

 その言葉に、俺は思わず身を固くする。その話自体は、全く聞き覚えのないものだ。イリアスからもそんな話は聞いていない。しかし、イリアスの言動から、人類と敵対する世界がある、もしくは人類を殲滅する準備をしていたことは言動の端々から感じ取れていた。ならば、もしかして本当に……。

 

「あの、それはどこで?」

 

「……はっはっは!私の夢の話だ。本当のことではない。……しかし、どこで……か。いや、何でもない。ただ、面白い返答だったのでな」

 

 そう言うと、老人はクルリと踵を返して、俺たちの前を立ち去っていく。

 

「老人の話に付き合ってくれて感謝する。私の顔が聞くところには、君たちのことを話しておくことにしよう。アルカンレティアを楽しんでくれると嬉しい。どうか、君たちにイリアス様のご加護があらんことを」

 

 その一言を残して。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ペテロ様!ペテロ様」

 

 スライムと人間の少年の二人組との邂逅から少し。見知った顔が私に声をかけて来た。

 

「おお、ヨハネか。どうした」

 

「どうしたではありません!何を考えているのですか!あなたは大司教なのですよ!」

 

 その声に、私は少し顔を顰めてヨハネを窘める。

 

「大司教の何が偉いものか。我らはイリアス様から見れば等しく力なき庇護すべく存在に過ぎぬ。だからこそ、我らは自らを律し、イリアス様に尊崇の念を抱き続けなければならぬ。ただその当たり前をし続けたという、ただそれだけのことを愚直に続けただけの存在だ。私などよりも価値のある者などこの街にも多くいる。ヨハネ。君だって、私などよりもその剣で民たちを安んじることができるだろう」

 

「憚りながらペテロ様。あなた様がイリアス教の表看板として教会のかじ取りをしていることで、どれほどの信徒が心安くいられるかをお考え下さい」

 

 短く切り返されたその言葉に、私は言葉を詰まらせ、そして、先ほどの少年たちとの会話と、最近あった種々のことを合わせて、一つの言葉を紡ぎだした。

 

「ふむ。まぁ、確かに、此度は私が動くべきであるのかもしれぬ」

 

「!ペテロ様自らですか?」

 

「私の夢見のこと、君には伝えていたな?それが、予見に近い物であると先ほど確認が取れた。それとイリアス様のこの世界への来訪もだ」

 

 その言葉に、ヨハネははっとして私を見る。

 

「それは、もしや例の少年ですか?」

 

「あぁ、そうだ先ごろあった、聖素の残滓を付けた少年に接触してきた。どうやら、私の夢の内容に心当たりがあったようだ。……私の夢が何を示すのか、そこまでは分からないが……イリアス教信徒一同の力を結集させねば乗り越えられぬ難局が待ち受けていることは確かであろう。いつ何時でも対応できるよう、こちらも手は打たせてもらおう。良いな」

 

「はっ!」

 

 そうして、教会騎士団長と大司教は闇夜の中に消えていったのだった。

 




年度末のバタバタで更新が滞りました。しばらくはゆっくり更新です。

あともんパラ勢の皆さま。ご安心ください。この人はマキナ人間ではなく、只の機械いじりが大好きなイリアス教の最高位神官です。
夢の内容ですが、クエ時空からのパラドックスによる記憶の流入が入っています。パラの記憶は今のところ表出していません。
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