この素晴らしい世界にもんむすを!   作:邪魅魑

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EP59 カサンドラは貪った

「皆、良いな!」

 

 そう言って全員が背中に乗り込んだことを確認し、巨大な獅子の体が大きく身を震わせる。

 

「今から包囲網を抜ける!振り落とされるでないぞ!」

 

 サバサの声にギュッと彼女の体を掴む力を強めると、力を貯めた彼女の体が伸びあがり、宿の周囲を囲む人の波を飛び越えてそのまま勢いよく駆け出した。

 

「毒はまんべんなく広がっているみたい。おそらく水源に原因があるはずよ」

 

「承知しておる!」

 

 エルの言葉にそう答えたサバサは、この町の水源である小高い山に向かって加速を強めた。

 

「……」

 

「おい、落ち込んでるのか?」

 

 皆真剣に前を見据えている中、サバサが走り出す前から下を向いて黙り込んでいるクロムに、俺は声をかける。彼女が落ち込んでいる理由は分かる。何しろ、エミリと一番仲が良かったのは彼女だ。それが、作戦決行のタイミングでいなくなる。それは、ともすれば裏切りの前兆とも思えるもので……つまりは友人との戦闘を予感させるものだった。

 

「まあ、仕方ないさ。だって相手は魔王軍の幹部の娘だったんだぜ?むしろ、土壇場で背中刺されるようなことはなさそうだって思おうぜ。それに、必ずしも裏切ったって決まったわけでもないんだしさ」

 

「……そうじゃの」

 

 俺の言葉に、それでも浮かない顔で返事をしたクロムに、俺はそれ以上かける言葉を見つけられず、向かう先を見つめなおしたのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 町の水源、一番水量が多いそこで、魔王軍幹部スライムの妖魔貴族カサンドラはその身から淫毒を放出し、町を淫欲で満たさんと作戦を進めていた。

 

「おや、どうしたのです?エミリ」

 

「お、お母さま」

 

 そこに現れたのは、エミリ。彼女の娘だった。人間の男を一人篭絡し、その後その調教のために別行動していた娘の登場に、カサンドラは少し意外そうに眼を開き、そして目を細める。

 

「エミリ、何の用ですか?見ての通り、母は今、魔王軍の作戦中なのですよ」

 

 その言葉に、エミリは唇を強くかんでから、言葉を放った。

 

「そ、その。町に毒を流すのを、待ってほしいの」

 

「……ほう」

 

 カサンドラの目が吊り上がり、エミリを睨みつける。それは、母が子を見る視線ではなく、裏切り者を見るような目だった。

 

「今、シロムお姉さまがこの町に来ているわ。それに伴って、キメラデュラハンのおば様やギガントウェポンを討伐した冒険者も来ているの!嗅ぎつけられたら、作戦が台無しになっちゃうかも!だから、その冒険者がいなくなるまで、作戦を延期にしたらどうかな……って」

 

「……ふむ」

 

 娘から伝えられたその言葉にカサンドラは少し考えるそぶりをしてその後エミリを手招きする。

 

「そのようなことも考えることができるようになったのですね。こちらに来なさい」

 

 嬉しそうに近寄ってくるエミリ。彼女の体を抱え、カサンドラは彼女に囁いた。

 

「下町では、ずいぶんとお友達と親しくしていたようね」

 

 その声は、先ほどと異なり、氷のように冷たい声だった。

 

「お、母、さま?」

 

「あのような言葉で私がほだされるとでも思いましたか?魔王軍に友達ごっこに明け暮れる軟弱物は必要ありません」

 

「え……、う、うそでしょ。お母さま、助けて!許して!お母さ……ぁ」

 

 カサンドラがエミリを全て包み込むように体を広げ、そして、何事もなかったかのようにエミリを外に出すことなく、元の体格へと戻った。

 たった一人になったカサンドラは、更に淫毒を流しむ作業に戻るのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 水源を守っている門番を門ごとぶち抜き、サバサは水源まで一直線に走り抜ける。そして、普段なら清流をたたえているはずの貯水池に、俺たちはたどり着いた。

 本来は清い水をたたえているはずのその水源は、そういったことに詳しくない俺にさえ、怪しい雰囲気を漂わせるようになっていた。

 

「……っ!これは、ひどい」

 

 エルが絶句する中、俺たちはその中心に誰かがたたずんでいるのに気が付いた。

 

「お前は、あの時の!」

 

 それは、俺が温泉宿で出会った妙齢の女性。エミリの母親、つまるところ、魔王軍の幹部、カサンドラ・ネーレイドその人であった。

 

「おや、おやおやおや。こんなところまで来てしまいましたか。やはり、娘の懸念はもう手遅れだったのですね」

 

 そう言うと、カサンドラは優雅に腰を曲げ、こちらに声をかける。

 

「お初にお目にかかりますわ。わたくしはカサンドラ・ネーレイド。偉大なる妖魔貴族にして、魔王軍の幹部。そして、貴方たちを滅ぼすもの」

 

 その言葉に、俺たちの仲間からずいっと一人が身を乗り出した。

 

「ふむ、それは、私にも喧嘩を売っているという認識で構わないかね?」

 

「おやおや、シロム様。それは約定違反というもの。あなたは魔王様との約束で魔王軍にも、人間軍にも加担しないという約定のはず。忘れたとは言わせませんよ」

 

「……なら、我が妹、クロムの身の安全も保障してもらおう。そちらの娘とも懇意にしているのだ、否やはあるまい?」

 

 これは、事前の作戦に沿ったものである。カサンドラはともかく、エミリとは短いながらも交流した仲だ。殺し合いをする気にはなれなかったため、シロム、クロムが戦闘に参加しない代わりに、エミリも戦闘に出させない流れにもっていくつもりだった。魔王軍幹部に対して、大戦力であるシロムを戦力から外して戦うなど舐めプともとられかねないが、攻撃の手が鈍って力を発揮できないよりはましとの判断だった。

 

「おや、……それは残念ですね。エミリなら、先ほど食べてしまいました」

 

「「……は?」」

 

 エミリが、食べられた?

 

「何しろ、エミリったら、お友達ができたからと、私に魔王軍の作戦を延期しないかなどと提案してきたものですから。命令違反者は死罪が当然。情に流されて敵に塩を送るようなものは味方の糧になる程度しか役に立たないのですから。あぁ、でも、お友達が必要ですわね。なら、今から新しくまっさらなエミリを作って差し上げましょう……っ!?」

 

 ペラペラしゃべるカサンドラの声を遮るように、氷結の魔法がカサンドラに突き刺さる。

 

「シロム!魔王様との約定はどうしたのです!私を攻撃するなど!」

 

「魔王との約定だ……抑えようとも思ったが……貴様にはほとほと愛想が尽きた!家族の情も無い貴様と同じにされてはかなわん!何より私自身が許せん。自身の娘を切り捨てる非情さ、そして、我が妹を泣かせた罪、償ってもらうぞ!」

 

 怒りの形相でさらに氷結の魔法を放つシロムに、カサンドラは焦ったようにあたりを見渡した。

 

「……っ!致し方ありませんか。ふんっ!」

 

 カサンドラが気合を入れると、貴婦人のようだったその姿はどろりと溶け、うねうねとうごめく肉とも粘液ともつかぬ何かが空間を侵食して膨れ上がる。

 

「この状態では、私すら私の食欲を制御することができません。光栄に思いなさい。私に全てを食い尽くされ、快楽の中で朽ち果てることを!」

 

 その言葉を最後に、人間の姿をしていた部分さえもその目の光を失い、獣のようなうなり声を放つ化け物へとなり下がる。

 

「っ!まずいですよ上級の妖魔が、自身の自我すら捨てて暴走形態で襲い掛かっているのです!早く止めなければ、手遅れになりますよ!」

 

 イリアスのその言葉に、俺は玉藻を振り返る。

 

「たまも、爆裂魔法を!」

 

「いや、駄目じゃ!あの暴走形態、再生と崩壊を繰り返しておる。ある程度粘肉を吹き散らした後でないと、爆裂魔法の効果があ奴の命に届かぬ!」

 

「私が何とかする」

 

 そういうシロムがまたしても氷結魔法を放つと、カサンドラだった粘肉の塊が一部凍り、その分だけ体積が減る。

 しかし、それも一瞬で、凍った粘肉が取り込まれ、すぐさま体積をもとに戻してしまう。

 

「どうやら、あ奴、傷ついた自分自身を捕食し、自身の肉を再生させているようじゃな。一時に滅ぼさねば、どうにもならぬかもしれぬぞ。あるいは……いや。これを言っても詮無きことか」

 

 サバサの言葉に、俺は一点突破の作戦を考える。

 

「!」

 

 俺は道具袋の中からイリアスまんじゅうを取り出し、放り投げる。すると、カサンドラはイリアスまんじゅうに興味を示し、こちらに近づいてきた。どうやら、自我を捨てた、というのは本当らしい。本能から栄養価のあるイリアスまんじゅうで興味を引けたようだ。

 

「よし!サバサ!ほかのみんなを連れてあそこの高台まで行ってくれ!あそこなら狭いからあのデカ物を全部魔法範囲内に収めることができるはずだ!」

 

「カズマ!おぬしはどうする!?」

 

「俺はこれで、あいつを誘導するよ!」

 

 そう言うと、俺はイリアスまんじゅうを投げつつ、作戦決行場所へと走り出す。

 

「全く!仕方あるまい!乗れ、運んでやる!」

 

 背後でサバサの声が聞こえ、数秒後には風切り音が聞こえ、小高い丘を駆け上るサバサの姿が見える。

 

「さすがにすごい速さだな。って、俺も逃げないとな」

 

 俺はイリアスまんじゅうを投げまくり、カサンドラを誘導する。本能のみで動くというのは本当なのだろう、しっかりとこちらについてきていた。

 そして、イリアスまんじゅうがちょうどなくなるころ、そろそろ逃げようと思ったが、少しばかりカサンドラの勢いが早かった。

 

「っつ!?」

 

 慌てた俺は逃走経路をしくじり、袋小路に入ってしまった。

 

「カズマ!」

 

 イリアスが慌ててこちらに来ようとするが、それを手で制する。最悪、イリアスが生きていれば、俺を蘇生することもできる。

 俺は覚悟を決めてカサンドラを見据え、死を覚悟した直後、目の前に透明な壁が発生し、カサンドラからの攻撃を防いだ。

 

「な、なんだ?」

 

 驚く俺があたりを見回すと、崖の上に幾人もの人の影があった。そして、その先頭には、以前街で見かけた老人が、その時とは違い、清廉な印象を持たせつつ、しかし、明らかに良いものだと思われる法衣に身を包んで立っていた。

 

「我らの町の危機に、これほどの信徒が集まってくれたこと、感謝する。本来ならば、魔物といえど一つの命、むやみに命を奪い、徒に傷つけることはあってはならぬ。だが、我らが町を守ることを、イリアス様は否定はすまい」

 

 そう言うと、老人はさらなる大音声で、その場の皆を鼓舞し、カサンドラに手のひらを向けた。

 

「我らの町を、我らの手で、救い出そうではないか!我らが同胞、偉大なる初代勇者様のように!」

 

 信徒の皆が、石や弓をカサンドラに打ち込み始める中、老人は朗々と言葉をつづける。

 

「初代勇者は我らに言葉を遺したもうた」

 

「「「「「「イリアス教徒にできぬことなし。イリアス様を信ずる限り、全ての力を尽くした結果が必ず得られるはずである」」」」」

 

 その言葉の合間にも、カサンドラへの攻撃が止むことはなく、それに混じって、極大の氷結魔法がカサンドラに突き刺さる。

 

「「「「「「もしも、貴方が悩んだら、イリアス様を頼りなさい。そして、天に身を任せ、己の勘に従いなさい。もしもその勘正しくなくば、イリアス様が導くでしょう」」」」」

 

 カサンドラが氷結魔法によって氷像のように固まった直後、イリアスが飛び込み、俺を思い切り引き上げる。

 

「「「「「「我らの命のゆく果ては、イリアス様が見守っておられる。ならば、我らは神民である!我らが神を信じ、呵々大笑で進むべし!」」」」」

 

 イリアス教徒の言葉を聞いていると、俺を抱えて空を飛んでいるイリアスから不満げにな言葉が漏れ聞こえてくる。

 

「この馬カズマ。自分が逃げる方法を考えていなかったでしょう?あなたがいなくなれば、悲しむ人がいるのを考えなさい」

 

「お前がきっと助けてくれると思ったから、こんな無茶な作戦ができるんだよ。……それよりなんだよ、あの狂信者ども」

 

「……っ!私だってわかりませんよ!細かい戒律を作ったことはありましたが、流石にあそこまで極端な戒律を作った記憶はありませんよ!」

 

 なんか変な空気になったところで、俺たちは崖の上へとたどり着く。そこでは準備していたシロムの氷魔法の直撃を受けて、詠唱を続けていたたまもの爆裂魔法が炸裂するところだった。

 

「エクスプロ―ジョン!」

 

 激烈な閃光と爆発を受けて、粘肉の巨体が蒸発する。地形すら変えかねない一撃は、誤たずカサンドラの命に届いた……と思われた。

「……っ!」

 

 滅ぼされたはずの粘肉がうごめき、またしても自身を、そして周囲の地形すらも食い漁り、また、体積を増やしていく。

 

「これでもダメ、なのか!」

 

 万事休す、絶望する俺たちに、カサンドラが薄く笑う。

 

「ふふふ。まさか理性を失っても負けてしまうとは思わなかったわ。ですが、私は無限の貪食で余裕があり、貴方方には余裕がない。理性をたたき起こされるほどにダメージを受けることは予想外でしたが、貴方の絶望を見ながらこれほどまでの人間を踊り食いができるとは……本当に幸運ですわね」

 

 そう笑うカサンドラ。シロムやサバサが構えを作り、老人たちも何かできないかとあたりを見回す中、俺たちに迫るカサンドラの背後から、光の槍が飛び出した。

 

「あ、が……」

 

「イリアス様にその汚い指を触れるな。魔物風情が」

 

 冷たく言い切ったのは、長い金髪をたらした全裸の天使だった。そして、彼女は更にどこから出したのか一つの薬品を取り出した。

 

「なんでも、粘肉系の魔物は、混乱すると自身を食らいつくして消滅するそうですね。あなたは自身の死んだ肉体を食らって再生を促進しているようですが。混乱したらどうなるのでしょうね?」

 

「や、や”め”っ」

 

 焦るカサンドラに、全裸の天使は無慈悲にもその液体をカサンドラに振りかけた。全身が消化器官ともいえる粘肉にそのようなことをされ、カサンドラの肉体が脈打ち、先ほどの比でないほど暴れだす。

 

「や”め”ろ”!ギザマラは、私”の肉体で、違う!こんなの!あ、あ”あ”あ”あ”あ”!?」

 

 自身の肉に貪られ、食いちぎられ、みるみると体積を減らしたカサンドラは、とうとう一塊の肉塊にまで姿を減じてしまった。

 

「あの男も、たまには役に立つものですね……っと」

 

 一瞬でカサンドラを滅ぼしてしまった天使は、俺たちを……正確にはイリアスを視界に収めると、その頭を深々と下げた。

 

「イリアス様。お迎えに上がりました。私が来たからには不自由はさせません」

 

「エデン……」

 

 イリアスは跪いているエデンに近づき……そして、ギュッと頭を抱える。

 

「あなたの献身に感謝を伝えます」

 

「あ、あぁ~」

 

 心底幸せそうなエデンの顔に、俺たちがちょっと引いていると、イリアスは言葉をつづけた。

 

「時に、この町のクロイツ思想については把握していますか?」

 

「えぇ、何しろイリアス様を称える町に魔物がいるなど許されることではありません!排除すべく私が首謀しました!」

 

 そう、自慢げに言うエデンに、イリアスは頭が痛いとばかりに額に手を置き、エデンに言葉をつづける。

 

「エデン。私は、あらたな思索を得ました。少なくとも表立って魔物と敵対するのはよしなさい」

 

「はっ!イリアス様がそうおっしゃるのでしたら!」

 

 そんな感動?の再会の後、イリアスはエデンに言葉を言い募る。

 

「エデンよ私は今、この世界で自由に生きています。あなたは、クロイツ思想を矯正したのち、人魔の共存を図りつつ、より良い共生の形を探りながら、教会での発言力を高めておきなさい。そして、何か困ったときに私たちに便宜を図るのです」

 

「それがイリアス様の望みとあらば。かしこまりました」

 

「では行きなさい。私たちはアクセルの町にいます。困ったときは訪ねてきても構いませんよ」

 

「あぁ~」

 

 幸せそうな顔をして、エデンは飛び去って行った。エデンが飛び去ってから、俺はイリアスに声をかける。

 

「よかったのか?知り合いみたいだったが?ポ魔城があるんだし、仲間に引き入れたって良かったんじゃないか?」

 

 そう俺が効くと、イリアスはこそこそと俺に声をかけてきた。

 

「彼女はエデン。確かに私が最初に作った三人の熾天使の一人であり、天界の大地そのものが彼女の化身であるという保有する力だけで言えば私に次ぐような存在ですが、あのように私を妄信して融通が利かない面があるのです。現状の私たちの編成を見れば、だれかれ構わず突っかかっていくのは必定。少なくとも私が抑えられるような実力を取り戻すまでは放置しておいた方が得策でしょう」

 

 そういうことらしかった。

 

「……り!エミリ!」

 

 突然現れたエデンとイリアスの会話が終わり、意識を周囲に向けると、いつの間にかクロムが残ったカサンドラの肉塊の元に走り寄っていた。

 

「……ん?」

 

 見れば、そこにはここ数日で見慣れた、黄色い髪の少女……いや、黄色と緑の髪が入り混じった少女の姿があった。

 

「あれはエミリ……なのか?」

 

 肉塊のあったところに出現した少女は、確かに顔立ちや体つきはエミリそのものだ。だが、途中でスライムのように溶けている部分があったり、紙の色が一部緑になっていたりと、どことなくカサンドラの要素も見え隠れしていた。

 

「ん……」

 

「エミリ!」

 

 クロムがそう言うと、エミリが目を開けて、そして自分の手を見た。

 

「そう……お母さまは、死んだのね」

 

「どういうことか、教えてもらえるかな?カサンドラは、君を食べた、と言っていたが」

 

 クロムを押しのけ、シロムがそう言うと、エミリは頷いて自分に起こったことを話し始める。

 

「私は確かに、お母さまに裏切り者として吸収された。でも、元々私はお母さまの要素の一つを分離した、いわばお母さまの力の一部だった。だから外にあるか中にあるか、自我が有るか無いかくらいの違いだったの。まあ、吸収されてからもっと長く時間がたっていれば、その自我すら溶けていたのでしょうけど。そして、お母さまは、混乱して自身を攻撃したとき、唯一自分の中で自身と言い切れないものは攻撃しなかったの」

 

「つまり、自分を攻撃するという中に、子どもとしていったん輩出したエミリ嬢は入っていなかった。結果としてカサンドラが滅んだ結果、エミリ嬢の部分だけが生き残り、分離した、というわけか」

 

 その言葉にうなずくエミリに、しかしシロムは険しい顔をする。

 

「しかし、それを信じられない我々の気持ちも分かるな?」

 

「お母さまが私に化けて生き残ろうとしているってことでしょ?お母さまが考えそうなことだわ。それに関しては私も否定できない。で?どうするの?私を殺す?」

 

 そういうエミリを、クロムが抱きしめ、シロムの方をすがるように見つめる。

 

「……妹がなついているのにそんなことができるわけがないだろう……。カズマ殿。もしも迷惑でなければ、この娘を監禁したい。ポ魔城の一室で、私、サバサ殿で警戒網を敷き安全が確認できるまで外出禁止等の処置を講じたい。可能だろうか?」

 

 シロムにそう言われて、俺は頬を書いて答えた。

 

「まあ、無抵抗な女を一方的に殺すってのもな。サバサが構わないっていうなら、俺はいいぞ」

 

「うむ、主殿が決めたことなら従おう。それに、我もこの者に悪いものは感じぬ。大丈夫だろうて」

 

 結局、失われたはずのエミリも無事に戻り、イリアスヴィルでの一件は無事に幕を閉じたのだった。




初代勇者(では実はない)
勇者「え?イリアス様の話?いいよ。イリアス様は素晴らしい方でね。僕が失敗しても、反省会を開いた後にまた戦わせてくれるんだ。それに、間違った選択肢を選んだ時も選択肢の前まで戻してくれるんだよ」

当時の大司教「へぇ、そうなのですね(やべぇ、言ってることが全く分からない。信徒にどうやって説明すればいいんだよ)」

この結果、本編のようなあいまいな文言として伝わったとか伝わらなかったとか。まあようは「反省会システム」「間違った選択肢へ戻る」を使える勇者がいろいろやった結果生まれた教訓ということのようです。


カサンドラはスピード討伐となりました。まぁ、この方、作戦とかじゃなくて割と物量のごり押しで倒すタイプのボスだし、多少はね?

あと、今週いろいろと考えた結果、紅魔伝説のラスボスにシルビアの続投が決定しました(盛大なネタバレ)
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