この素晴らしい世界にもんむすを!   作:邪魅魑

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EP61 七尾が助けを求めに来た!

「ほら、エミリ、これも食べるのじゃ、美味いぞ!」

 

「やめなさい。私子どもじゃないんだか……え、ナニコレすっごくおいしいんだけど」

 

 エミリとクロム。本来なら魔王軍幹部の娘であった二人の少女。特に過激派の娘であったエミリをこうして酒場で食事をさせるのは賛否の分かれるところではあるのだろうが、しかし俺たちはそれでもアクセルの町に返ってきたこの日だけでもとここで食事をすることを了承していた。ちなみに、ここにはパーティメンバーがそろい踏みで、シロムにサバサ、更には、事情を説明したクリスまで集まっての宴会となっていた。

 

「ふむ……カサンドラが逝ったか。まあ、あのような横紙破りを続けていれば当然の報いではあるな」

 

 淡白に言い切ったクリスは、しかし少しばかり寂しそうにつぶやいた。

 

「知り合いだったのか?」

 

「うむ……我が母君、先代巫女の幼馴染でな。折り合いはそれほど良くなかったとは言っていたが、実際は馬の合う喧嘩友達、といった関係だった。エミリが生まれる少し前だったと思うが、何度か話したこともある。妖魔貴族としての矜持と覚悟を持った御仁だと、そう思っていたのだがな」

 

 そういうクリスは、少し寂し気な様子を、手に持ったジョッキで腹の底に流し込む。

 

「ふふ、何を落ち込んだ顔をしているのだ!貴様は、古き妖魔貴族を退けたのだぞ!もっと嬉しそうな顔をせぬか!」

 

 そう言って絡み酒をしてくるクリスに気遣いを感じ、俺もまたジョッキを煽った。

 周りを見れば、たまもがまたしてもエルに酒を取り上げられていたり、イリアスがパフェを爆食いしていたり、あるいは保護者のような視線でシロムとサバサが年少組を見守っていたりと、にぎやかになった宴の席に、なんだか愉快な気分になって俺は自然と笑みを浮かべた。

 

「よーし!今日はとことん飲むぞ!」

 

 そう言って俺が店員さんにネロイドを注文しようと声をかけると、バン!と酒場の扉を開け、一人の少女が酒場に入ってきた。そして、俺を見つけるとつかつかと俺に向かって一直線に近寄ったかと思うと、その豊満な胸に俺の手を握りこみ、そしてこう言ってきた。

 

「カズマ殿。どうか私との間に、子どもを作ってはくれないだろうか」

 

 ………………ん?

 

 その言葉に、宴会の会場は一瞬の沈黙に包まれる。

 

「え?何、なんて言ったんだ?」

 

「だから、私と子づくりしてほしいのだ。最初の子どもは男の子で頼む」

 

 そう言うと、声をかけてきた少女、七尾は俺の手をぐいぐいと引っ張って酒場から連れ出そうとする。

 

「って、ちょちょちょ、ちょっと待つのじゃ!おぬし、正気か七尾!」

 

 たまもがはっと我に返り、俺の残った手、ではなく七尾の手を握って引き留める。

 

「おぬし、この男のうわさを聞いておらんのか?パンツ脱がせ魔だの、女子にドロップキック魔だの、ロリコンだのと言われるカズマじゃぞ?悪いことは言わぬ!おぬしならもっといい相手がおるじゃろ?」

 

 おい

 

「まぁ、カズマを選ぶくらいなら、ここの酒場の料理人を選んだ方が良いのではないですか?あ、渡しませんよ」

 

「何を言うかイリアス!ここの料理人はおぬしの者ではないであろうが!私のだ!」

 

「あなたのでもないでしょうが!」

 

 イリアスとクリスもか……。

 

「ほれほれ、これも食うてみぃ」

 

「ふわぁ……え、庶民ってこんないいもの食べてたのぉ?えぇ~これ好き♡」

 

 エミリとクロムに至っては興味なしか……

 

「もういい、俺、七尾についていく!」

 

「分かってくれたか!」

 

 そう言う俺の手をエルが掴んだ。

 

「待ちなさい。意味が分からないのについていくのは危険よ。そもそも、カズマでなくても出会ってすぐさま子づくりしましょうはおかしいでしょう?せめて話を聞いてからにしなさい」

 

「正論を言うな!俺は七尾と子作りするんだ!」

 

 そう俺が言うと、その隙にたまもが俺の耳元で、小さな声で囁いてきた。

 

「七尾はうちと違って下半身全部狐の狐獣タイプの紅魔族じゃぞ?初体験がもっもふ狐体になるが、本当にそれでいいのかの?」

 

 そう言われ、俺は思わず七尾を見る。下半身全部が狐……たまもの変化的に、顔や胸が大きさを大きく変えることはないだろう。となると、大型犬よりも更に大きい狐の体にのしかかられることになるわけで……。

 

「ちょ、やっぱりちょっと考えさせてくれ七尾、話をしっかり聞こうじゃないか」

 

 さすがに、そんな性癖はもっていなかったので、俺はそう言って仕切りなおしたのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「「「紅魔の里が魔王軍に攻められている?」」」」

 

 もう宴、という雰囲気でもなくなってしまったが、食事はある程度注文してしまったので、酒類だけ一旦脇にのけて、改めてお茶を頼んで七尾の事情聴取に移った。そして、その最初の一言で告げられたのがそんな重大な一言だった。

 

「ちょ、ちょっと待つのじゃ、紅魔の里が攻められておる?うちはそんな連絡受けておらんぞ?どうやってそれを知ったんじゃ?」

 

「手紙が来たのですよ。たまも。見ますか?」

 

 そう言って胸元から取り出した手紙を奪い取り、たまもはその手紙を全員の前で読み上げる。

 

「この手紙が届くころには、きっと私はこの世にはいないだろう。我々の力を恐れた魔王軍が、とうとう本格的な侵攻に乗り出してきたようだ。すでに里の近くには本格的な軍事基地が建設された。

 それだけではない。多数の配下と共に、魔法に抵抗力のある魔王軍の幹部まで派遣されてきたのだ。ふふ……魔王め、よほど我らが恐ろしいと見える。軍事基地の破壊もままならない現在、我々が取れる手段は限られる。

 そう、紅魔族族長として、好みを捨ててでも魔王軍の幹部として差し違えること。

 愛する娘よ、お前さえ残っていれば、紅魔族の血は絶えない。族長の座はお前に任せた。

 ……この世で最後の紅魔族として、決してその地を絶やさぬように……か」

 

 たまもが言い切ると、その場を沈黙が支配する。これは七尾が暴挙に走るのも当然だ。いやそれで俺に子づくりを頼む理由は分からないが。まさか、子づくりしろと言われたから、はいします。という単純なものではあるまい。他の仲間たちも、流石にこの話は黙って聞き入っていた。

 

「はん、ばかばかしいのう。そもそも、あの老獪で偏屈な婆がこんな手紙残すものか」

 

 だが、たまも的にはそうではなかったらしい。手紙を狂言だと決めつけて、そのまま七尾に叩き返す。

 

「言いたいことも分かるけれど、手紙はもう一枚あるのですよ」

 

 七尾はそう言いながらもう一枚の手紙を出した。……いや、お前も族長の手紙については懐疑的なのかよ。ていうかお前のお袋なんだろ?信じてやれよ……。

 

「ふむ、なになに?里の占い師が、魔王軍の襲撃による里の壊滅という絶望の未来を見た日、その占い師は同時に希望の光も見ることになる。紅魔族唯一の生き残りである七尾は、いつの日か魔王を討つことを胸に秘め、修行に励んだ。

そんな彼女は駆け出しの町で、一人の男と出会うこととなる。頼りなくそれでいて何の力もないその男こそが、彼女の将来の伴侶となる相手であった。

ひも同然の働かない男。それを甲斐甲斐しく養う七尾。修行に明け暮れていた七尾にとって、それは貧しくも楽しく幸せな日々であった。

やがて月日は流れ、その男の間に生まれた子どもは、いつしか少年と呼べる年になっていた。その少年は冒険者だった父の跡を継ぎ、旅に出ることになる。だが、少年は知らない。彼こそが、一族の敵である魔王を倒すものであるということを」

 

 その言葉に、仲間たちの視線が俺と七尾を行き来する。

 

「紅魔族英雄伝、第一章 著 初音。はぁ、こんなことだと思ったのじゃ。おい、七尾。おぬし、わざと著者を見逃したな」

 

「何のことでしょう?」

 

 その言葉に、たまもは七尾に指を突き付けて責め立てる。

 

「お主がこのアクセルの町で男を喰いまくっておるのは知っておるわ!どーせその流れで、カズマも食ってしまうつもりだったんじゃろうが」

 

「えっ……」

 

 俺は思わず七尾を見る。いや、まあ別に俺の彼女でも何でもないので七尾がどこで何をしてようと関係ないといえば関係ないのだが、なんだかショックな情報だったのだ。そして、そんな七尾は俺たちからそっぽを向いて口笛を吹いていた。わかりやすいなおい!

 

「……まぁ、カズマさんと私が子作りするかどうかはどうでもいいのです。たまも、気になりませんか?」

 

「おい、俺の純情を弄んで何がどうでもいいだ?ってか、さっきので何が分かったんだよ」

 

 俺の反駁はしかし、馬鹿にしていたたまもの真剣な声で返されてしまった。

 

「初音はうちたちの同級生じゃ。陰陽術を専攻しておる傍ら、小説執筆も行って居る奇特な奴でな……。とはいえ、流石に里が滅ぶ等悪趣味な小説を書いて反応を楽しむような悪趣味な奴ではない。どちらかというと、やることをやらんでおるものをねちねちと言葉攻めして楽しむような嗜虐趣味の持ち主なのじゃ」

 

 そ、そいつはまた、性格がねじ曲がっているな。

 

「ん?つまりどういうことだ?」

 

 俺が疑問符を浮かべると、イリアスが控えめに口を開く。

 

「つまり、里長様の手紙では来ないかもしれない七尾を、確実に里に呼び戻すため、という可能性が考えられますね」

 

 俺をはじめとして、年少組、エルといったやや察しが悪い側の仲間の目線に、イリアスはつまり、と言葉をつづける。

 

「紅魔族の里長は、娘の七尾や娘の同級生のたまもにこんな手紙を書く者ではないと疑われるほどひねくれている性格をしているようです。普通に手紙を書いてもそれは変わらず、いたずら……とまではいかなくても、真剣に取り合うことはないでしょう。しかし、同じ内容について示した別の筆跡の手紙、しかも、里の消滅を暗示するような手紙を添えればどうでしょう?それが仮に虚構のものだとしても、文句の一つも言いたくなるのではないですか?」

 

「それだけではない。初音がするには悪趣味が過ぎる、ということが分かれば、何かしらの理由で文句でも何でもよいから連絡が取りたい、できれば会って話がしたい、というのが透けて見えるというもの。そして、共通する話題は……」

 

「里の襲撃、か」

 

 イリアスの言葉にたまもが補足をし、最後の俺の一言で全員が手紙に秘められた内容を察することができたようだ。そして、たまもは更に答え合わせをするように俺たちに向かって言葉をかける。

 

「おそらくは、里が滅びかけている……は嘘じゃろうな。じゃが、死者くらいは出ておるかもしれぬ。だからこそ、会えるうちに顔を見せに来いという手紙ではないかと、うちは見た」

 

「私も同意見です」

 

「いや、おぬし、手紙真に受け取ってカズマに求愛したんじゃろうが。自分で決めた設定位は守らんか」

 

 そう言われ、七尾はぐぬ、と口を閉ざした。いや、みんな分かってるからいいんじゃないかな?もう。

 

「とにかく、じゃ。紅魔族の里は魔族に襲われており、そして里に顔を見せろと言外に言われておるわけじゃな。で?七尾、貴様はどうするのじゃ?」

 

「私は、一旦里に顔を出しますよ。これでも族長の娘ですし、まぁ、友人も……いますし」

 

「ふむ、ならば二人とも里帰りすることもあるまい。何より、うちらが同行すれば、いつカズマが食われてしまうかわからんしのう」

 

 たまもはそう言って、七尾に手を振った。

 

「おい、いいのかよたまも。お前の故郷が襲われてるのは本当っぽいみたいだし、それにそんなところに本当に七尾だけで行かせていいのか?」

 

 俺の言葉に、たまもは半眼になって俺を見た。

 

「ふむ……なら、お主、この七尾について行くか?……そうか。まあ、うちは何も言うまい。分かった。カズマが付いて来るなら、うちも紅魔の里に帰ろう」

 

 なんか一瞬で俺が七尾について行くと喰われることが確定したような空気がここにいる全員の共通認識になった気がする。

 

「なあ、たまも。その言葉の後に、俺が七尾について行くと思ってるか?そ、そりゃ俺だってきれいなお姉さんは好きだけどさ、その、な?心の準備とか、あるじゃん?」

 

「もじもじしてないで断るならさっさと断りなさい、この童〇」

 

「ど、童〇じゃねーよ!」

 

 俺とイリアスがそんな風に言っていると、七尾がくすくすと笑いだした。

 

「ごめんなさい。ちょっとからかいすぎたわ。うん。最後に、貴方たちとこうして話せてよかったわ。それじゃ」

 

 そう言うと、七尾は目を細めて立ち去ってしまった。最後に見た横顔は、なんだか、覚悟を決めた横顔で。

 

「……七尾」

 

 いつもは背中にからかいの言葉を重ねそうなたまもも、じっと見つめてその背中を見送ったのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 七尾が紅魔の里へと旅立った夜。眠っている俺の寝室に忍び込む人影があった。その人影は、俺を起こそうと手を伸ばしては、ひっこめてを繰り返していた。

 

「たまも」

 

「うひゃ!?お、起きとったんかお主」

 

「あぁ、眠れなくてな」

 

 そう言って、俺は身を起こし、たまもを見る。

 

「お前もだろ。たまも」

 

「……」

 

 黙っているたまもは、しかし全身でその通りだと告げていた。そわそわと落ち着かな気に体をゆすり、目もあちこち飛び回っている。

 

「……」

 

「……」

 

 しばしの沈黙。そして、たまもが口を開く。

 

「カズマよ。実はな。うち、紅魔の里に家族を残してきておる」

 

「うん」

 

「妹もおるのじゃ。これがよくできた娘でな。ゆくゆくはきっとうちを超えるじゃろう」

 

「うん」

 

「……じゃから、な。決して、七尾が心配なわけではないが、な。うちも紅魔の里に帰るべきではないかと、そう考えておる」

 

「よし、それじゃあ、明日行くか」

 

 俺の言葉に、たまもがぽかん、と口を開ける。

 

「あ、明日?旅の準備もあるのじゃぞ?」

 

「何言ってんだよ。お前の様子をロリコンと女神が見逃すわけないだろ?いつでも出発できるように、今日中に準備は済ましておいたんだよ」

 

「むぅ、悩んでいたうちが馬鹿みたいではないか」

 

 それを聞いて、俺はからからと笑う。

 

「何言ってんだ。馬鹿みたいじゃないだろ?たまもはほんとの馬鹿だよ」

 

「な、なにおぅ!?」

 

「困った時くらい、俺たちを頼れよ」

 

 手を振り上げたたまもにそう話すと、たまもは虚を突かれたとばかりに動きをとめる。

 

「……カズマ、それ、ちょっとズルいのじゃ」

 

 そして、そう言ってそっぽを向いて、しかし、小さくつぶやいた。

 

「カズマ……ありがとうなのじゃ」 

 

「おう!」

 

「カズマ……そこは聞き逃す場面じゃろうが」

 

 そう言いながらもたまもは満面の笑みで俺を見返したのだった。




 とりあえず弁明させてください。仕方ないじゃん!あの七尾だよ!絶対つまみ食いしてるって!
 ……失礼しました。とりあえず、表に出ない個人的な設定としては、たまもがキツネと看破されて変化が解けたように、七尾もそっち系で興奮すると変化が解けるので、いろいろと盛り上がってきたところで変化が解けて逃げられるを繰り返しているため、本番には移行してない設定です。

というわけで、新章突入です。

アニオリ部分の話を見たいかどうかのアンケート

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  • 新人冒険者へ話す冒険話の話だけ見たい
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